読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

AV女優2 おんなのこ 永沢光雄

2010-02-27 12:11:42 | 読んだ
「AV女優」とこの「AV女優2」は以前に読んでいたのであったが、なんだか吸い込まれるように「AV女優2」を買って読んでしまった。

というのは、著者の永沢光雄が好きだからである。

実は、この本とは別に「声をなくして」というのも買った。

永沢光雄は故人である。
2006年11月に亡くなっている。
アルコールによる肝臓障害である。

で、2002年に下咽頭ガンで声を失っている。

というようなことを知っていて「声をなくして」を読んでみようとやっと思ったのだが、多分、辛くて読み難いだろう、とも思ったので、ではその合間にバカバカしい「AV女優2」も読もう、どこにしまってしまったかわからない本を探すより買ったほうが早い、ということもある。

で、「声をなくして」はつらい。

そんなこんなでAV女優2を読み終えてしまった。

実はAV女優2の読書感想文は、2002年に既に書いてある。
(嘉壽家堂本店の読書日記2002年参照)

初めて読んだときと今の印象は違う。
というのは、初めて読んだときはインタビューをされているAV女優のほうに目というか気持ちというか、つまり視点がそちら側に多く行っていたのであるが、今回はインタビューをする側、つまり永沢光雄のほうに重点が移ったのである。

そうして感じたものは、この「AV女優」とは、単独としてはインタビューではあるが、まとめてみると「私小説」ではないか、ということである。

いわゆる「私小説」というのはあまり好きな分野ではないので、あまり読むことはない。
なので、はっきりと「私小説」と言い切ることには自信がないのだが・・・

しかし、この「AV女優」は、インタビューという形をとっているが、そしてインタビューをされる側の「おんなのこたち」を描こうとしているが、実はそこに描かれているのは「永沢光雄」なのである。

焼酎を飲みながらインタビューをする。
相手の内側に鋭く突っ込むことはしないが、どちらかといえば「ぬるい」インタビューである。しかし読み終えてみると、ものすごく突っ込んでいる。
その突っ込んでいるのは「おんなのこ」たちだけでなく、自分自身にもである。

だから、インタビューをして永沢光雄は傷ついている。
もっといえば、傷つくことを求めている。

体が生きるためには「酒」は絶対ダメなのに、精神的に生きるために酒を飲む、そんな永沢光雄だから、インタビューをすることで傷つくのは自分なのにインタビューを続ける。

ああ、一回会って話をしてみたかった。
多分「うんざり」するかもしれないが、それでも話をしてみたかった。
だけど、読書はやめられない。

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智恵子抄 -飲めば都- 北村薫 小説新潮2月号

2010-02-24 23:41:06 | 読んだ
小説新潮2月号の特集は「時代小説人生行路」
読もう読もうと思っているうちに3月号が発売されてしまった。

3月号を買ってきて『さあ読もう』と思ったら『ああまだ読んでいなかった』と気づいたのが、この「飲めば都」シリーズの最新作『智恵子抄』である。

『飲めば都』シリーズは、出版社に勤める小酒井都が主人公である。この都さん「酒」にまつわるエピソード、まり失敗談が多く、また彼女の周りにも酒による失敗の多い人ばっかりなのである。

さて、今回は、前回「コンジョ・ナシ」からの続きである。
都の大先輩(仕事も酒も)である雑誌の編集長の大曽根悠子の部下で「根性無し」の月形が、文鎮の重鎮の葬儀に花輪を贈れと命じられたがあろうことか、その花輪の社長の名前が自分の名前の月形瓢一になっていた、というのが前回の終わりであった。

その失敗がもとで月形は次の人事異動で他の部署に異動という噂が流れる。
そのような失敗を本来なら相当怒っているはずの大曽根はなんだか彼に同情的である。
というのが前段で、最後には、彼は異動になるのだが、その理由が・・・

