今週の法話

法華宗北海寺住職-二王院観成による仏教用語と法話集です。毎週水曜日に更新いたします。

「天皇の靖国参拝を」という外相発言の意味するもの

2006-01-29 11:15:08 | 戦争と平和
 「英霊にしてみれば、天皇陛下のために『万歳』と
言ったのであって、総理大臣万歳といった人はゼロだ。
天皇陛下の参拝か゜一番だ」、と天皇の靖国参拝実現
が望ましいとの認識を、麻生外相は1月28日、名古
屋での講演で示した。(2006.1.29、北海道
新聞)
 この外相発言は、真実を突いている一面はあるが、
悲惨な戦争を美化し、何ら将来への教訓、警告として
とらえていないところに問題がある。すなわち、太平
洋戦争を全面的に肯定している点に、根本問題がある。
ドイツの為政者とは違った、低俗的な日本の政治家の
認識である。
 何度もいうように、外国軍が日本に侵略したために
同戦争が始まったのではない。為政者の決定に従って、
日本軍兵士は行きたくもない外国に行かされ、殺した
くもない外国人を多数虐殺する結果になったのである。
だからこそ中国国民は日本兵を鬼といって恐れたので
ある。
 その一方で日本では、日本軍兵士の戦没者を英霊と
呼んで美化している。日本に侵略してきた外国軍と戦
って犠牲になったのなら、英霊と呼ぶべきであろう。
しかし、勝手に外国を侵略した結果、戦死した人々を
英霊と呼ぶには妥当性がない。それは、戦死した兵士
に対する同情心を国民に喚起させることによって、侵
略政策を遂行した為政者の責任をボカす欺瞞政策の一
つの政治的テクニックといえよう。
 良心的な日本人から見れば、英霊と呼ばれている人
々の多くは、日本の軍国主義政策の大いなる犠牲者で
あり、人生を台無しにした悲惨な被害者といえよう。
「お国のために死んだ」、「現在の日本は、英霊のお
かげ」というのは大いなる欺瞞である。単なる好戦的
な為政者の犠牲に過ぎない。国民は敗戦の饑餓状態か
ら、少しでも安定した生活がしたい、といって頑張っ
たお陰で現在の日本がある。そのためにしてきた政権
党の功績は認めざるをえないもので゛ある。しかし、
戦没者のお陰で今日がある、というのは論理のすり替
えに過ぎない。単なる戦争責任を回避するために戦没
者を美化しているに過ぎない。戦没者の政治利用とで
もいうべきものであろう。
 兵士が「天皇陛下万歳といって死んでいった」、と
いうのも事実とは認めがたい。確かにそういう人もいた
と、戦争体験者から聞いている。しかし、ほとんどの
兵士が死ぬとき、「お母さん!」といって息を引き取っ
たとも聞いている。「岸壁の母」という歌謡曲が現在
でも多くの日本国民の共感を呼んでいるが、「岸壁の
父」も大勢いたといわれている。子を思う親心は母も
父も違いはない。
 また為政者の責任を、「天皇陛下」に責任転化する
野望は捨てるべきである。昭和天皇は平和主義者だっ
たと聞いている。軍国主義が日本を覆っていた時代に、
天皇陛下自身の意思が無視に近い状況にあったのは否
定しがたい事実であろう。その証拠に、終戦の詔勅を
辞めさせようと画策した一部の軍部の動きを見れば分
かるはずである。「天皇陛下万歳」と叫びながら、天
皇の意思を無視し、自分達の意思を貫こうとした事実
は数え切れないほどあるはずである。まさに「天皇利
用」である。現在においても、「天皇利用」の実態は
何ら変わっていない。
 今回の外相発言は、戦争責任を天皇陛下一人に押し
つけるものとも解釈されかねないものである。また、
天皇の靖国参拝を実現することで、軍国主義の復活を
天皇の名の下に遂行しようとの意思がみえるようであ
る。
 平成天皇も平和主義者である。自分達の好戦的な政
策を遂行するための天皇利用は断念すべきである。憲
法9条改定問題もその動きの中の一つであろう。さら
には国民徴兵制も画策されている、ともいわれている。
軍国主義志向は止まるところを知らないようである。
いずれにしても天皇の政治利用は断念すべきである。
 さらには、「皇室典範審議急ぐな」という中曽根元
首相の考えは(12月29日、読売新聞)、女性天皇
では、戦争などが発生した場合、政策遂行しにくい、
との読みがあるのではないかと推測したくなる。近年
の政治的な一連の動きは、軍国主義よ再び、という野
望が根本にあるような気がしてならない。
 「殺すな、殺させるな」というブッダの言葉を再度
吟味してほしい。

イチロー、目指せ5割打者!

