読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

ジェネラル・ルージュの伝説 海堂尊 宝島社文庫

2010-07-20 23:11:56 | 読んだ
長編「ジェネラル・ルージュの凱旋」の主人公:速水晃一を主人公とする物語である。

短篇が3つ収められている。

-伝説-1991

ジェネラル・ルージュの凱旋の15年前、速水がまだ新米外科医の頃の話である。
その後御馴染みの「猫田麻里」は東城大医学部付属病院のICUの主任である。その部下として花房美和がいる。

速水は新米外科医ながら腕前は確かである。
そして「生意気」である。

更に、歌手・水落冴子も登場し、彼女がどのように変わったのかも明らかにされる。

速水は自信満々であった。

しかし、その自信を打ち砕くかのような未曾有の事故が発生しその対応を新米でありながらしなければならない。

それを救ったのが猫田主任であり、花房美和である。
それは、ジェネラル・ルージュの仇名を関することとなる事故であった。

-疾風-2006

ジェネラル・ルージュの凱旋では、速水の推進する救急ヘリの導入に反対をした事務長の三船が、この物語の主人公である。

三船の妻は、桜宮コンビナートの爆発事故に巻き込まれて怪我を負う。
しかし、救急車は道路渋滞によって動かない。
その光景がテレビに映し出される。

三船はいてもたってもいられない。
しかし、彼は事務長として、速水の指揮する事故対応に協力をする。

ジェネラル・ルージュの凱旋のもう一つの物語である。

-残照-2007

速水がICU病棟部長を辞めた後が舞台である。

ICUは佐藤部長代理が取り仕切っていた。
部長は置かれていない、というのが、ICUの東城大医学部付属病院の経営を物語ったっている。

それでも佐藤は必死で懸命で患者を救っている。

そんな姿をメディアが追っている。
そして、佐藤は患者の搬入を断ったり、患者(質の悪いヤツである)と喧嘩をしたりする。
メディアはそんな病院をどう描こうとするのか。

という、3篇におまけがついている。

「海堂尊物語」「自作解説」「海堂尊ワールド」「桜宮市年表」「登場人物リスト」「用語辞典」「医療用語辞典」
である。

さて、海堂尊の医療小説を読んでいると、医療を取り巻く社会環境を考えるとともに、医療とはそもそもなんなのか、という深い命題について考えざるを得ない。

医療とは本当に人を救うのか?
身体的に機能していれば「生」というのか?
「死」は人間にとって不幸なことなのか?

そんなことを深刻にならずに考えているのは、やっぱり海堂尊の力なのだろう。

というわけで、海堂尊物語以降はまだ読んでいない。
だから読書はやめられない。

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Dr.コトー診療所<25>-Dr.コトー、思い悩む- 山田貴敏 小学館

2010-07-14 22:37:38 | 読んだ
Dr.コトーも長い物語になった。

長い物語は、最初の頃の新鮮さが薄れてくる。
それでも続いているのは、いわゆる「マンネリ化」が心地よいからである。

25巻のコトーも、我々読者を裏切ることなく、そして相棒の看護士・星野も、憎たれ役の漁労長・しげさんも想定どうりの行動である。

さらにいえば、いわゆるゲストの人物たちも我々の期待を裏切らない行動パターンである。

そして物語は、予定どうりの展開で、それなりの面白さである。

だから、我々は安心して読むことができる。
これが、長い物語の長所である。
そして、それが限界でもある。

その限界が、ちょいとむなしい。
「もっと」ということを望んでいるのである。
一応満足はしているのであるが、我々が期待していることを裏切るような面白さを望んでいる。
著者には気の毒であるが、それが長く続く物語の作者の宿命なのではないだろうか。

といいつつ、読み終わると次を求めている。
だから読書はやめられない。

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名残り火 -てのひらの闇Ⅱ- 藤原伊織 文春文庫

2010-07-10 10:33:04 | 読んだ
久しぶりの投稿である。
長い間ブログの更新をしていないと「投稿」が「投降」になってしまっているようで、なんだか心苦しいのであるが・・・

しかし、この「心苦しい」というのは誰に対してなんだろうか?
つまりは自分にとってなんだろうけれど、なんだか『読者』を意識しているようで、それはそれなりに恥ずかしい。

前回からの期間、というよりは6月中旬からやっかいな事件に巻き込まれている。
そんなときこそ、気分転換・ヒーリング・活力増進のために『読書」が必要なのだが、読みたくない気持ちになってしまったのである。
また、楽天イーグルスも負け続け(やっと前節のロッテ3連戦を3連勝したが)、我が草野球チームもソフトボールチームも負けが込み、なんとなく「やれやれ」という気持ちであった。

それでも、細々とこの「名残り火」を読んではいたのである。

藤原伊織の小説は一気呵成に読むのが通常であった。
眠るのを放っておいて、ベットサイドの灯だけで読むのがよかった。

それが今回は続けることが出来なかった。
おかげで、何度もページを遡ることが必要だった。

さて、この小説は『てのひらの闇Ⅱ』とあるように、続編というかシリーズものである。
別冊文芸春秋に発表当時は読んでいたのだが、なにしろ別冊文芸春秋は季刊であるので、そのうちフェードアウトしてしまったのである。

ちなみに「てのひらの闇」は2002年11月17日にその感想を書き留めている。

物語の主人公は「堀江雅之」
経営コンサルタントのような仕事「堀江企画」を経営している。といっても彼一人なのだが。

藤原作品の主人公たちは、カッコイイのか悪いのか、いい奴なのか悪い奴なのか、優秀なのかダメなのか、敏感なのか鈍感なのか、はっきりしない。
ハッキリしているのは、自分のこととなると優柔不断になるくせに他のこととなると果断(すぎる場合もある)になることである。

堀江も、無頼風にしていて、礼儀を失してはいけないところではちゃんとした気遣いをする。

今回の物語は、堀江が以前勤めていた飲料メーカーの同僚で親友の柿島が死んだことが発端である。
「親父狩り」に遭遇して死んだ。
というのが最初の設定であるが、そこには多くの疑問がある。

その疑問に対する回答を堀江が探すのである。

その協力をするのが。会社勤務をしていたときの部下「大原真理」
この大原がいいのだ。前回のてのひらの闇でも大活躍した。

また堀江が通うというか入り浸っている目黒のバー「ブルーノ」のママ『ナミちゃん』も味がある。

そして柿島の細君・柿島奈穂子は非常に魅力的である。

藤原作品に登場する女性は、非常に魅力的か非常にどうでもいいかの2パターンである。普通の女性は登場しない、といってもいい。

更に、今回は、堀江の仕事の関係で知り合った、食品メーカーの社長・三上も個性的で魅力的なキャラクターである。

さて、物語の本筋である柿島の死は、やはり殺人であった。
その原因は何か、時代を遡り柿島夫妻の過去に起因するのであるが・・・
結末は、凄まじい、のひとことである。

それにしても藤原伊織が亡くなったのは残念である。
このシリーズはまだまだ続きそうであった。

文庫解説の吉野仁の言葉が、文庫の帯に書かれている。

『すぐれた作家の作品は容易に滅びることがないばかりか、再読するごとにあらたな感慨をもたらすものだ。読者が作品を読むかぎり、作者はいつまでも生きているのである』

だから読書はやめられない。

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