旅路(ON A JOURNEY)

風に吹かれて此処彼処。
好奇心の赴く儘、
気の向く儘。
男はやとよ、
何処へ行く。

スノキ

2008年12月04日 02時11分46秒 | Weblog
        スノキ



その昔、わたしがまだ無邪気に野山を駆けまわっていた頃の話である。晩秋になるとマツタケ狩りをしたあとで、決まって口にする小さな木の実があった。悪童たちはこの実のことを「オヒマ」と呼んでいた。たまにはこの「オヒマ狩り」が目的で山に出かけることもあった。

最近、愛犬「ごんた」と近くの恵下山を散歩中に、このなつかしい「オヒマ」をみつけた。数10年ぶりの懐かしさがこみあげた。10月の初旬のことなので、実は朱色で、口にしても酸っぱいばかりであった。今日あたり、もう十分に熟しているだろうと「オヒマ」目当てに愛犬「ごんた」を駆って恵下山に登ってみた。

黒く熟した「オヒマ」がたわわに実のっていた。固有名詞を覚えるのが苦手だから固有名詞にはこだわる。だれが言い出したのかは知らないが、その昔、わたしの郷の町の大人達も子供達もこの実のことを「オヒマ」と呼んだ。無性にこの「オヒマ」の正式名称について知りたくなった。検索をかける前から典型的な方言であるという妙な自信があった。googleをもってしても「オヒマ」ではヒットしない。

「晩秋 黒 実」で検索をかけて「スノキ」らしいことを掴んでから一気に映像で検索をかけた。外れていなかった。「オヒマ」には、つつじ科スノキ属スノキというりっぱな名前があったのだ。google恐るべしである。最近、洋種のブルーベリーが目に良いと評判である。風味から推して「オヒマ」がブルーベリーの仲間であることは以前から予想していた。

否、ブルーベリーの方が野生種の「オヒマ」の系統であろうと推測していた。やはり外れていなかった。ブルーベリーは、つつじ科スノキ属ブルーベリーというのが正式な名称である。ブルーベリーと「オヒマ」は同じスノキ属なのだ。

なぜ「スノキ」なのか。実や若葉が酸っぱいから「酸の木」なのだ。確かにこの「スノキ」は十分に熟して黒くなるまではまるでスカンポのように酸っぱい。だから鳥にも狙われない、突かれた様子もない。十分に熟した「スノキ」を手のひらにいっぱい摘んで口に放り込んだ。熟した「オヒマ」は、まるで晩秋の里山のような甘酸っぱい味がした。幸せな瞬間であった。