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悪者によって!?:不意打ち!

(前回の続き⇒)
そして、当日…。
この日は、タイミングに恵まれていたのだろう。
ちょっと片付けに手間取ったが、定時で帰れそうな状況であった。
説明会は、19時からとなり、
その10分前、18時50分から開場しているとあった。
電車の中で、時計を見ると、残念ながら15分ほど遅れそうだった。
気分的には、ちょっと煩わしくもなったが、足を速めていくことにした。
こんな説明会などに参加することは始めてであったもの。
区民センターの会場前で、資料をもらうと、そのまま会場に入った。
50~100人ほどが集められそうなフロアに椅子が並べられ、
それぞれの椅子は、コロナ過とあり、間隔がとられていた。

会場には、40名以上が集まっており、平日であることを考えれば、
かなりの人数にも思える。
スクリーン側には、テーブルが2列で配置されており。
こちら側(住民側)と向き合うようにして、
建設会社か、開発会社の関係者と思われる人物たちが、10名ほど座っている。
すでに説明会は始められており、
正面のスクリーン上へと、プロジェクターでも資料が映し出されていた。
資料図面を見ると、建物は、鉄筋コンクリートの地上20階建てとなり、
住戸だけでなく、大きな集客用のホールまである。
建物の中央部分には機械式駐車場が設けられ、駐車台数は、70台。
20階部分まで機械式駐車場の設備とあれば、かなり大がかりなものとなる。
「まるで、特撮番組(ゴレンジャー)の秘密基地みたいだな」と、
不真面目なことが思いついたが、どこか、“しっくり”としなかった。

資料の作成を行なったと思われる建設会社や設計事務所の詳細はなく、
ただ建物の名称の入った“〇〇建替え計画”としか記されてなかった。
この建物は、現在、老朽化した近隣のマンションの建替えを、
目的としたものとなり。
建設中と、建造後に予想される、歩行者や車輛の通行への影響だけでなく、
建設後、発生すると思われるビル風やテレビ電波などもシミュレーションされ、
どのような影響を与えるかも説明されていった。
この説明通りであるのなら、問題はなさそうだったが、
より詳しい説明を聞く必要もありそうだった。



一通りの説明が終わり、質疑応答の時間となった。
質疑応答の形式は…。
質問者から、1つ1つの質問に応じるものでなく。
1人の質問者に対して、質問や疑問をまとめて聞いて、
それに応じていくものだった。

色々な疑問や理解できていないこともあり。
「さて、何を聞いていくべきだろうか?」と、考えていたところ。
先に、背後の席にいた老人が、声を上げ、マイクが手渡されていた。
老人は、マイクを手にして話し始めたが、
それは、資料を理解できないことへの不満でしかなく。
要領を得ないものだった。
それをスーツ姿の進行役の男性が、質問として、まとめていった。
老人の話は、そのまま(5分ほど)続き、
自分でも、何が言いたいのかを分かっていないようにも見えた。
違和感があった。
大事なことを、見過ごせないようなときであり。
それは、この会場にいる人たちの多くが、同じだとも思っていた。
話の途中であったが、質問の意思を示す必要もあり、
黙って、手を上げていた。
正直、仕事帰りで、かなり疲労しており。
いつまでも、老人(ジジイ)の戯言(タワゴト)など聞いていられなかった。
老人は、隣にいた家族と思われる人物に促されて、話を終えた。



こちらへの回答が終わると、また別の人が、手を上げていた。
40~50代ほどの男性で、会社帰りなのか?スーツ姿だった。
どうやら、ある程度、事前に調べたうえでの、質問のようだった。
「こちらの建物は、この地域にあるマンションの老朽化から、
周辺環境と居住者の方々のことを考え、
建替えが行われるとのことですが、現在、居住されている方は、
どれくらいの人数になられるのでしょうか?」

質問として、問題があるとは思われなかったが、
妙な反応があった。
「それは、現在、住んでいる方のプライバシーもあり、お答えできません」
「分かりましたが、現在の居住者の方々によって、
この住戸部が、すべて埋まってしまうという訳ではありませんよね」
「このような20階にまで機械式駐車場が設けられた建物が、
本当に、周辺環境を考えてのものなのでしょうか?」

ある種の緊張感が、会場内に満ちていくこととなった。
営利企業が、正しい社会規範や善意のもとで動いている。
そんな幻想を、まだ自分が持っていたことにも気付き、
それに動揺もしていた。

「えっと、ですね。今、その質問に答えられる者は、こちらにはいません」
この回答に、会場内の人たちの気配も変化することとなった。
「それでしたら、“いつ”なら、お答えいただけますか?」
当然の質問だったが…。
「それは、現在、考えておりません」とのことだった。
(続く⇒)

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