教育に関する記事をしばらく書いてないので、断続的に何回か。まず、英語教育に関する問題である。10月30日付東京新聞の1面トップ記事は、「英語力で揺れる英語教師」という大きな記事になっていた。「『英検準1級程度』割合 目標下回る」と副見出しにある。
日本政府は英語教員に対して、英検準一級程度以上を求めてきた。東京新聞の30頁にある「編集日誌」には「中学や高校の英語教師に英検準一級程度以上の英語力が求められていたとは初めて知りました」と書いている。この記事で僕が一番ビックリしたのは、むしろこっちの方である。現場教員なら(英語教員でなくても)大体は知っていることを、新聞記者は知らなかったのである。
ところで、その結果に関する実態調査。それによると、高校では「目標75%」に対し、全国の結果は「57.3%」、中学では「目標50%」に対し、全国の結果は「30.2%」。これでは、目標を大幅に下回っているという他はない。もっとも、目標にすること自体がおかしいし、数値目標の方が達成不能な、机上の空論のようなものだったということなんだと思う。
一応、いくつかの都道府県の割合を紹介しておくと、高校も中学も1位は福井県になっている。高校は86.6%、中学は81.7%。高校は続いて石川、香川が8割を超えていて、富山、岐阜と続いている。中学では、5割を超えているのは福井だけで、次は富山、東京、石川、広島。一方、下の方を見ると、高校では千葉県が39.2%、続いて福島、和歌山、奈良、北海道…、中学では岩手県が14.6%、次は福島、青森、山形、山梨となっている。
ところで、福井県と言えば、先ごろ発表された「全国学力調査」で、ほぼすべてで上位に入っている。特に中学3年生の数学が高く、基礎の数学Aは69.3点(2位は秋田の66.6点)、応用の数学Bは50.8点とただ一県だけ50点を超えていた。(2位は富山の49.1点)福井県は様々なランキングで上位になることが多い。例えば、「幸福度ランキング」で47都道府県の中で1位になっている。教育と仕事が1位であることが大きく影響している。もっとも財政的な問題に関しては、たくさんの原発(4原発に10基)があることで交付金を得ているわけである。それはともかく、英語教師が英検など「自己啓発」に取り組める「学校の安定性」がベースにあるということかもしれない。
さて、しかし、もっと大きな問題がある。生徒の方も目標があるのだが、それは以下のようなものである。「中学3年卒業段階で英検3級程度以上」「高校卒業段階で、英検準2級または2級程度以上」を「達成した生徒の割合が50%」というものである。およそ不可能としか思えないけど、実際の調査でも達成できていない。もっともまだ目標途上なので、それはいいわけだが、結果も報告されている。今、それを全部詳しく調べる気にならないが、福井県の実績はどうなっているのだろうか。
東京新聞の記事によれば、高校教員の英検準1級割合が一番低い千葉県が、実は生徒の成績は全国2位なのだという。つまり、「教師の英語力」と「生徒の英語力」には直接の相関関係がないのである。それは当然だろう。会話力だけなら、「帰国子女」の方が教師より上ということもあるだろう。でも、その生徒が教えれば皆の英語が上達するか。そんなことはないだろう。話す力だけではない、読む力、書く力の経験と深さ。そして英語そのものにとどまらない、教師の知識や情熱などを含めた「授業力」。そのようなものの総体が教師の力というものなんだと思う。
逆に言えば、英語はペラペラだが生徒との関係をうまく作れない教員。そういう教師の方が困った存在なのは明らかだろう。あまり大声で言ってはいけないかもしれないが、けっこう英語の先生には見られると言っては間違いだろうか。(実は誰しもが一人ぐらいは思い当たるんじゃなかろうか。)英語の教員の中では表立って言えないかもしれないが、生徒の多くはそんなことを感じたことがあるだろう。
英語の教員だからと言って、クラス担任や部活指導を外れるわけじゃないだろう。また教員免許更新や各種研修も免れるわけではない。英検受検を優先するわけにはいかない。英検準1級を求めるあまり、クラスの生徒を放っておいたり、生活指導がいい加減な教員になってはならないだろう。最近の新聞記事によれば、文科省は「いじめ対応が最優先業務」だと言っている。大変な学校に勤める教員ほど、「損をする」というのが教育界の実態だろう。
