「靖国神社の参拝について、安倍晋三首相に『あなたが行っても
政治問題になる。代わりに天皇に参拝をお願いしてもらいたい』」。
(毎日道新聞。2月13日朝刊5面参照)。これは12日の衆議院予算
委員会での維新の会の石原慎太郎共同代表の発言である。
この石原氏の発言は見逃すことはできない。天皇を自分たちの都
合の良いように天皇を利用しようとするもので日本国の国益を損なう
可能性が大だからである。その反対理由を列挙しよう。
① 憲法において天皇は、日本国及び国民統合の象徴として規定され
ている。象徴ということは、日本には自民党、民主党、公明党、共
産党等々の政党がある。それらの諸政党の一つに偏向してはなら
ない、という意味も含まれている。
② 靖国神社は、太平洋戦争肯定派の牙城的な存在である。否定派も
いることを忘れてはならない。靖国の根本問題は太平戦争に対する
肯定派と否定派の論争である。
③ 米国の要人は、「日本の中枢にいる政治家などが時々、太平洋戦
争を肯定し、被侵略国の心情をさかなでする発言を繰り返している」
と指摘している。米国にとっては、韓国と対立するような発言は困る、
という意味であろう。
④ 国家神道の名の下に、終戦までの間に一般宗教も弾圧を受けた。
法華宗も弾圧を受けている。特に、大本教は徹底的な弾圧を受けた。
また創価教育学会(現在の創価学会)は、伊勢神宮の神札を祭るこ
とを拒否したため、治安維持法違反で幹部が逮捕され、初代会長の
牧口常三郎氏が獄死している。
⑤ このように、靖国問題は根の深いものである。かっての国家神道を
知っている人たちにとっては、神社の祭りにも好感を持っていない人
が多いと思われる。
⑥ 戦争で犠牲になった人々を国が祀ることに反対しているのではない。
毎年開催される戦没者の追悼式典のように、宗教色のない施設に
すべきだ、と主張しているのである。
⑦ 日本によって侵略され、肉親を虐殺された中国や韓国、北朝鮮やアジ
ア各国の人々の心の傷みを日本人は忘れるべきではない。立場が逆
だったらと考えれば、それらの国の人々の傷みを理解できるはずであ
る。
このように考えると、天皇陛下に靖国神社へ参拝するべきだ、という
石原発言は日本の国益を損なうものである。また、天皇陛下に新たな苦
痛を与えることになる。そんなことは許されないことである。石原氏の愛国
心とは、天皇陛下を苦しめることを意味しているのであろうか。石原発言
は戦前なら治安維持法違反、不敬罪で監獄で拷問を受けるに等しいもの
であろう。
我々は皇室外交で実をあげている天皇の努力を忘れるべきではない。
また、好々爺の天皇を守らなければならないと考える。