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ただ道なりに


街を歩いていると、時には、おかしなことに出会う。
それほど、人が混みあっているわけでもない晴れた日の街中。
携帯電話を片手にしている黒いカーディガンを羽織った女性がいた。
「え?どこ?どこなの?」
「いえ、わたしの姿は、以前のまま、太ったままです・・・」
どうやら、古い友人との待ち合わせのようだ。
”太ったまま”・・・、正直なまでの自己表現が、イヤな印象を感じさせなかった。
落ち着かなげに、周囲をグルグルと見回している姿を見て、
一瞬、同情したが、声をかけるのも不自然なので、そのまま道を歩いていく。
道なりに、30メートルほど歩いていく。
すると、同じ年頃の女性が、道路の隅で、携帯電話に話し込んでいる。
「ええ、近くに交差点が見えるのね」
「改札を出て、2つ目の信号機の側なのね・・・」
この人が、先ほどの人の話し相手かな?
絵本の1コマにでも、ありそうな話・・・でも、現実に目の前で展開されると、
対応に困ってしまう。
”声をかけてみるかな?”
”いや、やめようかな?”
ほんの少し考えてから、声をかけた。
「あの、もしかして?」
「お友達の方が、近くで迷われているのではありませんか?」
目は、口ほどに物を言う・・・と言うけど。
このとき女性の表情は、”なんで知っているの?”というところ。
・・・でも、
”なんで”と思われても、ねぇ。
「この先で、携帯電話をもった黒いカーディガンの方がおられましたけど、
お友達ではありませんか?」
女性の視点が、歩道の先へと移動した。
黒いカーディガン姿の”太った”女性の姿を見つけると、大きく手を振っていた。
それを見てから、また道なりに歩いていく。
まあ、これだけの話。




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