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最新の治療法など、地元の医療情報を提供する「メディカルはこだて」の編集長雑記。

函館で医療・介護雑誌を発刊している超零細出版社「メディカルはこだて」編集長の孤軍奮闘よれよれ・ときどき山便り。

他には教えたくない病院のコスト削減策

2018年04月05日 15時55分20秒 | メディカルはこだて
第65号の特集は「他には教えたくない病院のコスト削減策」。

昨年10月27日、日本病院会副会長の万代恭嗣氏は中央社会保険医療協議会委員の退任の際、「利益なくして、果たせる使命なし」と語った。
万代氏は「医療が経済活動の一面を持つ意味では利益の確保は必須であり、統制経済の側面がある診療報酬の中で、医療機関は何とか工夫して運営しているのが現状である」と病院運営の立場から、その厳しさを訴えたものだ。
渋沢栄一の「利益なくして、果たせる使命なし。そろばんなき慈善は寝言である」の言葉が示すように、病院が質の高い医療を提供するためには、適切な収益の確保が必要である。
しかし、診療報酬の伸びが難しいなど、病院を取り巻く外部環境が厳しさを増していて、収益改善には経営コストの圧縮が強く求められるようになっている。
コスト削減は医薬品や医療材料のほか、保守管理、消耗品、衛生清掃、電力、水道、通信など、病院のさまざまな部門が対象となるため、一部門のコスト削減額は小さくても、病院全体では大きな成果も期待できる。
病院は生き残りをかけた淘汰の時代に突入している。
効率化とコスト削減に恒常的に取り組み、医療の質と同時に病院経営の質を高めた病院のみが競争に勝ち残ることができる。


◎委託業務の契約見直し 電気監視モニターの設置
西堀病院は平成27年4月より、医療廃棄物の処理を西武建設運輸(岸寛樹社長)へ変更した。
西武建設運輸は平成26年市内亀田中野町に産業廃棄物の中間処理施設(焼却施設)と管理型最終処分場を完成、運用を開始した。
同病院事務次長の河合俊史さんは「平成26年の秋に施設と処分場を訪れて、実際に廃棄物の処理過程を見学。
このような処分場や施設は道南では初めての試みでしたが、焼却の技術やクローズド型の最終処分場などの設備を高く評価しました」と語る。
産業廃棄物の最終処分場も焼却施設もなかった道南地域では、多くの産業廃棄物は道央などへ輸送して処理を行うなど、地元企業は運賃コストの負担を強いられてきた。


西堀病院事務次長の河合俊史さん


◎新電力への転換 感染性廃棄物を地元で処理
電気事業の規制緩和は2016年4月から電力完全自由化となり、低圧電力を含むすべての電気需要家に対して自由に電力会社を選べるようになった。
函館脳神経外科病院は昨年11月に新電力へ転換、エフパワー(本社東京都)を採用した。
事務部長の西谷啓太さんは「当院でも電力完全自由化を機に新電力への移行を真剣に検討してきました。
新電力会社の試算でも電気料金が下がることはわかりましたが、新電力の安定供給や経営状態についての不安部分も多いことから、移行については検討を中断した経緯があります」。
転機は昨年、函館地区病院事務長会での新電力に切り替えた市内病院の報告だった。
「函館の病院が新電力を採用したように、道内でも自治体や企業、病院などが割安な新電力に切り替える動きが広がっています。
北海道電力の電気料金が高止まりなことも、新電力への転換を決断しました」。


函館脳神経外科病院事務部長の西谷啓太さん


◎職員提案制度の実施 業務委託の見直し
函館中央病院は昨年1月から全職員を対象とした「職員提案制度」を実施している。
提案内容は業務効率化、節約、増収、その他の4区分とし、提出者は記名あるいは無記名のどちらでも構わない。
この提案書に関しては職場長を経由する必要はなく、経営企画課に直接提出もしくは、目安箱へ投書する。
経営企画課係長の須摩直樹さんは「提案制度を開始してから1年間で約80件の提案がありました。
そのうち節約に関するものは約40件と半数に達しています」と説明する。
また職場毎にコストマネージャーを配置し、その会議を月1回実施するなど経費節減に努めてきた。
「職員提案制度で採用されたものは、コピー用紙の裏紙使用や感染対策に考慮した上でのディスポ(単回使用廃棄)グローブの使い分けなどです」。
提案によって気づかされたことは多いと須摩さんは話す。
「職員の経費削減に関する意識付けや情報共有の点においても効果はありますので、今後も提案制度は継続していきます」。


