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鉛が中国の子供を脅かす3

2006-08-03 22:20:59 | Weblog
写真は昆明の中心地を流れる玉帯河。水はよどみ、においもひどい。
【基準値の甘すぎる日本】
 ひるがえって我が日本での対策は万全かというと、調べれば調べるほど鉛汚染の上限値が世界の後進国であることに気づかされる。中国での血中鉛の正常上限値は99μg/ℓ、つまり9.9μg/㎗で、世界保健機関(WHO)が安全とする基準値10μg/㎗に準じている。ところが日本では上限値の目安として40μg/㎗という日本産業衛生学会の生物学的許容値があるだけなのだ。生物学的許容値とは、この値の範囲内であれば、ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度なのだという。

 同学会では、そのような基準値を設ける一方で、30~40μg/㎗で平衡機能の変化や抹消神経伝導速度の低下が始まると、自らの基準値の甘さを認めるかのような指摘も発表している。しか日本での大規模な測定では、子供を対象としたものは皆無で、大人に対しても高度経済成長を過ぎたころから、行われていない。

【1970年、新宿の事件が大規模測定の最初で最後】
 その測定も、自動車の排ガス中の鉛による健康障害が新聞沙汰になり、初めて本格的に始められた。時は高度経済成長期の1970年、場所は東京都新宿区牛込柳町。皇居から2キロほど離れた所を一周する外苑東道と大久保通りの交差点付近でのことだ。

 1970年に民間団体がその住民を集団検診したところ、多くが鉛中毒と診断され、新聞沙汰となった。これを受けて翌年、東京都立衛生研究所がのべ2000人以上を調査したところ、鉛患者は1名もいない、ということで事態は一方的に収束された。

 以後、同研究所は追跡調査を続けたが、10年後、血中鉛濃度が著しく下がったとして終了となった。その時の数値が残されているので見ると、1971年のものでは最高値が36μg/㎗で平均は10μg/㎗+-5.9、1980年のものでは平均5.6μg/㎗+-2.0。

 確かに最高値でも日本の上限値を超えてはいないが、他国では不眠や痙攣などが出ると報告されている値である。

 先日、東京都立衛生研究所改め健康安全研究センタ-に問い合せたところ、当時の担当者に話を聞くことができた。基準値については「住んでいる地域や環境によって変わってきます。40μg/㎗以上の数値で発症しない人もいますし、なんともいえません。」とのこと。さらに「鉛問題は欧米では敏感な問題ですね。」日本では終わってしまった話として片づけられてしまった。
 中国では鉛中毒について国が積極的に規制している。この姿勢の違いは大きい。
(この話、つづく)

※8月7日より18日まで雲南省に行っまいりますので、その間の更新は原則、お休みとさせていただきます。もし現地でインターネットカフェを見つけたら、いつもと違った、日記風の形で更新したいと思っています。機械音痴なので難しいかもしれませんが。
 今後ともよろしくおつきあいください。
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