読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

週間 司馬遼太郎 -週間朝日MOOK-

2007-01-31 21:37:26 | 読んだ
私は怒っているのだ!

週刊朝日連載の「週間 司馬遼太郎」は、お気に入りの読物である。
だから、今までしたこともなかった「切り抜いてファイルする」ということをずっと続けてきたのである。
100金(100円ショップ)からB5版のクリアファイルを買ってきて、ファイルしていたのだ。

それなのに、まとめて本にした!
しかも、週刊誌の連載は途中からカラーをやめて白黒になっていたのに、この本はオールカラーなのである。

発売になった当時から昨日まで、本屋で見かけても絶対に手に取ることをしなかった。
「オレは、切抜きで行くんだもんね!白黒でもいいんだもんね!」と
心に固く誓っていたのである。

しかし、今年はどういうことか「暖冬」である。
それもとびきりの「暖冬」なにしろ1月に積雪がなかったのである。
堅い心も緩んでしまう「暖冬」なのである。

だから、昨日買ってしまった。
だって、オールカラーなんだもの。

この本って、連載が続く限り出版されるんだろうなあ。
そして私は買い続けるんだろうなあ。

かくして「週間 司馬遼太郎」は私の貸借対照表の<固定負債>となるのであった。

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男ぶり-しゃばけシリーズ- 畠中恵 小説新潮2月号

2007-01-30 22:39:18 | 読んだ
しゃばけシリーズである。

おなじみ江戸通町の廻船問屋兼薬種問屋・長崎屋の若旦那・一太郎が主人公で「妖(あやかし)」が登場する物語。

今回は
長崎屋を含む通町で火事がおき、長崎屋も類焼し、一太郎たちは焼け残った土蔵に仮住まいをしている、という出だしである。

病弱な一太郎は母たちが暮らす土蔵の倉座敷で、兄(といっても母が違う)の縁談について思っていた、そして母・おたえに
「どうして手代だったおとっつぁんと、婚礼をあげたの?」
と尋ね、母が父と結ばれる話を聞くのであった。

一太郎の祖母でおたえの母「おぎん」は皮衣(かわごろも)の名を持つ、齢三千年の大妖である。
その娘であるからして、母もタダモノではない。
そのタダモノでない母がどうして奉公人の父と結ばれたか、今回はそのお話である。

一太郎と同様に母・おたえも妖が見え妖と話すことができる人であった。
そしてその妖たちの力を借りて恋する人の抱える事件の謎をといたのである。
そしてそれが・・・

この物語-しゃばけシリーズ-も読後がほんわかするものである。
妖(あやかし)たちが登場するが、この妖怪たちが「悪」ではないのである。ただし妖怪であるから普通の人とは考え方が違うのであるが・・・

主人公・一太郎の設定が病弱であることとやさしいことが、妖怪が登場し時には殺人事件が起きるこの物語を殺伐としないものにしている。
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佳き日-お鳥見女房- 諸田玲子 小説新潮2月号

2007-01-29 18:27:52 | 読んだ
とうとう矢島家の長男・久太郎の祝言が行われる。
花嫁は何かと因縁があった水野越前守の鷹匠の娘・鷹姫とよべれている恵以である。

水野越前は失脚し恵以の実父は水野の転封先の山形に行き、花嫁方の親族として出席するのはわずかばかりであり、水野家とお鳥見役とのいざこざもあって、祝言はごく内輪で執り行われることになっている。

ところが、珠世(主人公・お鳥見女房)の従姉妹の登美というお節介おばさんが登場し、祝言を取り仕切ることになる。
という出だし。

そして祝言が近づくにつれて矢島家には不振な出来事が相次いで起きる。
珠世は用心をしていたが、祝言の当日手伝いの女の中に見慣れない者が出現。
さて、どのように解決するのか・・・

いつものように珠世の機転で事件は大きくならない、という結末は見えているのだが、どのような機転なのか、ということが興味の中心。

そして、珠世の周辺では悪意を持ったものでさえ、悪意が消え人間本来の「良心」があらわれる。
この物語は「性善説」に基づいているようで、それだけに読後はほっとさせられる。

