医師不足やコンビニ受診による救急医療崩壊の危機、少子高齢化の進展や市民の医療に対する意識の変化などから、医療機関が地域住民や患者の啓発に乗り出す動きが目立ってきた。地域医療が抱える問題を解決するためには、住民や患者に問題への理解を促し、参加意識を高めることが重要で、そのためには医療者と患者が情報を共有し、信頼関係を基に協力する「医患連携」を進めていかなければならない。
今回(第52号)の特集では、夜間急病センターの診療時間延長や二次救急病院の現状を知ってもらうための市民講座開催へ向けて、行政やマスメディアと協力しながら啓発活動へ積極的な取り組みを予定する函館市医師会。函館五稜郭病院とかかりつけ医が連携して治療を行う「1疾患2人主治医制(D2ーLink制度)」を開始した函館五稜郭病院。住民と地域医療の問題共有をする啓発活動「わが街健康プロジェクト。」で注目の取り組みを続けている倉敷(岡山県)の動きをリポートした。
特集の概略は下記の通り。
「救急医療は行政とも協力しながら市民への啓発活動に積極的に取り組む」
◎函館市医師会の本間哲会長(本間眼科医院院長)
今年6月任期満了に伴う役員改選で函館市医師会の新会長に就任したのが本間眼科医院の本間哲院長だ。
本間会長は同医師会の理事を5期10年、副会長を3期6年とこれまで16年間医師会の役員を務めてきた。
紹介型病院、開放型病院として開院した函館市医師会病院の特徴は病院や診療所からの紹介患者の比率が90%以上で、高度な医療機器や240床あるベッドすべてを他の医療機関の医師が自由に使用することができる。平成 年には地域の病院や診療所などを後方支援するという形で医療機関の機能の役割分担と連携を目的に創設された「地域医療支援病院」となった。
「開院後の約10年間は厳しい経営状況が続きました。その後は運営も成長軌道に乗って安定した経営基盤を確立してきましたが、この2年間は診療報酬改訂の影響を受けています」と本間会長は話す。
「近年の医師不足は医師会病院も例外ではありません」。以前には循環器内科医師の医局撤退があったが、平成 年より常勤医師が赴任、地域開業医の非常勤としての応援もあり、診療は継続されている。また予定をしていた回復期リハ病棟や亜急性期病床への転換も行われ、対応疾患の幅も拡がってきた。
「医師会病院はかかりつけ医と連携し、患者や地域社会の健康作りに貢献することで、信頼され選ばれる病院でなくてはいけません。今後はオープンシステムの積極的な活用、救急医療体制や地域包括ケアシステムに関連した病院の役割など、変化に対応する柔軟な体制作りを目指していきます」。
「医師会会長に就任して、まず取り組みたいと考えたのは救急医療体制の確立でした」。今年7月函館市夜間急病センターは診療時間を30分延長し、午前0時半までとした。これまでは夜間急病センターが終了する0時過ぎを待ってから、病院へ行くケースも少なくなかった。
「夜間急病センターの診察時間延長は、軽症患者が安易に二次病院を利用するコンビニ受診を減らす狙いがありました。午前0時以降は二次救急病院が患者を診る合理的なシステムを構築してきましたが、医局制度が崩壊したことで地方で働く医師が不足しています。もちろん函館も例外ではありません。二次救急病院に緊急性のない軽症患者が安易に訪れると、重症患者を診察するはずの夜勤の医師が疲弊してしまいます」。
「夜間急病センターの診療時間延長をもっと多くの市民に伝えると同時に、二次救急病院の現状を知ってもらうための市民講座を開催するなど、行政やマスメディアと協力しながら啓発活動にも積極的に取り組んでいく必要があります」。
「1疾患2人主治医制(D2ーLink制度)を開始。函館五稜郭病院とかかりつけ医が連携して治療」
◎函館五稜郭病院へ通院している患者に、D2ーLink制度を説明し、かかりつけ医の情報を提供している函館五稜郭病院の木下優子さん(医療総合サービスセンターかかりつけ医調整係)。
救急医療は医療の原点であり、いつ起こるか分からない体の異変に直ぐに対応し、患者の不安を出来るだけ取り除くことが理想だが、365日24時間すべての患者に専門医や看護師、検査技師などが対応して診療することは限られた医療資源の中では不可能だ。
