今週の法話

法華宗北海寺住職-二王院観成による仏教用語と法話集です。毎週水曜日に更新いたします。

功利主義から逃れられない人類

2009-06-25 00:52:12 | 幸福の追求
 「株反落9,500円」のタイトルが新聞の
経済面を飾る(6月24日、朝刊)。サブプラ
イムローン関連の金融商品で大損害を受けた経
済界は、その損害を取り戻そうと必死である。
その気持ちは十分に理解できる。年金基金など
の運用に失敗した分を取り戻さなければ、組織
的な崩壊に繋がりかねないからである。それは
ギャンブルにはまっていく人達に似ている。今
度こそ儲けようとして、負け続けるようなもの
である。
 元を質せば投資意欲は、もっと儲けたいとい
う功利主義であろう。しかし、上には上がある
もので、その人間心理を十分に分析し、一連の
動きをコントロールしている最上級の功利主義
の経済軍団がいるはずである。
 たとえば、今回のように、サブプライムロー
ンに群がって米国に押し寄せた金は7京円に達
する。実質、とれだけの金額が損をしたのか、
合計金額を割り出せない現況であろう。しかし、
その巨額な損害金はどこかに消えたのであろう
か。雲散霧消したのであろうか。そんなことは
ありえない。その損害金の最終的な落ち着き先
はマスコミ報道されていない。損をした分、儲
かっている人物や組織があるはずである。最上
級の功利主義軍団は、「騙されるのはバカだか
らだ」と云っているという。騙される方が悪い、
といわんばかりである。
 株価を高騰させるのは、きわめて簡単である。
数社の株を買いまくれば、株価はすぐに高騰す
る。それを見た人達は、損害金を回収する絶好
の機会が来たと飛びつく。そして、また大損害
する可能性が高い。まさにアリ地獄に落ちたよ
うなものである。その人間心理を上手にコント
ロールしているのが軍団であろう。逆説的には
大多数の投資家はコントロールされていること
に気がついていない。強欲から逃れられないの
であろう。人間の根本的な業である。
 野僧が心配しているのは、手持ちの年金基金
のようなものを、全額損をしなければいいが、
という老婆心から云っているのである。他意は
何もない。
 ブッダは云っている。「自分が愛しいのなら
ば、自分自身で自分をよく守れ」と。

読み応えあった読売の特集「死刑」

2009-06-17 11:58:38 | 幸福の追求
 特集「死刑」(読売新聞)は、4部にわたり
死刑の諸問題を取り上げ、読み応えのある内容
だった。1部は、執行の現実。2部は、被害者
遺族の思い。3部は、極刑選択の重さ。4部は、
償いの意味、であった。死刑廃止論と存置論の
一方に偏ったものではなく、客観的な立場で論
じたもので、両者に問題提起するものだった。
特に被害者遺族の心情に十分配慮したのは良か
った。この特集は、裁判員制度の発足に際して、
国民に喚起をうながしたものであろう。オピニ
オン・リーダーとしての新聞の役割にふさわし
い企画だったといえよう。この特集に限らず、
死刑制度には4つの問題点がある。
 第一に、冤罪の問題がある。無実の人を死刑
に処した後では、いかなる償いもできない。最
近、足利事件で無期懲役刑で服役していた菅家
利和氏が釈放された。19年にわたり地獄の生
活を余儀なくされた。理不尽な話である。野僧
なら、気が狂っていたであろう。人ごとのよう
に考えられやすいが、いつ、自分や家族の人間
がその立場にならざるを得ない可能性はゼロで
はない。いかに科学が発達しても冤罪はなくな
らないのではなかろうか。たとえば、事件現場
の近くを偶然に通りがかり、犯人と間違われて
逮捕されるかも知れない。さらに、官憲の独居
房で自分の毛を拾われ、事件現場に落ちていた
証拠品として提出されて、科学鑑定の結果、D
NAが一致したから犯人に間違いないと云われ
ればどうなるのであろうか。現在の官憲がそこ
までするとは考えられないが、可能性としてな
いわけではないのではなかろうか。このように、
科学の発達が、逆効果になる場合もありうるか
も知れない。いずれにしても、冤罪で犯人にさ
れるようなことがあってはならない。特に、死
刑執行後に冤罪が判明しても、一切の取り返し
ができない。死刑は廃止すべきである。
 第2に、遺族感情の問題がある。遺族として
は、極刑を望む方が多い。当然であろう。そし
て、犯人が死刑に処されると一応、ほっとする
という。しかし、被害者が帰ってくることはない。
さらに時間が過ぎるとはたしてこれで良かった
のか、どうか迷うという。この点について、フ
ランスの例を報じている。犯罪被害者遺族の支
援団体の代表は、「憎しみからは、何も生まれ
ない」と、訪ねてくる遺族に語りかけるという。
まさに、「怨みは、怨みによって息まず、怨み
をすててこそ息む」というブッダの言葉そのも
ので話すという。また、「仏社会は 命 求め
ず」の立場で対処すると報じている。「国家が
人の生きる権利を奪うことは許されない」、と
強調する、とも報じている。 
 第3に、死刑を廃止して仮釈放された場合、
また凶悪事件を起こすのではないか、という不
安が死刑存置の原因の一つとなっている。たし
かにそのような例があったのは事実である。し
かし、一生監獄から出られない無期懲役刑を新
設すれば、その不安は解決されるはずである。
 第4に、人の命の尊厳を日本は勿論のこと、
全世界の人々が確認することが重要である。凶
悪犯は殺してもかまわない、という差別をして
いる間は殺人や戦争はなくならない。たしかに、
死刑を廃止しても凶悪事件が減るわけではない。
しかし、全世界が学校教育などで人間を殺すこ
とが悪であることを徹底して教えれば、世界は
もっと明るいものとなるはずである。絶対平和
の世界を構築するのは、それ以外に方法はない。
ブッダは「殺すな、殺させるな」と説いている。
人間としてしてはならないことの第一は、「人
を殺してはならない」ということを全世界の人
々は確認する方策を模索すべきであろう。国連
の死刑廃止の動きに目をそらすべきではない、
と考える。日本は、そんなに低俗な文化国家で
はないはずである。