私はどちらかといえば「性悪説」派であるが、珠世のような人がいれば「悪」は隠れれのではないかと思っている。

そして人とは人と出会ってつきあって出来上がっていくんだろうと、思うのである。
人と人の間には大きな喜びもあるが、我慢とかあきらめとか許すということがその大きな喜びの元にあるのではないかと、そんな穏やかなことを感じさせる「お鳥見女房」なのである。
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青春のうた 第26巻 1980年台前期③

2007-01-28 18:04:19 | 読んだ
1.愛はかげろう/雅夢 1980年9月

この歌は好きである。
前回第25巻の「東京」「20歳のめぐり合い」と並ぶ私にとっては「軟弱ソングベスト3」であろうか。
「軟弱ソング」というかたもなんなので「青春の叙情歌ベスト3」ということにしよう。

1980年に私は結婚した。
青春という言葉の中に「独身」という意味が含まれているとしたら、この年が青春の終わり、ということになる。
自分の中では、ひとつの青春が終わった、とおもっている。
この「愛はかげろう」はその青春の掉尾を飾る歌といってもいい。

といっても、この歌に心底から感情移入をして涙を流すほどのことはなかったのである。ただひとつの物語としてこの歌がよかったのである。それは結婚をするという喜びの中で聴いた自分とはかけ離れた世界の物語であった、と思う。

詩と曲がいかにマッチしているか、というのも名曲の条件であるが、そのときにどちらかが「平凡」であったとしてもうまくマッチしているあるいは溶け込んでいるといい曲になる。
この歌の場合「愛はかげろう」という部分がメインでそれを飾る前後の詩と曲がうまくいっている、そして歌声にマッチしている、ということが「いい」のだと思う。つまり詩と曲と歌声がすべて掛け算になっている。
それと、ラスト部分<人の心をゆらして>の<人の>の<の>の部分にかかるコード「Bm7♭5」がいい終わり方に導いていると一人うなづいているのである。

とまあ、理屈を並べてみたが、いい歌はリクツ抜きで心を揺さぶるのである。

2.シルエット・ロマンス/大橋純子 1981年11月

私の中で1980年代以降の歌は「思い入れ」という部分ではそれ以前に比べて格段に劣ってきている。
それは前項にも書いたとおり「結婚」によって生活環境が大きく変わったことによると思われ、いわゆるひとつの青春が終わったと感じていることにもよると思われる。

このシルエット・ロマンスはしっとりとしたいい歌であるとは思っていたが、このいい歌をしっとりとした環境で聴くことはほとんどなかったのである。
当時はすでに長子が生まれ、生活の環境は「わがまま気まま」を許さない状況にあったし、その環境に充分満足をしていたので「音楽を聴く」ということは<ついで>もしくは<ひと時の息抜き>ということでよかったのである。

そしてこの歌は歌うのに「難しい」という印象もありチョイと敬遠気味でもあった。

3.夢の途中/来生たかお 1981年11月

1980年代以前は、歌の「ジャンル」みたいなものが厳然としてあったように思える。そしてそれぞれの棲み分けがあったような気がする。
具体的にいえば「歌謡曲」と「ニューミュージック」「フォーク」「ロック」などとはテレビに出る出ないとか交流をするしないとかで、こちら側からは(表向き)判別できたと思う。

しかし、1980年ころからそのあたりの判別が難しくなった。融合したといえばカッコイイがグチャグチャになってきたんだと思う。
社会も<男と女><大人とこども><既婚者と未婚者>などの間にあった「差」とか「区別」が薄まってきていた。

この「夢の途中」は薬師丸ひろ子主演の「セーラー服と機関銃」の主題歌であって、男の詩でありながら女の子が歌い、女の子が歌ったために女の歌のようであり、それが今度は作曲者の来生たかおが歌うことで女の歌が男も歌っていいんだ、みたいな移り変わりになってきたと、私は感じていて、なんだか「変な」気持ちになったのであった。

