今週の法話

法華宗北海寺住職-二王院観成による仏教用語と法話集です。毎週水曜日に更新いたします。

検察大阪特捜幹部の逮捕と死刑制度の関連

2010-10-04 21:29:35 | 幸福の追求
 連日のように大阪地検の特捜前幹部の逮捕に関する報道がなされている。
そもそもエリ-ト官僚である厚生労働省の元局長の逮捕・起訴事件に無罪
判決が出て、控訴も断念された。それにともなう検察の証拠偽造、改ざん、
隠蔽等による逮捕である。しかも特捜幹部の逮捕は前代未聞のことである。
いわゆる見込み捜査が大問題となっている。
 しかし、見込み捜査は今に始まったことではない。古来から官憲は見込
み捜査の一手段として石攻めなどの拷問を常用してきた。それどころか、
国家体制に邪魔な思想の人達を追放するために架空のねつ造事件を惹起し、
死刑等に追いやってきた。大逆事件が代表的なものである。さらには、政
敵追放手段としても同様の方法が取られてきたのは周知の事実である。い
ずれにしても巨大権力による冤罪から一市民が逃れることは、ほぼ不可能
だったといえよう。日本の歴史でどの位の人達が死地に追いやられたので
あろうか。さらには世界中となると数え切れないのではなかろうか。
 ところでブッダはインドの迦毘羅衛国のカピラ城主の淨飯王の王子とし
て生まれた。29才で出家するまで王政をつぶさに見聞したはずである。
その間、冤罪に近い事例も見てきたはずである。結果として、無罪の人を
死刑に処する不条理を心痛したこともあったものと推測される。このよう
な冤罪事件の惹起を防ぐのは不可能と考えたブッダは死刑を否定した一因
ではなかろうか。この点に関しブッダは次のように説いている。「古の王
に順へかし。刑戮を行ずるなかれ」。「王はまるで蛇のようなものである。
かれらが怒ったときには、人民に罰を加えることがある。故にかれらを怒
らせぬようにして、己の生命を守れかし」と諭している。「善を求めて出
家した」ブッダは冤罪に対する贖罪の意味もあったのかも知れない。
 人類は進化しているはずである。見込み捜査や証拠偽装などによる冤罪
を根絶する契機として今回の検察幹部の逮捕を教訓とすべきであろう。人
類はもとより、自分や、自分の肉親が冤罪によって受ける悲劇を想像した
だけでも身の毛がよだつ。死刑制度は廃止すべきである。それと同時に、
捜査などの可視化の論議は必要ではなかろうか。