読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

杉村春子 女優として女として 中丸美繪 文春文庫

2006-02-27 23:05:04 | 読んだ
杉村春子という女優は知っていた。
知っているといってもテレビドラマ或いはテレビでの映画などである。
いずれも「主役」ではなかった。

印象としては<話をしたら面白そうなおばさん>

しかし、この本を読むとそれはぜんぜん違うことがわかる。

著者は私より一歳年上である。従って、戦前から舞台で演劇をしていた杉村春子を知って興味を持って注目したとしても、1970年代以降である。(それでも15歳)

杉村春子は1906年生れであるから1970年には64歳である。
すでに完成されていた、といえるだろう。

しかし、この伝記で著者は「見てきたように」生まれた頃から語っている。
それは多くの資料を読み込み、多くの人に会って、杉村春子を知ろうとした結果であろう。
多分、ここに書かなかったことはこの3倍はあるのではないか。
それほど、緻密に杉村春子を語っている。

いいことも悪いことも、同じ筆致で淡々とそして愛情深く描いている。
従って、読んでいるとなんだか杉村春子をずっと見てきたように感じたりする、或いは「事件」がおきたときの杉村春子の行動がなんとなく予測できたりする。
そんなことで、実際にお目にかかって親しくなったら「大変な人」であるハズの杉村春子がなんだか「いとおしく」なってきたりするのである。

「数奇な生い立ち」であり、それゆえに「自分」というものの存在を常に確かめていたかったのかもしれない「杉村春子」を身近に感じさせてくれる本であり、一方では「文学座史」ともなっている。

「演劇」を観たことがない、そして、あまり観ようとも思わない私であり、役者のうまい下手もわからないのだが、この本を読むと、杉村春子というのはすごい女優だったんだろうと、「ああ一回くらい<欲望という名の電車>でも観とけばよかったな」と思うのである。・・・残念・・・
コメント
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