今週の法話

法華宗北海寺住職-二王院観成による仏教用語と法話集です。毎週水曜日に更新いたします。

「おくりびと」アカデミー賞、受賞を喜ぶ

2009-02-26 17:28:19 | 宗教
 「宮本武蔵」(稲垣浩監督)いらい54年ぶりの外国語部門で
の受賞である。独立した部門となってからは初の受賞でもある。
監督・滝田洋二郎氏、主演・本木雅弘氏、出演の広末涼子、余貴
美子の両氏も喜び一杯であろう。日本人が受賞したのは久しぶり
であり、明るいニュースだった。
 映画「おくりびと」を見ていないので具体的な内容は不明であ
る。しかし、今では納棺の際には僧侶は立ち会わないが、何をす
るか大体のことは分かる。人の死に際し、遺体を棺に納める仕事
をするのが納棺士である。遺体を拭いたり、死に化粧などをする。
 一昔前までは、僧侶が指導し、お経を唱えながら納棺したもの
である。野僧にも経験がある。今でも納棺士ではなく、僧侶の指
導のもとで納棺する地方があると思われる。特に、離れ小島や田
舎などではその可能性が大きいと思われる。
 そもそも人の死という厳粛な儀式に際し、納棺の儀式は厳粛な
ものだった。まず、人が死ぬと親戚中が集まって、経帷子(きょ
うかたびら)を縫い合わせて死者に着せたものである。背中、そ
で、襟などに分割された衣類(ほとんどは白いサラシである)を
一つの着物に仕立てあげるのである。その他に顔にかける頭巾
(ずきん)、着物の上に捲く上帯(うわおび)、手の甲をおおう
手甲(てっこう)、足のすねに捲く脚絆(きゃはん)、足袋(た
び)、「ふんどし」や「腰巻」の下帯(したおび)、個人の愛用
の品物を入れる頭陀袋(ずだぶくろ)などがある。これらの細部
にまで細かく経文を書いたものである。たとえば、下帯(したお
び)には「淫欲皆已断、純一変化生(いんよくかいいだん、じゅ
んいちへんげしょう)と法華宗では書く。淫欲は皆すでに断じ、
純一の心で生まれ変わります、という意味である。この経帷子(
きょうかたびら)は、生前に自分の寺の住職から書いてもらって
おくのが通例だった。また、霊場めぐりの時に白いサラシの上衣
を着て回り、行く先々の寺の印を捺してもらったものなどで経帷
子(きょうかたびら)に代える場合もある。
 それが今では最初から仕立てあげられた白い着物が使用される
ようになった。中には、背中に「南無妙法連華経」と印刷された
ものもある。しかし、今でも正式の経帷子(きょうかたびら)を
着せる地域もあるはずである。
 いずれにしても、今では死者の納棺はほとんど納棺士によって
行われている。映画はユーモアをまじえたものといわれる。今回
のアカデミー賞を受賞したことで、納棺士は公認されたようなも
のである。
 最後に、葬儀関係者が一番困るのは、飛び降り自殺の遺体処理
だといわれている。

温暖化は極地へ行くほど大きい。

2009-02-20 17:53:51 | 環境
 「南極異景」の連載が読売新聞(夕刊)で始まった。
今日で二回目だが、興味ある内容である。アルゼンチン
発の客船で2月9日に訪れた南極の西岸に連なる南シェ
トランド諸島のロバート島の気温は14度である。地球
の平均気温は過去100年で0.74度上昇したが、南
極の平均気温は過去60年で3度上昇している。このた
めアデリーペンギンは過去30年で半減してしまった。
泥まみれのヒナが寒さに震え、仲間に突つかれても1、
2歩よろけるのがやっとの状態だった。近くでトウゾク
カモメがペンギンの死骸をむさぼっていたと報じている。
これは人類の近未来の姿でもある。
 このペンギンの営巣地に近いダンコ海岸では氷河の崩
壊の頻度が増えている。10年前、真夏の1月で週2~
3回だったのが、今は1日2~3回崩壊していると報じ
ている。
 このように、南極の温暖化は地球全体の温暖化と一体
のものである。米国のカーター大統領の肝いりで198
0年に発表されたアメリカ合衆国政府特別報告「西暦2
000年の地球」の中で、2000年末の地球の平均気
温は、日本などの低位度地域で1.0度、南極や北極な
どの極地域では3度上昇すると指摘されている。地球全
体で0.9度上昇したという説もあり、IPCCの0.
74度上昇したという数値は信頼できるのかも疑問であ
る。いずれにしても、南極の平均気温が3度上昇したと
いう事実は両者ともに正確である。これは同報告書で指
摘されていることであり、何ら不思議ではない。地球全
体の平均気温が上昇する場合、一律に上昇するのではな
い。極地域は日本などの低位度地域よりも3~4倍上昇
するのである。ようするに、赤道地域から両極地域に行
くに従って気温の上昇率が高いのである。このことを参
考にして地球全体の平均気温の上昇現象を見るとマスコ
ミ報道を見聞する参考になるはずである。

