今週の法話

法華宗北海寺住職-二王院観成による仏教用語と法話集です。毎週水曜日に更新いたします。

中国副首相の帰国と反省なき日本政府の無神経

2005-05-26 17:51:47 | 戦争の加害者責任と被害者意識
 「妊婦を捕まえてきて、銃剣で腹を切り裂き、
  胎児を取り出した」。
 「数人で女性を強姦した。強姦された女性は喜
  ぶ」。
 あなたの家族の誰かが、このようにされたら、
あなたは許せるだろうか。これは日本軍が中国で
してきた実話である。悪行の限りを尽くした日本
兵は「鬼」といって中国の人々から恐れられたの
である。
 口先だけで先の大戦を反省しているかのような
ことを言いながら、戦争責任者を祀る靖国神社に
参拝し、歴史を歪曲した教科書を認める文科省(
日本政府)の実態は、二枚舌政治、欺瞞政治と中
国に受け取られているのであろう。だから、「実
際の行動で示せ」と中国から追求されるのである。
 また、小泉首相は、「二度と戦争をしないため
」に靖国神社に参拝する、といっているが、相反
する言動である。一方では戦争責任者を崇拝賛美
し、かた一方では平和を説くようなものである。
そんな欺瞞性を嗅ぎ取る臭覚を、戦争被害国が持
っていないとでも思っているのだろうか。
 上記の二例の実話は、元日本兵として出兵した
仏教僧侶から、約25年前に私が直接聞いたもの
である。いわゆる体験談である。ただし、妊婦の
腹を切り開いたのは誰だったのかは定かでない。
しかし、少なくともそのような行為を止めるよう
に訴えるべきだったのではなかろうか。その僧侶
が何宗であるかは、諸氏の推測に任せよう。
 「殺すな、殺させるな」という不殺生戒を第一
にかかげる仏教の僧侶から、このような話を聞か
されるとは思いもしなかった。その時、このよう
な僧侶がいたのかと、しげしげとその住職を見つ
めたことを今でもはっきり覚えている。と同時に、
この人には仏教信仰というものが、本当にあるの
だろうかという疑問がわき起こった。この話だけ
は書きたくなかった。身内の恥を公表するような
ことはしたくなかった。
 しかし、戦争被害国である中国、韓国、シンガ
ポールなどから、いつまでたっても日本攻撃が止
まないのは、日本政府に責任がある。日本は他国
であるアジアの近隣諸国に勝手に出兵させたので
ある。それを侵略という。それを都合良く解釈し
て真摯に反省しないから、戦争被害国である近隣
諸国は怒るのである。歴代の大臣が、先の大戦に
関する発言で失脚したのか、改めて数え直すべき
ではなかろうか。
 靖国参拝を「他国は干渉すべきではない」(首
相発言。5月16日)。
 靖国参拝に対する中国の対応に対して、「内政
干渉だ」といってる人もいる、と発言して中国側
から猛反発されたと報じられた(訪中時の自民党
幹事長発言)読売新聞(5月24日付)。
 これらの発言は、戦争被害国からすれば許され
ざるものであろう。戦争加害を無視した無神経な
発言だからである。
 ところで、先の大戦を誤りだったと思っている
仏教僧侶は少数派である。中には「靖国神社のど
こが悪いのか」と堂々と発言する僧侶までいる。
そういう僧侶に聞きたい。「殺すな、殺させるな
」という仏教の戒律は間違いなのか、と。このよ
うに、仏教僧侶として闊歩しているが、仏教の根
本信仰を何ら持たない僧侶が多数をしめている現
実は嘆かわしい。
 仏教で殺生を認める例外事項は二つ。一つは、
他国が侵略した時に、撃退する場合。いま一つは、
善良な市民を人質として取り、そのうちの何人か
が殺され、残りの人質の生命が危険にさらされた
時である。
 中国の呉副首相の突然の帰国は、経済界にも飛
び火する可能性が出てきた。なぜなら、呉副首相
の突然の帰国は「外交上、失礼なこと」、と経済
同友会の代表幹事が批判しているからである。
 中国は「失礼」を承知の上で、小泉首相との会
談をキャンセルしたのであろう。大国中国を甘く
みていると、大変なことになるであろう。