厚生労働省は二次救急病院など急性期病院の外来診療の役割は急性期の患者を診察することであり、症状が落ち着いた患者に関しては、かかりつけ医(診療所等)のもとで継続治療を行うことが望ましいという指針を出している。
道南の地域がん診療連携拠点病院の一つである函館五稜郭病院(老松寛病院長)も診療所との連携を強化し、症状が安定した患者が安心して診療所で診察してもらえるような病診連携の強化を推進のために、新たにD2ーLink(ディーツーリンク)制度をスタートさせた。
D2ーLink制度について、同病院医療総合サービスセンターかかりつけ医調整係の木下優子さんは「1疾患2人主治医制のことです。高度な検査や治療など、急性期医療の役割を担う函館五稜郭病院の主治医と症状が落ち着いた患者や日常的な健康管理の役割を担うかかりつけ医とが連携して、患者さんの治療に当たります」と教えてくれる。木下さんは看護師として同病院の病棟や外来勤務を経験、今年3月からかかりつけ医調整係として、患者のホームドクター選びに尽力している。
函館五稜郭病院の主治医を信頼し、通院している患者は多い。そうした患者へかかりつけ医を紹介すると、「あたかも病院から追い出されるようなイメージも持つ患者さんもいます」と木下さんは言う。同病院でD2ーLinkの対象となるのは胃食道逆流症、軽度な糖尿病、高血圧、脂質異常症、喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、慢性糸球体腎炎、膝関節注射などの疾患で、急性期を脱し状態が落ち着いている患者だ。
それではD2ーLink制度による2人の主治医を持つことで、患者はどのようなメリットがあるのだろうか。「当院のような急性期病院では 以上の診療科があることから、患者さん自身がどの診療科を受診していいのか迷うことが少なくありません。そのため、かかりつけ医に診察をしてもらうことで最も適した医療機関や診療科を紹介してもらうことが可能になります」。かかりつけ医が行った検査の結果や診察の状況などは同病院へ知らされるので、再び同じような検査を繰り返すことはない。かかりつけ医からの紹介状を持って受診した場合には、保険外併用療養費(200床以上の病院を受診した際に初診料とは別にかかる費用)が必要ないことも患者にとって大きなメリットになる。
「倉敷の「わが街健康プロジェクト。」は15病院が連携。住民と地域医療の問題共有をする啓発活動」
◎2013年11月に開かれた「わが街プロジェクト。」の第1回講演会。
会場の倉敷中央病院大原記念ホールには150人を超える市民が参加した。
国の医療提供体制は国民皆保険制度に基づき、患者が必要とする医療を受けることのできるような整備が進められてきた。このことは国民の健康を確保するための重要な基盤となってきたが、少子高齢化の進展や国民の医療に対する意識の変化、さらに医師不足など地域医療が抱える問題を解決するためには、患者が健康に対する自覚と医療への参加意識を高めることが重要とされている。
患者が自分自身の健康について考え、治療に参加するためには医療者と患者の相互協力が不可欠となるが、病気や治療法、地域医療などの意識を共有するために医療機関から地域住民や患者に向けた積極的な啓発活動を行う「医患連携」が注目されている。
9月 日岡山県倉敷市の倉敷市民会館では倉敷中央病院(倉敷市美和)をはじめ、急性期や亜急性期、回復期、リハビリ、在宅医療などの15病院が共催し、2013年 月から行われている「わが街健康プロジェクト。」の講演会が開催、第4回目を迎えた会場には180人の市民が参加した。
市民向けの医療講演会は全国各地で行われているが、地域の各医療機関が協力して開催することや、参加した回数により3つのランクを設定し、市民が地域医療のサポーターとしての役割を担うことも目標にしている点など、医療者と患者、市民が地域医療を共に考えることのできる画期的な取り組みといえる。この「わが街健康プロジェクト。」を始めたのは倉敷中央病院の地域医療連携・広報部のスタッフで、その後は 病院のメンバーが加わって一緒にプロジェクトを育ててきた。
