今週の法話

法華宗北海寺住職-二王院観成による仏教用語と法話集です。毎週水曜日に更新いたします。

党首、老後保障どちらが切り出すか?

2009-05-28 09:23:38 | 幸福の追求
 昨27日、自民、麻生首相と民主、鳩山代表が党首
討論した。印象としては、どちらも具体論に欠け、実
のない討論だったといえよう。これでは優劣のつけよ
うがない。
 鳩山代表は、「国民が最も不安におもっていること
」、「友愛社会の建設」、「麻生政権は官僚主導の政
権だ」、と迫っても、その具体的な事例を明確にして
追及しなければ、国民に対する説得力がない。
 麻生首相は、国民の政権交代願望の原因がわかって
いないのではないか。何ら反省することはない、と思
っているのではないのだろうか。これまでの自民党政
治に国民は納得していると、自画自賛しているとしか
思えない。
 現在、国民の一番の不安は老後の生活不安である。
そのことを両者ともに分かっていない。一昔前までは、
物価指数に比例して、毎年、年金はスライドしていた
のである。それも国民の楽しみの一つだった、と思わ
れる。厚生年金をもらっていた父母の一喜一憂を思い
出す。それが今では年金額は据え置かれ、その上、年
金に税金が課されるようになった。これは厚生省の高
級官僚の天をも恐れぬ傲慢な年金預金運営と自民党内
の利権争いの結果と推測される。そのことを国民は怒
っているのである。そのことを民主党は追及すると同
時に、老後保障政策を提示すべきであろう。一方の自
民党も、老後の安心を保障する政策を打ち出すべきで
ある。一時的な給付金などで国民が喜ぶから大丈夫と
いう考えは次の衆議院選で通じないだろう。いずれに
しても、どちらの政党が老後保障という国民の最大関
心事を納得させる政策を打ち出せるかどうかが、勝敗
を決するだろう。
 また、北朝鮮の核実験等にともなう北東アジアの不
安案件は、日米韓の三国連携と、国際社会の世論を背
景に対処すべきことも明言すべきではなかろうか。そ
の点、自民党の政策は間違っていない。
 国民生活が保障されてこそ日本人としての誇りを持
てるのではなかろうか。

7京円のマネーゲームで何を得た

2009-05-20 04:07:55 | 貨幣経済
 100年に一度の大不況といわれる昨今だが、
その実体が少しずつ明らかになってきた。本欄
で何度も取り上げているように、京(けい)に
近い天文学的な数字の金が米国のサブプライム
ローンに動いたのではないかと指摘した。やは
りその通りだった。
 2008年末のサブプライムローン関連のデ
リバティブ取引残高は700兆ドル、日本円で
7京円であることが判明した。この天文学的な
金が米国に押し寄せたのである。勿論、一攫千
金を夢見た結果である。(NHKスペシャル「マ
ネー資本主義 第2回」5月17日放映参照)
 それにしても、他のマスコミの情報操作はひ
どすぎる。「日本の損害は大したことはない」、
と情報操作してきた。これまでマスコミは、サ
ブプライムローン関連の損害額は世界全体で約
200兆円と報じてきたが、実体はもっと多い
はずである。損害額を隠すということは、何ら
反省していないということを意味している。各
種団体などの貯蓄資金は億単位で大損害が出て
いるはずである。本当の損害額は今後、少しず
つ明らかになるだろう。かってアルゼンチン債
で大損したとき以来の大損害だと思われる。何
ら、先の失敗は参考になっていない。
 さらに、株価暴落による損害を加えると実質
どれだけの損害額なのであろうか。だから、百
年に一度の大不況というのであろう。
 世界には「金がないからタリバンに」なる人
達もいる。戦争や内戦を職業にせざるを得ない
人達のことを考えると、心が痛む。狂気に見え
るマネーゲームをいつまで続けるのだろうか。
 マスコミ報道を吟味する目を養い、自分自身
を守るべきではなかろうか。

謎の天体「ヒミコ」は、中宇宙のクロス現象か?

