読み終わるまで、相当の時間を要してしまった。
この物語を読むのには、自分の心が穏やかでないといけない。バタバタ読んではいけない。
味わい深く読みたい。
前巻の「ツバキ文具店」では、主人公・鳩子は、祖母の跡を継ぎ文房具店を営みながら「代書」を請け負い多くの人の心を読み解き、本音と建て前を上手に使い分けた手紙を書いた。
鳩子の人生が縦糸で、代書を依頼する人の人生が横糸となって交わり、穏かな物語となっていた。
そして、鳩子はミツローさんと結婚し、ミツローさんのこどもQPちゃんと生活を共にすることとなった。
と思っていたら、アララ、とりあえず別居婚であった。
本巻では4つの章というか物語が描かれている。
横糸の代書もあり、縦糸の鳩子の人生も、関わる人も増え、関わり方も深くなっていく。
ああ、鎌倉っていいなあ、という描写もあり、おだやかにおだやかに、ゆるやかにゆるやかに、時が流れていくというのもいいなあ、と思うのである。
なんだかあわただしい時と日々を過ごし、つまらないことに腹を立て、なんか楽しいことはないかと険しい目つきで探している、そんな自分の日々が憐れに満ちているようだ。
だからこそ、おだやかな気持ちの時に読みたい物語である。
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