そして、薬師丸ひろ子が歌っていたときにはあまり「いい」とは思えなかったこの歌を、来生たかおで聞いて以来「いい」と思うようになったのである。
そして誰かに提供した歌を提供した側も歌うことによって、それ以前にあった「誰の歌」という区分も薄くなってきたように思えるのである。

それから「来生たかお・来生えつこ」のコンビの歌では中森明菜の「セカンドラブ」が好きなのである。

4.完全無欠のロックンローラー/アラジン 1981年11月

第26巻はしっとりとした歌5曲にこの歌が入っている。
この選曲は緻密に計算されたものなのか偶然なのか気になるところである。

この歌は当時テレビでよく見かけた。
ふざけた歌だなあ、という思いとずいぶん多くのメンバーがいるなあという印象がある。

「ロック命」みたいな人々をいいように茶化しているのが、ロック命ではなかった私には面白かった。

5.SHADOW CITY/寺尾聡 1980年8月

寺尾聡といえば「ルビーの指環」であるが、この歌も当時流行した、という実感はあまりないのである。
こういう歌があることは知っていたが、あまり真剣に聞いたことがなかった。
それほどに「ルビーの指環」の印象と威力が強かったのである。

今回解説を読んで、この歌がルビーの指環より先にだされ大ヒットした、ことを知ったが、大ヒット?と思ったのである。

いい歌、ではあるが、私好みではない、というカンジだ。

6.夏をあきらめて/研ナオコ 1982年9月

桑田佳祐(サザンオールスターズ)が「勝手にシンドバット」でデビューし、2曲目「気分しだいで責めないで」をヒットさせたとき、これで終わりだなあ、と思ったのである。
しかし3曲目「いとしのエリー」を聴いたとき、初めて「スゴイ!!!」とびっくりマーク3つぐらい思った。
つまり「幅が広い」ということを感じたのである。

しかし、世間はそれほどに評価していなかったのではないだろうか。
あの歌い方が大人たちには大きな違和感であったと思う。

それが、桑田以外の人が歌うと「いい曲」であるというとこを世間に認識させたのがこの曲あたりではなかったかと思う。
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オニコウベスキー場

2007-01-27 21:38:09 | 日々雑感
5年ぶりにスキーに行ってきた。
久々だったので、ちゃんとすべれるか心配だったのだが、まあなんとかすべることができた。
<昔とった杵塚>というヤツ。

それにしても1月末だというのに、状態は3月末くらい。
重い雪質で、積雪量も少ない。
なんといったって、行くまでの道路には雪がない、駐車場にも雪がないのである。
こんなことははじめてである。

そして、客も少ない。
ゲレンデを貸しきった状態というのもあった。
斜面に自分ひとりというのも気持ちいいものである。


昼食後、雨が降ってきた。霙のような雨ではあったが、ともかく濡れる。
というわけで早々にあがり、温泉に入ってきた。
ところがその温泉「スパ鬼首の湯」も貸しきり状態。

昔、足しげくスキー場に通ったときには考えられない状態になっている。
そんな中、小さい子どもたちが先生のあとをついて滑っていたのがかわいかった。
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悼む人 天童荒太 オール読物2月号

2007-01-26 21:00:27 | 読んだ
小説新潮で連載されている小説である。

全国を放浪している坂築静人は、人が死んだ場所を訪れて「悼んでいる」
その放浪を5年間もしている。

なぜ「悼む」のかはまだ明らかにされていない。

全回から、静人の母・巡子の話になっている。
彼女は末期がんで、在宅療法に切り替えたところである。

静人の妹・美汐は、恋人と別れた。
兄・静人が挙動不審で全国の警察に補導されていることが恋人の家族・一族で問題になったからである。そして、美汐は妊娠をしていることに別れたあとに気づいた。

静人がなぜ会社をやめ「悼む」旅に出たのか?
巡子の末期がんの在宅療法はどうなるのか?
に、加えて美汐の今後は?子供は産むのか?

