元東北大学の学長だった西沢潤一先生が、10月21日に死去したと
報じられた。誠に残念である。野僧の最も尊敬する学者の一人だった。
先生は静電気誘導トランジスターを開発し、半導体レーザー、光ファイ
バーなどの光通信の3要素を考案し、「光通信の父」といわれた。
特に有名なのは、光通信を日本で特許申請したのに、特許庁の認識不
足(?)で、特許申請が却下された。それとほぼ同じ内容の申請が米の
特許庁に他人の誰かが申請して米で特許が認められたいきさつがある。
また、光通信を日本の学会で発表したとき、出席者の中から嘲笑の声が
聞こえたといわれている。「光で通信することなど不可能だ、駅弁大学
の先生は何を云っているのか」というのが理由だったと伝えられている。
そのために日本は何千億円という特許料を損したともいわれている。
これらのため経団連の会長だった土光氏と西沢先生が何回か会談し、問
題点と対策を話し合ったのは有名でもある。
特に野僧が西沢先生に注目したのは、著書「人類は80年で滅亡する」
西沢潤一・上野いさ黄著(東洋経済新報社・2000年2月17日発行)
の中で、次のような記述があったからである。
「日本エネルギー経済研究所が示している大気中の二酸化炭素濃度と
その排出量の推移を見ると、その現在値は約0.036%で、3%に
なる時期は西暦2080年頃になる。この値の根拠は過去の推移を前
述した最小二乗法を使って分析すると約50年で10倍になっている
からである。そこで、生理学者に話してみると答えは明快で、
「3%では窒息する」という結論であった。
ちなみに3%は、30000PPmであるが、二酸化炭素濃度の排出
量が年々増大しており、2080年より前に達する可能性がある。現状
では、世界の排出量を0にすることは現実的には不可能と思われる。
一方ブッダは、「996人の賢者が現れて地球と世界を救う」とも説い
ている。西沢先生は、その一人だったと思っている。学者諸氏は勿論で
あるが、他の賢者として、料理研究家のコウケンテツ氏、俳優であるが
世界中を旅した関口知宏氏、200名山を踏破した田中陽希氏などが色
んな意味で、賢者の役をはたすことができるものと思っている。
いずれにしても、西沢先生の逝去は残念でならない。衷心より死後の
安寧をご祈念いたします。