世界を記述して理解のポッケに収める
この作業には上も下も、優も劣もない
忘れないでいような
オノレの記述と理解にのぼせると見えなくなる
狼には狼の
羊には羊の
君には君の
俺には俺の
それぞれには固有の記述の流儀と作法がある
一匹一匹、ひとりひとり
カエルもミミズもオケラもアメンボだって
現実を、世界の姿を書きとめて生きる
どいつもこいつもそうして生きている
等しくすべては生命の必須の仕事だろう
そのことを頭に刻んだうえで覚えておこう
俺たちはなんのために世界を記述するのか
そこに在るものとして、単なる事実として
世界の姿を確定するためではない
確定項から逆算して生きるためではないな
手のほどこしようのないもの
なるようにしかならないもの
求めるのはそんな世界の姿ではない
そうではない記述のゲーム、用法がある
正義、正しさを競うゲームではない
真理の的当てゲームではない
記述の優劣を決めるゲームではない
ナイーブさ、やさしさを競うゲームでもない
記述と記述が出会い、交わり、連結し
カクテルされ、第三の視覚が立ち上がり
そこに世界に新たな奥行きが生まれる
トレースされる経験、ループする時間
見えるもの見えないもの、ここにあるものここにないもの
すべては資源として重なり、混ぜ合わされ
新たな予期とスコープ、感性が生み出され
新たなエロスにきらめく世界の姿が励起する
この作業はひとりひとり異なる記述から可能になる
みんなちがってみんないい、そうではないな
みんなちがうからこそいい、そう言わなくてはならない
そう言明できる地平を価値とすることはできる
記述と記述をカクテルする場所、それを開いて生きることはできる