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尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

参政党の「躍進」をどう考えるかー2025参院選④

2025年07月24日 22時20分16秒 |  〃  (選挙)

 2025年の参議院通常選挙の結果について3回書いてきたが、4回でいったん終わりにしたい。最後はやはり参政党の「躍進」に関して。3年前の参院選で国政選挙に初参加して、1議席を獲得した。その3年後に選挙区7、比例区7の合計14議席を獲得したのだから、やはり「躍進」というしかない。改選議席は124なんだから、1割以上になる。党勢を維持すれば、3年後には「予算を伴う法案を一党で提出できる」20議席を上回ることは確実だろう。今後参政党がどうなるのか、多くの人が注目している。

 参政党は「日本人ファースト」を掲げて、参院選の争点を変えてしまった。それをマスコミが取り上げたからいけないという人もいるが、現実にウェブ空間では大きな問題になっていたから、当然大手マスコミも触れざるを得ない。僕は『「外国人問題」は存在しないー「外国人犯罪」は増えているのか?』を書いて、「外国人犯罪」がけっして増えているわけではないというデータを示した。しかし、いま思えば僕の論点は不十分なところがあったと思う。今になって、これは選挙中のキャッチコピーであり、「外国人の特権」など日本に存在しないと神谷宗幣代表は言い始めている。もともと選挙目当ての「幻の争点」だったのである。

(選挙中のキャッチコピーと語る神谷氏)

 ちょうど20年前、2005年夏は「郵政解散」の年だった。小泉純一郎首相執念の「郵政民営化法案」をめぐって自民党内は大きくもめて、衆議院は多くの反対がありながら何とか通過したが、参議院では否決されてしまった。その時小泉首相は衆議院を解散し、反対派議員に「刺客」を差し向けたのだった。マスコミはこの騒動に熱中し、人々は「郵政民営化」を支持したのだった。(ちなみに小池百合子氏は「刺客」となって、兵庫県から東京都に選挙区を移した。そのままだったら今は兵庫県知事だったのかも。)御用エコノミストは郵政民営化こそ「景気回復の起爆剤」と強く支持し、打ち出の小槌のように持ち上げたものである。

 今になってみると、「郵政民営化」で何が変わったのかと思う。特に良くならなかったどころか、民営化されたはずの日本郵便は不祥事続きである。外国企業に投資して大きな損失を出し、国富を流出させた。あの時多くの国民が「郵政民営化」に熱中したのは何故だろうか? 郵便局を利用していて、この組織を民営化しなくてはなどと感じていた国民はいないだろう。それが日本経済に何をもたらすかなど、普通の人には判らない。しかし、「郵政民営化が必要」と言われると、そうかそういうことだったのか、これで長い不況も終わって景気が良くなるのかと思わせる効果があった。誰も実感してないテーマだから「発見」出来たのである。

 同じようなことが「日本人ファースト」「外国人犯罪」にも言えたと思う。今回の報道で見る限り、「自分が外国人犯罪で悩んでいる」と訴える人はほとんどいないようだった。そうじゃなくて、「外国人の犯罪が多くなっているらしいと聞いたことがある」などという人が多かったと思う。本当に「身近な課題」なんだったら、とっくに現実の中央・地方政府が対策を講じている。「幻のテーマ設定」だったからこそ、人々は「そうだったのか」「今まで誰も言ってくれなかった」と「発見」出来たのである。問題は「イメージ」だったのであり、「事実」としてデータを示しても反証にならないのだ。むしろ感情的な反発を呼んだのだろう。

 今まで「自民党の右側」に新党を作ろうという動きはあまりなかった。かつて石原慎太郎氏が名付けた「たちあがれ日本」という党があり、一時「日本維新の会」と合同したが再び分れて「次世代の党」を結成した。その後「日本のこころを大切にする党」「日本のこころ」と名を変えて、結局2018年に自民党に合流した。この党の結成は主要メンバーの平沼赳夫氏が「郵政民営化」に反対して離党せざるを得なかったという事情が大きかった。自民党を離れて一定の勢力を維持しても、「自民党より左」の党とは政策的に連立を組めず、自民党以外に連立の対象がない。それなら自民党内で保守的政策を訴えた方が良いわけである。

