最新の治療法など、地元の医療情報を提供する「メディカルはこだて」の編集長雑記。

函館で地域限定の医療・介護雑誌を発刊している超零細出版社「メディカルはこだて」編集長の孤軍奮闘よれよれ・ときどき山便り。

災害時における透析施設の対応と課題。MCA無線は非常時の連絡手段として活躍

2019年03月29日 17時42分58秒 | メディカルはこだて
第69号の特集は「災害時における透析施設の対応と課題。MCA無線は非常時の連絡手段として活躍」

昨年9月6日の胆振東部地震は、北海道全域の約295万戸が停電する全域停電(ブラックアウト)という異常事態を引き起こした。この大規模停電は全道の市民生活に大きな混乱をもたらしたが、特に電気と水が途絶えると施行不能に陥る人工透析医療への影響は甚大であった。大規模停電後、函館泌尿器科医会透析部会では人工透析を提供している函館・七飯地区の14の医療機関を対象に緊急アンケートを実施した。
その結果を12月にまとめ、今年1月末には同部会の集会で報告、当時の医療現場の状況や問題点を共有した。さらに災害時における新たな体制作りや自家発電機の新規導入、MCA無線運用方法の見直しなどについて協議した。
2011年の東日本大震災では、大津波に襲われた沿岸部を中心に数多くの医療機関が機能不全に陥った。この大震災以降、災害時に向けた透析施設間のネットワーク作りに取り組んできたのが五稜郭ネフロクリニックの鈴木勝雄院長だ。函館泌尿器科医会は泌尿器科以外の透析医を取り組む形で「函館泌尿器科医会透析部会」を発足させ、透析施設間の緊急時の通信手段として、2013年3月にデジタル業務用移動通信「MCA無線」を導入した。MCA無線は一般の無線と違って個々人が特殊な免許を取得する必要がなく、自治体や企業などにおける豊富な導入実績がある。同部会では函館・七飯地区の14施設にMCA無線を導入、MCA無線による送受信訓練を実施してきたが、全域停電の際の通信手段として威力を発揮した。
今回の大規模停電に対して、透析施設はどのような対応をしたのか。函館泌尿器科医会透析部会のアンケート結果や集会での協議などについて、五稜郭ネフロクリニックの鈴木勝雄院長に話を聞いた。2回連載する。


五稜郭ネフロクリニックの鈴木勝雄院長


MCA無線機

一定数の周波数を多数の利用者が共同で利用するMCA方式を採用した業務用無線システム。混信に強く、無線従事者の資格が必要ないなどの特徴がある。
利用者は同じ識別符号を持った会社等のグループ単位ごとに無線通信を行うことができ、他のグループとは通話できないようになっている。


道内初の最大震度7を記録した昨年の胆振東部地震では、厚真町にある火力発電所の発電機が損壊したことから、全域停電(ブラックアウト)という未曾有の事態が発生した。透析医療については自家発電のある施設のほとんどは自前でまかなうことができたが、設備のない施設は他の施設に透析を依頼することを余儀なくされた。函館では3施設が臨時透析の患者に対応したが、函館五稜郭病院では6日と7日の2日間で78人の透析患者を受け入れた。停電時の対応について、同病院臨床工学科科長の雲母公貴さんに話を聞いた。
同病院は2016年10月に「透析センター」をリニューアルした。リニューアルのポイントは患者の療養環境と治療の質の重視で、治療面では電気再生純水装置の新規導入により、超純水透析液を使用した治療が可能になった。現在のベッド数は42床。血液透析には血液中の老廃物の除去率を高めたオンライン透析がある。同病院では一部の装置でオンライン透析を行っているが、今後はすべての装置でオンライン透析が出来るように整備計画を進めている。同病院の臨床工学科に在籍する臨床工学技士は27人。当日は当直の技士が地震直後より院内ラウンドを開始して、院内の被災状況を確認した。最初の技士が駆け付けたのは午前3時半。すぐに透析センターと手術室の状況を確認、MCA無線の
電源をオンにして待機する。診療の体制に影響を与える被害は確認されず、午前7時までに8人が集合した。


函館五稜郭病院臨床工学科科長の雲母公貴さん

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「メディカルはこだて」第69... | トップ | アドバンス・ケア・プランニ... »
最新の画像もっと見る

メディカルはこだて」カテゴリの最新記事