第二次安倍内閣がスタートした。この内閣の課題は三つある。
経済、外交、右傾化である。この三つは別々の問題ではなく、密
接に関連しているので、いずれも両刃の剣の観を呈している。
①経済。
アベクミクスは借金によるバラマキである。日本が得た利益によって得た金でした政策ではない。輪転機で印刷した金である。バラマキ政策によって景気がよくなるのは当たり前のことであり、それも一時的なことである。また、その利益を受けたのは一部のスーパーゼネコンとその傘下の企業だけである。単に国の借金が増えただけにすぎない。その結果、一時的に建設資材は値上がりしたが、アベノミクスと関係のない民需はさほど伸びず、建設資材は値下げ傾向にあると云われている。また、来年10月から消費を10%にするか、どうか論議されているが、もしも実行されれば大不況の時代に突入することになるだろう。すでに一昨年の6月の株の大暴落で個人投資家が大損しており、すでにアベノミクスは失敗していたと思われる。最近では地方再生を目標に掲げているが非常に困難であろう。依然としてデフレ脱却の光が見えてこないのが現状である。脱却の芯になる具体策は何もない漠然としたものだからである。
②外交
安倍首相はこれまでの首相に例がないくらい諸外国を飛び回っている。隣国の中国と韓国と不仲な分、他の諸国の理解を得ようと必死
である。しかし、隣国と不仲なままで、遠方の諸国との外交を発展させても大した意味はない。隣国との平和外交が基本なはずである。先の大戦時の中国、韓国などに対する侵略政策を率直に反省し、謝罪すれば仲良くなれるのである。単純なことではなかろうか。人間としての度量が試されているのである。
しかし、安倍首相は自由と民主主義という「世界のレジームからの脱却」を掲げている。戦前の日本の非を一切認めないということでもあろう。これではいつまでも大戦の傷を日本国民は背負わざるを得ない。レジームを認めず、日本独自の道を歩むとすれば、ナチスの蛮行をも肯定することになる。米国ばかりでなく世界中を敵に回すことになるであろう。
戦後、一貫してきた平和外交を捨てれば、日本の未来はない、と云わざるを得ない。
③右傾化
教育改革、特定秘密保護法、集団的自衛権等はすべて右傾化現象である。戦前の軍国主義は旧文部省が先導したのである。幼少期から愛国教育を徹底した。たとえば桜の散り際のよさと、戦争における犠牲の精神を美化し徹底的に教えたのである。今日(9月10日)の北海道新聞によれば、集団的自衛権の地理的制約を撤廃する動きがあると報じている。目的は、日本と中東を結ぶシーレーン(海上交通路)の確保にあるといわれる。しかし、中東にまで集団的自衛権を拡大すれば、結果的に日本は中東の人々から敵として憎まれることになりかねない。これは大変なことを意味する。たとえば、日本の中でテロが起きる可能性を否定できなくなる。また、日本人がイスラム圏各国で拉致され殺害される可能性も出てこよう。特に自衛隊員の犠牲者が出ることはまぬかれないであろう。これは明らかに憲法違反である。安倍政権は衆参両院の多数を握っているからそういう発想が生まれてくるのであろう。そんなに自信があるならば、憲法改正を提起すればいいことである。それをしないというのは自信がないからではなかろうか。集団的自衛権というのであれば、せいぜい国連軍(将来できるとすれば)に協力するのが限度であろう。たとえ全面戦争をして勝ったとしても、中国や韓国や北朝鮮などの隣国を支配することなど絶対に不可能である。その逆も不可能である。国際世論が許さないからである。そう考えれば、右傾化の目的は何なのであろうか。世界のレジームからの脱却の目的とは何なのであろうか。想像不可能である。
④その他の懸念事項
安倍首相は自然災害に対する国土強靭化を主張している。自然災害が強大化し被害も大きくなっているので強靭化の対策は当然のことである。しかし、その具体策は生ぬるい。まだ温暖化に対する認識が甘いからであろう。野僧が5冊の本で示している温暖化の恐怖の現象はすでに現実化している。まだまだ温暖化による自然災害は強大化するのは確実である。したがって自然災害からの復興費は年々巨大化するのも確実である。たとえば、秒速60m以上の台風や竜巻に襲われれば、屋外に設置されている工業用プラントは吹き飛ばされて壊滅状態となる可能性がある。さらには小石などが銃弾のように飛び野外の牛や羊などの動物が全滅する可能性もある。また高温障害も深刻で、野菜や穀物の立ち枯れや病害虫の発生、疫病の多発など数え上げれば枚挙にいとまがない状態となるであろう。最終的には災害復興費は1円も出せない状態となるだろう。その対策の一つとして、炭坑や鉱山などの廃坑、あるいは鉄道の廃線されたトンネルの中を有効利用できるはずる。それらの廃坑は現在見向きもされていない。しかし、それらの廃坑こそ宝の山であることを誰もわかっていない。たとえば、水耕栽培などは地上に強固な建物をわざわざ作る必要はない。また会社の社屋を外に作らなければならないという理由もない。それらは屋外に作らなくとも、廃坑やトンネルの中でも十分に利用できるはずである。地震はともかくとして、何よりも自然災害に強いという利点がある。このように思考の転換で生き延びる方法はあるはずである。トンネルや廃坑を再利用する技術は日本の得意分野といえよう。それらの発想がこれからの政治家に求められることに間違いはない。
一方、原発の存続も廃止もどちらも地獄といえよう。廃止すればその費用は莫大なものとなる。その費用を国が出すのか、電力会社が出すのか結論は出ていない。存続するにしても、事故が発生して莫大な保障費用をどちらが出すのかも結論がでていない。原発は進も地獄、退くも地獄といえよう。小渕経産相は夜も眠れない状態になるかも知れない。地熱のマグマ発電に真剣に取り組む時期にきている。
さらに、株価や為替相場、国債などの暴落の危機がいつくるのかもわからない。1000兆円以上という負債を抱えたままの日本経済は本当にデフレから脱出できるのか困難な状況にあることに変わりはない。今後、誰が首相になっても安眠できる状況にない。