生来人見知りの私でしたから、買物でしかも大型店に出掛けるなんてことは、しかも一人で行くことは以前はあまり無かったことです。
しかし今はそんなことは言って居られません。妻の亡き後今は、娘と一緒に暮らしており、その娘は自転車には乗れますが、車の免許は持っておりません。
ですから食品の買物は、米などの主食から野菜や魚類など惣菜類などは、全て私の仕事なのです。
これまでにも買物は妻のお供で、その都度出掛けておりましたから、初めこそ一人での買物、特にあの買い物籠を持って買い歩くのにはかなり抵抗がありました。
そんなことで妻と一緒に出掛けても、店の入り口前で妻を降ろしてから、近くの公園とかを歩きながら、買物の終わるのを待ち、妻からの電話で迎えに行くのが常でした。
長いことそうしていたのですが、妻も年齢と共の持病とも云うべき膝が悪化して来た所為で、カートを押して歩き回るのが辛くなって来ていたので、私も一緒に店内に入って手伝うようになっていたのです。
買物に慣れるにしたがって、妻から品定めなどで相談を受けるようにもなりました。それに車までの荷物運びが一番の役目でした。
その時の経験が、妻の亡い今の買物にとても役立って居るのです。必要な商品の場所の見当が付き、さらに品定めもある程度出来るようになったのです。
しかし買物が私の役目であっても、やはり人中に入るのは不得意で、出来れば避けたいことなのですが、家の中でじっとして居たり、またパソコンにしがみ付いたりでは、どうしてもくよくよと考えて込んでしまいます。
それならいっそのこと、不得意な買物でも、無理して出掛けて人ごみな中に居た方が、気が紛れるのではと、思って努めて出掛けるようにしているのです。
今日店内で、奥さんを車椅子に乗せて買物をして居る老夫婦が、仲睦まじく笑いを浮かべて品選びをしているのを見ました。
ジーンと胸に迫る光景で、涙が出て来そうになり、急いでその場をはなれました。
想えば将来私も膝の悪い妻を乗せての買物を、ひそかに想い描いて楽しみにもしていたのでした。しかしみんな儚い夢でしかありませんでした。
※ 仲の良き 買物老夫婦(ふうふ)を 見るたびに
亡妻(つま)重ね見る 我が身が悲し
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