ルンルンピアノ

ピアノ教室の子どもたちとの楽しい毎日。。。。。。

485        泥の河

2006-11-01 22:57:01 | Weblog
※堺からの帰り、湾岸線から見えた夕陽。
 クリック♪


少し風邪気味でフラフラするが、午前中ピピアで上映の 『泥の河』 を観に行く。
以前にも観ているのだが、きょうはその時以上に胸を揺さぶられる。

舞台は戦後、高度経済成長の兆しを見せ始める昭和31年の大阪・安治川の河口。
うどん屋の息子(信雄9歳)と、廓舟で生活する姉弟(銀子、きっちゃん9歳)の、ひと夏の出会いと別れを軸に描いた物語だ。

うどん屋の信雄も、自ら母親の客引きを手伝うきっちゃん達姉弟も、それぞれ大人達のドロドロした現実世界の中で生きている。
どうしようもない厳しい現実の中で見せる、子供らの暗い目、悲しい目を見ると、せつなさに胸を打たれる。
売春で生計を営む母親と一緒の廓舟生活、もちろん姉弟は学校へも通っていない。

貧しいながらも温かい両親のいる信雄の家に憧れる姉弟。
「ノブちゃんのお母さんは石鹸のニオイがする」
「こんな普通の家だったらいいなあ・・」

姉弟が幸せな時間を過ごしている最中、突然入ってきたお店の客が「廓舟の子や」 と、心無いセリフを口にする。
下をうつむいてコブシを握りしめ、必死で屈辱に耐えるきっちゃん。
それを見た信雄の父は客を追い出す。
なかなかショックから立ち直れないきっちゃんを何とか慰めようと、父はやおら手品を始めた。
3つのオチョコのうちの1つに小さな玉を入れて当てさせる他愛のない手品だが
子供達はいつしかオチョコの手品に目をキラキラさせて夢中になっている。

きょうの映画の中で1番泣けてしまったシーンだ。

色々な事を、理屈抜きで肌で感じさせられる映画だった。
きっちゃんの姉・銀子が、土門拳の写真集 『筑豊の子ども達』 の 「るみえちゃん」 にそっくりだったのも、ただの偶然では無かったような気がする。
信雄の父親役、田村高廣もいい味を出していた。



舞台となった安冶川の最西端、端建蔵(はたてぐら)橋付近を、改めて歩いてみたいと思った。


おわり
コメント (2)
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484     仙人とネコと桜      

2006-11-01 00:06:24 | Weblog
※大仙中町ローソン前のネコ。
 クリック♪


昼過ぎ、堺の仙人に会いに行く。
kaimasaさんから道順と車線を教えて頂いたおかげで、最近は何一つ迷う事なくスイスイ行けるのが嬉しい

病院について洗濯物を確かめると、汚れ物と新しい物がゴッチャになっていた。
めんどうくさいので全部まとめてランドリー室へ持って行く。
きょうは通路にも何人か人が出ていたので怖くはなかった。
洗濯機に100円を入れガーッガーッと回りだした直後、洗剤を持って来てなかった事に気づき部屋へ戻る。
2階の階段を上がったところで、積み忘れのパジャマのズボンを持ったNが立っていた。

きょうはパイプ椅子が無かったので、Nが車椅子、私がポータブルトイレのふたに腰かけて話す。
チョコアイスを舐め舐め、北京から10キロほど離れた 「山海関」 の話などを語る仙人。

『中国は片っ端から行こうと思っておったんですわ♪』

<世界中で1番オモシロイ国は中国!> と断言する水津さんならではのセリフだと思った。

30分ほど経ち、洗濯物を乾燥機に移してそのまま遅い昼ご飯を食べに外へ出る。
きょうも、最近覚えた松島食堂へ入ってカツ丼定食を注文。
その後、水津さんの不要になった 「緊急電話」 を返しに、堺西区役所へ向かう。
「代理なんですが・・」 と断って申し込み用紙に記入していると、係りの職員さん(女性)が
「あら! 水津さんですか?!」 と声を上げる。

「病院へ入られたと聞いてますけど・・どうしてらっしゃいますか?」
「あの方はずっと外国を回っておられたのですよねぇ」
どこへ行っても女性に人気の仙人なのだ

その後ブラブラ病院へ戻る途中、近くの工事現場にふと目をやると、お風呂屋さんのエントツが3分の2ほどの高さになっている。
(エ・・?) と思いよく見てみると、『白菊温泉』 と書かれていた部分の 「泉」 の字だけが残っており
そこから上は鉄骨をむき出しにして無くなっていた。
ショベルカーが慌ただしく動く方へ目をやると、赤い文字で 「寄贈 ○○酒店」 と書かれた鏡が貼られたタイル張りの壁が、掘り返された地面の上に無残なかたちでとり残されている。

