ASAKA通信

ノンジャンル。2006年6月6日スタート。

「ゆらぎ」20230718

2023-07-18 | Weblog

 


 系というものは平衡を取り戻そうという
 たえざる細かな作用の集積として成り立っている。
 これはゆらぎであって、ゆらぎがあるからこそ
 外からの作用が入り込むことが可能である。

    ──中井久夫『統合失調症の有為転変』165

                  

                     *


実存に内在する変化の本質契機──ゆらぎ

ゆらぎゆえに、ありうる(存在可能)は宿り
希望、予期のエロスにふるえる心が生まれる

ゆらぎゆえに、せつなく、惑い、くるしく
苦々しく、悲しくも、憎む心が生まれる

ゆらぎがどこへ舵を切るかはわからなくても
ここから取り出すべき本質は一つだ

俺たちはつねに変化へ向かうreadinessの状態にある、

どこにへ向かうのかはわからない
未踏の試行のルートを生きるしかない

その帰結を先取りするまえに覚えておこう
かたわらにはレディ・ゴーの始発点が必ず同伴している

 

 

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「サイモン&ガーファンクル@上中ハンド部」20230718

2023-07-18 | Weblog

                                                                          Simon & Garfunkel - The Sounds of Silence (Audio) - YouTube

 

 


  These clouds stick to the sky
       Like a floating question, why?

      ──Paul Simon「Cloudy」


灰色の空に光がきざし
いつのまにか
桜が咲きはじめている

川のように流れる平和
海の向こうの戦争

閉じたセンサー
馬鹿話、疫病神、デマ、噂話

夢から
街から
平和から

目が覚める水曜の朝午前三時

雨を見たかい
ぼくは見たことがない

火柱、人柱、降り注ぐ豪雨の空
南の島から飛び立つ戦闘爆撃機

四月になれば彼女は

わかったふり、わからないふり
冷笑、哄笑、嘲笑、ひそひそ話

地下鉄の落書き
すれちがう恋人たち

沈黙のサウンド
エミリー、エミリー
明日に架ける橋

ニューヨークの少年
老人たちの会話
夢に破れたボクサー

さよならフランク・ロイド・ライト

曇り空に溶けてゆくサウンド
耳を澄ませば聴こえる激しい雨音

島国に、あるいは世界に
似合わない美しいメロディ

 

 

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「ジミヘンの夜@福岡市東区三丁目福山荘」 20220506

2023-07-18 | Weblog

                                              Jimi Hendrix ~ All Along The Watchtower  - YouTube

 

 


「乗り遅れるなよ、バスに」
「ひとつ聞いていいかな?」
「なんだ」
「どこ行きのバスだ」
「うっ」
「どこ?」
「‥‥知るか」
「わからんのか」
「乗り遅れるな」
「楽しい?」
「いいから乗れ」
「パスする」
「どうするんだ?」
「どこにも。いまここに」
「知らんぞ」
「こっちのセリフだ」

 

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「拡大教室」 20230717

2023-07-17 | Weblog

 

 

数えきれない教壇があって
教壇に立ちたがる数えきれない人間がいる

生徒を必要としている人間が大勢いる
同じくらい教師を求め生徒になりたがる人間がいる

なぜかわかる?

知と愚をわけるラインがあって
知の側に分類されたがる人間の心がある

この分類法は人間の歴史とともに古く
人間的生世界に内在する必然がある

何が問題なのか?

知の用法、知の頂きをめがける「主奴ゲーム」
ひと皮めくれば知愚の階梯をめぐる凶暴なゲームが展開している

(このゲームは自然界の論理と直列している)

つまり、架空の頂きがいまだ滅びていない時代の中にいる
いいかえると知の別の用法、生の支援を競うゲームが封印されている

 

 

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「絵画療法」20230716

2023-07-16 | Weblog

 

 

主体同士のむき出しの対峙性を解除するように、
お互いのあいだに絵を置いて、対話の場をあつらえる。
そのことで、相互の主体の主体的関与性を守ることができる。

そこから、ともに絵をめぐることばを自由に重ね合わせながら、
固定された観念群(ことば)の自明性をほどくように動かしていくことはできる。

なにより、そこに生成することばを相互に発見的に見出していく、
いわばセッションの位相の可能性が生まれる。

(ありふれた日常においても、意識されないまま、この種の経験は頻発していると思う)

       *

── 中井久夫『統合失調症の有為転変』

絵画は「否定」が表現できないという事実がある。
これに対して言葉は嘘がつけるということがある。
また言葉には正解と間違いとがある。
絵には模写の正確さを云々する場合は別だが、
メッセージとしての絵には「この絵は間違っている」ということがない。
嘘がつけない。鶏の脚が四本あっても、それに意味があるかもしれないではないか。
一見わからない画も模写するとわかってくることがある。おおざっぱな模写でいい。
必ず「あ、ここにこんなものがあった」と気づくものである。
最後に、言葉は挨拶を初め常套句がいっぱいある。
無内容なことだけで四〇分の会話を終えることができる。
しかし、私の言葉で恐縮であるが、以前よく引用していただいたことがある句がある。
「丹念に描き込まれた画とたどたどしく引かれた一本の線とは哲学的に対等である」である。(143)