 ところが「参政党」「日本保守党」が登場したのは何故だろうか? それは「自民党の世襲政党化」「財政悪化のため強力な財政出動が望めない」という事情が背景にある。また、自民党は政権政党として国際的動向に無関心ではいられない。従って東京五輪を前にして「LGBT理解促進法」(あれほど実質がない骨抜き法案であるにも関わらず)などを提案するわけである。そんなことは知っちゃいないと独自路線を取れるのは、超大国アメリカのトランプ政権ぐらいである。日本では米民主党のオバマ政権、バイデン政権にも配慮せざるを得ない。しかし、そのことは「今後もどんどん多様性政策が進んでいく」可能性を示すわけである。

 「日本の多様化政策」を防ぐためには、もはや自民党以外の党を作るしかないと思う人が登場したのは、そういう理由だろう。自民党内で「保守派」として活動しても、世襲の安倍晋三氏などを別にすれば権力の頂点は望めない。全国300小選挙区の大体は「自民党議員がすでにいる」か、強力な野党議員がいて当選が望めないかである。今回比例3位で当選した安藤裕議員は、京都6区の自民党議員を3期務めた人である。ここは立憲民主党(元民主党)の山井和則議員が強く、2003年以来8回当選している。小選挙区で敗れたのは2017年だけで、その時勝ったのが安藤氏。しかし、3期当選のうち2回は比例当選で、2021年には公認を得られなかった。

 そういう人は他党に移る強い動機がある。神谷代表もかつて自民党の地方議員を務めていたし、今回比例で当選した松田学元共同代表は、2012年に「日本維新の会」から衆議院議員に当選していた。分裂後は次世代の党から出馬して落選し、一時自民党に所属した経歴がある。一方で、3年前には「ボードメンバー」として神谷、松田氏などと党の中核を担っていた吉野敏明氏(3年前の参院選比例区は個人票4位で落選)は、2023年11月に離党して、今回の参院選には「日本誠真会」を結成して立候補、33万3千票あまりで0議席に終わった。このように離合集散が激しいのは、まだ利益で結びつく「利害集団」ではなく、「理念集団」だからだろう。

(東京のさや氏)(神奈川の初鹿野氏)

 参政党に注目が集まるとともに、多くの右派系人士が参政党に集うようになっただろう。もちろん日本保守党もあるが、中心メンバーのリーダー性はかなりはっきりしている。一方、参政党は「手作り感」があるうえ、地方議員を多く出している。東京で2位当選した「さや」(塩入清香)氏はもともと田母神俊雄氏が都知事選に出馬したときの「田母神ガールズ」だったという。田母神氏は元自衛隊の航空幕僚長だったが、アパグループの論文コンクールに歴史修正主義的論文で応募して受賞した。その論文が政府見解と違うとして問題化し、麻生内閣の浜田靖一防衛相に罷免された。自民党は国家統治上、あまりにも偏向するわけにいかない。

 そのようなことを考えると、参政党には「歴史修正主義」の「国防女子」などが集まり始めていると考えられる。神奈川で当選した初鹿野裕樹(はじかの・ひろき)氏は元警察官という経歴で、かなり荒い発言を繰り返している。このように「タカ派防衛族」のような面々の影響力が強くなっているのかもしれない。今後の政治活動として「スパイ防止法」提出を挙げているのも、その事を示しているかもしれない。しかし、そうなると国民の求める経済政策優先を求める人も出て来るだろう。またもっと「純右翼」的な政策を求める人もあるだろう。大所帯になれば、内部に幾つかの考えの違いが生じる。そこでどうなるのか?

