今週の法話

法華宗北海寺住職-二王院観成による仏教用語と法話集です。毎週水曜日に更新いたします。

小泉人気、アジアに通じず

2005-12-20 18:20:18 | 戦争の加害者責任と被害者意識
 東アジアサミットも終わった。首相が靖国神社
に参拝した結果、日中韓の首脳会談は、中韓の意
向で拒否された。何ともお粗末である。
 第一、先の大戦を真摯に反省することなく、逆
に肯定してきた日本政府と政権政党を支持してき
た日本国民の政治意識は低すぎる。同じ敗戦国の
ドイツとは対照的である。諸外国から、日本の経
済は一流、政治は三流といわれる由縁である。
 小泉首相は、あらゆる問題に真剣に答えること
なく、はぐらかしの答弁に終始してきた。いわば
「おとぼけ」のパフォーマンスで国民とアジアに
対処してきたのである。首相は今までの日本の政
治家にないタイプで、漫画文化を政界に持ち込ん
だ、といっていいであろう。その結果、国民受け
して先の衆議院選で大勝したのである。
 しかし、ついに耐震偽装問題で国民は大変な時
代に生きているのだ、という実感に気づきはじめ
た。一番深刻なのは、口車に乗せられて作ったホ
テルの経営者であろう。死活問題である。また、
マンションの住人も深刻な経済破綻に直面してい
る。何十年も残っているローンを払い続けなけれ
ばならない。その上、今後どう住生活を計画して
いけばいいのか分からない状況であろう。何とも
お気の毒な話である。
 「儲けるためには何でもあり」という経済意識
にもとずいてなされた耐震偽装問題も、世界中を
カジノにしてきた世界経済の必然的な流れの一環
であることを認識すべきである。漫画文化と年中
祭り気分の日本人は目覚める必要がある。すでに
日本は中国や韓国から相手にされていない。近隣
諸国から相手にされないのに、どうして世界中か
ら尊敬される国になれるであろうか。
 とぼけないで、小泉首相は靖国問題に対処すべ
きである。

広島女児殺害事件と宗教の罪悪感

2005-12-04 23:14:56 | 宗教と罪悪感
 広島市の小学1年生の木下あいりちゃんが殺害
されるという残忍な事件が発生した。あいりちゃ
んのご冥福を祈るのみである。
 逮捕されたペルー人のピサロ・ヤギ・ファン・
カルロス容疑者は、接見した弁護士に「悪魔が自
分の中に入ってきて体を動かした」と話したいう
表現が注目されている。
 「悪魔が自分に入ってきて体を動かした。出て
いかず、そのままにした。当時、神様にお祈りを
していなかった。気が違ったようにいつもと違う
行動を取った。これまで否認していたのは悪魔が
やったこと。隠さないといけないと、悪魔がいっ
た」、このようにピサロ容疑者は話したという。
 これに対し、読売新聞は「理解しがたい部分」
とコメントしている。犯罪は自己責任、因果応報
という仏教的な社会に住んでいる人にとっては当
然理解できない疑問である。
 実は、キリスト教徒にとって、罪悪感の典型的
な根本認識なのである。「新約聖書」の「マタイ
の福音書、7」を読めばすぐに分かる。
 「主よ。主よ。私たちはあなたの名によって預
言をし、あなたの名によって悪霊を追い出し、あ
なたの名によって奇跡をたくさん行ったではあり
ませんか」、という記述がある。悪魔が自分の中
に入って体を動かした」。すなわち、すべての罪
悪は悪霊がしたことで、自分がしたことではない。
奇跡(善いこと)を行ったのは、主(神)がした
ことである、という道徳観はキリスト教の基本的
な考え方である。この点について、公判でどのよ
うに評価されるのか注目される。
 また、同章には、「イエスは言葉をもって霊(
悪霊)を追い出し、また病気の人々をお直しになっ
た」との記述もある。
 さらに、「悪霊どもはイエスに願ってこういった。
もし私達を追い出そうとされるのでしたら、どうか
豚の群れの中にやってください。イエスは彼らに『
行け』といわれた。すると、彼らは出て行って豚に
はいった」という記述もある。これはイスラム教に
大きな教訓を与えて今日にいたっている。イスラム
教徒が豚肉を食べないのは、ここに根拠がある。豚
は汚れた動物である、という考え方は豚に対する差
別である。ブッダは、すべての生きとし生きるもの
に慈悲を与えることを説いているのとは対照的であ
る。
 一方、「豚に真珠」という言葉も、「マタイの福
音書、6」が根拠となっている。「聖なるものを犬
に与えてはなりません。また豚の前に、真珠を投げ
てはなりません」という記述である。
 このように、残忍な殺人も、悪霊がしたことであ
って、自分に責任はない、という歪んだ価値観のも
ととなっている。こんな考え方では安全な社会も世
界平和も築けないことを有神論の宗教信者は理解す
べきである。凶悪犯罪の発生率は、仏教信者の多い
国よりも、有神論主流の国々では多発しているとい
われている。
 また最近、栃木県の小学1年生の吉田有希ちゃん
が殺害された。ご冥福を祈らずにはいられない。日
本人も心が歪んできている。怒りのやり場のないこ
とに無念の思いがする。「殺すな」というブッダの
言葉を、再度思い出してほしい。
 「日蓮泣かねど、涙ひまなし」の心境である。