今週の法話

法華宗北海寺住職-二王院観成による仏教用語と法話集です。毎週水曜日に更新いたします。

「さらば浪費社会」、誰が対象なのか?

2005-01-28 22:06:30 | Weblog
 朝日新聞は「さらば浪費社会」を連載している。趣旨も内容も
ほぼ納得できるものである。しかし、浪費を控えるのは誰なので
あろうか。開発途上国の人なのか、先進国の人を対象としている
のであろうか。それとも両者を対象としているのだろうか。結局、
これらの両者から拒否されるだけである。いずれにしても、人類
全体の危機意識となってない点が一番の問題なのである。すなわ
ち、環境破壊の解決法が、人類全体の立場で論じられていない。
はっきりいえば、実現性のない理想論と、自分勝手なことを互い
に主張し、解決法の実行を相手に押しつけているのである。いわ
ば、いがみ合いながら自分達の墓穴を掘っているようなものであ
る。「命あっての物種」という諺を想起すべきである。
 ところで、人類がまき散らした炭素は、2000年の段階で約
42兆トンといわれる。(地球白書2001~02参照)。その
炭素が大気圏などに滞留し、循環している。また、現在、毎年約
200億トンの炭酸ガスが排出されている。今後、さらに増える
だろう。これが温暖化の最大の原因である。
 したがって、現時点での環境破壊の問題点は、大旨二つある。
一つは、温暖化の原因の一つである大気圏などに滞留している炭
酸ガスなどを消滅させる技術開発ができるか、という問題である。
 今一つは、炭酸ガスなどを今後できるだけ出さないような技術
革新をできるか、という問題である。
 どちらか一つを解決すれば安心というわけにはいかない。問題
点を正しく認識すべきである。現在でさえ、環境破壊の影響を受
けているからである。
 具体的な温暖化の克服法にしても、各国の政治家、企業の良心、
善意の民意などに期待するのは限度がある。世界の経済システム
がそれらの善意を許さないからである。すなわち利潤追求第一主
義の現在の世界のシステムを変えない限り、環境破壊をクリアす
る実現可能な方法論は生まれてこない。空論にひたっている時間
は、もはやない。空論の虚しさをパニックが教えてくれるだろう。
 第二の問題点の解決策の一つとして、ハイブリットカーと燃料
電池車があげられている。しかし、両者ともに不完全な一面があ
る。ハイブリットカーは、エンジンと電力モーターを組み合わせ
たものである。問題点は、化石燃料を使うことに変わりはない。
炭酸ガスの排出量の程度問題である。今一つは、充電するのに電
力が必要だから原子力発電を増やそう、といっても世界の人々か
ら同意されないだろう。燃料電池車(水素自動車)の問題点は、
水素を取り出す時に、化石燃料を使っている。これまた原子力利
用できないだろう。また、水素を取り出すコストが高いため実用
化は簡単ではない。ガソリンスタンドの代わりに水素スタンドを
整備するにも年月がかかる。水素自動車の世界的な実用化は20
40年ころになりそうである。
 40年頃になれば、人類は相当なダメージを受けているだろう。
気温上昇などによる影響で、人体や農作物は危機に瀕する状況下
に陥るかも知れない。楽観的な予測は禁物である。したがって、 
ハイブリットカーと燃料電池車が環境破壊の根本解決法の一つと
は、現時点では断定できない。貨幣経済でない社会ならば、コス
トは問題とはならない。資源さえあれば早急に実現できることで
ある。
 実現不可能な空論にひたっていればいるほど、人類の滅亡時期
を早めることを悟るべきである。

