マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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和爾町営農組合のカルパー籾種播種散布作業

2018年06月26日 09時00分53秒 | 民俗あれこれ(四季耕作編)
前日は大雨で中止された和爾町営農組合のカルパー籾種播種散布作業にようやく出会えた。

昔ながらの直播きでなく、動力散布機による現代的農法による播種作業である。

動力散布機の本体重量は12.8kg。



背中で担ぐ散布機に先日に作業されたカルパー粒剤の重さが加わる。

腰を上げて、さぁ出動。

散布機に付属する排出ホースを手にして水田周りの畦に入る。

畦を歩きながらホースを田に向けて籾種を飛ばす。



まさに飛ばすという表現よりも消防ホースを抱えて水を撒くような感じである。

市の施設管理のために消防訓練を受けたことがある。

そのときの実感は今でも忘れない。

消防水がホースより排出されるパワーが凄いのである。

排出される水の勢いに抱え構えた手と腕が弾かれ振り回されそうになった。

勢いに驚いてホースを抱える手を離したらとんでもないことになってしまう。

腰を落としてガッチリ構えて排出する。

そのときの記憶を思い出した。

装着した恰好を見て、失礼ながらもう一つの光景を思い出した。

それは映画ゴーストバスターズに登場する主役の恰好である。

映画の放射筒は短いが恰好は同じようなものだ。

播種に放出されるのは籾種だがゴーストバスターズは炎。

大きな違いはあるが、思い出した映像はミュージック付きだった。

畦からカルパー粒剤を撒いていく組合員。

畦近いところも中心部も撒く作業に慣れがいる。

直播きはまんべんなく撒かないといけない。

偏ってもいけないし、空白ができても・・。

散布機の排出量は器械にあるレバーでその加減を制御する。

排出圧力を制御するスロットルレバーを左手で閉じたり開けたりするかは操作する人の経験値。

上手い、下手は芽出ししたときの状況でわかるそうだ。

特に、であるが、初心者は散布する籾種がどこに飛んでいるのか見えない。

そういう場合はどうしても散布量が増えて、ある処ではついついレバーを開け過ぎて籾種だらけになるし、ある処は空白ということだ。

畦を歩きながら放出する播種は2周する。

作業を観察しているとホースは左右に振るだけでなく大きく傾ける場合もある。

それは遠くへ飛ばす方法だ。

田んぼの中心部辺りは相当の傾きをかけないと真ん中まで届かず、空白地帯になるらしい。



2周して戻ってきた組合員が云った。

レバーを操作しても排出量が少ない。

投入したカルパー粒剤はまだ残っているという。

調べてみれば原因がわかった。

投入した蓋があんばいと締まっていなかったのだ。

無理にねじ込んだ蓋の溝部分に隙間があった。

そこから「圧」が抜けて散布量が少なかったということだった。



カルパー粒剤とともに投入するのは除草剤に肥料もある。

そうすること合計は30kgにもなるというから相当な荷重が背中にかかっているわけだ。

「けっこー重たいんやで」と云った言葉が作業の大変さを伺える。

畦を歩くのも不安定な重さ。

2時間かけて7~8枚程度の直販作業は足腰がしっかりしないといけないが、作業している組合員のほとんどが和爾町の長老二十人衆。

高齢者にはこの重さが身体に堪えると云っていたのがよくわかる。

若いころに日本アルプスの白馬岳に登ったことがある。

二十歳代のころだから今よりは体力がある。

山岳部ではないからザックに詰めた荷物はたいしたものもなく重さは控えめ。

できるだけ軽量と考えて無駄をそぎ落とした30kg。

当時はカメラなんてものはまったく興味はなく、カセットデンスケの音声撮りだけは持参した。

ソニー製の初代カセットデンスケのTC-2850SDがある。

出番がなくなったTC-2850SDカセットデンスケは、今でも我が家の天井裏倉庫で眠っている。

機器の重さは5.4kgもあった。

数本のマイクロフォンに単一乾電池4本などの重さを加えたらそれだけでも肩に食い込む。

尤も白馬岳に持ち込んだのはやや小型軽量化した後継機種のTC-2220だった。

重さは乾電池含みの3.2kg。

2kgの差は大きかったことを覚えている。

あるブロガーさんはプロ仕様から民生用も一覧で紹介している。

懐かしいデンスケにうっとりしてしまう。

余談はさておき、話題は本題の直播きに戻す。

3周目を周回して戻ってきた組合員。

