今週の法話

法華宗北海寺住職-二王院観成による仏教用語と法話集です。毎週水曜日に更新いたします。

進化続けるイチロー

2008-01-04 16:30:04 | Weblog
 NHKの「日本人メジャーリーガー・イチロー」と「プロ
フェッショナル・イチロー」を見た。大変興味深く、面白か
った。さすがにNHKだと感心した。
 イチローと他の野球選手の一番の違いは、一言でいえば自
制心の強さだと常々思っていた。イチローが何を食べ、どん
な日常生活をしているのかも知りたかった。なぜなら、怪我
もせず、病気もせず、過酷な日程の一年間を完全燃焼させ、
記録を延ばすイチローの実生活を知りたかったからである。
 以外だったのは、この7年間、朝食兼昼食を奥さんの作っ
たカレーライスを食べ続けたということである。私の作る料
理はカレーライスだけである。2時間半はたっぷりかかる。
カレー好きの私にとって、イチローと共通項ができたみたい
で嬉しかった。  
 また、昨年、イチローが不振で悩んでいた時に、奥さんの
アドバイスでクリアーしたのも夫婦円満生活の証拠であろう。
 さらに愛犬の一弓との生活も心に潤いをもたらしているこ
とが分かった。
 「弱い自分をかくしたかった」というイチローの言葉は、
正直で、普通の人間であることを感じさせる。しかし、前人
未踏の記録を更新するイチローは、凡人とは言い難い。やは
り傑出した野球選手であることに間違いはない。第一、7年
連続200本安打を打つこと自体、毎年進化を続けている証
拠である。対戦相手もイチローを毎年毎年研究してくる。そ
れらの相手投手に打ち勝っているのである。野球技術だけで
なく、体力維持、精神的な鍛錬なくしてなしえないことであ
ろう。そのためには相当な努力が必要なはずである。今年も
200本安打をして、名実共に世界一になることを祈ってい
る。
 また、オールスタ-ゲームで史上初のランニングホームラ
ンを打ち、MVPを獲得したのも痛快だった。これも偶然で
はない。不断の努力と研鑽のもたらした結果であろう。偶然
など何の世界でもあり得ない。偶然を呼び込む必然の結果で
あることを知るべきである。
 これから、どれだけ活躍するのか計り知れない。しかしフ
アンの期待の言動をイチローは気にしてプレッシャーとする
必要はない。マイペースで進めばいいことである。フアンと
は気まぐれな一面がある。好調の時はフアンだが、不調の時
は他の選手に移るのは本当のフアンとは言い難い。また、フ
アンとは過度の期待をするものである。 
 ところで、「完全な人間はいない」、とブッダは云ってい
る。イチローとて同じである。イチローが完全な野球選手に
なるには、究極的には10割打者にならなければならない。
しかし、そんなことは不可能である。あり得ない話であるが、
もしも10割打てたとしても、フアンはそれで満足しないだ
ろう。あと何年イチローは10割打てるのか、と期待するだ
ろう。したがって誰であっても完全な野球選手にはなれない
し、完全な選手になることを目標にする必要はない。
 したがって究極的な目標は、完全な野球選手にどこまで近
ずけるか、ということであろう。
 また、ブッダは「求不得苦」(ぐふとっく)と説いている。
求めても完全に得られることは無いから苦である、という意
味である。誰であろうと求めたものを完全に得られることは
絶対に無い、ということである。
 野球の実践哲学者としてのイチローに期待するのは、その
限界に向かってどこまで進むことができるのか、ということ
である。イチローの進化は今年も続くだろう。
 今年も期待して見守りたい。がんばれイチロー。