英語教育の問題は、最近の、あるいはこれからの教育問題の重要問題である。だから、前に何回か書いたのだが途中になっている。いずれまた続けて書きたいと思う。
日本政府は英語教員に対して、英検準一級程度以上を求めてきた。東京新聞の30頁にある「編集日誌」には「中学や高校の英語教師に英検準一級程度以上の英語力が求められていたとは初めて知りました」と書いている。この記事で僕が一番ビックリしたのは、むしろこっちの方である。現場教員なら(英語教員でなくても)大体は知っていることを、新聞記者は知らなかったのである。
ところで、その結果に関する実態調査。それによると、高校では「目標75%」に対し、全国の結果は「57.3%」、中学では「目標50%」に対し、全国の結果は「30.2%」。これでは、目標を大幅に下回っているという他はない。もっとも、目標にすること自体がおかしいし、数値目標の方が達成不能な、机上の空論のようなものだったということなんだと思う。
一応、いくつかの都道府県の割合を紹介しておくと、高校も中学も1位は福井県になっている。高校は86.6%、中学は81.7%。高校は続いて石川、香川が8割を超えていて、富山、岐阜と続いている。中学では、5割を超えているのは福井だけで、次は富山、東京、石川、広島。一方、下の方を見ると、高校では千葉県が39.2%、続いて福島、和歌山、奈良、北海道…、中学では岩手県が14.6%、次は福島、青森、山形、山梨となっている。
ところで、福井県と言えば、先ごろ発表された「全国学力調査」で、ほぼすべてで上位に入っている。特に中学3年生の数学が高く、基礎の数学Aは69.3点(2位は秋田の66.6点)、応用の数学Bは50.8点とただ一県だけ50点を超えていた。(2位は富山の49.1点)福井県は様々なランキングで上位になることが多い。例えば、「幸福度ランキング」で47都道府県の中で1位になっている。教育と仕事が1位であることが大きく影響している。もっとも財政的な問題に関しては、たくさんの原発(4原発に10基)があることで交付金を得ているわけである。それはともかく、英語教師が英検など「自己啓発」に取り組める「学校の安定性」がベースにあるということかもしれない。
さて、しかし、もっと大きな問題がある。生徒の方も目標があるのだが、それは以下のようなものである。「中学3年卒業段階で英検3級程度以上」「高校卒業段階で、英検準2級または2級程度以上」を「達成した生徒の割合が50%」というものである。およそ不可能としか思えないけど、実際の調査でも達成できていない。もっともまだ目標途上なので、それはいいわけだが、結果も報告されている。今、それを全部詳しく調べる気にならないが、福井県の実績はどうなっているのだろうか。
東京新聞の記事によれば、高校教員の英検準1級割合が一番低い千葉県が、実は生徒の成績は全国2位なのだという。つまり、「教師の英語力」と「生徒の英語力」には直接の相関関係がないのである。それは当然だろう。会話力だけなら、「帰国子女」の方が教師より上ということもあるだろう。でも、その生徒が教えれば皆の英語が上達するか。そんなことはないだろう。話す力だけではない、読む力、書く力の経験と深さ。そして英語そのものにとどまらない、教師の知識や情熱などを含めた「授業力」。そのようなものの総体が教師の力というものなんだと思う。
逆に言えば、英語はペラペラだが生徒との関係をうまく作れない教員。そういう教師の方が困った存在なのは明らかだろう。あまり大声で言ってはいけないかもしれないが、けっこう英語の先生には見られると言っては間違いだろうか。(実は誰しもが一人ぐらいは思い当たるんじゃなかろうか。)英語の教員の中では表立って言えないかもしれないが、生徒の多くはそんなことを感じたことがあるだろう。
英語の教員だからと言って、クラス担任や部活指導を外れるわけじゃないだろう。また教員免許更新や各種研修も免れるわけではない。英検受検を優先するわけにはいかない。英検準1級を求めるあまり、クラスの生徒を放っておいたり、生活指導がいい加減な教員になってはならないだろう。最近の新聞記事によれば、文科省は「いじめ対応が最優先業務」だと言っている。大変な学校に勤める教員ほど、「損をする」というのが教育界の実態だろう。
英語教育の問題は、最近の、あるいはこれからの教育問題の重要問題である。だから、前に何回か書いたのだが途中になっている。いずれまた続けて書きたいと思う。