という話しの筋とは別に、今回も都は酒を飲む。
相手は村越早苗。結婚して姓が変わったが編集者ネームとして旧姓を使っている。

結婚しても酒を飲んで玄関で寝ていたりする「酒好き」のひとである。
独身時代、酒を飲んで帰宅途中『襲われたら大変」ということで、右に左に吐きながら歩いて帰ったという・・・いやはや・・・

結婚後も酔って帰って玄関先で寝ていたところ、旦那が大きなテレビを買ってきて友達と一緒にその寝ているところをまたいで部屋に設置したという、どっちもどっち、という経験を都に語って聞かせる。

そのときに飲んでいた酒が、福島県二本松の「大七」という酒。
村越は中学のときに読んだ智恵子抄に感激し読書感想文に書いた、そして智恵子の父は「今朝吉」というとか智恵子の家は「花霞」という酒の造り酒屋だったなどと話し、挙句には

『智恵子は東京には酒がないという
 本当の酒が飲みたいという
 あどけない酒の話である』


などと、智恵子抄の詩を酒にまつわる詩に変えて朗誦するのである。

こういう話がバカバカしくて面白い。そして好きである。

さて、都は今回新たな人物イラストレーターの小此木と出会う。
なんだか今後大きく絡みそうな予感である。

大曾根悠子と月形の話、小此木の話、そして村越の話、と3つの話題が織り交ざっていて、あれあれと思う間に今回は終了。次が待ち遠しい。
ちなみに3月号には掲載されていない。
だから読書はやめられない。

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嘉壽家堂本店更新

2010-02-22 21:41:37 | 日々雑感
久々嘉壽家堂本店を更新しました。

といっても、ブログに発表したものをまとめただけですが・・・
気が向いたら寄っていってください。

表のカウンターは一周したのかどっかで間違えたのかよくわかりません。
いつかXXX番の人ご連絡をください、当地ご自慢の油麩を進呈します、とかなんとかしてみたいのですが、カウンター不調のため出来ずにいます。

さて、この本店更新を金曜日と土曜日にシコシコとやっていたのでありますが、日曜日の朝3時半、勿論眠っていたときであります。なにやら便意と胸のむかつき。
ということで、どうも風邪を引いたらしく(或いは今流行のウィルス性胃腸炎?)昨日は一日、今日は半日ダウンしておりました。

今日の午後に病院へ行くこととしていましたが、熱を測ると35度7分、平熱よりちょっと高い。(ちなみに私は冷血・糖血人間で、平熱は35度5分前後である)
これで病院へ行ったら恥ずかしいのでやめました。

ということで、皆さんもお体には気をつけてください。

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いつか陽のあたる場所で 乃南アサ 新潮文庫

2010-02-17 21:49:39 | 読んだ
小説新潮に連作小説として発表されたものが単行本を経て文庫本となった。

小説新潮に掲載時から楽しみにして読んでいたもので、あらためて4編を続けて読むとなお一層感動がある。

物語の主人公は小森谷芭子(こもりや はこ)29歳。
そして、江口綾香41歳。

二人は刑務所で一緒だった。

芭子は、好きだったホストに貢ぐため、男をホテルに連れ込んで薬で眠らせ金を奪うという
「昏睡強盗罪」で22歳のとき7年の懲役刑で刑務所へ。

綾香は、長年にわたる夫の暴力に耐えかねて殺害し刑務所へ。

芭子が刑務所でいじめられていた時かばってくれたことが縁で仲良くなり、出所後も行き来している。刑務所の中での友達は出所後に敵になるということから、出所後はつきあわない者たちが多い中で、強い信頼でむばれている二人である。

芭子は昏睡強盗罪で警察に逮捕されて以来、家族(父、母、弟)から縁を切られ、小森谷家ではもう居ないことになっている。出所後は祖母の住んでいた家に一人で住んでいる。

前科があるということは就職だけでなく、生きていくそのものに大きな影響を与えるので、芭子はひっそりと目立たずに生きている。

芭子は前科を隠すことが生きる目的になっていて、果たしてそれは生きることなんだろうか?なんて思ったりする。

物語は、芭子がこれからどう生きていくべきかを自らが探し当てるまで続くのだろう。

身辺について詳しく聞かれないことから、芭子はマッサージ店の受付をしている。機械によるマッサージが主である店であるので、雇い主のマッサージ師は時々やってくるだけなので、ひっそりと過ごすには最適な店である。
そこで、パソコンを覚えたりして、社会へ馴染んでいっている。