函館中央病院経営企画課係長の須摩直樹さん


◎エレベーター保守/車輌管理の一括契約
函館渡辺病院の木村建さんは2015年の事務部長就任以来、「あたりまえですが、用度施設課の用度担当とタイアップし、あらゆる費用に関してのコスト削減の意識を持つこと。そして常に経費に関して敏感であることを徹底しています」と語る。
「病院は診療報酬など様々な環境変化による経営課題への対応を迫られています。経営面ではこれまでの収益を維持することは容易ではなく、経費削減は病院経営にとっては重要な改善策と位置づけられます」。
経費節約・削減の新たな取り組みの成果は、主なもので2016年は8項目約1400万円、2017年には25項目約2000万円に達している。
同病院では一昨年の10月から職員が出張する際の航空券については現物支給をするようになった。
「事前に出張日は決まっていますので、病院が一括して航空券を購入するようにしました。
航空券は早いほど料金が安くなります。購入する際は複数の旅行業者とインターネットも利用していて、年間
の削減額は約120万円です」。
木村さんは新幹線やJR特急列車の指定席切符の申し込みについては『えきねっと』による現物支給も検討中だ。「切符は利用前に駅での受け取りが必要ですが、月2回程度に集約すれば、十分に対応できると考えています」。


函館渡辺病院事務部長の木村建さん


◎マイクロコージェネレーションシステム導入
大津波によって多くの命を一瞬にして奪った平成23年の東日本大震災では、沿岸部を中心に数多くの医療機関が機能不全に陥った。同病院では多大な被害をもたらした東日本大震災を教訓とし、地震や台風、雷などによる災害時の対策として、エネルギー利用を抜本的に見直すことにした。
同病院総務管理課主任係長の佐々木康人さんは「電子カルテをはじめ院内外との医療・介護のネットワーク、各種検査やモニタリングを行う医療機器、上下水や冷暖房その他のライフラインなど様々なものが電力に依存しており、停電による電力停止は病院機能を一気に奪ってしまうため、最良な医療の提供が困難になる」と語る。
同病院は停電に備えた非常用発電装置を設けていたが、長時間停電した場合の対応は困難だった。
「災害時の病院機能を維持するために取り組んだことは、非常用発電設備を大型化(125kWの発電能力)することに合わせ、購入電力量の削減や熱エネルギーの再利用による省エネルギー(二酸化炭素の削減)を目的としたマイクロコージェネレーションの導入でした」。
マイクロコージェネレーションは常用の小型発電機を用いて、電気や熱、蒸気など2つ以上の異なったエネルギーを同時に発生させ、それぞれ有効に活用するシステムのこと。
同病院では従来使用してきたA重油ボイラー(暖房・給湯用)2機のうち1機を停止して、天然ガス(都市ガス)を燃料としたマイクロコージェネレーションシステムを導入。同時に高能率の天然ガスボイラーも1機設置した。


高橋病院総務管理課主任係長の佐々木康人さん


◎地下水活用システムの導入 共同購入組織への加入
2016年4月の電力小売り全面自由化以降、道内では新電力が相次いで参入、割安な電気料金を売りに契約数を伸ばしている。
函館市内でも多くの病院が新電力の切り替えを加速させているが、函館五稜郭病院は新電力に全面的に切り替えるのではなく、2つの電力会社と契約するミックス型に変更した。
資材課長の清水順一さんは「電気料金は基本料金と従量制料金とに大きく分けることができますが、2つの電力会社と契約したことで、基本料金分が安く抑えられ、削減額は最大となりました。
今年1月1日より新電力への切り替えをおこない、受電契約割合は北ガス49.5%、北電50.5%です」と語る。
病院では道央圏でミックス型を採用しているところはあるが、函館や道南地区では珍しい。
また契約電力の上限を超える部分は自家発電機を稼働させ発電による電力供給としている。
「自家発電機は災害時における停電などのBCP(事業継続計画)対策として設置しています。
微妙なバランスの受電契約割合は、削減額等のシミュレーション結果で選択したものです」。
電気料金は1年契約で、受電契約割合を含めた見直しは毎年行っていく。
「当院の電気料金は年間約1億円。削減額については年間730万円を見込んでいます」。


函館五稜郭病院資材課長の清水順一さん


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