リーダー役を務めてきた十河浩史さんは、「出発点は地域完結型医療は1病院でできることではなく、地域の医療機関みんなで創るものだという思いでした」と強調する。
◎倉敷中央病院の十河浩史さん(地域医療連携・広報部部長)
「医療は社会に必要なベースとなるインフラと考え、まずは連携病院で運営を開始することとしました」。「わが街健康プロジェクト。」は地域完結型医療を共に考え、こころ通う地域医療を実現するための活動だが、それだけではなかなか興味を持ってもらえないことも考慮して、「病気の予防、健康の維持」の話をセットとしている。
倉敷の活動の原型となったのは飯塚病院(福岡県飯塚市)の「地域医療サポーター制度」だ。飯塚市やその周辺は夜間や休日に緊急性のない軽症患者が訪れるコンビニ受診が多く、地域住民に適正受診や健康の自己管理などを訴えることから始められた。
同病院と飯塚病院とは、以前より様々な分野で情報交換をしてきた。倉敷の異なる点は複数の病院による共催や、倉敷市、倉敷保健所、商工会議所の後援、スタンプカード、健やかブース(健康測定、健康相談)などにある。プロジェクトの活動テーマは①医療機関と上手に付き合う、②病気の予防と健康維持、③倉敷をもっと好きになる。この3つのテーマの実現にむけて住民自身が行動し、さらに周囲に伝える人を「わが街健康サポーター」と呼んでいる。そしてプロジェクトに興味があれば、誰でも参加ができる。
十河さんは「わが街健康プロジェクト。」の活動から患者視点の意見を吸い上げ、院内の改善にも繋げようとしている。「第1回の開催前ですが、市民への説明を行った際にいくつかの課題を提示されました。対話型広報なので、自分達の意に沿わない現実があることに向き合う必要があります。その課題については院内の委員会で報告し、改善を依頼していますが、具体的な改善アクションには至っていません」。医療者側に都合のよいことだけを伝えるためのプロジェクトであってはいけないと十河さんは話す。患者参加が創る新しい医療の形を目指して、十河さんを含めたプロジェクトメンバーの挑戦と努力はこれからも続いていく。
今回(第52号)の特集では、夜間急病センターの診療時間延長や二次救急病院の現状を知ってもらうための市民講座開催へ向けて、行政やマスメディアと協力しながら啓発活動へ積極的な取り組みを予定する函館市医師会。函館五稜郭病院とかかりつけ医が連携して治療を行う「1疾患2人主治医制(D2ーLink制度)」を開始した函館五稜郭病院。住民と地域医療の問題共有をする啓発活動「わが街健康プロジェクト。」で注目の取り組みを続けている倉敷(岡山県)の動きをリポートした。
特集の概略は下記の通り。
「救急医療は行政とも協力しながら市民への啓発活動に積極的に取り組む」
◎函館市医師会の本間哲会長(本間眼科医院院長)
今年6月任期満了に伴う役員改選で函館市医師会の新会長に就任したのが本間眼科医院の本間哲院長だ。
本間会長は同医師会の理事を5期10年、副会長を3期6年とこれまで16年間医師会の役員を務めてきた。
紹介型病院、開放型病院として開院した函館市医師会病院の特徴は病院や診療所からの紹介患者の比率が90%以上で、高度な医療機器や240床あるベッドすべてを他の医療機関の医師が自由に使用することができる。平成 年には地域の病院や診療所などを後方支援するという形で医療機関の機能の役割分担と連携を目的に創設された「地域医療支援病院」となった。
「開院後の約10年間は厳しい経営状況が続きました。その後は運営も成長軌道に乗って安定した経営基盤を確立してきましたが、この2年間は診療報酬改訂の影響を受けています」と本間会長は話す。
「近年の医師不足は医師会病院も例外ではありません」。以前には循環器内科医師の医局撤退があったが、平成 年より常勤医師が赴任、地域開業医の非常勤としての応援もあり、診療は継続されている。また予定をしていた回復期リハ病棟や亜急性期病床への転換も行われ、対応疾患の幅も拡がってきた。
