昨夜のNHKスペシャルの「沸騰都市 サンパウロ 富豪は空を飛ぶ」を見ました。
ブラジルは私の最初の海外出張の国だったので、見ながら色々当時のことを思いだしました。(青字は番組の内容、黒字は私の感想です)
[報道の概要]
ブラジル経済の中心地であるサンパウロには、ヘリコプターを車代わりに使う「空飛ぶ富豪」が出現している。誘拐や強盗の危険、交通渋滞を避けるためである。「空飛ぶ富豪」たちの中でも増えているのが、バイオ燃料エタノールで財を成した人たちである。広大な農地から収穫されるサトウキビを原料としたエタノールは、ブラジルの自動車の増加とともに、売り上げを伸ばしている。空飛ぶエタノール富豪のビジネスを追う。(NHKの番組案内より)
・交通渋滞が起こった理由はブラジルの急激な発展で、今や中流階級が全国民の3分の1に達し自動車の数が激増したのに、経済の中心都市のサンパウロのインフラの整備が間に合わなかったためだ。
新聞によればブラジルでは中間層の増加にに伴う消費拡大で自動車の販売台数が急増し、世界5位の市場になっているそうです。
[世情不安と経済の活況]
・誘拐や強盗の危険を避けるために、今自動車を防弾化するのが流行っている。
私が訪れた約40年位前はブラジルのは貧富の差が激しく、街の中心部は高層マンションと黒と白の石で舗装され道路、その直ぐ隣の貧民街ではは雨水の流れに出来た溝が走る赤土丸出し道で、人々は工事用で残った水道から水を盗んでいました。
それでも当時は世情は落ち着いて居ましたので、赴任直後でまだ日焼けしていなかったころはバス代をちょろまかされりしていましたが夜間の外出も安全でした。
その後超インフレで紙幣が紙屑同然になったりして世情が不安になり、約15年前に出張していたときのサンパウロでは、信号で停車したとき子供たちが車の掃除を理由に寄ってくるがトラブルになるので絶対に窓を開けないことと注意されていました。
今でも急激な成長で社会格差や番組で言うように世情不安の要素は当然残っていると思います。
[エタノール開発と金融・経済危機]
・ブラジルは経済は数々の困難を乗り越えた来たが、石油の枯渇による価格上昇で、エタノール産業が伸びてリコプターで飛び回るような富豪が現れた。
そして投機マネーによる石油価格暴騰で、一気に世界の注目を浴びるようになった。
・ブラジル全体としても農業や資源などを武器にBricsの一員となった。
・今回の米国発の金融・経済危機でブラジルも大きな影響を受けている。
然し大統領は依然として強気で、エタノール産業育成のためと、内需拡大のために、自動車の販売のテコ入れを図っている。
製品の輸入や出荷に課す「工業製品税」の内1000CC迄の車は7%から0%まで引き下げたそうです。
40年前、私どもが住んでいた高層マンションの周辺を、ブラジルでは私が赴任した当時からエタノールを自動車用燃料とした現地産のフォルクスワーゲンのがオートバイのような轟音で走り廻っていました。
つまり今のブラジルのエタノール開発による経済の活況は40年以上前からの努力の成果が実ったものです。
ブラジルの内需拡大政策は日本と違って国民は自動車など購買意欲がまだまだ盛んだからですが、日本では極端に言えばもう買うものがないのです。
[頑張るブラジルと日本]
・大統領はこの危機を乗り越えるために国民に「働け」、「働け」そして得た金を消費に回すように国民に呼びかけている。
月給が7万円の妻と子供二人を持つ男性は、念願の車を月賦で購入して、そのためにも働かなくてはと張り切ったいた。
日本では今回の派遣切りにあった人達も、政府や地方自治体の援助を受けながらも、介護の仕事を避けるなど、より良い条件の仕事を探しているそうです。
その理由も良く判りますが、ブラジル人達との考え方の違いは、「一億総中流意識」を持った経験の記憶がまだ抜けない日本人、数々の苦しい経験をしたブラジルの人達の「ハングリー精神」の有無にあるような気がします。
[ブラジル政府のビジョンと日本]
・ブラジルでは官民協力してエタノール燃料により世界のリーダーシップを取ろうとしている。
その中心は貧困の喘ぐアフリカ諸国だ。
日本の場合は立場がまったく逆ですが、エネルギー問題は絶対に避けられない日本の将来を脅かす大問題なのに、これと言ったビジョンが示されないのは何故でしょう。
[ヘリコプターの中での富豪のコメント]
他の国は金融資本を当てにして成長してきたが、我々は国の資源と生産力で富を積んできたのだ。
この問題も資源のない日本はブラジルと真反対ですが、グローバル化の名の元で、余りにも外国の資本を当てにし、その要求で企業は株主のもの、長期的視野の経営より、短期の利益の追求など、日本の国情や日本人の心情に合わない方に、余りにも傾き過ぎていたのではないでしょうか。
[羨ましい航空機の製造]
・ブラジルを支えるもう一つの大きな産業は手仕事による航空機の製造だ。
これは番組の最後につけ加えた感じでしたが、これも日本人の私としては大きなショックでした。
最近の報道ではJALはブラジルから中型のジェット機を購入し、今後もさらに数十機の購入の計画をしているそうです。
私がブラジル出張中に日本で初めて作られたYS11機がブラジルで山腹に激突のとう言う大事故がありました。
何故かYS11以後の日本の飛行機の開発は止まってしまっています。
国民の多くは自動車の開発で、米国に追いついたころ、自動車開発・製造のノウハウを活かして次に進むのは航空機だと思っていました。
私は航空機の開発・製造の中止が日本企業の自動車の開発・製造能力の大きさを恐れた米国からの圧力か、もしくは日本政府または企業の米国への遠慮としか思えないのですが。
実は私のブラジル出張の目的はブラジル政府の「バイ・ブラジル」政策で購入した送風機の故障を現地の納入したメーカーが直せず、折角の新設の工場がスタート出来ないので、その修復と後の工場のメンテナンスス指導だったのです。
現地ではそれ以外の数々の現地産の機器や部品の不良に悩まされましたので、帰国前に工場の幹部に「バイ・ブラジル」も良いが後のメンテナンスが出来るか否かも考えておくようにと助言して帰った記憶があります。
私はJALがブラジルからジェット機を買ったとの報道で、一瞬また昔のようなボロ飛行機を買ったのではないかと思いました。
[ブラジル指導者のリーダーシップと日本]
それにしても私の40年前とは格段の技術の進歩です。
半世紀前からのエタノールの生産と言い、「バイ・ブラジル」政策による格段の工業技術の進歩と言い、歴代の大統領が変わり、そして数々の経済危機を乗り越えてきたブラジルが、まだまだ多くの問題を抱えているとは言え、そのリーダー達のの強い意志を感ぜずには居られません。
「隣のばらは赤い」を承知で書くのですが、それにしてしては、日本の指導者リーダーシップ、長期的な視野に立つ政治のあり方を考えぜすには居られません。
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