今週の法話

法華宗北海寺住職-二王院観成による仏教用語と法話集です。毎週水曜日に更新いたします。

日本地下都市概論 ⑥

2021-04-14 18:59:16 | 幸福の追求

ブッダの貨幣経済観

 犯罪は貧者の必要悪か?

  貨幣経済の1番の欠点は、生活するだけの最低限のお金の収入不足があげら

 れる。これが諸悪の根源となっている。逆説的には「生活するだけの収入があ

る人は、空き巣や強盗などはしなくて済む」ものである。

「汝らは諸々の資生(ししょう。生活するための食物や道具など)の具に乏しきに

 よって浄戒(じょうかい。守るべき清き決まり)を毀犯し、諸々の悪行をなす」。

「大般若波羅密経(だいはんにゃはらみつきょう)

「貧乏で福に薄いものは自分の力だけで生活することができない。だから人のも

 のを盗むのである。そのためにあるときは財物の持ち主に傷つけられたり、ま

たあるときは財のために他人を殺し、警察に捕まれば「私ではない」と嘘をい

うようになる。このように10の不善(1,殺生、2,盗み、3,邪淫、4,妄

語、5,綺語、6,悪口、7,両舌、8,貪欲、9,いかり、10,愚痴)をする。

これもみな貧困が原因でするのである。もし満ち足りていれば、人はそのような悪

いことをしない。菩薩の国土の人々は、豊で安楽で不足な物のない状態である。だ

からもろもろの悪もないのである」。       (大智度論・だいちどろん)。

 

 社会保障制度などの重要性を説いている。

「もし財、少なき時は、先に貧宮なるものに給して後に、福田(福を生ずるもと)に

施し、先に貧苦なるものの為になし、後に富者の為になす。

(優婆塞戒経・うばそくかいきょう)。

 

  人は生まれによって各人の価値が決まるのではないことを強調している。

「私は賎しい家に生まれ、貧にして財が乏しかった。私は家業が卑しくて不浄物の掃

除者でした。人々には忌み嫌われ、罵られました。私は心を卑しくして多くの人を

敬礼しました。                        (長老の詩)。

「生まれによって賎しい人となるのではない。生まれによってバラモン(インドの僧

侶)となるのではない。行動によって賎しい人ともなり、行動によってバラモンと

もなる」。                       (スッタにパータ)。

 

 金銭欲などの物欲は際限のないものである。

「たとえ貨幣の雨を降らすとも、欲望の満たされることはない」。(法句経・ほっくきょう)。

「求めても、すべて得られないのは苦である」。求不得苦(ぐふとっく)。

「いくら財産を蓄えても、最後には尽きてなくにってしまう。高い地位、身分もついには

落ちてしまう。生命はついに死にいたる」。           (感興の言葉)。

「王は暴力を用いて地上を征服し、海辺にいたるまで大地を併せ有し、海の此方で満足

せず、海の彼方をもえようと求める。              「中阿含経」。

「たとえ全世界を征服しても、一つの王宮だけしか占められない。王といえども、一揃

いの衣服を着けて、すこしの食物をたべるだけである。一つのベッド、一つの椅子を使

うだけである。王といえどもけっして幸福ではない。これにはんして、満足している人

間にとっては一切の栄華は無用なものである。「仏所行讃(ぶっしょぎょうさん)」。

 

 将来的には貨幣経済は崩壊する!

「金銀・珍宝・瑪瑙(めのう)・真珠・琥珀(こはく)などが、各地に散在していても人

は誰も見向きもしない。この時、人はそれを手にとってつぶやく。『昔の人はこの宝の

ために、たがいに傷つけあい、牢獄に繋がれた。さらに人々は財宝にとらわれて大

に苦悩していた長い時代があった』。今この金銀などは何の価値もない石ころにすぎ

ず、それによって人を守ることも喜ばすこともできない」。その時、私(ブッダ)の教

えを説く者が現れるだろう。正しい法をもって世界の人々に説いて聞かせるだろう。

武力を以て説得するのではなく、世界の人々は自然に、なびくようにその教えに従う

だろう。          「増壱阿含経(ぞういちあごんぎょう)第44」。

 

人は大いなる慈悲を分け合って生きるべきである。

「一切の生きとし生けるものは、幸福であれ、安穏であれ、安楽であれ。全世界に

対して無量の慈しみの心を起こすべし。上に、下に、また横に、障害なき(慈し

みを行うべし)」。(スッタ二パータ)。

 

人は因果の法則によって人生などの全てが決まる。

「一切の罪悪は、因果を信ぜざるを根本となす」      (守護国界経)。

「人命は極めて少なくして後生にいたる。まさに善事をなすべし。(中阿含経)。

 

 信心によって力強く生きよ!

「人は信仰によって激流を渡り、精励(努力)によって苦しみを超え、智慧によっ

 清らかとなる。                      (法句経)。

「多く悪名を聞くといえども、苦行者はこれを忍ぶ。苦しいからといって、自害

(自殺)すべからず。                 (雑阿含経)。

 

人間同士が差別して優劣を決めるのは間違っている。

「人間がこの地球上に初めて現れたころは、地になるものを食べていた。その食

の多い者は顔色はおとろえ、その食が少ない者は顔色光潤だつた。そうしてい

るうちに人々の顔色容貌の優劣をつけるようになった。だがいに見ていう。『私

はあなたより優れている。あなたはわたしよりも劣っている』と。その心に、

彼と我の差別が生ずるようになった。このようにして争い競うようになったから

地にできるものが消えて渇するようになる。       (長阿含経)。

 

温暖化などで人類が滅びる未来に、996人の賢者が現れ、人類を救う!

「未来において、賢劫(けんごう・現世)に千名より四名すくない(996人の)

 仏(賢者)が現れるであろう。・・・自身の属する仏の国土を清め、またこの世

に存在する者となるであろう」       (法華経・五百弟子受記品)。

 

自らをよりどころとし、正しい法を灯明とせよ!

「阿難よ、私は法をすべて裏表の区別なく教えて7きた。私の法には秘密はない。

私はこれまで教団を統率してきたつもりはない。今さら教団に向かってあらた

めて指図を与える必要はない。私は80才の高齢にに達し、私の体はボロ車の

ようにがたびし動いているだけだ。阿難よ、汝たちは自分自身を灯明とし、自分

自身をよりどころとせよ。法を灯明とし、法をよりどころとせよ」。

(大般涅槃経・だいはつねはんぎょう)。

 

  上記のようにブッダは説いている。このブッダの教えは、宇宙に存在するすべての

 知的生物(人間)の指針となるであろう。もしかしたら、この宇宙に存在する1兆の

 知的生物(人類)の中で、ブッダの教えどおりの社会を完成させている星がいくつか

 あるのかも知れない。