「医師会病院はかかりつけ医と連携し、患者や地域社会の健康作りに貢献することで、信頼され選ばれる病院でなくてはいけません。今後はオープンシステムの積極的な活用、救急医療体制や地域包括ケアシステムに関連した病院の役割など、変化に対応する柔軟な体制作りを目指していきます」。
「医師会会長に就任して、まず取り組みたいと考えたのは救急医療体制の確立でした」。今年7月函館市夜間急病センターは診療時間を30分延長し、午前0時半までとした。これまでは夜間急病センターが終了する0時過ぎを待ってから、病院へ行くケースも少なくなかった。
「夜間急病センターの診察時間延長は、軽症患者が安易に二次病院を利用するコンビニ受診を減らす狙いがありました。午前0時以降は二次救急病院が患者を診る合理的なシステムを構築してきましたが、医局制度が崩壊したことで地方で働く医師が不足しています。もちろん函館も例外ではありません。二次救急病院に緊急性のない軽症患者が安易に訪れると、重症患者を診察するはずの夜勤の医師が疲弊してしまいます」。
「夜間急病センターの診療時間延長をもっと多くの市民に伝えると同時に、二次救急病院の現状を知ってもらうための市民講座を開催するなど、行政やマスメディアと協力しながら啓発活動にも積極的に取り組んでいく必要があります」。
「1疾患2人主治医制(D2ーLink制度)を開始。函館五稜郭病院とかかりつけ医が連携して治療」
◎函館五稜郭病院へ通院している患者に、D2ーLink制度を説明し、かかりつけ医の情報を提供している函館五稜郭病院の木下優子さん(医療総合サービスセンターかかりつけ医調整係)。
救急医療は医療の原点であり、いつ起こるか分からない体の異変に直ぐに対応し、患者の不安を出来るだけ取り除くことが理想だが、365日24時間すべての患者に専門医や看護師、検査技師などが対応して診療することは限られた医療資源の中では不可能だ。
厚生労働省は二次救急病院など急性期病院の外来診療の役割は急性期の患者を診察することであり、症状が落ち着いた患者に関しては、かかりつけ医(診療所等)のもとで継続治療を行うことが望ましいという指針を出している。
道南の地域がん診療連携拠点病院の一つである函館五稜郭病院(老松寛病院長)も診療所との連携を強化し、症状が安定した患者が安心して診療所で診察してもらえるような病診連携の強化を推進のために、新たにD2ーLink(ディーツーリンク)制度をスタートさせた。
D2ーLink制度について、同病院医療総合サービスセンターかかりつけ医調整係の木下優子さんは「1疾患2人主治医制のことです。高度な検査や治療など、急性期医療の役割を担う函館五稜郭病院の主治医と症状が落ち着いた患者や日常的な健康管理の役割を担うかかりつけ医とが連携して、患者さんの治療に当たります」と教えてくれる。木下さんは看護師として同病院の病棟や外来勤務を経験、今年3月からかかりつけ医調整係として、患者のホームドクター選びに尽力している。
函館五稜郭病院の主治医を信頼し、通院している患者は多い。そうした患者へかかりつけ医を紹介すると、「あたかも病院から追い出されるようなイメージも持つ患者さんもいます」と木下さんは言う。同病院でD2ーLinkの対象となるのは胃食道逆流症、軽度な糖尿病、高血圧、脂質異常症、喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、慢性糸球体腎炎、膝関節注射などの疾患で、急性期を脱し状態が落ち着いている患者だ。
それではD2ーLink制度による2人の主治医を持つことで、患者はどのようなメリットがあるのだろうか。「当院のような急性期病院では 以上の診療科があることから、患者さん自身がどの診療科を受診していいのか迷うことが少なくありません。そのため、かかりつけ医に診察をしてもらうことで最も適した医療機関や診療科を紹介してもらうことが可能になります」。かかりつけ医が行った検査の結果や診察の状況などは同病院へ知らされるので、再び同じような検査を繰り返すことはない。かかりつけ医からの紹介状を持って受診した場合には、保険外併用療養費(200床以上の病院を受診した際に初診料とは別にかかる費用)が必要ないことも患者にとって大きなメリットになる。