言語は事態の単純化と少数の因子による因果関係の表現に適しているが、
これも両面の作用がある。ここに非言語的アプローチの出る幕がある。
描画にせよ粘土制作にせよ、幻覚妄想が隠見する世界に対抗して、
幻覚や妄想であるかないかの線引きが存在しない場所を提供する。
それによって面接の場がすでに異常体験から一時的にせよ自由な場が実現する。
これは良循環の始まりとなりうる。
また、回復過程を跡づける上では、ことば以上に絵は、
さらに一般に非言語的アプローチといわれるものは、言語よりも確実な里程標である。
また、それぞれの回復やその停滞、逆もどりについて告げることもできる。
その上、線を引くこと、色を決めることはそのたびごとに小さな決断の連鎖である。
決断ほど心的エネルギーを要するものはない
しかし、現実世界における決断よりもはるかに軽く自由で後腐れがない
決断に関するリハビリ性があるといおうか。(198)

 

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「連結器」20230715 (20230105)

2023-07-15 | Weblog

 

 

 


 暗きより暗き道にぞ入りぬべき はるかに照らせ山の端の月
                  (和泉式部『拾遺』)

平安朝、跡かたなく砕け散って消えた千年はるかかなた
一人のおんなの歌が山の端の月のように今を照らす

 めぐり逢ひて見しやそれとも分かぬ間に雲隠れにし夜半の月影 
                              (紫式部『新古今集』)

外にさがしても何もない
吹きさらしの風だけが吹いている
 
 ふるさとは語ることなし  (坂口安吾「碑文」)

ただ心に現象する泡立ちにみちびかれ
あの歌があって、この歌があり、未生の歌が懐胎していく

この連結の連鎖のいとなみに加わることだけができる

 この憧憬は生の喪失の感情であって、失われたものを生として、
 かつて生に親しみ深かったものとして認知するからである。
 この認知はそれだけですでに生の享受である。
    (ヘーゲル『キリスト教の精神とその運命』細谷・岡崎訳)

ほんとか?ああ、どんな資格も要件もない
この連結器の作動を全うすることが生きるということさ

(見逃して素通りするなよ)

このいとなみは通時的であると同時に共時的でもありうる
交わり、享受をわかちあう、それが現象する人間の地平がある

 

 

 

 

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「絵を描く」20230715

2023-07-15 | 参照

 

 

──中井久夫「芸術療法事始めのころ」2007年(『統合失調症の有為転変』)


私は「あっ」と思った。それは絵画療法の場面ばかりではないが、
その場面においてもっともよく聞いてきた言葉である。
たとえば、スクリブル法で描き終えた鳥の絵に添えて
「また飛び立とうかどうか迷っているのです」という言葉、
太陽と惑星の絵に添えて「これだけ離れると私の悩みも小さなものに思えます」という言葉である。
こういう言明は症状の語りでも生活の困難の語りでも「内面」の苦悩の語りでもなく、
状況と心境の「一挙照明的な」言葉で他者と繋がる珠玉の言葉である。

絵画を支柱として生まれた言葉によって治療者が立ち止まり、
感動する瞬間が治療の場に訪れるならば、素晴らしいことである。
精神療法としての絵画療法とは、この言葉に極まるものではなかろうか。
絵画を描きそれについて語る過程で得られる照明体験である。

 

 

 

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「かんちがい」 20230714

2023-07-14 | Weblog

                    時をかける少女オリジナルMV - YouTube

 

そのつどの泡立ちではなく
永続するものへの憧れ

それがなにかはわからない
けれどそれが尻尾を見せることがある

不変項──時間と空間を超えて連結するもの

かすかな兆し、徴候、予期が告げるもの
俺たちはそういうものにすごく敏感なのだと思う

(生きることへ憧れを誘うなにか)

かんちがいかもしれない、けれど
正誤を判定するコードはどこにも存在しない

この作動を止めることはできない
かんちがいのままでいいじゃないか

(なにかはわからなくとも)

おあいこかもしれない
そうならイーブン、それで何も不足はないと思う

 

 

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「P.S.」 20230714

2023-07-14 | Weblog

 

 

自分を愚かだと思わないほうがいい
自分を賢明だと思うのと同じくらい、まずい

未決の心を許さないように  
不足を埋めるように
感情は走りやすく
言葉は行きすぎやすく
理解は結審へ向かいやすい

そうして世界が腐りはじめる

はやり、焦り、うごき回り
急かされ、おのれを見捨てるバカがいて

このバカヤローの心に休止符を打ち込む

世界の姿を確定したがるバカヤローの口を塞いで
新たな記述のスペースをあつらえる

俺たちが会っていた場所だ
なんどでも思い出してくれ

自分を愚かだと思わないほうがいい
自分を賢明だと思うのと同じくらい、救いがない

新たな歌が芽吹く地平を枯らさないように
日々、耕し、種を蒔き、水をやり、光をあてる

そこでおまえを待っている愚直な百姓の地平がある

 