2009-05-13 11:27:30 | 仏教の宇宙観
 129億年前の初期太古宇宙にあった謎の巨大天体
を日米英の研究チームがすばる望遠鏡などを使って発
見したと報じられた。(読売新聞4月23日夕刊参照)
 現代科学が説く137億年前にビッグバンによって
スタートしたという宇宙の歴史の中で、8億年後とい
うごく初期に巨大天体が存在していたのは説明がつか
ないという。同時代のほかの天体より10倍も大きい
からである。空間的な広がりは5万5000光年、重
さは太陽の400億個分、現在の銀河の平均的な大き
さだという。古代日本の謎の卑弥呼にからめてこの天
体は「ヒミコ」と命名された。
 ところで、大宇宙は底辺(どちらが底辺だか分から
ないが)で繋がっている巨大な双塔の大宇宙図を何か
で見たことがある。すなわち、我々の属している中宇
宙が2つあることになる。しかし、ヒミコのようなラ
イアンアルファ・ブローブは20~30億歳の宇宙で
見つかる。129億年前の宇宙観測は、現在の人類の
観測技術で見ることのできる限界であるという。野僧
の云いたいのは、双塔の大宇宙図がもしも正しいので
あれば、片方の我々の属していない中宇宙は見えない
はずである。すなわち、ビッグバンも、それぞれあっ
て計2回あったのではないか、と云いたいのである。
もしも、その仮説が正しいのであれば、2つの中宇宙
のビッグバンによって中宇宙がクロスして大宇宙が誕
生したのではないかと思えるからである。
 すなわち、今回のヒミコの存在はその中宇宙が結合
する際のクロス状態の一つではないだろうか、と夢想
するからである。もう一方の塔の現象が見えているの
ではないだろうか、という意味である。
 しかし、大宇宙は双塔でも、丸でも、四角でも、三
角でもない。もしもそれらのどれかであれば、その外
側の漆黒のダークマターは何なのであろうか。宇宙で
はないのであろうか。
 いずれにしても、ブッダの宇宙論は現代科学では、
否定も肯定もできないレベルであることに違いはない。

殺人の時効「撤廃」を

2009-05-09 04:04:40 | 宗教と罪悪感
 殺人の時効が今夏最大の話題になりそうである。法務省
が今年1月、殺人の時効の見直しの勉強会を作り、夏に結
論を出す方向で議論を進めているからである。
 殺人事件の時効は15年であるが、これまでも殺人事件
の時効に疑問を呈する議論はあった。特に、被害者の遺族
から「逃げ得」は絶対に「許せない」という強い思いがあ
る。最愛の肉親などを失った遺族の心情は、誰しも納得で
きることである。むしろ遺族の思いを否定することは不可
能なことである。
 その遺族の思いを実現した損害賠償事件に対する最高裁
の判決が先月の4月28日にあったのは記憶に新しいこと
である。1978年に東京足立区立小の女性教諭・石川千
代子さん(当時29才)を殺害して自宅の床下に埋め、殺
人罪の時効の成立した2004年に自首した元警備員の男
(73)に遺族である弟の憲さんが損害賠償を求めたもの
である。最高裁は4255万円の支払いを命じた2審・東
京高裁の判決を支持し、確定した。提訴してから4年が経
っている。これまでに犯人からの謝罪はなく、「逃げ得を
許すような法律に正義はない」、と憲さんは今後、除斥期
間や時効を見直す活動に参加する考えだと報じられている。
(読売新聞、北海道新聞参照)
 この最高裁の判決などからしても、殺人罪の時効が撤廃
される方向に行くものと推察される。米国は殺人罪の時効
はなく、「逃がさない」、「我々は決してあきらめない」
と遺族と犯人に強いメッセージを発している。特にDNA鑑
定の急速な進歩で、難事件に対しても成果をあげていると
いう。たとえば、22年前に発生して未解決だった刺殺事
件で、事件現場付近で見つかった上着をDNA鑑定したとこ
ろ、被害者と加害者の両者のDNAが検出され、真犯人が逮
捕された。このようにDNA鑑定が捜査技術を向上させ、迷
宮入りした殺人事件を専門に扱う「未解決事件(コール
ドケース)捜査班」が米国各地に相次いで設置されている
と報じられている。元連邦地検検事でロヨラ法科大学のロ
ーリー・レビンソン教授は「DNAは有力な証拠になる。
凶悪事件の犯人は時効で許すべきではない」と語る。米国
の50州のうち33州は殺人以外の放火などでも時効を認
めていない。(読売新聞。5月7日朝刊参照)
 それにしても平和好きの日本で死刑存置派が世論調査で
多数を占めるのは意外なことである。その原因を考えると、
刑期を終えて出所すると、再び凶悪事件を起こされてはか
なわない、という思いが強いようである。しかし、一生、
刑務所から出られないというふうに刑法改正すれば解決で
きる問題である。また、時効の撤廃も死刑の存廃論議に進
展し、廃止論に傾注する一助になるのかもしれないと期待
している。
 ところで、死刑は公務員による残虐な刑罰を禁止してい
る憲法との規定(36条)との関係で問題となったことが
ある。其のとき最高裁は、絞首刑は残虐な刑罰ではないと
いう判断を下したことがある。しかし、国連の死刑廃止国
条約の関係もあり、批准など今後の課題の一つでもある。
 ブッダは、「悪人を変化し治めて、みな仏道に向わしむ」
として教育刑の立場をとっている。また、「たとえ極悪人
に対しても、利益をなそうとする心を起こすべし」と寛刑
主義を説いている。しかし、時効にたいする具体的な内容
は説かれていないと思われる。現在のところ、それに類す
る仏典は見いだせないからである。