「倉敷の「わが街健康プロジェクト。」は15病院が連携。住民と地域医療の問題共有をする啓発活動」
◎2013年11月に開かれた「わが街プロジェクト。」の第1回講演会。
会場の倉敷中央病院大原記念ホールには150人を超える市民が参加した。
国の医療提供体制は国民皆保険制度に基づき、患者が必要とする医療を受けることのできるような整備が進められてきた。このことは国民の健康を確保するための重要な基盤となってきたが、少子高齢化の進展や国民の医療に対する意識の変化、さらに医師不足など地域医療が抱える問題を解決するためには、患者が健康に対する自覚と医療への参加意識を高めることが重要とされている。
患者が自分自身の健康について考え、治療に参加するためには医療者と患者の相互協力が不可欠となるが、病気や治療法、地域医療などの意識を共有するために医療機関から地域住民や患者に向けた積極的な啓発活動を行う「医患連携」が注目されている。
9月 日岡山県倉敷市の倉敷市民会館では倉敷中央病院(倉敷市美和)をはじめ、急性期や亜急性期、回復期、リハビリ、在宅医療などの15病院が共催し、2013年 月から行われている「わが街健康プロジェクト。」の講演会が開催、第4回目を迎えた会場には180人の市民が参加した。
市民向けの医療講演会は全国各地で行われているが、地域の各医療機関が協力して開催することや、参加した回数により3つのランクを設定し、市民が地域医療のサポーターとしての役割を担うことも目標にしている点など、医療者と患者、市民が地域医療を共に考えることのできる画期的な取り組みといえる。この「わが街健康プロジェクト。」を始めたのは倉敷中央病院の地域医療連携・広報部のスタッフで、その後は 病院のメンバーが加わって一緒にプロジェクトを育ててきた。
リーダー役を務めてきた十河浩史さんは、「出発点は地域完結型医療は1病院でできることではなく、地域の医療機関みんなで創るものだという思いでした」と強調する。
◎倉敷中央病院の十河浩史さん(地域医療連携・広報部部長)
「医療は社会に必要なベースとなるインフラと考え、まずは連携病院で運営を開始することとしました」。「わが街健康プロジェクト。」は地域完結型医療を共に考え、こころ通う地域医療を実現するための活動だが、それだけではなかなか興味を持ってもらえないことも考慮して、「病気の予防、健康の維持」の話をセットとしている。
倉敷の活動の原型となったのは飯塚病院(福岡県飯塚市)の「地域医療サポーター制度」だ。飯塚市やその周辺は夜間や休日に緊急性のない軽症患者が訪れるコンビニ受診が多く、地域住民に適正受診や健康の自己管理などを訴えることから始められた。
同病院と飯塚病院とは、以前より様々な分野で情報交換をしてきた。倉敷の異なる点は複数の病院による共催や、倉敷市、倉敷保健所、商工会議所の後援、スタンプカード、健やかブース(健康測定、健康相談)などにある。プロジェクトの活動テーマは①医療機関と上手に付き合う、②病気の予防と健康維持、③倉敷をもっと好きになる。この3つのテーマの実現にむけて住民自身が行動し、さらに周囲に伝える人を「わが街健康サポーター」と呼んでいる。そしてプロジェクトに興味があれば、誰でも参加ができる。
十河さんは「わが街健康プロジェクト。」の活動から患者視点の意見を吸い上げ、院内の改善にも繋げようとしている。「第1回の開催前ですが、市民への説明を行った際にいくつかの課題を提示されました。対話型広報なので、自分達の意に沿わない現実があることに向き合う必要があります。その課題については院内の委員会で報告し、改善を依頼していますが、具体的な改善アクションには至っていません」。医療者側に都合のよいことだけを伝えるためのプロジェクトであってはいけないと十河さんは話す。患者参加が創る新しい医療の形を目指して、十河さんを含めたプロジェクトメンバーの挑戦と努力はこれからも続いていく。