レスターブラウン氏の「地球の未来は楽観的」(朝日新聞)に疑問を呈する

2005-01-13 00:25:53 | メディア
 朝日新聞は今年の1月1日から10回にわたって、「未来を
語る」を特集した。毎回、各界のパーソナリティと記者との問
答形式をとった。結果的には、環境問題などで切迫した状況判
断をした人は一人もいなかった。また、人類の終末を予測した
人もいなかった。当然といえば当然の結末である。朝日は、環
境破壊による人類の終末を説くパーソナリティを登場させなか
ったからである。人選は朝日がしたのである。また、各パーソ
ナリティの考え方も最初から分かった上での人選である。はっ
きり言えば、朝日の考え方に近いパーソナリティだけ登場させ、
それをもってオピニオン・リーダーとしての朝日の論調の正当
性(?)と権威を誇示するのが目的だったのであろう。これで
は「未来を語る」ではなく、「未来を押しつける」ものといえ
よう。
 この朝日のやり方は公正なものとはいえない。たとえば、環
境問題に早くから警鐘を鳴らし続けてきた食生態学者の西丸震
哉氏などを登場させて読者に判断させるべきだったのである。
 かっても今も朝日は死刑廃止の立場のはずである。これは評
価されてしかるべきである。一方、かって「世界連邦」に関す
る世界のパーソナリティの討論を特集したことがある。これも
世界連邦の実現は「不可能に近い」という意見を持つパーソナ
リティばかり登場させた。その結果かどうかは分からないが、
一つの世界政府を造ろうという世界連邦運動を方向転換させた
ことがある。現在の世界連邦運動は、「一つの世界政府を造る
理想を放棄」し、「現在の国連組織の拡大した組織」程度のも
のと後退した理想なき組織になってしまつた。世界連邦運動を
ねじ曲げる結果に導いたのである。これは日本だけの問題では
なく世界的な動きの結果である。したがって、朝日だけの責任
ではないのかもしれない。しかし、朝日も世界的なメディア支
配を受けているのではないかという疑問を抱くのは考えすぎな
のであろうか。
 今一つは、人の声を聞こうとしない欠点を朝日は持っている。
新聞は公共性を持っているのであるから、いろいろな意見を紹
介すべきではなかろうか。その上で、朝日はこう思う、という
態度に徹すべきである。大いなるプライドを持つのは結構なこ
とであるが、間違った方向にリードするのだけは止めてほしい。
後世になって、人類滅亡のA級戦犯のレッテルを貼られる愚挙
だけは避ける報道に徹するべきである。
 2回目(1月3日)に登場したのがレスター・ブラウン氏で
ある。レスター・ブラウン氏は1938年に米国に生まれた。
ハーバード大学で農業などを学び、米国農務省に入る。197
4年、ロックフェラー財団の支援を受けて、世界の環境問題を
分析し、対策を提言するワールドウオッチ研究所を設立する。
1984年「地球白書」を年次刊行物として創刊した。世界の
30の言語に翻訳され刊行されている。続いて1992年には
「地球環境データブック」を刊行し、毎年発刊している。この
両書は「環境問題のバイブル」といわれている。私もこの両書
を参考にしてきた。
 「地球の未来は大丈夫ですか」という記者の質問に、「私は
楽観的だ。ところが現実の出来事はそれをなかなか裏付けてく
れない。残念だ」、と同氏は答えている。
 この記述が本当であるならば、ブラウン氏は真実を答えてい
ないことになる。なぜなら、これまで両書で提示してきた内容
と矛盾するからである。
 たとえば、「地球白書2001~02」の中で、「グリーン
ランドは、その大部分が無人であり、数百年ものあいだの積雪
によって築かれた分厚い氷床に覆われている。・・・2000
年にアメリカの科学者のチームが、巨大なグリーンランドの氷
床が溶融しているのを発見したのは、予期せぬ出来事だった。
メキシコよりも広い面積を覆っているその氷は、地中海の三分
の二を満たせるだけの水に等しい。氷床は、一年で約150億
立法メートルの水を失っていると推定されており、これはすで
にナイル川の年間流水量に達しており、観測されている海面水
位の年間上昇の7%を占めている。サイエンス誌のある論文に
よると、グリーンランドの氷床がすべて溶けてしまったら、海
面水位は7m上昇する。グリーンランドの氷床の溶解は、・・
・人間にとってのその長期的な影響は大きい。ヒマラヤの氷河
から南極大陸まで、地球上のほぼすべての地域で氷は溶融しは
じめてきており、これは、毎年数十億トンもの化石燃料を燃焼
させることに起因する地球の気温上昇の、もっとも衝撃的なサ
インの一つである」と明記している。
(私の反論)
 上記のグリーンランドの氷床の溶解は、単に海面の上昇だけ
が問題ではない。人類の存亡にかかわる重大な問題だけに、あ
えて「釈迦に説法」になるが反論してみよう。ブラウン氏は百
も承知のことであろう。
 大西洋の「熱のベルトコンベア」のことである。ヨーロッパ
北部の都市が凍結を免れているのは、南太平洋の暖かい海流が
アフリカ沖から運ばれてくるからである。これが「熱のベルト
コンベア」といわれる海流である。この海流は大西洋を循環し
ている。しかし、グリーンランドなどの北極圏の温暖化の影響
で、氷が溶けて真水が海に流入するため、海水の塩分濃度が薄
まり、暖流が海底にひずみ込む動きが弱まっている。すなわち、
「熱のベルトコンベア」が止まってしまう危険性が指摘されて
いる。これは人類にとって重大なことを意味している。大西洋
地域だけでなく、地球全体の自然の摂理のバランスが崩壊する
ことを意味するからである。もしも、そうなれば地球全体の自
然環境は全面崩壊することになるだろう。このような予測の元
で、なぜ「地球の未来を楽観視」できるのであろうか。ブラウ
ン氏は真実を語っていない。人類の未来を語るのであれば、真
実を語るべきである。我々は温暖化のことばかり心配している
が、一方で、寒冷化の心配もあるのである。温暖化と寒冷化と
いう奇妙な矛盾も含んでいることも理解すべきである。
 この他にも、気温の上昇、台風、ハリケーン、サイクロンな
どの強大化、オゾンホールによる皮膚ガンの多発化、酸性雨の
濃度が濃くなることによる森林の消滅、食糧難時代の到来、健
全な飲料水の不足、光化学スモッグの拡大等々が心配されてい
る。
 さらには、過去25年の間に、約30の新たな病気が発生し
ている。ブラウン氏は、現代人の体から500種類の化学物質
が検出されるようになったと指摘している。その化学物質が化
学変化、あるいは相乗効果していかなる悪影響を人体に与える
か分からない。さらに、動物に宿主する原因の病気の発生で世
界中がパニックにおちいった。
 いずれにしても「地球白書」と「地球環境データブック」が
指摘している通りに地球も人類も推移している。
 何をもって「地球の未来は楽観できる」とブラウン氏はいっ
ているのであろうか。楽観的な資料とは何なのであろうか。
 今回のブラウン氏の発言を思いやるとき、「ローマクラブ」
を思い出す。、「ローマクラブ」も上記の両書と同じような主
張をしていた。しかし、企業サイドから見ると、極めて都合の
悪い存在になった。企業の資金援助は途絶え、同クラブは開店
休業の状態になった。それと同じ事ではないかと思っている。
 このまま無為無策で人類が過ごすならば、人類の未来は暗黒
である。人類は目を覚ますべきである。これまで朝日新聞を私
は愛読してきた。フアンであるからこそ苦言を呈するのである。
私が同紙に苦言をいわなくなった時は、他紙に変わる時である。
 