一方の綾香は、子供を夫の実家に残し寂しさをこらえて明るく明るく過ごそうとしている。
パン職人になりたくて、今はパン屋で修行をしている。

二人の周りでささやかな事件が起きるが、社会に溶け込もうとすることと、前科を隠して生きようとすることの矛盾が、二人を悩ませる。
だから、二人は二人っきりで話しこむのである。

物語の途中から、「ボクの町」「駆け込み交番」の主人公の警察官・高木聖大が登場する。
彼はどうやら芭子に好意を持っているらしい。
しかし、芭子は警察が嫌いである。

物語が進むにつれ、綾香はパン屋で相当苦労していることがわかる。また芭子は雇い主からのセクハラと生きるということについて目的を探すため今の職を辞め、あらたな出発をしようとする。

それは、弟が結婚するに当たって金をもってきて一生涯縁を切ることを望んだことにもよるし、下町の人々とのふれあいのなかで心の中の凍ったものが溶け出しはじめたことにもよる。

だから、物語はいよいよ面白くなると思うのだ。
続編を読みたい。でも、小説新潮にはその後掲載されていない。どうしたんだろう?

楽しみして待っている。
だから読書はやめられない。

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ロングインタビュー 吉田拓郎 家族・時代・仕事をめぐる対話 重松清 すばる3月号

2010-02-15 22:48:15 | 読んだ
本屋で本をあさっていたら、あるべきはずのないところで「吉田拓郎」の文字が目に入った。
すばる3月号である。

迷わず手に取り購入決定!

作家の重松清が吉田拓郎にインタビューをした、ということである。
副題にもあるように「家族・時代・仕事」について話をしている。

この対談での拓郎はすごく自然体である。

家族のことでいえば「女系家族」のなかで「末っ子」だったことが人格形成に大きな影響を及ぼしている、なんて話していたりする。

拓郎が「吉田家」なんて話をするのを読むと「フーム」とうなってしまった。

というのは、拓郎世代は「家」とか「しがらみ」を捨てて自分の思うままに生きよう、真の自由を求めよう!と言っていたからである。
その1世代下の我々はものすごくその影響を受けた。

また、我々は彼らの世代に大きな期待をした。
彼らが指導者層になったとき、直面している古いものを変えてくれるだろう、と思っていたのである。
ところが、いざとなると、彼らは大いなる保守派になってしまった。

当時はその変わり方に対して怒っていたのであるが、今はちがう。
そういうものなんだ、と思う。
だから、拓郎が「家」について語るのを読むと、やっぱりそうなりましたか、と微笑んでしまうのである。

さて、この対談のなかでもっとも大きなテーマとなっている「時代」についてであるが、拓郎は「僕が時代を作ったんじゃなくて、時代のほうが僕をそこに嵌め込んだ」と言っている。

拓郎の解釈はそうだろうが、しかし、拓郎から大きな影響を受けた私にとっては、あの頃(昭和50年前後)の拓郎は「時代」そのものだったと思う。
それは、歌であり生き方であったと思う。

そうは思うものの、私は「拓郎はこうでなければならない」とは思わない。
拓郎が変わっていくことは、もしかして自分が変わっていることなのかもしれない、と思っていたからである。

つまり拓郎があっち側に行ってしまったのか、私がこっちに来すぎたのかは「わからない」からである。

拓郎は「吉田拓郎」を演じているという意識は明確にあった、と言っているが、こちらから見て、ちょいと無理しすぎなんではないか、なんて思ったこともあった。

例えば、拓郎はアイドル好きだったし、女々しい歌だってあった。
強くて時代の先頭を走っている、という部分と、女々しい部分と、アイドル好きな部分があるから拓郎であって、矛盾したものを抱えていて、そのいずれもが歌になっているから、トータルとしての拓郎が見える。
そして、そのトータルとしての拓郎が好きなのである。