などなど、いろいろな疑問が生まれ、いよいよ、この物語が動き始めた。

これまで、このような設定と主題の物語を読んでいないので、初物、に期待ワクワクなのである。
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仮想儀礼 篠田節子 小説新潮2月号

2007-01-25 21:24:32 | 読んだ
新興宗教を立ち上げた鈴木正彦は一端成功するが、信者が増えることによって逆に破滅へと向かう。

今回は連載第35回。
とうとう、正彦は数少ない信者の女たちに向かって聖泉真法会の解散を宣言する。
彼女たちを守ることも自分も守ることもできなくなったからだ。
しかし、正彦は彼女たちに陵辱されそして逃亡の旅へと引きずり込まれる。

これまでは正彦が新興宗教をやめれば解散させれば問題が解決されるのではないかと思っていたが、とうとう自分が作った似非新興宗教の信者の信心の渦に巻き込まれてしまった。

これからどうなるのだろうか?
すでに次号への期待が高まるのであった。
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築地居留地の事件(後編)<新・御宿かわせみ> 平岩弓枝 オール読物2月号

2007-01-24 21:24:20 | 読んだ
まだ、登場人物になじめないでいる。
そこで、登場人物の表を作ってそれを見ながら物語を読んだのである。

主人公は「神林麻太郎」神林東吾と清水琴江の子で東吾の兄・通之進と香苗の養子である。

畝源太郎、東吾と良きコンビであった畝源三郎の子
麻生花世、東吾の義姉・香苗の実家・麻生家の長女。父宗太郎は医者で麻生家の婿。幕末に麻生家が襲われ、母・七重、弟・小太郎を失っている。

そして、神林東吾は軍艦の回航に行き軍艦ともども行方不明、畝源三郎は何者かに襲われ亡くなっている。

さて、今回の物語は、明治期になって「御宿かわせみ」をめぐる人たちが幕末からどのように変わっていったのか、ということと、新たな主人公の麻太郎や源太郎、花世のトリオの今と成長してからの性格を紹介することが「主」のようで、いわゆる『事件』はあまりたいしたこともなく、その謎解きも、3人の探偵度を紹介するような形である。

つまり、これからこの3人を中心としてドラマがどのように繰り広げられるのか、まずはお楽しみに、というカンジなのである。

東吾は本当に死んだのか?東吾に回航を命じたのは榎本武揚らしいがその関係は?
麻生家を襲った犯人は誰か?
畝源三郎を殺した犯人は誰か?

といった大きな謎とその時々に起こる事件がうまくかみ合って物語りは進んでいくんだろうなあ、と、ある程度先を読んで楽しみなのである。
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小説新潮2月号、オール読物2月号

2007-01-23 20:48:26 | 読んだ
本日この2冊を購入。(ほかに「青春のうた26」と「週刊朝日」も購入)

さて、今月号のお楽しみは・・・・

小説新潮

☆連載もの
「警官の血」(佐々木譲)「ソロモンの偽証」(宮部みゆき)「仮想儀礼」(篠田節子)「風は山河より」(宮城谷昌光)「盤上の人生盤外の勝負」(河口俊彦)

☆連作もの
「佳き日」<お鳥見女房>諸田玲子「男ぶり」<しゃばけシリーズ>(畠中恵)「遠い松原」<露の玉垣>(乙川優三郎)「立川談志」<談志一代記:語り下ろし自伝>(吉川潮)「ちゃん」<深川にゃんにゃん横丁(新シリーズ)>(宇江佐真理)

☆読みきり
「左掌の記憶」(阿刀田高)「わかれ話」(逢坂剛)

オール読物
☆連載もの
「築地居留地の事件(後編)」<新・御宿かわせみ>(平岩弓枝)「聖女の救済」(東野圭吾)「悼む人」(天童荒太)
*新連載「孤塁の名人」(津本陽)

☆連作もの
「化物屋敷」<蘭陽きらら舞>(高橋克彦)

☆読みきり
対談「アニバーサリー混浴温泉のすすめ」(山崎まゆみ×宮地めぐみ)

