普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

日本の再生は農業の再生から

2008-10-26 16:17:08 | 農村問題

 世界的金融不況が日本の実体経済にも及ぼすことについて、マスコミでもその打開策として色々の提言がなされているが、その中の主なものは輸出中心から内需の拡大へのシフト、環境、エネルギー技術の振興と、農山村の開発のようだ。
 このうち内需の拡大については、少子高齢化の進行、派遣労働者の増加による国民所得の減少、今後予想されるリストラによる失業率の増加、不況に伴う消費マインドの低下などの解決困難な問題がある。
 環境、エネルギー技術利用については何度も書くが、その製品または技術の輸出量は、自動車の輸出量て比べれば遥かに小さいもので日本経済の発展に大きく寄与することは出来ないようだ。
 その点から言えば農村の開発、農業の振興は工業製品の輸出量の減少を補うまでには行かないかも知れないが、環境、エネルギー技術の応用よりまだ有望なような気がする。

「米農家が抱えている問題点]
 あるテレビで、農家の人が生産した米の処理について放送していた。
 その農家の人は生産した米のごく一部を、儲けの多い直接消費者に提供する「計画外流通米」(*注1)として取り扱い業者に売り、他の大部分を農協に納めた。
 然し農協は政府の方針に従って、農家への減反割り当て分だけを「計画流通米」として受け入れ、そのほかの米は同じ銘柄でも前者の半値以下の「計画外」の工業用米としてしか受け入れない。(*注2)
 詰まり農家は高値で売れる米をみすみす工業米の安い値段でしか売れないのだ。
 その理由は高い農業機械を農協から買うために、その農協から大きな借金をしているから、農協の方針に従うしかないからだそうだ。
 これでは昔の因業な地主と貧乏な小作人の関係の現代版だ。
 農家は一年の内に数日しか働かない農業機械を多額の借金をして買い、そのために心ならずも貸主の言う通りにして安い米を売っているのだ。
 もし農協が普通の企業だったら、そのような高価な機械はリースにして農家に順繰りに貸すことで、農家のコストの低下を図るだろう。
 全農のような全国規模の大企業だったら、農業機械を沖縄から順番に北海道まで使い回しをして、さらに農家のコスト削減に協力するだろう。

[酪農家が抱えている問題点]
 牛乳の場合は米に比べると下記のように簡単な流通ルートを流れ、そしてある程度市場原理で価格が決まっているようだ。
 酪農家→酪農組合→牛乳工場→(卸売業者?)→小売業者→消費者
 ここで農家側にとって問題なのは最近の飼料価格の高騰でのコストアップをカバーする程小売価格に反映出来ないために、経営が苦しくなり廃業する農家が増えているそうだ。
 その一つには牛乳の小売価格の決定は牛乳製造会社と大手の小売業者の間で決定され、それが酪農家の収入に反映してくる仕組みだ。
 農家がいくら値上げを要求しても、牛乳製造会社が小売業者との話し合いの結果、それが売れ行き減少に繋がるといえば引っ込むしかない。
 詰まり大手の小売業者が他の同業者との競争を勝ち抜くために、牛乳会社の間で競争させて値段の叩き合いをさせているのが廻り廻って零細な酪農家の廃業に繋がっているのだ。

[山村の抱えている問題]
 私は趣味の登山で近郊の山に良く登るが、荒れ果てた杉や檜の人工林、間伐で切り倒された後放置された木や竹など良く見かけるたび思うのだが、ごく一部の地域でもやって居る様に、山林の手入れや間伐材の処理に山登りの好きな人や、都会生活から一時的にでも自然に戻りたい人たちに呼びかければ、多くの人達が応募してくると思うのだが。
 黙々と唯登るだけの山登りも良いが、たまの山での作業が少々辛くてもどんなに楽しいか都会人の憧れだ。
 私など手足纏になるような老人は別として、訪れた若い人達へお礼の山村の料理を振る舞ったり、出来れば気持ちばかりの日当を払えばみな大喜びで参加する筈だと思う。
 それと同じで棚田での田植えや稲刈りなど声を掛ければ、大勢の人達が集まると思う。

[農山村の産業の発展策]
 上記の三つの例で書き漏らしたことも多いが、次のような農山村の発展策が考えられると思う。
製造業や流通業のノウハウの導入と実行
農業や林業の経営や運営の合理化による生産性の向上
 大規模農業、新規参入者を含む農山村上げての改善活動、産直など流通システムの改善し消費者となるべく直結する
 大分県の一村一品運動や、田中義剛さんの成功例になどのノウハウの共有
 酪農に関して言えば糞尿の処理→田畑の生産力の向上→飼料の増産のリサイクルシステム
 農山村の生産資源の有効活用
  休耕田の利用、生産力が落ちない限度での米・麦の連作など長期間の田畑の利用、農業機械を遊ばせないように全国レベルでの使い廻し
・公共機関だけに頼らぬ農産物や農業技術の改善や開発
・品質、味とうで競争力のある農産物の輸出
・消費者を農山村に来て貰い、その活動に参加や交流、消費者の意見を生産や販売に反映する
・農山村の活性化による収入増加分を高齢者や僻地の人達の支援に当てる

 自民党、民主党とも衆院選へ向けての公約作りでいずれも農家の支援を考えているようだが、日本が迎える経済不況の打開策として、農山村への活性化と言う前向きの投資を考えて貰いたいものだ。

このブログを、より多くの人にも見て貰いたいと思っています。どうぞご協力をお願い致します。↓
政治ブログランキングへ
政治ブログへ

*注1:米の分類
・「計画流通米」は政府の減反政策によって決められた量の米のことで、政府の米価維持政策である程度の米価が保証されている
・「計画外流通米」は農家が直接消費者に売れる米と工業用米
*注2:米の流通ルート
・「計画外流通米」
 生産者→消費者
・「計画流通米」と工業用米
   生産者→農協→県経済連→(政府→)卸売業者→小売業者→消費者