オーストラリアの大火災の教訓

2009-02-11 15:02:27 | 環境
 オーストラリアのビクトリア州で今月の7日に発生
した山火事は、10日現在も燃え続けている。これま
で消失面積は36万ヘクタール、消失家屋は800棟
である。死者181人、さらに行方不明者は50人以
上で生存が絶望しされていると報じられている。
 山火事は7日、メルボルン北方の複数の山林で自然
発火したと報じられている。(読売新聞)。一部の地
域では放火が疑われているが、複数の地域でほぼ同時
に発火ていることから自然発火したという報道は正し
いと思われる。
 ビクトリア州は、1月末から記録的な猛暑を記録、
州都メルボルンの7日の気温は、観測史上最高の46.
4度だった。湿度は5%と極度に乾燥していたとも報じ
られている。これが地球の平均気温が0.74度上昇
した結果である。
 この平均気温が0.74度上昇したのは過去100年
間のことである。中国の炭酸ガスの排出量は米国を追い
抜き、さらにインドなどの新興諸国も炭酸ガスの大量排
出国になった。これらを勘案すれば、あと30年もしな
いうちに地球の平均気温はさらに0.76度くらい上昇
するだろう。人類が対応できるのは1.5度までだと云
われている。IPCCは、今世紀末には6.4度平均気
温が上昇すると云っている。そんなに上昇したのでは、
人類が生きて行ける環境ではない。ポスト京都を検討し
ている世界各国は、本当の科学者で構成されているのだ
ろうか。寝ぼけ眼で論議しても何の意味もない。
 あと30年もしないうちに、今回のオーストラリアの
大火災のような現象が世界各国で発生するだろう。将来、
今回のような大火災から自分や自分の家族をどう守るの
か、各自が教訓を得るべきである。最終的には、自分で
自分や家族を守らざるを得ないことを悟るべきである。
それと同時に、気温上昇に起因する感染症も世界を席捲
する時もそう遠くない。国や世界の指導者、ヘボ科学者
など頼りにならない。他人まかせの他力本願では自滅す
るだけである。
 ブッダの説く3災を真剣に検討すべきである。

白リン弾の使用禁止を

2009-02-04 11:48:15 | 戦争と平和
 白リン(燐)弾は極めて残酷な爆弾である。イスラエル
のガザ侵攻で使われた。米国などのイラク侵攻の際、ファ
ルージャでも使われている。白リン弾は「ウィリービート
」と云われ、「燃える雨」とも云われる。
 この白リン弾は燃えやすい物質からなる化学兵器である。
雨状に降ってきた物質を浴びた人は焼かれてしまう。普通
の焼夷弾と違うのは、白リンがついてしまえば、なくなる
まで燃え続ける。また、皮膚などの中にその白リンが残っ
ている場合、何らかの状態で空気に触れれば、再び発火し
て人体を燃えつくし、骨まで焼き尽くすといわれている。
体を溶かしてしまうと云ったほうが適当であろう。さらに、
地上で爆発する際、雲を作り出す。半径150メートル以
内にいる人は、呼吸困難に陥り死にいたる、と云われてい
る。この場合、衣服などは焼けないが、体が溶けてしまう
と云われている。前線や塹壕などで効果的である。このよ
うに白リン弾は高い可燃性を持ち、空気に触れると自然に
発火し、この物質が消費してなくなるか、酸素がなくなる
まで燃え続けるという極めて残虐な兵器の一つである。今
回、国連本部難民救済事業機関ガザ本部の倉庫がこの白リ
ン弾で攻撃され、八日すぎてもまだ消火していないと報道
された。「燃え方や煙から白リン弾が原因なのは疑いない」
と関係者は話している。(北海道新聞、1月24日夕刊、
参照)
 この白リン弾は、標的サイン用、視界遮断用、焼夷用な
どに使われる。国連の条約では「民間人への攻撃は禁止さ
れている」が、兵士への攻撃は禁止されていない。しかし、
白リン弾が残虐な兵器である以上、すべての戦争で禁止さ
れるべきではなかろうか。
 最後に、白リン弾は強いニンニクの匂いがするという。
また、被弾した場合は、衣服をすぐに脱ぎ捨てることが大
事だという。さらに水をかけることが大切だといわれている。
皮膚に白リンがついた場合は、冷水にその部位を入れ、ナ
イフの背やピンセットなどで除去しなければならないとい
う。絶対に手で触れないことが大事だという。さらに、白
リンで火傷した場合は、食塩水に浸した服をきせることが
必要だという。白リン弾の対策より、そういう武器がなく
なることを祈らざるを得ない。

(参照)
「燃える雨、白燐弾」
 飯田良助氏HP

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