今週の法話

法華宗北海寺住職-二王院観成による仏教用語と法話集です。毎週水曜日に更新いたします。

原発と出版の思い出

2011-07-26 13:03:04 | 幸福の追求
 野僧は四冊の粗書を出版している。処女作は「地球成仏」で、1998年10月
のことである。その約1年くらい前に、自分でワ-プロで打った原稿を新潟刑務所
に持ち込んで、500部、製本してもらった。5万円もかからなかったと思う。い
わゆる自費出版である。その中、約300部を檀家や知人に配った。残りの約20
0部を出版社に送って探ってみた。しかし、どの出版社からも出版の申し込みはな
かった。そればかりか、何の返事もないことが多かった。そうこうしているうち1
年が過ぎようとしたとき、「たま出版」から出版しないか、という誘いがあった。
まさに完全に出版をアキラメかけようとした瞬間のことだった。そして、ついに出
版された。
 その半年くらい前に、自費出版の「地球成仏」を見たのであろうと思われる近く
の電力関係の事業所から講演の依頼を受けたことがある。約1時間の講演ののち、
応接間でお茶を馳走になった。そのとき「温暖化防止は深刻である。しかし、原発
は炭酸ガスを出さないから、原発が今後のエネルギ-の主流になるのではないか」、
という話が先方から持ち出された。
 「地球成仏」の第3章の中で「原発の影響」を書いてある。その中で、原発の危
険性を説いている。しかし、電力需要が今後一層増大するだろう。したがって、使
う国民も使い放題の意識を変える必要があるのではないだろうか、とも説いていた。
結論は「原発は必要悪か?」で締めくくっている。
 その先方との話し合いの野僧の結論は、「どうしても原発の危険性を除外した話
しにはのれない」、というものだった。その結論を話す前に瞬間的に考えたことが
ある。もしも、先方の主張を受け入れれば、正式の出版物になるだろう。宣伝もし
てくれるだろうから、もしかしてヒットするかも知れない。また、日本各地を講演
して回ることになるかも知れない。そうすれば、億万長者になれるかも知れない、
という打算主義が頭をよぎったのは云うまでもない。
 その後まもなく、電力会社から、「温暖化を防ぐのは原発である。原発は炭酸ガ
スを出さないからである」、という意味のキャッチフレ-ズがテレビなどで流され
たのである。
 億万長者になりそこねたが、国民の幸福を追求するという立場に立つことを忘れ
なかったのは幸いだったと思う昨今である。

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