この白菊温泉は、朝日会病院すぐそばの古い住宅街の一角にあるお風呂屋さんで
ニョッキリ伸びたエントツを見るたびに (いいなぁ~) とホッとした気分にさせらていたのだ。
時代と共に古いものが失われていくのは世の常だが、通りがかりの私達でさえこんなに寂しい心持ちになるのだから
長年ここのお風呂に親しんできた人達にとっては、どれほどショックな事だろうかと考えてしまった。


病院へ戻って洗濯室へ行くと、ちょうど乾燥が終わったところだった。
乾燥機から洗濯物を取り出す時、静電気がひどく大変だった。
からみ合う洗濯物をソ~ッと引き剥がそうとするが、バチバチッ!!と痛いったらありゃしない
静電気の起こりにくいパンツを手に巻きつけながら、1枚1枚慎重にはがして畳んだ。

病室へ戻って、私のピアノの悩み(たまには悩む事もある)やスッポンの話しなどするうちに、車椅子のNはグッスリ眠っていた。
仙人の目も細くなってきたようだったので、Nを起こしお暇する事にする。

きょうはいつにも増して真面目な顔で、「いつもお忙しいところを本当にありがとうございます」 とあいさつされる。
「それではお大事に、また来ますから」 と言い残す私達を見送る仙人の顔が、病室を出て曲りしなフッと消えた途端、たまらなく寂しい気持ちになった。

病院を出て、少し歩いたところにあるローソンへ猫を探しに行く。
ここは、以前kaimasaさんから教えて貰っていたネコ出没のオススメポイントなのだ。
ローソンに着くと、駐車場の自転車のとなりに白と黒の混じった目つきのするどいネコがいた。
けっこう慎重な性格のようで3メートル以内は近づけない。
気をつけながら写真を撮っていると、店から食べ物片手に女子高生の二人連れが出てきた。
すると、それまであんなに慎重に構えていたネコが、突然スルスルと出てきて女子高生のそばへ歩み寄って行くではないか。
しかも歩く姿を見るとかなり太っている。 食べ物に不自由している気配は全くない。
残念ながら、女子高生達はこのノラ猫には何の興味もないらしく、ひたすらオシャベリに興じていた。
ま、食べ過ぎも体に毒だしと考え、写真を撮った後はそのままその場を去った。

そのすぐ先の 「喫茶 あじさい」 横の路地をふと見ると、金色をしたネコが目に入った。
そっと近寄ってカメラを向けるとサッと逃げようとする。
小さく声をかけながらカメラを構えていると、そばから突然 「アカ、アカ」
「アカ、じっとしとき」 「アカ、動いたらあかん」 と声がする。
振り向くと、オデコに傷のある3つくらいの男の子とその両親が立っていた。

「アカ、こっちに来!」 と母親らしき女性が言うと、ネコは素直に近づいてきた。
アカはほとんど金色に近い黄色をしており、いかにも敏捷そうな細身の体型だった。
耳が大きく、ネコというよりは山猫に似た野生的な風貌をしている。

「きれいなネコだけど、ノラ猫ですか?」 と尋ねると、そうだと言う。
「ウチは犬飼ってるからなぁ・・でもエサはやってるねん。 1日3,400円はかかってる」 と笑いながら説明してくれる。
一見荒けずりそうな雰囲気だが優しい人でヨカッタ♪
「それじゃあ・・」 と言って立ち去ろうとすると、「冬には発泡スチロールで家でも作ってやろうかと思ってるねん」 と照れたような顔でつぶやく。
うれしくなって思わず 「ヨロシクお願いします」 と叫ぶとエビス顔で見送ってくれた。
(本当にヨカッタなぁ) と心が温まるひと時だった。



駐車場へ帰る道すがら病院前を通る。
通り過ぎながら突然、もう1度水津さんの顔を見に病室へ戻りたくなってしまった。
わずかな葉っぱを残した桜並木を見ながら、「ねえ・・来年の春も水津さんと一緒にこの桜を見ることが出来るかな」 とNに言うと
「さあ、どうだろうなぁ・・」 と元気のない答えが返って来て、また悲しくなってしまった。

夜はしんどかったので 「松屋」 へ行った。


おわり
コメント (10)
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