 今のところ「大躍進」の多幸感が党を覆っているんだろうと思う。それがいつまで続くか。神谷宗幣代表のキャラクターが大きな意味を持っているのは間違いない。それは玉木雄一郎国民民主党代表とも似ている「陽性のカリスマ性」で、石破首相や野田佳彦代表と少し違う。また立花孝志氏や石丸伸二氏などの「陰性さ」とも違っている。参政党の躍進によって、NHK党などの中途半端な右派の存在感が飛ばされてしまった。そして本格的な右翼政党が初めて登場したのである。

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自民党の比例区当選者、「組織票」優位で右派系が落選ー2025参院選③

2025年07月23日 21時59分13秒 |  〃  (選挙)

 2025年参院選は何だかよく判らない新興政党が席巻したような印象だが、いわゆる「組織票」はどうなっているんだろうか。それを検討すると、「今でも組織票は生きている」という結論になる。特に保守系業界団体は今のところ自民党以外から出る選択肢がない。今後参政党などの「ブーム」がどうなるか予測は難しいが、投票率が下がれば自民党の勢いが戻って来る可能性もあると思う。ただし、その場合でも「自民+公明」で3年後の参院選で過半数を獲得は不可能なので、新しい連立を模索することになる。

 主な「組織票」は「業界団体」「労働組合」「宗教」である。このうち、宗教票は「統一教会」問題以後どうなっているか僕はよく知らない。もちろん「創価学会=公明党」は別である。労働組合を先に見てしまうと、国民民主党から組織内候補を擁立する労組は4つあって、今まで国民民主党は最高でも3議席しか獲得出来なかったので、一人は落選していた。今回は初めて4人全員当選したが、個人票の順に書けば、UAゼンセン、電力総連、自動車総連、電機連合で、電機連合だけ10万票に行ってない。

 一方、立憲民主党は組織内候補が6人いたが、一人落選してしまった。個人票順に書けば、自治労、情報労連、日教組、JP労連、JAMが当選し、私鉄労連が落選だった。私鉄労連の現職森屋隆は6年前は10万票以上を取っていたが、今回は7万4千票台で立憲民主党候補の10位だった。白真勲、石川大我に次ぐ順位なので、蓮舫が出たからはみ出たというわけではない。NTTもJPも民営化されているわけだが、それでも昔の「官公労」が立憲支持で、民間大企業労組が国民支持という傾向が明白である。

(自民党、労組系の組織内候補)

 次に自民党を見ると、今回は12議席を獲得した。これは過去最低に並ぶ結果だが、上位は軒並み「組織内候補」である。合区に伴って作られた「特定枠」で、鳥取県、徳島県代表が上位2つを占めたが、次からは山田太郎を除きほぼ組織代表である。犬童周作(郵便局長会)、見坂(けんさか)茂範(建設業協会)、東野秀樹(JA)、釜萢敏(医師会)、石田昌宏(看護連盟)、本田顕子(薬剤師)が当選。宮崎雅夫(土地改良)、田中昌史(理学療法士)、比嘉奈津美(歯科医師会)などは落選した。他候補にも細かく業界団体や宗教団体の組織票が割り振られるものだが、僕によく判らない。

 このように伝統的に強い、郵政、建設、農協、医師会などは相変わらず上位にズラッと並んでいて、強固な組織を誇っている。かつて民主党政権時代に民主党から出た組織もあったが、自民党政権復活で困った事態になってしまった。野党分裂の状況で、これらの組織が自民党以外から出ることは考えられず、今後も自民党が予算編成で大きな力を持つことを期待している。弱まったとはいえ、「自民党の固い岩盤支持」となっている。ここが崩れない限り、自民党はいずれ復活するのではないかと思う。

 ところで、このように伝統的組織票がズラッと上位を占めたことで、自衛官出身の佐藤正久が次点で落選してしまった。LGBT法案採決に欠席した山東昭子元議長も9選ならず落選。杉田水脈元衆議院議員も23位で落選した。きちんとした組織が付いていなかったのだろうか。和田政宗議員も杉田氏の次で落選した。この人も自民党右派系でLGBT法案採決に欠席した人である。自民党が低調だったため、組織票候補は当選したが右派系候補が落選したわけである。これは右派票が参政党や日本保守党に流れたためと想像される。そうすると、全体状況では右派が伸張したけれど、最大政党自民党内では多少中道に寄ったのかもしれない。

