田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

フライト(FLIGHT)

2013年03月05日 22時30分32秒 | 日記

 

 『フォレスト・ガンプ/一期一会』のロバート・ゼメキス監督と『トレーニング デイ』のデンゼル・ワシントンがタッグを組んだ話題作。旅客機の緊急着陸を成し遂げたものの血液中から検出されたアルコールにより英雄から一転、糾弾される主人公の機長の苦悩を描く。弁護士を『アイアンマン』シリーズのドン・チードルが演じ、友人を名脇役のジョン・グッドマンが好演。善悪では割り切れない人間の業の深さを描いた深遠な心理描写にうなる。(goo.映画より)

 

 

 これは、人間の弱さや生きてゆくことのむずかしさを描いた、シリアスなヒューマンドラマです。別に舞台は飛行機でなくてもよかったのだと思います。

才能に恵まれたパイロットのデンゼル・ワシントンは、しかし私生活は自堕落です。アルコール依存なだけでなく、同僚と寝る、搭乗中にも飲む、すべてに関して自堕落です。もちろん、妻にも離婚されてます。

しかし、ここが才能のある人間の凄いところなのですが、それでもやってゆけるのですね。飛行機のパイロットなんて、そんじょそこらで務まるものではないのに、アルコールを飲んでいても、神業な着陸をやってのけます。

このまま責められることがなければ、彼は今まで通りの人生を送ったでしょう。身近な例だと、飲酒運転。今でこそ、規制が厳しくなったから減ったでしょうが、「俺は大丈夫。事故を起こすような奴とは違う」と、飲酒運転をやめない人というのは、とんでもない事故を起こすまで、根拠のない自信に溢れているものです。

で、実際事故を起こしても、「なんでだろう。今までこんなことなかったのに」と、まだ不思議に思っていたりするのです。

ともかく、”俺は神業をやってのけた。たくさんの人が助かったのだから責められる筋合いはない”とばかりに、最初は鼻息も荒いデンゼルです。

しかし、法は法、事実は事実。結果がどうあれ、責められるべきことは責められるべきなのです。

その功績に免じて、よき仲間が彼を助けるために奔走してくれます。彼も飲酒が悪癖なことはわかっているのです。その覚悟もないのに、「大丈夫、自分一人で対処できる」などと言ってみても、できないであろうことは、本人が一番わかっているのです。

そして、その裁判の日・・・。

 

<ここからネタバレ>

順調に嘘を通していたデンゼル。このままいけばうまく乗り切れるでしょう。しかし、殉職した若い乗務員の女性、彼女はシートベルトがはずれて落ちた少年を助けたために、自分のシートベルトが間に合わなかったのですが、彼女の写真が大きく映され、「ウォッカの空ビンが見つかりました。彼女が飲んだと思いますか」と問われて、思わず言葉を失います。

もちろん、デンゼルが飲んだものです。しかし、飲んでなかったと嘘をついて来ました。順調に来ています。彼女はいわば「死人に口なし」状態ですね。

しかし、しかしですよ、通常の人間なら、ここで「はい」と言ってのけることができるでしょうか。彼女は子供を助けたために亡くなったのです。こんなことを「はい」と言ってまで、無罪放免で生きている価値があるでしょうか。

「これはあんまりだな・・・」と思った次の瞬間、やはりデンゼルはデンゼルだったのです。真の悪人ではありませんでした。よかった・・・。

本当によかった。彼は、ここで嘘をつきとおしたなら、その後の人生はますます荒れていたでしょう。人は、そんなにしてまでは生きてはいられないものなんです。・・・と思います。

もちろん、免許ははく奪されますが、彼は立ち直ってゆくでしょう。最後の尊厳は守れたのですから。

それにしても、なんかな~って思いました。だってね、酒もたばこもやらずに、真面目に働いている私のような人間にはなんの才能もないのに、アルコール中毒(もちろん最初からそうではなかっただろうけれど)の男に、神はこんな才能を与えてあるんだな~って。

モーツァルトとサリエリでもそうだったけど、だから凡人は真面目に生きるしか道はないのかもしれないけれど、な~んにもやらない私にこれだけの才能があったなら・・・と、ちょっと思いました(笑)。

あと、一番最後のシーン、息子が刑務所まで訪ねてきてレポートの題を言うところね、あれは蛇足かな、と思いました。

コメント
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