拓郎は「思うがままに生きてきた」んだなあと思ったのである。
拓郎自信はそう思ってはいないだろうが、こちらから見ると相当に「思うがまま」である。
それは拓郎が拓郎を演じていた頃から、自然体に近づいてきたころ(私はキンキキッズと共演したあたりとみている)から、最後のツアーで「頑張らなくてもいいでしょう」と歌ったころも含めて、ずっと「思うがまま」だと思う。

思うがままに生きてきた拓郎がいい。
そして、そういう拓郎が歌う歌がいい。

本体談を読んであらためて拓郎を感じたのである。
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うらなり 小林信彦 文春文庫 <ぼっちゃん 夏目漱石>

2010-02-13 22:41:42 | 読んだ
文庫の帯には

「『坊ちゃん』から100年、彼らのその後の人生は―」

とある。

そして
「小林信彦が描く『坊ちゃん』の後日談」
と続く。

というわけで、この「うらなり」は夏目漱石の名作「坊ちゃん」の今風に言えば『スピンオフ』小説である。

つまり、坊ちゃんの登場人物の一人である「うらなり」こと古賀先生の側からみた小説「坊ちゃん」であり、その後のうらなりの人生を描いた小説である。

坊ちゃんといえば、痛快な青春小説、というイメージがある。
しかし、この「うらなり」を読むとそうでもないことがわかる。

坊ちゃん側からみれば「痛快」である。
それは坊ちゃんが単純明快な人間で、善と悪、黒と白を自分の判断基準にしているからである。

この「うらなり」を読んだあと「坊ちゃん」を読んでみた。

そうすると、これまで抱いていた坊ちゃんへのイメージが変わった。

「坊ちゃん」の出だしである
『親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりして居る』
が、坊ちゃんをあらわしている。
更に「坊ちゃん」という題名もだ。

こういう「坊ちゃん」がいたなら周囲は大変である。はた迷惑である。
何しろ、思い込みが激しく、江戸っ子といって田舎の人間・風俗・景色までも馬鹿にする。

松山の人たちも大変だったろう、と同情をしたりする。
小説では、赤シャツこと教頭と野だいここと美術教師を山嵐こと数学の堀田とともに「成敗」をして松山をさる坊ちゃんである。
従って、最も大きな迷惑をこうむったのは赤シャツと野だいことなるが、小説「うらなり」を読むと、最も大きな心の傷を受けたのは「うらなり」だったようだ。

うらなりとマドンナの恋はどのような恋だったのか。
その後のうらなりの人生は幸福だったのだろうか。
うらなりはその後マドンナとであったのだろうか。

そういう疑問に小林信彦は答えながら、坊ちゃんの後日談そしてスピンオフ小説として、夏目漱石の「坊ちゃん」との違和感をなく描いている。

本書を読むと「坊ちゃん」を読みたくなる。
そしてこれまで思っていた坊ちゃんとは違った読み方ができる。
だから読書はやめられない。

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果断<隠蔽捜査2> 今野敏 新潮文庫

2010-02-11 20:38:21 | 読んだ
「隠蔽捜査2」とあるように、竜崎警視長シリーズである。

第1話の「隠蔽捜査」は文庫で、第3話の「疑心」は小説新潮連載で、そして隠蔽捜査外伝ともいうべき、竜崎の親友(竜崎はそう思っていないらしいが)の伊丹刑事部長のシリーズも小説新潮で読んでいる。

竜崎警視長は、警察庁の超エリートであったが、隠蔽捜査において息子が薬物を使用していることについて「もみ消し」を拒み、また捜査においても筋を通したため、警察庁から警視庁の警察署長に左遷させられたのである。
(ちなみに「処分」ではないと思う、なぜなら警視長のままで降格されていないから)