2006-01-06 01:57:06 | 野球
 毎年、年末の楽しみにしている一つのテレビ番組が
ある。NHKの「MJB、日本人メジャーリーガーの
群像」である。特にイチロー・フアンの私にとっては、
一年間のイチロー選手を知る上で、欠かせない番組の
一つである。イチロー本人が解説してくれるので、何
ともうれしい番組でもある。
 打率303厘、安打206本、ホームラン15本、
盗塁33という数字は見事である。2004年の26
2安打には及ばないものの、5年連続200本安打を
達成し、メジャーリーグの記録を塗り替えたのは、何
とも嬉しい限りである。
 所属チームが低迷する中で、何とか勝ちたいという
気持ちが、例年の倍ちかいホームラン15本という数
字に表れているような気がする。いらいらしたチーム
状況の中で、さらに200本安打を打たなければなら
ない、という恐怖と不安の心境が語られていた。その
中で、これだけの成績を残せたのであるから立派の一
語に尽きる。また、イチローの苦悩の日々を察するに
余りある。
 また、番組の中で、「常にバッティングは動いてい
る。これで大丈夫だということが動いていく。バッテ
ィングは生き物だ、終わりのないものだ」という野球
の実践哲学者としての含蓄ある言葉である。
説得力がある。ますます今年のイチローの活躍が待た
れる。楽しみでならない。
 ところで、イチローはメジャーリーグの記録を次々
と塗り替えている。いっそのこと打率5割を目指して
欲しい。イチローなら出来るはずである。野球そのも
のがチームプレーであるから、個人プレーだけを追い
求めるのはどうか、という意見もあろう。しかし、イ
チローが出塁すれば、それだけチームの得点チャンス
が多くなるのであるから、何の問題もないと思う。そ
のためには、足をいかしたバントも縦横無尽に使うべ
きであろう。見ていると、イチローがバントをすると、
相手チームがあせって暴投などのミスをすることがあ
る。それこそマリナーズにとっては願ってもないこと
であろう。ホームランは考えない方がいいのではなか
ろうか。安打第一主義でいいのではなかろうか。そう
でなければ5割は不可能であろう。
 5割といえば2打数1安打のことであるが、イチロ
ーなら必ず出来ると確信している。4割は数えるのが
面倒である。5打数2安打のことであるが、難しい計
算は避けた方がいい。野球人生の中で、不可能と思わ
れることにチャレンジしてほしい。もしかしたら、そ
れ以上のことが出来るかも知れない。
 5割を目指すのであれば、一番の難敵は自分自身で
はなかろうか。昨年の3月には4割以上も打っている。
その喜びが、イチロー自身でも気づかない驕りに繋が
り、心のバランスを崩したのではないかと推測される。
その結果が、一時的な打撃不振に繋がったのではない
かとも推測している。
 今年から城島選手もマリナーズに入る。今年もメジ
ャーリーグから目が離せない。「頑張れイチロー」、
今年も美酒を私に飲ませてほしい。一人で乾杯し、一
人で美酒を飲むのも楽しいものである。

同時進行する寒冷化と温暖化の下での羽越線脱線事故

2006-01-01 23:05:15 | 環境
 地球は現在、寒冷化と温暖化が同時進行している。
このことは2005年1月13日の本欄「レスター
ブラウン氏の『地球の未来は楽観的』に疑問を呈す
る」の中で指摘している。
 すなわち深層海流と表層流は、一部でインド洋と
北太平洋に分かれるものの、大局的には一つの流れ
として海洋のベルトコンベアーとして地球を循環し
ている。これまで南太平洋から北上する暖かい表層
流はグリーンランドの手前で海底にひずみ深層海流
となって循環している。しかし、温暖化による氷な
どが融解するため、塩分濃度の関係で海底にひずみ
にくくなっている。このため、温暖化がさらに進め
ば、海洋のベルトコンベアーはストップするのでは
ないかと心配されている。そうすれば北欧の各国は
寒冷化することになる。
 一部の学者は、寒冷化と温暖化の同時進行によっ
てバランスがとれて、人類の危機は回避されるので
はないか、と予測している。
 しかし、一部の地域で寒冷化したとしても、温暖
化の原因である大気中の炭酸ガスなどが減ることは
ない。したがって、温暖化は寒冷化を凌駕して最終
的には温暖化がさらに進むことになるものと思われ
る。
 そのような地球環境の現状の中で、寒波の影響に
よる羽越線の脱線事故が発生した。5人の死者と3
2人の負傷者を出すにいたった。まことにお気の毒
なことである。また、日本海側の各地で雪による多
大な被害も出ている。
 これらの原因の一つとして、寒冷化と温暖化が同
時進行しているということを正しく理解する必要が
ある。それよりも恐ろしいのは、海洋のベルトコン
ベアーがストップした場合、地球環境は完全に崩壊
し、地球の環境システムはメチャクチャになること
である。もしもそうなった場合、どのような環境や
気象状況になるのか、恐らく科学者であっても予測
つかない状態になるだろう。
 野僧は科学者ではない。科学者の使命は重い。科
学者は自惚れた気持ちを捨てるべきである。