(水田水脈氏)

 水田氏などは今後どうするのだろうか? 僕は衆院で公認を得られなかった段階で離党して日本保守党から出馬するのかと予想していた。多分「(自民からの出馬を誘ってくれた)安倍晋三氏への恩義」から自民党から出たのかもしれない。しかし、思想的には日本保守党の方が近いだろう。これらの人がもし参政党に入党希望を出したら、どうなるんだろうか? 多分すぐ受け入れられることはないんじゃないかと思う。今後参政党から出馬を希望する右翼活動家がいっぱい集まるだろう。「既成政党」色が強い人には遠慮して貰うという方向性が予想できる。そうなると、衆院選が近く行われるかもしれないと期待を掛けて待機するのだろう。

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比例区票に党勢の変遷を見る、「国民」「参政」「立民」の第2党争いー2025参院選②

2025年07月22日 21時42分27秒 |  〃  (選挙)

 毎回書いている「比例区票」に見る各党の党勢変遷。その前に「投票率」を見ると、58.51%だった。有権者総数は1億123万人なので、およそ1億人。投票総数は5918万票。前回2022年参院選は投票率は52.05%で、投票総数5300万票ほどだったので、およそ600万票が今回増えたのである。2024年10月の衆院選は53.85%だったので、そこからも5%近く増えた。

 2025年参院選の各党の比例区票を検討したい。なお、比例区当選者数だけを見てみると、自民党=12議席、公明党=4議席で、与党計は16議席。野党では得票が多い順に、国民民主党=7議席、参政党=7議席、立憲民主党=7議席、日本維新の会=4議席、れいわ新選組=3議席、日本保守党=2議席、日本共産党=2議席、チームみらい=1議席、社会民主党=1議席。野党系議席は総計で34議席。比例だけで見れば、自民党は第一党と言いながら、全体の4分の1の党になっている。

以下に最近7回の国政選挙の得票数を示す。(参院選のカッコ内数字は獲得議席。)
 (16年参院選)→17年衆院選→(19年参院選)→ 21年衆院選→ (22年参院選)24年衆院選→ (25年参院選)

★まず自民党だが、今回比例区で1280万票、全体の21.6%になる。

2011万=19)→1856万 →(1711万=19)→1991万 →(1826万=18)→1458万→(1280万=12)

 前回参院選から500万票以上減らしている。昨年秋の衆院選からも160万票以上減らした。しかし、よくぞこの程度で留まっているという感じもする。今から思うと、3年前に18議席も取ったなんて、岸田内閣ってそんなに支持されていたんだっけと不思議な感じもする。今後多少の持ち直しがあるかもしれないが、人口も減っていく中で2000万票どころか1500万票も大変だろう。 
公明党521万票ほどで、ついに500万票強にまで減らしている。
 (753万=7)→ 698万→ (654万=7)→711万→ (618万=6)→596万→ (521万=4)
 公明党は16年参院選から減り続けていたが、21年衆院選で久しぶりに700万票台に載せた。しかし、22年参院選で100万票減らし、今回はそこからさらに100万票近く減らした。比例区の票の出方を見ると「重点候補」が6人いたと思われるが、そのうち2人を落としてしまった。24年衆院選後に「遠からず500万票台前半になるのでは」と書いたが、9ヶ月しか経っていないのにそこまで落ちている。池田大作名誉会長の没後、支持母体の創価学会の選挙に掛ける熱量が下がっているのかもしれない。

(公明党の斉藤代表)

★次は野党を見る。一応得票順に見ると、国民民主党は22年参院選から400万票増やして大躍進である。24年衆院選からも150万票増やしている。今まで3議席しか獲得出来なかったので、連合内の国民系労組候補も誰かが落ちてしまった。今回はようやく組織内候補を当選させることが出来たことになる。選挙前一時的に支持率を下げたのに盛り返したのは何故だろう?