追伸
 ちなみに今読んでいる文庫は「皇帝ナポレオン」<上下>(藤本ひとみ)そして読もうとしているのは「グレート・ギャツビー」(村上春樹)であります。
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ねこのばば 畠中恵 新潮文庫

2007-01-22 21:18:45 | 読んだ
「しゃばけ」シリーズ第3弾である。

お江戸の廻船問屋兼薬種問屋・長崎屋の若旦那・一太郎は「妖(あやかし)」が見えるばかりか、多くの妖とお友達なのである。

病弱な一太郎は、いつも大概は家の離れで寝込んでいる。
それなのに、なぜか事件に巻き込まれ、妖たちをつかって謎を解く、というのがこの物語の主流。

ホンワカしていて、いいんだなあ。

さて今回は
「茶巾たまご」「花かんざし」「ねこのばば」「産土(うぶすな)」「たまやたまや」の5編である。

私としては「たまやたまや」がお気に入り。
幼馴染の「お春」の縁談相手を探りに行って事件に巻き込まれる。
このシリーズとしては珍しく一太郎、ハードボイルドなのである。

それから「産土」は一太郎の世話をしている<兄や>の仁吉(実は白沢という妖)と佐助(犬神という妖)のうちの佐助の話である。
全回は仁吉の話であったが、今回は佐助の過去の話である。
妖は何といったって何千年も生きているので、イロイロな過去を持っているらしい。

一つ一つの物語をゆっくり読むことができる。
どちらかといえば先を急ぎたいわつぃにとっては珍しい読み方をさせてくれる物語である。
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青春のうた 第25巻 1970年代中期③

2007-01-21 21:08:21 | 読んだ
1.東京/マイ・ペース 1974年10月

吉田拓郎の歌以外でベスト10を選べといわれればこの曲は絶対に入れる、というくらいの曲である。

1974年といえば昭和49年、高校3年生であった。
で、この曲がよく流れてよく聴いたのは次の年、東京に住んでいるとき、であった。

東京といったって、賑やかで華やかな場所で流行の先端を行っている、ばかりではなくて、私の行ったところはただ建物がぎっしりと並んでいるだけの街であった。
でも「美し都、花の都」だと思っていた。
それだけ、東京、に憧れていた。そんな年代だった。

東京へ恋人に会いに行き、どんな時間をすごしたのかはわからないが、東京からというか恋人から離れて日常へ戻る、そんな「せつない」気持ちが、詩と曲によく現れている、心情的にひじょうに理解できるのである。

さて、この歌にはもうひとつ欠かせないというか忘れられない思い出がある。
東京で一人暮らしをしていたある日、もっとも大切な友人から一通の手紙が届いた。(といっても、高校時代から我々は長い手紙を送りあっていたのであるが)
その中に
「東京」の歌の23秒部分が非常によい!
という文面があった。

なんだろうと、大いに興味を持ち、時計を片手に本気で聴いた。
23秒後私は笑い出していた。
その部分は
♪走馬灯のように めぐりながら♪というところ。
意味は・・・当時彼が好きだった人の名前が「相馬」さんであった・・・というだけなのであるが。

以後、この曲を聴くとどうしても「23秒」の部分で、にやついてしまうのである。

<東京>というのは、我々の青春時代には、とてつもなく可能性を秘めた、ただそこにいっただけで何かいいことがある、そんな印象がある「コトバ」だった。
この歌を聴くと<東京>に憧れていた日々を甘く思い出すのである。

2.白いギター/チェリッシュ 1973年9月

チェリッシュはなんだかすごくさわやかで、あまりにもさわやかすぎて、切ない恋の歌を歌うのだが、いずれハッピーになるのではないだろうか、と思ってしまって、流して聴いてしまうのである。

♪白いギターに変えたのは 何か理由でもあるのでしょうか♪
といわれてもなあ、なんて思ったりしていたのである。

と思いながらも、白いギター、欲しかったりして。
でも、白いギターってなんだか安っぽかったんだよなあ。
と思いながらも、白いギター、欲しかったなあ。

あまり好きではない、といいながら、よく歌っていた曲ですねえ。

3.20歳のめぐり逢い/シグナル 1975年9月

この歌も好きだったなあ。
とはいうものの、吉田拓郎ファンとしては、いわゆるこういう「軟弱もの」については<フン!>という態度をとらざるを得ず、内面と外面で葛藤をしていたわけです。