水抜きした田にそれぞれの方向からきた二本の筋が見える。

左は向こうの方から引いた。

手前はわかりにくいが、右側からだ。

直角に二本の二筋に斜めの筋。

いずれも左角にある田の排水口に集めている線引きである。

これは、いったい何であるのか・・。



隣の田で作業していた状況を観察してなるほど、と思った。

これは水抜きの導き筋である。

トラクターの後方にアタッチメントされた農具は特別注文。

特別だけに値段も特別の二桁の万単位。

営農組合の願いは負荷をかけず、効率的に水田に溝を切ることである。



これまでは人力だった。

鍬を持って一筋ずつ溝作り。

当然ながら長靴は泥田に沈んでいく。

泥田から足を抜くには身動き取れない。

動きにくいし、位置した場で鍬を入れて溝を切るのも体力が要る。

少しずつしか進めない。

何人もの人がそれぞれ分散して溝を切っていくが・・・これをなんとかしたい。

願いを叶えてくれた器具屋さんは手作りで仕上げた。

三角の溝切りは鉄製。



フインというか、トラクターの動きに合わせて左右自在に動く。

溝切りの幅は実測していないが、営農組合の要望通りの動きをしてくれる。



僅か数分で溝切は終えたが、排水口はもう少し幅を広げる。

人海戦術はここだけになったが、全体に対する負担はなくなった。



今年はほんま、ラクになったと皆が云う。

ちなみに蓋締めもきちんとした背負型動力散粒機はKioRiTZ(共立)のネーム入り。

㈱やまびこ製のDMC600若しくはDMC601。



散布する勢いが手に取るように見てとれる。

籾種を排出するホースの先端がスゴイ。



噴き出すと同時に煙のような噴霧状態。

塗布というか、籾種に衣付けしたカルパー粒剤が飛び散っているのである。



泥田に直接あたる籾種がバシバシ。

土砂降りに雨が降ったような跳ね返り



それでわかる勢い。

直播きの具合もさきほどとはえらい違い、である。

ベテランの3人目が登場する動力型散粒機の作業者。



そのころ丁度に隣の泥田で溝切するトラクターが現われる。

散粒機作業者と溝切が交差する間合いを見計らってシャッターを押す。

そろそろ本日の作業も半分が済んだ。

朝から始まってたったの30分。



後半も休憩なしに次の田にトラクターを移動して作業を続行。

その田の畔に咲いていたピンク色の花。

名前もしらない野草は和種でもないような・・・。

これってユウゲショウ?

それともヒルザキツキミソウ?

投稿したFBの画像から判断して自宅の庭にも咲いているとコメントしてくださった花の名前はアカバナユウゲショウ。



たぶん、そう、思うが、アカバナユウゲショウは四枚花弁。

私がこの場で拝見したアカバナユウゲショウは五枚。

その下のほうはなんとなく四枚花弁のように見える。

違いがあるのか、ないのか。

それともこれが変異花・・・。

写真で同定してくれたFB知人のらもさんの庭にも五枚花弁があるというから、何割かがそういう具合に芽出るのであろう。

和爾町営農組合の播種日程は5月24日から始まって29日まで。

本来なら28日で終える計画だったが、25日は土砂降りで中止した関係で一日分の遅れ。

何日か経てば水面下の泥田の中で根が出て芽も出る。

ぐんぐん伸びてやがては発芽した芽も水中から顔を出す。

日々の発芽状況を見ているわけにはいかないが、適度なときに見てくれたらよくわかると云われて、立ち寄る。

立ち寄る日は特別な日でもなく、行けたらの話しである。

和爾町営農組合の圃場を通り抜ける農道は車の往来が激しい。

特に朝、夕は道路を渡るにもひと苦労すると話していた農道はしょっちゅう利用している。

天理市の福住、旧都祁村、山添村へ行くには天理東ICから入って名阪国道を利用する。

針ICから北にも南にも。

五ケ谷ICからは旧五ケ谷村の各村の取材に行く場合もある。

その際に必ずといっていいほど利用する和爾町の農道。



県営圃場整備事業が竣工した記念碑がある。

起工は平成8年4月。

竣工は平成19年3月。

11年間もの工事を経て完成したときに建てたのが後方に見える和爾営農組合ライスセンターである。

完成してから十年間。

無料で通らせてもらっているだけに感謝しなければ・・・。

※農林水産省・北陸農政局が近隣で行われている直播き事例の紹介

(H29. 5.26 EOS40D撮影)
(H29. 5.26 SB932SH撮影)


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