尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

(春風亭ぴっかり☆改め)蝶花楼桃花真打昇進披露公演(浅草演芸ホール)

2022年04月11日 22時23分36秒 | 落語(講談・浪曲)
 落語協会の真打昇進披露公演が3月21日の上野鈴本演芸場から始まっている。新宿末廣亭に続いて、今日から浅草演芸ホールである。今まで夜だったのだが、浅草から昼になるので早速見に行った。4人昇進するが、今回は10日間を4人に割り振って、一日一人ずつ披露がある。今日は蝶花楼桃花(ちょうかろう・ももか)で、二つ目時代は「春風亭ぴっかり☆」だった。蝶花楼というのは伝統ある亭号らしく、師匠の春風亭小朝が名付けたもの。小朝は弟子に「春風亭」と違う名を付けるが、「春風」から「蝶花」になって、さらに「桃花」である。まことに春の昇進にふさわしい名前を付けたもんだ。

 ぴっかり☆は落語協会だけでなく、東宝芸能がマネジメントして落語以外でも売れていた。今回の興行でもいろいろな芸能人が花を贈っていて、すでにスター性十分。「のん」が贈った絵が幔幕になっていて、何度目かに披露されたのにはビックリ。幕が4回も変わるのも初めてだ。披露口上の幕が上がると、「カワイイ」の声。入るときに桃花のタオルがプレゼントされ、中入り時にこのタオルを広げてと説明された。口上で顔を上げたら、タオルを見せる。コロナ禍で大声も出せない中、「スター誕生」のムードである。
(のんの絵の幕)
 真打披露公演は口上に出る協会幹部、弟子が昇進する師匠連がそろって出るから、オールスター。いつもはトリを取っているような落語家が続々と出て来る。今回は師匠の春風亭小朝(「荒茶」=戦国大名の茶会のバカ話を立て板に水で演じる)、会長の柳亭市馬(「一目上がり」=掛け軸を八五郎が褒めて失敗する話)、副会長の林家正蔵(「紋三郎稲荷」=駕籠に乗った侍が化け狐に間違えられる)は、いずれも小ネタでサラッとあげる。元会長の鈴々舎馬風になると、いつもと同じく昔話で終わってしまうが、口上では女性落語家をよく真打まで育てたと褒めて、女房では失敗したなどと言うから、小朝、正蔵は悶絶である。

 兄弟子の五明楼玉の輔は子どもが商売にまつわる都々逸を作って親を驚かす。同じく兄弟子の橘家圓太郎は「強情灸」をまるでお灸を据えているような真っ赤な顔で熱演。柳家三三の「釜泥」(石川五右衛門の供養にと泥棒が江戸中のお釜を盗もうとするが…)、古今亭文菊の「浮世床」(髪結いで太閤記を読もうとして全然読めない)も良かったけれど、春風亭一之輔の「人形買い」が圧倒的に面白かった。ネットで調べると、少し展開が違うようだが、そこも含めて勢いが止まらない感じ。他にもいっぱい出ていたが、色物では漫才のロケット団が相変わらず大受け。

 さて、最後に新真打の蝶花楼桃花登場。近年女性の落語家も増えてきて、今日も初めの方で柳亭こみちが民謡好きの大家を歌入りで演じて面白かった。同時昇進の三遊亭律歌より桃花が注目されたのは、やっぱり「ルッキズム」なんだろう。見た目可愛さを越えて大成できるか。「権助提灯」という本妻と妾が旦那を押しつけ逢う様を巧みに演じたが、まだまだ昇進披露以外でトリを取るには力不足か。声で人物を描き分ける力が一之輔や文菊に比べてまだまだかな。そこはまあ、今後の精進次第ということになる。
(同時昇進の4人)
 何でも「桃花笑春風」(とうか しゅんぷうに えむ)という漢詩があるという。小朝のブログに出ていたが、ある人にこの漢詩を教えられたと言う。そこから「桃花」と付けたのかと聞かれたが、事前には知らなかった由。「春の風に誘われて、去年と同じように桃の花が咲きほころんだ様子」を表わすという。まさに春の昇進向けだ。日々大自然は冬から春へと移り変わっていくが、人間世界はそうはいかない。ウクライナの戦争は続き、昨日は見田宗介さんの訃報を書いた。あまり落語を聞きに行く気分ではないのだが、これは2月に前売を買っておいた。ぴあで売ってたが、利用料を加えても当日券よりも少し安いと気付いたのである。今回は他にも柳家風流、林家はな平、三遊亭律歌が同時昇進。国立演芸場に聞きに行こうかなと思ってる。
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