別に誰からか<軟弱もの>を好きだということについて非難されるような立場であったわけでもないのに、なんだかひっそりと、そして「ホントはこの歌好きじゃないんだけれど流行しているから仕方なしに歌っているんだもんね」と思いながらいたのである。
1980年ころからは、もうあまりこだわらなくなったけれど、この歌が流行していた頃はそんな気持ちだったんだねえ。

♪手首の傷は消えないけれど 心の痛みは
 僕がいやしてあげる 優しさで 君のためなら

というのが、なんだかよかったんだけれど、
沢田研二が歌う「時の過ぎゆくままに」では
♪からだの傷なら なおせるけれど
 心のいたでは いやせやしない♪

とあり「フーム」と思ったりした。

人と人の関係の中で、治せたりいやせたりする<傷>というのは違うのか、と思ったりもした。そして当時若かった私は、心の痛みをいやしてあげられる人、になりたかった。(もっとも心の傷を負っている人が私の目の前にいたわけではないのだが)

4.目覚めた時には晴れていた/伝書鳩 1976年5月

当時テレビを見られない環境にあった私は、人気ドラマの主題歌だったらしい子の歌には、あまり思い出がないのである。

時々ラジオから流れてくるこの曲を聴いて、目覚めた時には晴れていた、なんて、自分の人生でいえることがあるのだろうか、なんて、非常に暗く沈んで思ったりしたのであった。

でも、この歌を聴いたときだけそう思うわけで、実際には晴れていようが曇っていようが雨が降っていようが、目覚めたときはいつも不機嫌であった。なんだか悲しい。

5.すみれの花/岡本正とうめまつり 1973年12月

この歌も、聞き流していた歌である。
こういっては何なんだけれど、盛り上がりに欠ける、そういう印象である。

岡本正は「北鎌倉」が好きだった。
どれくらい好きだったかというと、本当に北鎌倉まで行き、歌詞にある
♪北鎌倉で降りて歩いてみませんか♪
に誘われ北鎌倉から鎌倉まで歩いたのである。

そういえば、鶴岡八幡宮でおみくじを引いたら「大凶」だった。
受験を控え、非常にがっかりした思い出がある。

6.さよなら/N.S.P 1973年6月

NSPは、彼らがアマチュアの頃から知っている。
というのは、彼らが岩手県の一関工業高等専門学校の学生あったころ、NHK岩手のFM放送に自分たちの曲を送ってそれが放送されていたのを聴いていたからである。(宮城県北部に住んでいたので岩手の放送もよく聞こえた)
で、リクエストがあってよく「汗」とかこの「さよなら」がかかっていたのである。

この「さよなら」は身近なカンジでそれでいてせつなくて、好きだったなあ。

♪ひとの言葉は悪いいたずら
 愛は心にかいた落書きさ
 いつまでも心にへばりついて
 僕の心をさみしくさせる♪

とか
♪ぼくには君が大切なのに
 きみだっておんなじはずさ
 あれは嘘っぱちだったんだね
 もういいよ さようなら さようなら♪


なんて部分がよかった。

つまり私、どちらかといえば<軟弱>だったわけなんである。
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回転焼き

2007-01-20 16:48:06 | 日々雑感
本日は、近くの「虚空蔵」さまと「不動」さまにおまいりに行ってきた。
その帰り、チョイと足を伸ばし、冬になると必ず食べたくなる「回転焼き」を買いにいった。

この店、近頃評判が高くテレビなどで紹介されたりもして、並ばないといけない、と教えられていたのだが、案の定20分まって手に入れることができた。

1個40円で、丁度いい大きさと甘さである。
経木を間に挟みそして経木で包んでくれる。
従って、湯気でベタベタにならない。

我々の間では5年位前からブームであったが、とうとう、多くの人に知られるようになってしまった。
以前はおばあさんが焼いていたのだが、今はちがう。おばあさんが焼いたのはもっとパリパリしていたような気がするが・・・まあそれでもおいしいことに変わりはない。