竜崎は常に「筋を通す」のである。
この「筋を通す」というのは非常に難しい。
私も常にそのようにありたいと思うのだが「筋を通す」ということは、周囲との「軋轢」を重ねるということであり、私には到底できそうもない。

竜崎は東大卒業のエリートであり、自らを強く信じている。

本物語においても、警察署長として防犯対策会議に出席し、出席者から要望を受けたあと
「可能な限りのことをやらさせていただきます。それはお約束します。さて、私たち警察があなたがたにして差し上げることはすでに地域課長からも私からも申し上げました。それでは、あなたがたは警察に対して何をしてくださいますか?」
と言うのである。

そんなことを言われたことのない市民は唖然とし続いて反撃しようとするが、ことごとくやり込められてしまう。
で、最後に
「教育や学習について面白い意見を持っているが、さぞかしあなたも勉強されたんでしょうが、出身の大学は?」
ときかれて
「東大法学部です」
と答え、さらなるギャフンにさせた。

兎に角、正論を堂々と述べて、それが通っていくのは、読んでいて気持ちいいしすがすがしい。

物語の筋というか謎を追うのも面白いが、竜崎の行動と言動をチェックしていくのも面白い。

竜崎の署を統括する第2方面部の管理官がきて
「私が入室したら、起立せんか」
に対して、たった一言
「なぜ?」

「副署長が課長を怒鳴りつければ、課長は係長を怒鳴りつける。そして、係長は係員たちを怒鳴りつけるわけだ。そういう連鎖は士気をそぐ。管理職は、感情で物事を処理してはいけない。大切なのは合理性だ。心得ておいてくれ」

我々の周りで起きていることの対応に常に合理性を考えている人がいるだろうか?
多くの人たちは感情である。

あいつの言っていることは正しいが、あいつが嫌いだから反対する。
あいつの言っていることはなんだか変だけれど、あいつが好きだから賛成する。

というのが多くの人たちの行動原理のような気がする。

しかし、竜崎は
「俺は、いつも揺れ動いているいるよ。ただ、迷ったときに、原則を大切にしようと努力しているだけだ」
という。

そして、何故人はそのように行動しないのか不思議で、自分が変人と呼ばれることに納得いかない。

物語の主人公として非常に魅力的である。
「竜崎ならどうするだろう?」
と思うことで、困難に向かっていけるかもしれない。
だから読書はやめれれない。

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落語戦後史 吉川潮 新潮新書

2010-02-08 23:23:10 | 読んだ
落語会には「落語協会」と「芸術協会」という二つのおおきな会があることは知っていた。
また、落語協会は三遊亭円生が一門を引き連れて分派しその後円楽が後をついで今は「円楽一門会」、更には立川談志が「立川流」として分派した。
従って、現在東京の落語界には4つの団体がある。

ということは知っていたし、噺家の名前や顔も一般に比して知っているほうだし、噺だって知っているものは多い。

つまり、私は落語ファンである。ただし「熱烈な」という文字は入らない。

若い頃東京に出張に行くと、夜はナイターか寄席だった。
2週間の研修のときは1日ずっと浅草演芸場に居たこともある。

というようなことから、落語については興味がある。

著者の吉川潮は立川談志を中学生のとき寄席で見て聴いてファンになり、以来ずっとファンであるということなので、この本も立川談志にかかわることが多くそして詳しく書いているし、見ようによっては偏向しているということもある。

しかし、これまで落語界の一連の歴史というものを読んだことがなかったので、非常に興味深くそして面白く読んだのである。

落語界の歴史、特に分派していったり、内部で争いごとがあったりするのを読むと、いずれの世界(社会:組織)にもこういうことがあるんだなあ、と今更ながらに思うのである。

「シャレ」ということが落語界であるように、なんだかちゃらんぽらんでとっぴでそれでいて文化的であって、という人たちでさえ、いざ組織となると「しゃれ」ではすまないことがあるようだ。