 19年参院選から、(348万=3)→ 259万 →(316万=3)→ 617万→(762万=7)

(国民民主党の玉木代表と榛葉幹事長)

参政党 一挙に野党第2党になったのは、参政党だった。直近3回の国政選挙でここまで躍進したわけである。この党に関しては、また別に書きたいと思う。22年参院選以後のデータを。

177万=1)→ 187万→(743万=7)

立憲民主党は野党第3党になってしまった。もっとも国民、参政とそう大きな差はなく、トップの自民党に続く「第二集団」を3党で形成している。立民は2017年衆院選で登場したので、そこから見る。衆参では選挙制度が違って、比例区にはいろんな党が出るので、今までも参院選ではこんな感じだった。実は票数だけ見ると3年前から増えている。投票者が500万多かった影響である。しかし、昨秋の衆院選の比例区に比べると400万票も減らした。その票はどこに行ったのだろうか?

 1108万 → (792万=8)→ 1149万 →(677万=7)→1156万→(740万=7)

★次に「日本維新の会」。16年参院選は「おおさか維新の会」だった。「日本維新の会」に戻って、今回が6回目の国政選挙。一時の勢いが失われ、昨秋からも70万票以上減らした。大阪で「府政」を担う以上、完全に国政与党と対立出来ない。もともと元祖ポピュリズム政党的存在だったが、もっと凄いところが出てくると存在感が薄れるということだろうか。
 (515万=4)→ 339万 →(491万=5)→ 805万 →(785万=8)→ 510万 →(438万=4)

れいわ新選組は、2019年参院選で登場した。24年衆院選で9議席を獲得し一挙に存在感を増したはずが、今回は減らしてはいないが大きく増えなかった。一応比例では3議席と今まで最高なんだけど、選挙区で全く議席に届かない。ここも「ポピュリズム」傾向が強かったが、本格的ポピュリズム政党が登場して「争点の右傾化」が起こって埋没した感がある。

228万=2)→ 221万 →(232万=2)→ 380万 →(388万=3)

★「日本保守党」は、初の参院選、二度目の国政選挙でなんと共産党を越えてしまった。単なる「右派論客」が作った「政党ごっこ」の域を超えてきた。今後どうなっていくのか注視が必要だ。

 115万 →(298万=2)

共産党286万票ほどで、2議席。3年前からも、去年からも、どんどん減らしている。政党として9番目になってしまった。しかし、そのことを党内で議論して再生できるのか? 僕はイデオロギー政党であることを「脱色」して来たやり方を考え直す必要があると思う。ホントに脱色するなら、「共産党」の名をやめて、社会民主主義政党であると宣言する方がよい。そうじゃないんだったら、右派系政党が堂々と「天皇主義」を掲げるいま、もっと小さくなってもいいと覚悟して「日米安保廃棄」「天皇制廃止」を打ち出すのもありかなと思う。完全な左翼政党として存在するか、「中道左派」に脱皮するか。
 (602万=5)→ 440万 →(448万=4)→ 417万 →(362万=3)→ 336万→(286万=2)

(自党が減っても結果を評価する田村委員長)

社民党は、何とか1議席を獲得して政党要件を満たした。まあ「稀少政党」であることは変わらない。生物多様性みたいな、政党多様性擁護のため投票する人がいるわけである。いずれ無くなってしまうとしても、取りあえず3年間はあるわけ。
 (154万=1)→ 94万 →(105万=1)→ 101万 →(126万=1)→ 93万→(122万=1)
★その他、「チームみらい」が152万票ほどで、1議席。「NHK党」や石丸伸二氏が起ち上げた「再生の道」は議席ゼロに終わった。まあ、少しだけあった「歴史的役割」が終わったということだろう。

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自民敗北も「善戦」感、立民横ばいも「敗北」感ー2025参院選①

2025年07月21日 21時41分03秒 |  〃  (選挙)

