4月11日、新聞各紙は「ブラックホール 初撮影」というタイトルでその写真入りで報じた。人類初の快挙である。
このことによって宇宙の実体に通ずる論理の展開が期待されるからである。哲学、宗教に大影響を与えることになるか
も知れない。赤裸なブラックホールの写真は真理への入り口のように野僧には見えた。それは「おとめ座」の方向にあ
り、地球から5500万光年離れた楕円形銀河「M87」の中心にあると考えられていた宇宙最大級のブラックホール
を観測したものという。ブラックホール周辺部がリング状にに輝き、中心が影のように暗くなっている画像が得られた。
リングの直径は約1000億キロで、質量は太陽の約65倍だという。この撮影は日米欧などの国際研究チームで、南
米チリにある「アルマ」をはじめハワイ、南極など世界6ヵ所にある8台の電波望遠鏡の観測データを約2年かけて慎
重に解析した結果だという。まさにノーベル賞に該当する快挙である。
この「ブラックホール」は光でも何でも吸い込んでしまうという。一度吸い込まれたものは2度と出てくることはな
い、ともいわれている。その存在意義、他との関連作用などの面で今後注目されるであろう事項を特記しよう。①最後
のブラックホールはどうなるのか。②ブラックホールとビッグバーンは関連あるのか。③宇宙の創造神との関連はある
のか。④万物は永遠か、などである。
①最後のブラックホールはどうなるのか。
一つの銀河には幾つものブラックホールがあると云われている。最後には1銀河に1ブラックホールが残るのではなか
ろうか。その理由は、ビッグバーンの当初には一つもブラックホールはなかったはずである。それが銀河の中に一つのブ
ラックホーができ、やがて複数のブラックホールができたのではなかろうか。最後には1銀河1ブラックホールとなるの
ではなかろうか。最近、NASAは宇宙には「2兆」の銀河があると発表した。一説には7兆個説もある。いずれにしても、
2兆の銀河に各1ブラックホールとなり、最終的には大宇宙は1ブラックホールとなるのではなかろうか。ビッグバーン
の原点に返るのではなかろうか。まさに逆も真なりである。
それでは最終的な1つのブラックホールはどのくらいの大きさになるのであろうか。恐らく、サッカー・ボール大の球
状の塊の様になるのではなかろうか。ビックバーンは同状の塊が破裂したと科学では説かれているからである。
仏教では「一即一切、一切即一(いちそくいっさい、いっさいそくいち)」と云っている。「一即多、多即一」とも云
う。
②ブラックホールとビッグバーンは関連あるのか。
現在の宇宙はビッグバーンから始まったと説かれている。恐らくその通りだと思われる。何が爆発したのかは、サッカ
ー・ボール大の球状の塊だとも云われている。科学の世界では、ビッグバーンは現在も膨張していると説かれている。や
がて膨張が止まるとも云われている。その先については諸説あるようである。その中の一つに、膨張が止まった後には収
縮し、ふたたび爆発するのではないか、との説もある。野僧は、この説に注目している。
仏教では、宇宙の永遠性を説いている。その教えは「四劫(しこう)」といって、「成」(じょう)→「住」(じゅう)
→「壊」(え)→「空」(くう)→「成」(じょう)→「住」(じゅう)→ → と永遠に繰り返す、と説かれているから
である。
また、宇宙には始めがあるのか、という疑問に対し、科学はビッグバーンが始めだと主張している。仏教では、四劫は円
環状態で永遠に繰り返されているので、「どこが始めで、どこが終わりなのかわからない」と説いている。これを無始無終
という。また、ある経典には、現在のような地球が何度も生まれ、破滅を繰り返しながら現在にいたっている、と説かれて
いる。仏教的には、370億年や500億年しか宇宙の歴史はないのか、宇宙とはそんなに小さな存在なのか、という疑問
が湧いてくるが、今後の思想界で大きな話題となるだろう。
③宇宙の創造神との関連はあるのか
仏教の開祖であるゴータマ・ブッダは、インドで説かれていた宇宙の創造神である、「ブラフマン」を否定して敢然と立
ち上げた宗教である。世界に宗教がいくつあるか知らないが、無神論の宗教は仏教だけである。
ビッグバーンと宇宙の創造神との関連については、科学と有神的宗教との両者で検討すべきであろう。仏教とは関係ない
ことである。
④万物は永遠か。
宇宙がビッグバーンで終わるとすれば、単純な結論になるだろう。しかし、仏教では人間の命は勿論、すべての生物は永
遠に続く(無始無終)と説かれている。現在の全宇宙には、1兆の地球人に似た生物がいる、ともブッダは説いている。古
来、世界の帝王は権力と財力をかけて不死の妙薬を探させたが、結局見つからなかった。第一、探す必要性がなかったので
ある。あらゆる人の生命体は無始無終なのである。しかしながら、すべてのものは移り変わるという諸行無常(しょぎょう
むじょう)、何者にも絶対に左右されないもの(存在)はないという諸法無我(しょほうむが)というブッダの教えは矛盾
するものではない。すべてのものは変化しながらも無始無終な存在だと説いたのである。これを安心立命(あんじんりゅう
めい)という。
いずれにしても、今回のブラックホールの写真撮影は現代科学の大功績と云えよう。しかし、温暖化による人類滅亡の影
は濃くなる一方である。心が傷まざるを得ない。科学者はもっと温暖化についても語るべではなかろうか。