旅路(ON A JOURNEY)

風に吹かれて此処彼処。
好奇心の赴く儘、
気の向く儘。
男はやとよ、
何処へ行く。

営業

2006年07月31日 22時51分41秒 | Weblog
たとえば三菱東京UFJ銀行から「お客様のような社会的にステイタスが高い方を対象に特別な口座を準備いたしました。ご興味がおありですか?」とやられると、アッパーミドルを自覚するたいていのひとなら、その話を聞いてみたくなります。興味がなくても「じゃ、パンフレットだけでも送っておいてよ。」ということになります。

「武田薬品工業の直販部でございます。(こういう部隊があるかどうか知りませんが?)今回、お客様のモニターをかねて自然食品の頒布をいたしております。来年から一般市場で販売いたしますが、今回はお客様を当社基準にしたがって選ばせていただいた上で、このサプリに関するモニターに答えていただくことになっておりますので頒布は無料とさせていただきます。ご不明な点等ございましたら、最寄の武田薬品工業の支店までお問い合わせください。後日改めて連絡させていただきます。 とやられれば、同様です。

たとえば住宅やマンション屋さん。数千万円単位の買い物を決断させるためには相応の追い込みが必要ですから、一般に押しが強い。しかもわが国の場合、売る側が、賃貸で通すよりもマイホームを買っておいた方が得をするするという確信を持っているからなお更です。わたしが知るマンションのトップセールスはノルマとして毎日300件、何が何でも電話することを自分に科していました。相手が、監督官庁の課長であろうが、上場企業の社長であろうが、同業であろうが、とにかくかたっ端から。で、コンマ数パーセントの確立で契約に持ち込んだのです。

指摘されるように向こうも必死なのです。営業って、自分が売る商品に疑問を抱いたらお終いです。だから相手の意向を聞いている暇なんかない。とにかく片っ端から電話する。アポを取る、売り込む。これが仕事の重要な一部なのです。一生懸命やればいつかお客さんは解ってくれると思うが故の勇み足が、無神経な電話が世の顰蹙を買っていました。

武田薬品工業も三菱グループも、野村證券も創業の当初はこの売り込み方で自社のブランドを築いたにちがいない。飛び込み(電話も文明の利器を用いた、ある種の飛び込みのようなもの。)と押し売りで業績を上げたわたしの前勤務先である積水ハウスも、今では立派なブランドです。やり方によっては電話が来ても迷惑がる方は少ないことでしょう。

個人情報の保護立法があって、今では電話セールスを撃退するのは簡単です。「この電話番号、どこで調べたの?」これでいいのです。きっと、二度と電話してきませんよ。個人情報保護法は、名簿等を取得目的以外で使用することを禁じています。たとえば自治会の名簿、同窓会の名簿、その他もろもろの名簿は自社製品・商品の販売目的で使用することができません。社員名簿然り、同好会の名簿然り、卒業在学者名簿然りです。個人情報保護法は営業目的でこういう名簿を社内に保管することすら禁じました。今や、大学の先輩に直接電話をして営業をすることすらできないのです。

最近になって、営業部門にもコンプライアンス(法令順守義務)が要請されるようになりました。ところが、営業の本質は法や通達のグレーゾーンをどの程度ホワイトゾーンとして世に認知させるかという技術であると仮定すると、ホワイトゾーンのみでは営業やセールスは成り立ちません。このことは、逆に、商品やサービスの情報について、消費者が商品情報を完璧に理解していることを前提とした市場を想定するということになります。そこで、確かな情報を解りやすく伝えることができる営業マンの育成が急がれます。ところが、企業内でも高学歴のひとほど営業を嫌う傾向が顕著です。残念なことです。

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