最新の治療法など、地元の医療情報を提供する「メディカルはこだて」の編集長雑記。

函館で地域限定の医療・介護雑誌を発刊している超零細出版社「メディカルはこだて」編集長の孤軍奮闘よれよれ・ときどき山便り。

死者のおくりかた

2012年11月21日 19時23分35秒 | 新聞コラム
北海道新聞みなみ風の「立待岬」。11月1日掲載のタイトルは「死者のおくりかた」。



 人類初の月面着陸に成功し、8月に死去した米宇宙飛行士のニール・アームストロング氏が故人の遺志で海に水葬される。このニュースから水葬をイメージしていると、奥会津での土葬の風習を取り上げたTV番組を思い出した。特に縦長の木棺に手足を曲げて座らせるように入れる場面は印象に残った。
 葬送は時代とともに変化してきたことや様々な方法があることを「世界の葬送」(松濤弘道監修)は教えてくれる。戦前までは日本も土葬が一般的だったが、日本の土葬には体を伸ばした姿勢で埋める方法と、私が見た手足を曲げる屈葬があった。屈葬の理由は胎児姿勢説と死霊の動きを拘束するという説が有力視されている。
 閉所恐怖症も理由のひとつだが、死んで火葬炉に入りたくない。自然まかせに風化させる風葬や鳥が天高く肉体を運んでくれる鳥葬が好ましい。
 「世界の葬送」によると、風葬は沖縄の神の島と呼ばれている久高島で1960年代まで行われていた。この島の風葬地の光景ばかりか棺のふたを開けて遺体を撮影、発表したのが岡本太郎だったと初めて知る。島の人々は激しいショックを受けた。遺族の中には精神に異常をきたす人もいてそれ以降、風葬は廃止される。日本には水葬もあった。昔、出雲では子どもや妊婦が亡くなると、再生を願い遺体を石棺に入れて宍道湖に沈めた。
 宍道湖は心にしみる色をしているが、再び訪れるときには別な色に感じるかもしれない。
                         (メディカルはこだて発行・編集人)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする