旅路(ON A JOURNEY)

風に吹かれて此処彼処。
好奇心の赴く儘、
気の向く儘。
男はやとよ、
何処へ行く。

前職

2010年03月17日 21時46分17秒 | Weblog
学生時代は東京で過ごした。学生の本分は勉学に励むことだ。学生時代は学生の本分を忘れて遊び、働き、悔いのない東京暮らしを楽しんだ。本質的に本業に関心が薄いのだ。この月曜日に前勤務先の打ち上げに招かれた。会場に向かう道すがら雨が激しく降っていた。嫌いな雨に遭っても懐かしさで心は弾んだ。20年余り勤めたというのに、ことビジネスに関しては達成感がなかった。本業を投げ出して読みたい本を読み、遊びたいように遊んだ。そして、その合間にビジネスでお茶を濁した。というよりも、過酷な営業活動を遊びや読書で紛わせていた。とても現職社員の模範となるようなOBではない。。

支社長の巧みな演出もあって私の登場に歓声が沸いた。はやとコールが巻き起こった。100有余名の後輩たちは温かく迎えてくれた。嬉しかった。涙が滲んだ。自慢じゃないが在職中に本社に行ったことすらない。上京して3度、本社の敷地内にあるソバ屋で、Pタワーを眺めながらソバを食った記憶があるだけだ。在職中に新築されたPタワーは余りに清く崇高で私には場違のように思われた。しかし、広島支社の皆さんとは、戦友というか共同体のような意識で結ばれていたような気がする。それほどこの業界の生存競争は過酷なのだ。

元同僚諸氏の姿にもやや疲労の色が濃いように思われた。私が勤めている職場は現在の雇用市場で何が起きているのかについてもっとも体感しやすい場だ。元同僚達たちが営業の対象としているひとたちがどのような境遇に陥っているのか、私はよく知っている。しかし、私が勤めた20有余年間、この会社は名実ともに合理主義で貫かれた楽観論で突っ走ってきた。まるで終戦直後の日本のように、この外資系の保険会社は輝きを増してきた。輝きが失われないように念願しながらひとり会場を後にした。どのように歓迎されようと退職日を待たずして戦線から離脱した私は、数いる敗残兵のひとりなのだ。