即席の足跡《CURIO DAYS》

毎日の不思議に思ったことを感じるままに。キーワードは、知的?好奇心、生活者発想。観る将棋ファン。線路内人立ち入り研究。

遠野物語と名人戦

2010年04月21日 01時42分05秒 | 将棋
岩手県遠野市での名人戦第2局、始まりました。羽生名人の先手、横歩取り△8五飛対新山崎流の戦いのようです。

さて、長い歴史を誇る名人戦も、岩手県では初めてとのことですね。

風屋さんのいらっしゃる花巻も前から行きたいと思っていたけど、今回の舞台の遠野市もぜひ行ってみたいところのひとつです。
花巻から近いのですね。

最近は、美術館とか、お寺とか、海外対局も含め、地域や対局場のテーマ性も加味されて、将棋の伝統文化の側面を引き立たせようという意図が強く見られます。
新聞社を始め、関係者の方々の工夫、努力の跡がとても目立つように思いますし、一将棋ファンとして感謝しています。
単に素晴らしい内容の熱戦を、ということだけでなく、将棋というものが持ついろいろな要素、文化としての素晴らしい側面をアピールし、地域と一体となって創り上げていくこと。
地域の人たちのニーズや思いも汲み取った上で、お互いにWINWINになれるような仕掛けや演出。
そういう意味で、この舞台での名人戦、なんかいいなあ、と思えるこの第2局です。
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◆「遠野物語」100周年

 遠野市は岩手県の内陸部にある。同県で名人戦の対局が指されるのは初めてだ。

 両対局者や関係者ら一行は19日、東京駅から東北新幹線に乗って新花巻駅で降り、バスで1時間ほど移動して遠野に到着。バスを降りると、地元の人たちの盛大な拍手で出迎えられた。歓迎式典では地域に伝わる「細越獅子踊」が披露され、名人、挑戦者共に「魔よけをされたので、いい将棋が指せると思う」とあいさつした。

 今年は民俗学者柳田国男が「遠野物語」を発表して100周年。遠野の名を全国に広めた名著の意義を再認識しようと、地元は沸いている。前夜祭では語り部の正部家ミヤさん(88)が座敷わらしに関する昔話を披露し、両対局者らは地域に伝わる民話の世界に触れた。

 多くの「伝説」が伝わる土地とあって、前夜祭で三浦八段は「伝説に残る将棋を指したい」と話していた。前例があるとはいえ、1日目から激しい戦いに進んだが、この後、ファンの記憶に後々まで残る攻防が繰り広げられるだろうか。

対局場となっている遠野市のあえりあ遠野は、ザシキワラシや河童(かっぱ)など、柳田国男が1910(明治43)年に発表した「遠野物語」の世界を再現する「とおの昔話村」の近く。立会人も日本将棋連盟東北統括本部長に就任したばかりの島朗(あきら)九段(47)と、東北色の濃い舞台設定になった。
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そして、受け入れ側の地元では、市の関係者、将棋の支部、そして対局場と、それぞれが知恵と汗を出して、熱い思いがいっぱい篭った対応をしてくれているようです。

支える:名人戦 in 遠野/上 ホテル「あえりあ遠野」 /岩手 (毎日jp)

フロント係の新田さんは旅客への気配りが評価されての抜てき。客室での接待は初めてだ。「棋士の方を邪魔しないことを心がけます」。対局者の視野に入らない位置を確認し、物音を抑えた仕草を繰り返した。

 今年1月、市役所から名人戦開催決定が伝えられた。01年の営業開始以来、経験したことのない大イベントだ。「気持ちよく対局に臨んでもらおう」。早速準備が始まった。

 対局室となる大広間の畳と障子の張り替え、部屋割りや食事など、市を通じ他開催経験地の事例を尋ねて参考にした。食事も、対局の緊張をほぐすほか、活力を高めてもらうことなどに腐心。量や味、対局者がその日の調子で選べるよう複数献立を用意する。地元食材を使い遠野の味を楽しめる工夫もした。

支える:名人戦 in 遠野/中 ホテル「あえりあ遠野」 /岩手 (毎日jp)

遠野支部道場にはかつて、50人前後が通った。だが、近年半分以下に減った。10年程前から市と毎月1回、子ども向け将棋教室を開催しているが、思うように増えない。「ゲームなど、面白い物がたくさんあるからね」と苦笑いする。

 頭を抱えていた昨年10月、同連盟東京本部職員で大学の先輩から名人戦誘致を打診された。二つ返事で引き受け、市に立候補を働きかけた。

 開催決定後は、県内の将棋連盟18支部の連絡役として、宿泊先の確保や案内状の作成に追われる。また、前夜祭の準備にも携わる。先日は「参考になれば」と東京都で行われた名人戦第1局を見学に行った。対局者が入場する際の効果音の使い方、立食パーティーのメニューなど、地元で生かせる多くの材料を持ち帰り、市やホテルに提供した。

 「遠野の将棋熱を盛り上げるためにも、必ず成功させたい」と、意気込む。

支える:名人戦 in 遠野/下 ホテル「あえりあ遠野」 /岩手 (毎日jp)

市は今年2月、本田敏秋市長を委員長に「歓迎行事実行委員会」を組織した。事務局の同課は、前夜祭の計画や告知ポスター製作を任された。だが当初、「どうしていいか想像がつかない」と、戸惑いもあったという。

話し合いを繰り返すうちに、「まずは遠野らしい歓迎をしよう」という結論に達した。地元の伝統芸能から、対局の勇ましさにふさわしいと、獅子の面をかぶり激しく舞う「しし踊り」を、発刊100年の「遠野物語」に寄せて地元語り部による「昔話」を、歓迎行事に取り入れた。

 また、奥瀬課長がパソコンで「しし踊り」を背景に、名人と挑戦者の写真を配したポスターのデザインを考案。300枚を刷り、課員総出で市内の商店などに配り歩いた。

 今月に入ってからは期間中の配置や動きについて確認、点検を休日返上で行う。「これを機に全国に遠野を発信したい」。職員一丸となって、その日を待つ。
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政治も経済も何もかも、モチベーションは下がりまくりの現在。
お金のためなんかではなく、こんなにもこの名人戦の成功のために関係者全員が一生懸命になっている。
将棋のためとか、地域のためとか、そんな小さなことでなく、皆が自分のやるべきことを必死で精一杯見えないところでも努力している。
こういう人たちに支えられて、選ばれた二人の棋士の対局が行われている。
素晴らしいではありませんか。

前夜祭で披露された語り部の正部家ミヤさんの昔話に耳を傾ける二人
両対局者の前で披露された「細越獅子踊」

前夜祭での二人の挨拶にも、地元との和やかな触れ合いの様子が伺えます。
名人戦前夜祭 羽生名人あいさつ名人戦前夜祭 羽生名人あいさつ
名人戦前夜祭 三浦八段あいさつ名人戦前夜祭 三浦八段あいさつ

将棋というものと、その土地の持つ歴史・文化・風土。
その二つが融合し、一体となる。
そして、その土地ならではの対局、遠野でしかできない名人戦、という貴重なコンテンツとなり、世界に発信されていく。

武蔵と小次郎の闘いが、巌流島でしかなかったように、
羽生と三浦の第68期名人戦第2局は、あの遠野での戦い、
というように。

将棋の重み、深み、醍醐味というものは、盤上だけのものではない。
シリコンバレーからはるばると梅田望夫さんが駆けつけることも含め、
遠野という土地が持つ長い歴史の中で、一期一会の名人戦の熱い戦いは繰り広げられている。
コメント (3)
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