 2025年7月20日投開票の第27回参議院選挙で、自民党、公明党の与党は大敗して過半数を割り込んだ。しかし、石破茂首相は「続投」を表明した。それは選挙直前の『「石破後」はどうなるかー参院選後の政治状況を予測する』で書いた通り、日米関税交渉があって「今すぐ辞めると言って政治空白を作るわけにはいかない」ということだろう。それは予測していたが、自民党内でそれが通るのか、関税交渉、夏の諸行事(広島、長崎、戦没者追悼式)が終わった後に辞意表明ということもあり得るだろう。

 議院内閣制なので国民が直接総理大臣を辞めさせる手段はない。石破首相が頑張れば続けられるし、それをどう考えるかは自民党の問題になる。しかし、僕は石破首相は頑張り続けるかもしれないと思っている。直前記事では「自民党が大敗する」との予測にたって、本人の意向に関わらず「辞任は不可避になる」と思っていた。しかし、実は案外自民党が大敗しなかったのである。意外にも最後に少し持ち直したようで、情勢予測よりも自民党が増えている。しかし、公明党が予測以上に減らしたため、「与党過半数割れ」になったのである。公明が神奈川、埼玉、愛知で参政党に競り負けなかったら、過半数を確保出来たはずである。

 非改選の自民党議席は61、公明党は13。しかし、無所属になっている関口昌一議長がいるから、結局与党系は74になる。参議院全体では248議席だから、125が過半数となる。今回の自民党当選者は39、公明党は8、合計47だった。そこで与党合計は121となる。しかし、和歌山の当選者は公認もれの保守系だから、そこで一人あてに出来る。どうせ「国民」か「維新」が賛成しないと、衆議院で予算案も法案も通らない。その党が参議院でも賛成に回れば、参議院で過半数を越えるわけである。

 今回の自民党は選挙区で27比例区で12合計39である。前回2022年は選挙区で45、比例区で18だから、激減である。しかし、政治状況は全く変わってしまった。もう二度と昔が戻って来ることはないだろう。もっとも、今回の情勢報道ではもっと減ることも予測されていた。朝日新聞では7月5日(序盤)の報道では自民党の選挙区を「23~27~31」、比例区を「10~12~14」と予測していた。次の7月15日(中盤)では選挙区が「18~23~26」、比例区が「9~11~13」となっている。中央値で比べると、序盤39から中盤34と減っているのである。従来このような情勢はより加速することが多いので、もっと減ってもおかしくなかった。

(一人区の勝敗)

 ところが実際の選挙結果は、序盤戦報道の方が当たったのである。それは何故かと考えてみると、比例区は情勢報道の範囲内に入っているが、選挙区で上限以上に獲得したことが判る。つまり、最終盤に「自民党が盛り返した」か「野党の勢いに陰りが出た」のである。恐らく後者であって、立憲民主党が主要対立候補だった地区で、立憲民主党の勢いが減ったということではないか。確かに宮崎県のように立憲民主党が勝った県もあるが、福島、栃木、岡山、佐賀などは立憲民主党に勢いがあれば勝てたはずだ。1989年、1998年、2007年など、一人区のほとんどで野党系が勝ったこともある。今回はそこまでではなかったのである。

(「大連立」を否定する野田代表)

 今回の最大の勝者は国民民主党だった。比例区では野党第一党になった。参政党立憲民主党を越えている。これは予測出来なかった。参政党が国民民主党を上回ると予想していたのである。国民民主党は今回、選挙区で10、比例区で7、合計17議席を獲得した。立憲民主党は選挙区で15、比例区で7、合計で22議席。しかし、先の朝日新聞中盤予測では選挙区は「17~20~23」となっている。比例区の7は同じなのだが、選挙区で中央値より5議席も少ない。下限を下回っている。定数2の茨城選挙区で、参政党に現職が敗れたのが象徴的。埼玉、千葉、愛知など立憲が当選した地域でも、国民民主党より得票が少ない。