この争いごとに関していえば「仁義なき戦い」と同じようである。

また組織が分派していっても、落語家は落語家というような流れもあり、この辺はプロレス界を思い浮かばされる。

つまりは、落語家といえどもやっぱり人間である。ということか。
それでも彼らは特異な人間である。

現在のお笑いというものはどちらかといえば「刹那的」である。

オチがすでにわかっている古典落語は、その物語性を軸としてギャグをまぶし、心にうったえることが大きな特徴である。
忘れ去られるようであって心に残る、それを求めて多くの落語家たちが世間へ向けて「噺」を放っている。

なんだか、すごく落語が聞きたい気分である。
だから読書はやめられない。

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札幌から帰ってきました

2010-02-07 23:58:59 | 日々雑感
本日は、札幌市中央卸売市場 場外市場に行きまして、生鮮魚介類やら干物そしていわゆる珍味(塩辛やら切り込みやら)を見てまわりました。

欲しいものは「真ほっけの開き」「するめ」そして「鰊の切り込み」だったのでありますが、市場の勢いと活気におされてしまい・・・

これらは明日届く予定。

今日は、タクシーの運転手さんにイロイロと情報を教えてもらい、行動を修正しましたが、それにしても、あの雪道で「急発進・急ブレーキ」は怖かった。
本日は3回ほどタクシーに乗りましたが、どのタクシーも雪道であることなど斟酌することなく、走っていたのには驚きました。

札幌ファクトリーで昼食、見学をした後、大通り公園にもどってもう一度「雪祭り」を見学しようとしたのでありますが、本日も吹雪、そして昨日よりも多い人、ということで早々に札幌駅に向かい、千歳空港から飛び立ち、内地へもどったのでありました。

この旅行記は後日「嘉壽家堂本店」において発表しようと思います。
乞うご期待。

なお、今回の旅の友は、
「戦後落語史」(吉川潮)<新潮新書> 完読
「秘密結社の世界史」(海野弘)<平凡社新書> 途中
そして
「うらなり」(小林信彦)<文春文庫> もう少しで完読
でありました。

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さっぽろ雪祭り

2010-02-06 23:55:48 | 日々雑感
昨日(2月5日)、仙台発23:30の寝台特急北斗星に乗って、札幌に午前11時30分頃やってきた。

午前中は、穏やかな天気で、我々を歓迎してくれている、と思っていたが、午後からは一変して吹雪模様の天候となった。

昼食は、札幌自慢の「スープカレー」を食べ、満足。

続いて、さっぽろテレビ塔に昇り、大通り公園の雪祭りの概観を眺める。

そして、今回の旅の大目的である、雪祭りを見学。

ところが、我々が見学を開始し始めたころから吹雪模様。

人間雪だるまとなりながら、見学をしたのであった。

夜は、北海道の味覚「生もの編」で、きんきの刺身、ホッケの刺身、八角の刺身など堪能。
さらには、毛蟹、きんきの鍋、八角の味噌汁など・・・
お酒は、根室の「北の勝」を燗でいただきました。

続いて、念願の、吉田類さまが訪れた「五醍」で、ニシンの塩焼き(いやーうまかった)皿には、沖漬け・切り込み、塩辛、そしてじゃがバターを・・・酒は「国稀」。
うまかったなあ、ニシン、そして切り込み。

実は私の住んでいるところでは「切り込み」といえば『イカ』なのである。
だから「沖漬け」「切り込み」「塩辛」の違いは何か?
と尋ねた。

そうしたら「切り込み」というのはニシンだというではないか。
というわけで、ニシンの切り込みをいただいたのであった。

帰り道も吹雪であったが、雪国に来れば雪が降って当たり前。
吹雪も堪能したのであった。

この続きは写真を含めて明日のココロだ!