イチローは野球の実践哲学者だ

2005-01-04 03:20:59 | 野球
 イチロー選手は米大リーグの年間最多安打数を塗り替えた。
実に爽快な気分である。日本人としての誇りである。災害や
凶悪な事件しか目に飛び込んでこない昨今のマスコミ報道の
中で、爽やかな話題だった。フアンの一人として、これ以上
の喜びはない。
 シスラー選手の年間最多安打数257本を超えて、262
本の安打を打ったのである。84年ぶりの快挙である。
 昨年の年末にNHKは「イチロー4年間の奇跡」を特集し
た。実に面白かった。面白いというより、興味深い話がいく
つか頭に残っている。
 「こまかいこと、それを積み重ねることでしか頂点にいけ
ない」、というイチローの言葉は何の仕事にたずさわる人に
も共通する実践哲学である。「ローマは一日にしてならず」
と同じ意味である。
 「もっと野球が上手くなりたい」という言葉も実に意味深
いものであった。何の仕事であれ、技術であれ、人生であれ、
「死ぬまで勉強」ということであろう。現在の技術で満足し
たら、それ以上の技術向上は望めないからである。
 イチローの話を聞いていると、自分の分析、相手投手の分
析、野球全体の分析を冷静にしている。さらに、その分析を
次に実践で生かしていることに感心させられる。
 「いい結果を出すにも、やられるのも必ず理由がある」、
という思索方法はブッダと同じである。
 イチローは野球界の実践哲学者である。
 今年もイチローの活躍が楽しみである。まず、5年連続の
200本安打を達成するのを楽しみにしている。