 明らかに立憲民主党は終盤に失速したのである。それは何故だろうか。もともと昨年の代表選で野田佳彦氏が当選したのは、(裏金問題の)自民党から離れた有権者を「穏健保守」路線で立憲民主党に誘導したいという思惑があった。それは衆院選では一定の効果はあったかもしれないが、今回の参院選のような「荒れた」論戦になると穏健路線が埋没した感がある。自民党を離れた票は「より右」に行ってしまい、国民民主党にさえ遅れを取った。政権交代の勢いが感じられない結果ではないか。

 今回の参院選の結果を見る限り、「自公連立政権」はどんなに遅くても3年後には終焉を迎える。それに代わって「立憲民主党を中心にした(現)野党連立政権」が成立する可能性は、今まで少しはあったが今回の選挙で完全に無くなったと思う。野党第一党になった国民民主党が参加しないからである。恐らく「玉木首班」を持ち掛けても乗らないのではないか。取りあえず、いつ次の衆院選があるか。なかなか安定した政治体制が成立せず、「首相が一年ごとに代わる」昔に戻るのかもしれない。

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なぜ「ボートマッチ」は役に立たないのか?

2025年07月19日 21時40分01秒 |  〃  (選挙)

 「ボートマッチ」(vote match)というものがある。「ある」と言ってもネット内にしかないけれど。選挙の時に、いろんな質問に答えていくと、どの党や候補が自分の考えに近いのか、判断してくれるサービスだ。使ってみたことはあるだろうか。そういうものがあると大分前に知って、何度かやったことがあるが、全く役に立ったことがない。それは何故か、どうすれば良いのか。

(NHKのボートマッチ)

 どこにあるかというと、主要なマスコミには大体あるようだ。他にも幾つか作っているところがある。検索すれば、幾つも出てくるから、僕は今回5つやってみた。同じように答えたから、結果は大体似たようなもので、やる前から判っていた。よく「入れる候補を探すときに使ってみよう」みたいなに言う人がいるけど、ほとんど役に立たないと思う。何でかというと、「多くの質問に答える」ことが可能な人は自分で入れる党(候補)を探せるし、そもそも「政策一致度」で入れる人ばかりじゃないだろう。

(朝日新聞のボートマッチ)

 また質問内容も答えにくいものが多い。例えば「食品に限って消費税を時限的にゼロに減税することに賛成ですか?」という質問があったら、「消費税廃止」を訴えている「れいわ新選組」の支持者は何と答えれば良いのか? 「食品」「時限的」「ゼロ」と制限が多すぎて、それらにいちいちこだわるなら大体「反対」になってしまう。それで良いのだろうか? 

 「国民に2万円の給付金を出すべきですか?」という質問も同じ。「給付金ではなく、消費税減税」と考える人は「反対」と答えれば良いのか。中には「消費減税を行わないのであれば、せめて給付金で良い」と思う人もいるだろうが、そのような前提がない質問だと答え方が難しいのである。このような「具体的な政策に関わる質問」にすぐ答えられるなら、ボートマッチは要らない。

 そもそも人間には(意識しなくても)「価値観」「イデオロギー」を持っている。自分のイデオロギーにあまりこだわりを持たないで来た人が多いかもしれない。「冷戦終結後」は大方の人が「政治的には自由民主主義」「経済的には修正資本主義」が前提になり、その中で政治的には国際協調か、伝統重視か、経済的には新自由主義か、福祉重視かという対立軸で争ってきた。しかし、「参政党」「日本保守党」のような本格的イデオロギー政党が登場してきた今、「天皇制への感覚」なども最初に聞くべきだろう。

 また、「政策」以前に、「現在の内閣をどう感じているか」を最初に聞かないといけない。「石破首相には任期いっぱい務めて欲しい」「石破首相は出来るだけ早く辞めて欲しい」などである。さらに今回の選挙では「与党が増えて欲しい」「野党が増えて欲しい」などの質問が必要だ。政策内容以前に「政党への好み」感覚もあるだろうし、政治家の「個人票」もある。