ちなみにこの店は登米市豊里町にあります。
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小説新潮1月号

2007-01-19 22:44:06 | 読んだ
「林檎の香」もう2月号がでるというのに1月号です。

小説新潮は連載物が面白く、まずそれを読んで、それからチョイと休んで読みきり物、という読み方をしている。

連載物は、おおむね次の順に読んでいる。(お気に入りの順といってもいい)

「仮想儀礼」第34回 篠田節子
 新興宗教を興した男のお話。興してつぶされていく、今まさにどん底。

「ソロモンの偽証」第50回 宮部みゆき
 中学校で自殺した(とされる)男の子をめぐるお話。
 
この二つともに「いやな奴」が多く出てくる。しかし、客観的に見ていられるからいやな奴なので、現実には多くの者がそういやな奴になっていない、ということに気づく。

「盤上の人生、盤外の勝負」河口俊彦
 将棋指たちの話。このれは常に面白い。小説新潮の隠れた「目玉商品」と思っている。

「警官の血」第8回 佐々木譲
 だんだん面白くなっていく。戦後警察の歴史、というカンジだったが、主人公の心の病もひとつのテーマか。

「風は山河より」第57回 宮城谷昌光
 戦国末期の奥三河の菅沼氏三代を描く。今まで取り上げられたことのなかった武将たちが描かれている。

「知りすぎた男たち」第7回 藤原正彦
 国家の品格の著者が、明治末期からの日本のスパイたちを描く。スパイといっても武士の心を残したさわやかな者である。ちょっと愛国心高揚というものが透けて見えるので<警戒>している。

このほかにも連載ものがあるのだが読んでいないのである。

小説新潮は、実は連載マンガも面白い。

「ムーさん」二階堂正宏
 バカバカしいほどに勘違いをする女たちに持てまくるムーさんがうらやましい。

「同じなのはタイトルだけ 日本・世界文学全集」福山庸治
 日本や世界の名作文学の題名だけ同じで、それをマンガにしている。ムーさんがソノマンマなのに対して難解でシュールである。

さて今月の読みきりは新年号だけあって、読みやすい、というか丁度いいものであった。

「極悪人」曽野綾子
「優雅な生活」三浦しをん
「真面目な関係」阿刀田高
「歌うべきか騙すべきか」岩井志麻子
「宿敵-露の玉垣-」乙川優三郎
「人にやさしく」垣根涼介
「林檎の香」北村薫
「オーディション」鈴木光司
「黒豆」諸田玲子

を読んだ。

お勧めなのは「宿敵」「林檎の香」

この世の中、「誤解」と「勘違い」、「真っ直ぐと」と「曲がったもの」の組み合わせだということが、これらの短編を読むと思い知ることができる。
そんな世の中だから、面白い、のである。

追伸
 今月の「腹立ち日記」の山下洋輔「怒りのハードボイルド」であって、久々に山下洋輔の文に接した。笑ってしまった。
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裁判長!ここは懲役4年でどうすか 北尾トロ 文春文庫

2007-01-17 18:45:31 | 読んだ
読む前は、本の題名といい、著者の名前といい、ふざけたカンジ、他人を茶化すようなものなんだろうなあ、と思っていた。
それはそれでいいかな、と。腹が立ったら途中で止めればいいと思っていた。

内容は、裁判を傍聴して感じたことを書いているだけ、なのである。
裁判は主に「罪」を犯したとされる人が「罰」をどのように受けるか、ということであったり、何かの「権利」について争っているので、その攻防はある意味死活問題である。

人の死活問題を傍聴していることは「不謹慎」と思われがちであるが、傍聴が許されるということは、裁判というものの本質を我々日本人がよく理解していないことなのではないか。

