旅路(ON A JOURNEY)

風に吹かれて此処彼処。
好奇心の赴く儘、
気の向く儘。
男はやとよ、
何処へ行く。

ワイド版岩波文庫「海舟座談」

2007年07月23日 02時13分45秒 | Weblog
勝海舟の筆跡

羊頭狗肉というか、語りに切れがないというか、岩波文庫にふさわしくない著作である。「幕末明治の体験談、歴史的証言として貴重」と銘打ってはいるが、海舟の語り口は完璧に老人に固有の曖昧模糊としたそれであって、歴史的証言にしてはお粗末極まりない。

編者である巌本善治は、海舟73歳から77歳の間のインタビューだからやむをえないとでもいうのであろうか。「麒麟も老いては駄馬」とでも表現したくもなろうというもの。

もっとも、最近読んだ丸山真男の岩波新書「日本の思想」にしたがうならば、

「人々のふるまい方も交わり方も、封建制度の下では彼が何であるかということから、いわば『自然に流れ出て』きます。武士は武士らしく、町人は町人にふさわしくというのが江戸時代のモラルであります。各人がそれぞれ指定された『分』に安ずることが、社会の秩序維持にとって生命的な要求になっております。」

という時代に生まれ育った幕臣で野心家の海舟が、江戸城引渡という無血革命によってもたらされた新政府による業績本位の時代をどのように要領よく生き抜いたかを語る、ギャグとしての「歴史的証言」なのかもしれない。


聖湖畔の「ミネルバ」

2007年07月23日 01時29分00秒 | Weblog
アジサイ街道の終着地点から島根県に向けてさらに進むこと数キロ、聖湖畔の「ミネルバ」という喫茶店の名前に惹かれて寄ってみることにした。狭い侵入路は緑に覆われている。案内板にしたがって到着してみれば、2000坪余りの敷地にかなり広い山荘が構えている。

どのようにみてもかなりグレードの高い別荘風であるし、店の看板もない。場所を間違えたものと思い退散しようとすると、品の良い女性が2階から駐車場の案内をしている。

案内にしたがって表にまわると、広い駐車場があって緑に覆われていた。緑を傷つけないようにゆっくりと駐車して正面を見ると、喫茶店らしい佇まいの山荘が眼前にあるのでようやく安心した。

お店では、コーヒーをいただいた。彼方に望む臥龍山の山頂付近には霧が流れていた。山荘の庭は小雨にぬれていた。アジサイ街道の鮮やかさと対照的な渋い光景に思わずうなってしまった。

この喫茶店、実は渓山社「西中国山地」の著作で知られる故桑原良敏広島女学院大学名誉教授の奥様が、土曜と日曜限定で開いているカレーとコーヒーの専門店なのであった。