 

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「治療者のリアリズム」20230713

2023-07-13 | 参照

 

 

──中井久夫『徴候・記憶・外傷』

(「トラウマとその治療経験」)
治療者内面の正義感はしばしば禁じ得ないが、治療の場の基底音としては、
むしろ、慎ましい「人性(あるいは運命)への静かな悲しみ」のほうがふさわしいだろう。
外傷はすべての人に起こりうることであり、「私ではなくなぜあなたが」(神谷由美子)とともに
「傷つきうる柔らかい精神」(野田正彰『戦争と罪責』)への畏敬がなくてはなるまい。

 

 

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「こども世界」20230712

2023-07-12 | Weblog

 

まなざしだけを変えても、かんたんには変わらない
こども世界が変わるには先に変わるべきものがある、

こどもはもろく、したたで、切ない存在さ
無力で不安な存在さ
ひとりでは生きられない、頼る人間が要る
この絶対的要請のもとで生きている
生きることの中心に不安にある、必死なのさ

生き延びるためにはウソもつく
知ってるふりも知らないふりもする

スキをみてだましもする
みせびらかして自慢もする
こども世界は残酷でもありうる

感染しやすく、籠絡されやすく
天使にも悪魔にもなりうる

従順であることには理由がある
逆らうことにはさらに深い理由が潜んでいるf

心を占領するのはやさしい感情だけではない
やさしい感情が生き延びるには条件がある

そこだけで完結するこども世界はどこにも存在しない
すべては巨大な教室、おとな世界を鏡として

おとな世界が変化してはじめてこども世界が変化する
この原理はうごかすことができないと思うな

 

 

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「ハイコンテクストへ」20230711

2023-07-11 | Weblog

 

 

場面の加速転換、ノイズの氾濫
離反する知と情動
流れ込む状態遷移の激流

矛盾に満ちた体験流の中にいる

コンテクストの歪な変形
読解能力を超えた意味配列

追尾不可、デコード不能
解凍不可能、過剰な情報圧縮

解釈コードの切断、破砕、飛散
止まないノイズの乱入、迫るカオスの淵

アイドリング、ノッキング、エンジン停止
地べたに顔面が直撃する

システム崩壊の一歩手前
手に負えない、どうしたらいいのかわからない

明らかなことがある
こじ開ければ完全崩壊する

歯が立たない、小細工は要らない
残された方法は一つしかない

できるかどうかはわからない
むずかしいにちがいない

すべてを変数Xとして引き連れ
自然解凍が現象する地平
ハイコンテクストを見出す道だけが残されている

 

 

 

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「第三領域」20230710

2023-07-10 | Weblog

                                                          Barbara - La Solitude (Audio HQ) - YouTube

 

 

昼と夜と──

あれかこれか、選択を迫るものをしりぞけるように
ともにしおれて壊れてしまわないように
対立をほどき、ともにささえあうように

あれもこれも、どいつもこいつも
ひとつ残らず、生成りの素材として

昼と夜を重ね合わせて糸を通し
新たな生地を織り上げるように

全時間耕すために

どちらでもない生の時間をあつらえ
第三領域と名づけてみる

 

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「ゆるキャラ」20230710

2023-07-10 | Weblog

 

 

倫理、モラル、当為を語り出すと崩れていく

いらだち、焦燥、怒り、義憤、したり顔
キャラをはみ出す感情と思考が露出する

そうしてキャラの資格は失われていく

正義、真理、善なるものが占領してスペースが消える
ごろんとそこに寝そべることができなくなる

結局、それなのね
そっちの側にいたのね

どっちに向かってモノを言っているのか
はじめからそっち向いた姿が浮き彫りになることがある

知に怯え、知に脅され、知に嘲笑われ
知の専制に貶められた存在たちの落胆は小さくないと思う

 

 

 

 

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「展開域」20230709

2023-07-09 | Weblog

 

 

情動はひとつの色に染まりたがる
情動が示す一点にフォーカスすれば見えなくなる
ほんとうに視たかったものが視界から消える

情動はたったひとつの色を示して
鮮やかに世界を染め上げたいと望んでいる

ピリオドを打ってすきりしたい心のままに
望みどおりに完結させたい切断のエロスがある

(この基底のうごめきをどうもてなすのか)

吠えたいだけ吠えてみたらいい
吐き出したいだけ吐き出してかまわない
たっぷりとことん聴くことだけはできる

そのうえで知るべきことがある

展開はすべて予測可能な範囲に収まる
そして情動がしでかした後の片付けが待っている

後片付けをする存在は情動との直列を外すように
黙ってなすべきことをなすにちがいない

生の波形は情動を部分として含むように描かれていく
つまり、波形の全域を情動は覆うことはできない

わかりきったことの外、未踏の生の展開域がある
切断のエロスとは異なるエロスが生まれる展開域がある

そこへ向かって翔けて行きたいと願うなら
そのことを情動の外に刻んでおいたほうがいい

 

 

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