尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

仏大統領選とウクライナ問題ー各候補の対ロシア姿勢を見る

2022年04月14日 22時49分11秒 |  〃  (国際問題)
 フランス大統領選選挙第1回投票が4月10日に行われた。この選挙に僕はほとんど関心はない。現職のエマニュエル・マクロン大統領(共和国前進=中道)と極右「国民連合」のマリーヌ・ルペンが決戦投票に進むだろうことは、事前の予測通りである。この顔ぶれは前回2017年の決選投票と同じである。前回の決選投票は、マクロン=66.1%ルペン=33.9%と、ほぼダブルスコアでマクロンが圧勝した。しかし、マクロンの5年間には失望することがが多く、今回はもっと僅差になると予想されている。しかし、よほどとんでもない事態でも起きない限り、やはりマクロンが再選されるだろうと思う。ほぼ事前に予測出来る大統領選である。
(マクロンが1位で決選投票進出)
 では、何で仏大統領選のことを書くのか。それは各候補のロシアへの対応の差を考えたいのである。しかし、その前に二つほど別のことを書きたい。マスコミによれば、今回は盛り上がりに欠け、戦後2番目に投票率が低かったというのである。しかし、その投票率は73.69%なのである。2021年に行われた日本の衆議院選挙は、55.93%。調べてみると、日本でも1950年代の衆院選までは、今回のフランス大統領選を上回っていた。その後下がり始め、1967年と1980年を例外として、いつも「73.69」を越えた年がない。1993年以降は70%に届いたことがない。その差はどこにあるんだろうか。

 もう一つ、今回の大統領選には12人の候補者がいた。しかし、日本ではマクロン、ルペンの他には、ジャン=リュック・メランション(不服従のフランス=左派)、エリック・ゼムール(再征服=極右)、ヴァレリー・ペクレス(共和党=中道右派)、アンヌ・イダルゴ(社会党=中同左派)しか報じられない。一体他にはどんな候補が出ていたのだろうか。
(各候補の得票状況)
 では調べてみよう。得票を%で示すと、マクロン=27.8%ルペン=23.1%。最終盤で詰められたと言われていた割には、この差は大きかったと言われている。マクロンはウクライナ戦争回避のため、プーチンとも何度も会い、戦争開始後は欧米諸国の中心となって存在感を示し、一時は支持率が急上昇した。しかし、戦争が長期化するに連れ、でも戦争を防げなかったじゃないかとか、エネルギーや食料の価格上昇への批判が出た。しかし、最後は「ルペンかメランションか」になっては大変だと思った共和党票が流れたのだろう。3位は左派のメランションで22%。今回で3回続けて立候補していて、今回が一番得票が多かった。

 この3人で7割以上の得票になっている。4位は極右のゼムールで7.1%。5位が共和党のペクレスで4.8%。事前調査は9%ぐらいはあったので、恐らくマクロンに半分流れた。6位は「緑の党」のジャドで4.6%。フランスの環境保護政党はドイツに比べて弱小だが、この程度の勢力はある。7位は中道右派の「抵抗!」から出たジャン・ラサールで3.1%。8位が共産党ファビアン・ルーセルで2.3%。かつて大勢力だったフランス共産党はまだあることはある。9位が「立ちあがれフランス」のニコラ・デュポン=エニャンで2.1%。名前で想像出来るように、かつて日本にもあったのと同じ感じの立ち位置。10位が社会党のイダルゴで1.8%。11位は極左「反資本主義新党」で0.8%。12位も極左「労働者の闘争」0.6%。
(主要8候補)
 このように様々な立場の党が出ているので、小選挙区と違ってある程度自分に近い考えの候補もいるだろう。それが投票率にも影響しているんだろうが、それでも決選投票に進出するためには「合同」が必要になる。結果的に今回は3人に絞られていったわけだろう。ところで、今回の大きな争点として、ウクライナ戦争とロシアへの対応があった。主要候補の言動が9日付朝日新聞に載っているので、それを見てみたい。(現職のマクロンは発言に制約があるから省略)

 ルペン=侵攻を非難しつつ、ロシアとは将来「同盟関係になりうる」と発言。
 メランション=ウクライナ侵攻で原発を狙われるリスクが露呈と指摘。脱原発を訴え。
 ペクレス=プーチン氏は「和平に不可欠な対話相手」。
 ゼムール=「フランスを不安定化させる」としてウクライナ難民受け入れに反対。
 イダルゴ=ロシア産天然ガスの禁輸を含めた制裁強化を訴え。

 これを見れば一目瞭然だ。右派が親プーチンで、左派がロシアに厳しい。もともと「国民連合」(旧「国民戦線」)はプーチンとは協力的だったとされる。日本では「左派」「リベラル派」、もしくは「反安倍政権」的な論調を取っていた人に、「ウクライナにも問題があった」「ブチャの虐殺は証明されていない」などと主張する人がかなりいるように思われる。そういう人ほど、日本のマスコミはアメリカ寄りの情報しか流さなくて国際標準から離れているなどというのだが、僕が思うに欧米に関しては「右派が親プーチン」というのははっきりしている。トランプがその代表である。プーチンのロシアは、トランプ、安倍、エルドアンなどが喜ぶ「伝統的価値」一色に染め上げられた強権社会である。左派が批判的なのは当然だろう。
コメント
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