郵政混乱は利権争いか?

2009-06-10 07:26:21 | 政治
 鳩山総務相と日本郵政の西山社長との混乱は、
簡単な問題ではないと思われる。内容は複雑怪奇
なはずである。西山氏は操り人形の一面性を否定
することはできないのではないか。
 かって中曽根首相時代だったであろうか、国鉄
か電信電話公社の民営化に際し、社長の真藤氏が
逮捕されたことを思い出す。当時、民営化にまつ
わる自民党内の利権争いのスケープゴードになっ
たのが真藤氏だった。悪意のない真藤氏に同情す
る声があった。西川氏も同じではないかと危惧し
ている。
 その後、狡猾な細工がほどこされ、何かあると
野党も巻き込むバラマキ作戦が主流になったので
はなかろうか。自分の党だけじゃない、追及すれ
ばあんたの党も傷つくぞ、という政治体制になっ
てしまったのである。日本社会党が駄目になった
のは自民党のバラマキ作戦が功を奏したといえる。
特に、国対族の金の使い方は、表面化することが
できないくらいだった、といわれている。日本社
会党はアメをなめすぎて虫歯になり、総入れ歯に
なったようなものである。
 当時、赤坂で料亭を開いていた人物を知ってい
た。田中角栄総理と記者団が、翌日の記者会見で
どこまで追及するか、どうかなどを、その料亭で
打ち合わせしたのは事実である。政治とマスコミ
はその程度の関係なのである。
 今回の郵政をめぐる問題も、自民党内の利権争
いの色彩が濃いのではなかろうか。たとえば、簡
保の宿の超格安落札問題の一番の問題点は、その
差額の金が、どこにどう流れるのか、ということ
である。それは、かっての郵政族の動きを見れば
分かるのではなかろうか。与野党が関わっている
のかも知れない。好々爺の西川氏が巻き添えをく
わなければいいが、と心配している。むしろ西川
氏は辞任して余生を楽しむことを進言したい。
 一方の鳩山総務相は、簡保の宿の理不尽な超安
価な落札は、国民に損害を与えるものだと怒って
いる。義憤である。正義感の強い人、という印象
である。国民受けするのは当然である。自民党が
鳩山氏を追放すれば、国民から反発されるのは目
に見えている。間近な選挙を考えれば、それもで
きない。ジレンマの自民党といえよう。
 現在の年金行政に対する国民の怒りを軽く見て
いると与野党逆転という憂き目にあうだろう。国
民の目はザルではない。

今世紀末には毎年GMが世界から150消える

2009-06-02 08:22:14 | 貨幣経済
 米自動車最大手のGMが経営破綻した。3月末
時点の負債総額は16兆4100億円(1728
億ドル)である。約17兆円といってもいいだろ
う。
 期を同じくするように二日前の読売新聞(5月
30日朝刊)は、今世紀末には日本で毎年17兆
円の温暖化被害が出ると報じた。これは国立環境
研究所や茨城大学など国内14の研究機関が試算
した結果を29日発表したからである。
 ただし、3つのケースで試算している。(1)
世界中で温暖化対策が全く取られない場合、毎年
17兆円の被害が出る。(2)一定の対策を進め
た場合、毎年13兆円の被害が出る。(3)対策
を大幅に強化した場合、毎年11兆円の被害が出
ると発表している。これは日本だけの毎年の被害
額である。
 これをもとに世界中の被害額を計算すると、世
界中の約200ケ国の内、150ケ国として計算
すれば、(1)の場合、約2550兆円。(2)
の場合、約1950兆円。(3)の場合、約16
50兆円 の被害が毎年出ることになる。いずれ
にしても、GM社規模の大企業が世界中から毎年
150社消えることになる。
 これが貨幣経済崩壊のプロセスである。日本の
経済界は環境指数を無視するかのようなニューア
ンスを発しているが、環境劣化の現実を知ろうと
しないからである。無知よりも悪い。
 このまま行けば、人類は間違いなく滅亡する。
マネーゲームを夢想する余裕はもう人類にはない。
恐らく2050年頃には世界中で大恐怖を体験す
ることになるだろう。世紀末の恐怖は突然やって
来るわけではない。
 現在でも、ツバルなどの小海洋国は島民全滅の
危機にある。淡水化などの機器や援助より、安全
な他国に移住することを真剣に検討すべきである。
いつ高潮などで島民絶滅という現象が起こっても
不思議でない状況を正視すべきである。