もっとも著者はそんなことなど考えず、「おもしろい」から裁判を傍聴する。おもしろい、というのは人に興味があるから面白いのである。

人とは何なんだろう?
という思いが裁判を傍聴していて著者が感じたことなんだろうと思う。

「死刑」の宣告を目の当たりにして、死、について考える。
交通裁判を傍聴して、絶対飲酒運転なんかしないぞ、と誓う。
ヤクザの裁判を傍聴して、映画の1シーンのような場面にであう。
離婚裁判で、「愛情」とか「信頼感」とか目に見えないものが夫婦をつないでいるのかと思う。
どうしようもない被告にがっかりしたり、かわいそうな被告に同情したり

著者は裁判を傍聴してイロイロ考えるのである。

この本を読むと裁判を傍聴したくなる、のである。
ただし、傍聴してすべてが「おもしろい」わけではなく、面白い裁判に出会うにはそれなりに大変らしい。

それにしても、日本には多くの事件が起きているんだなあ。
そして、我々がまったく知らないところで裁判で人が喜び人が傷つき闘っているということに、なんだか感動したりするのである。

なんだか「続編」を期待したりするのである。
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悪人列伝4 海音寺潮五郎 文春文庫

2007-01-16 19:03:50 | 読んだ
第4巻は、大槻伝蔵、天一坊、田沼意次、鳥居耀蔵、高橋お伝、井上馨、である。

印象としては「小物」というカンジだ。

大槻伝蔵は、加賀騒動の登場人物である。
天一坊は、徳川8代将軍吉宗の隠し子騒動である。
いずれも、たいした事件ではないが(と思う)「悪人」としてとらえられているから、筆者はとりあげたのだと思う。

歴史は勝者の歴史である、ということもあり、敗者が悪人になることが多い。
特に、この時代は出自とか身分・家柄が社会の秩序となったことから、この秩序を乱すものが悪人となったのかもしれない。

著者は「田沼時代」に一揆強訴がやたら起きることについて
「太平が長くつづき、文化がいつの間にか浸潤し、人権的なものに目ざめて来たからであろう」
としている。ナルホド、である。

田沼意次も異例の出世が秩序を乱したことになり、それが評判を悪くしたのだと思う。
異例の出世をする人は、仕事ができる、仕事ができるから人が集まる、その集まった人は何かの願い事があるので「お土産=賄賂」を贈る、という循環らしい。
仕事のできる人は何に気をつけなければならないか、ということの見本であるが、その後あまり参考にされていないらしい。

鳥居耀蔵を著者は大嫌いである。
江戸時代後期・末期に幕府で活躍した人の出世街道を走る車の両輪が「賄賂行使」と「スパイ利用」と著者は言う。
そのスパイ利用のしかも陰険な利用をした最たるものが鳥居だと言う。
平岩弓枝の「妖怪」というのは鳥居耀蔵を描いたものだが、それを読んでもあまり好感をもてなかったくらいだから、ここに出てくる話を読むと腹が立つくらいである。
ちなみに「妖怪」というのは耀蔵が甲斐守であったことからついたあだ名である。

高橋お伝は可哀そうな女である。
当時は生まれと育ちと生きる環境を甘んじて受けなければならない時代であった、それを甘んじて受けない者は「悪人」なのである。

井上馨は幕末期と明治期ではエライ違いであるように思えるが、幕末期の志士たちの遊びと金遣いは、今の感覚で言えば「とんでもない」ことに思える。
志士たちでも、明治に入り自らの責任を自覚した者がマアマアであった、しかし志士感覚が抜けない者がいた。それが高官のままでいたことが、その後の日本の衰亡となったように思えるのである。

天皇家やそれを取り巻く公卿たち、或いは徳川幕府が長く続いたのは、その創建時において「清廉」差があったからではないか、幕府を倒した後の明治の体制が昭和の戦争で負け、長く続かなかった一つの要因は維新の中心となった者たち「性格」が影響しているのではないだろうか。

私の持っている「悪人列伝」はふるい版であり、第4巻に筆者のあとがきと綱淵謙錠の解説がある。
これもお勧めである。
コメント
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