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「はな」 我が家に子犬がやってきた

2010-02-03 23:53:21 | 日々雑感
鬼は外!福は内!
の節分である。
そして、今日は寒い。

というところで、我が家に子犬がやってきた。
やってきた、というか、娘が家族の承諾を得ずに持ち込んだ、というのが真相であるが。(別に『真相』というほどのことでもないが・・・)

ずっと前に我が家には「龍太郎」という犬がいた。(橋本龍太郎さんが総理大臣の頃である)
その犬が交通事故でなくなって以来、我が家では犬を飼うことをしなかった。

私は、飼ったら朝の散歩は私にまわってくると思うので、犬が自由に遊べるような環境、或いは散歩はやわらかい土があるようなところ、どうせなら大型犬、なんて条件をつけていて、消極的であった。

そういうようなところに娘が、捨て犬であった子犬を引き取ってきたのである。
子犬を引き取りたいという話はチラッと聞いてはいたが、前記のようなことから「ダメ!」といっていたのであるが・・・

実物を見てしまうと「ダメ!」とはいえない。


ちょこちょこ歩いてきて、私のひざの上にのって丸くなられたら・・・

というわけで、節分にやってきたので「ふく(福)」という名前を挙げたのだが、あえなく却下され、「はな」という名前になって、今日から我が家の一員となったのである。



さて「はな」は我が家に福となってきたのであろうか?
乞うご期待というところである。

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イノセント・ゲリラの祝祭 海堂尊 宝島社文庫

2010-02-01 22:06:45 | 読んだ
海堂尊の小説である。

つまり、この小説だけ読んでも面白いが、他の小説を読んでいるとなお一層面白い、のである。

代表作といってもいい「チーム・バチスタの栄光」が前提にあって、この物語と同時並行的に「極北クレイマー」があって・・・であれば「ジーン・ワルツ」も、ということは「マドンナ・ヴェルテ」もか・・・
それに、登場する人物たちを追えば「ひかりの剣」も「ブラック・ペアン」も・・・

ということで、海堂尊の小説を多く読んでいる人ほど面白い、ということになる。
これは、あらたな作風なのか、それとも売上の相乗効果を狙っているのか・・・

基本的には「チーム・バチスタの栄光」「ナイチンゲールの沈黙」「ジェネラル・ルージュの凱旋」という田口・白鳥シリーズの第4弾ということなんだろうが、実際には、これらのシリーズとは違い『日本の医学』或いは『日本の司法』いやいや『日本』に正面から挑んだ作品ではないだろうか。

物語は例によって、東城大学医学部付属病院の不定愁訴外来の田口が高階病院長から厚生労働省の審議会へ出席を要請されるところから始まる。(といってもその前段に殺人事件があるのだが・・・)

で、この審議会への出席要請は、これも例によって厚生労働省のあの「白鳥」が絡んでいる。

そして、この物語の主題は、著者がずっと言い続けていること、「チーム・バチスタ」にも取り上げれ(そのほかでも取り上げられているけれど・・・)、そしてこの前それで裁判に負けちまった『AI診断』である。

「AI診断」とは、異常死などのばあい、亡くなった人をCTで撮影し、死亡原因を特定する手段のことである。

この物語では、厚生労働省の審議会を舞台に『AI診断』について語られている、というか、なぜ国はAIを認めないのか、それは法医学会や病理学会が反対しているからである。なぜ反対するのかということは、ただひたすらに「自分」を守るだけである、ということ。

私、海堂尊産のことを心配してしまいます。

つまり
「いいのかこんなことをここまで書いて」
ということである。

それだけ、熱い思いが込められているように思うのである。
解説で、前衆議院議員で前「異常死死因究明制度の確立を目指す議員連盟」事務局次長のg橋本岳氏は、この物語はフィクションであってノンフィクションだ、と書いているが、読んでいてもそういうことが感じ取られる。

AI診断がなかなか取り入れられない背景には、日本の現状制度の硬直化がある。
なぜ、日本の制度は硬直化しているのか?

本書の終盤の審議会において、田口の後輩でAIの推進を進めている彦根の言葉の一つ一つが胸を貫く。

我々はもっと我々の社会について考え語らなければならない。
そう思った。

だから読書はやめれられない。

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コメント (2)
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