 「ボートマッチ」各種をやってみた限りでは、例えば「選択的夫婦別姓制度」への考え方をすぐ答えられる人はスイスイ進むけど、そういう人はボートマッチしなくてもどの党が自分に近いかは大体判っていると思う。「一度も選挙に行ったことがなく、政治的関心が薄い」という人が「ボートマッチ」をやってみても、何だか納得できない結果に終わるんじゃないだろう。また比例区は好きな党に入れれば良いけれど、選挙区には同じ党が複数立てていたり、どう見ても当選が難しい人もいる。

 例えば、東京選挙区では自由民主党、立憲民主党、国民民主党に二人の候補がいる。どちらがより自分の考えに近い候補なのか、ボートマッチは教えてくれない。また社会民主党や日本保守党などと政策志向がマッチしても、東京選挙区で当選は不可能なので、他党に入れる人が多いだろう。そういう風に、「ボートマッチ」をやってみても、あまり納得感がないのである。

 むしろ「こんなにいろんな政治課題があるんだ」と学校の授業で使えるかも知れない。「自分と合う党を見つける」というのをいったん忘れて、「自民党に一番合うと出るように答えてみる」というゲームも考えられる。同じように立憲民主党、国民民主党、共産党、参政党などと、自分の好き嫌いはちょっと置いといて、こう答えると「その党と合う」と出るゲームである。大学などでやってみると面白いかもしれない。別に僕は「ボートマッチ」を全面的に否定するつもりじゃなく、より「初心者が使いやすい」ものにするにはどうすれば良いのか、是非工夫していって欲しいと思うのである。

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都議選、台頭する「排外主義」、危険な「日本人ファースト」の発想

2025年06月25日 21時37分04秒 |  〃  (選挙)

 2025年の都議選で「参政党」が3議席を獲得した。4選挙区で立候補して、3勝1敗の成績。もう少し詳しく見ると、大田区(7人区)で4位、世田谷区(8人区)で2位、練馬区(7人区)で3位で当選し、八王子市(5人区)では7位で落選した。これを見ると、大規模な選挙区でまず擁立する堅実な戦略を取ったわけである。そして、23区周縁部の3つの選挙区では上位当選した。多摩西部の八王子(萩生田光一の地元)では落選だったが、それでも2万票取っていて、最下位当選者とは2千票差だった。

(参政党の当選議員)

 参政党は3年前の参院選で神谷宗弊議員が当選し、2024年の衆院選では3議席を獲得した。都議選では「減税」や「コメ」問題などを取り上げて、都議選期間のYouTubeの政党検索数トップだったという。最近行われた地方選挙では尼崎や鎌倉の市議選で当選するなど、「地道な活動」により全国政党化が進んでいる。もともと強烈なナショナリズム、「日本人ファースト」という主張で知られ、参院選の公約でも「外国人総合政策庁」を設立して「外国人参政権は一切認めず、帰化一世にも被選挙権を付与しない」などと人権無視の公約を明記している。なかなか注目すべきことも言ってるけれど、基本は「極右政党」だろう。

 ところで今回の都議選最大のサプライズは、間違いなく千代田区佐藤沙織里候補の当選である。35歳の無所属新人で公認会計士と出ている。ここは政争・スキャンダルの多い地区で、2021年の区長選では「都民ファーストの会」の現職都議だった樋口高顕氏が自公推薦候補を破って当選した。2025年2月の区長選で樋口氏が再選されている。その時の区長選で次点だったのが佐藤氏だった。樋口氏に代わって4年前に都議に当選したのは、板橋区から移ってきた平慶翔(たいら・けいしょう)だった。

(当選した佐藤氏)

 平慶翔はタレントの平愛梨の弟、平祐奈の兄にあたる(つまりサッカー選手長友佑都の義弟)こともあって、知名度が高い。自民党も候補を立て、情勢報道を見ても両者の争いとなっていた。ところが実際に票を開けてみると佐藤(7,232票)、平(6,986票)、林(自民=6,134票)とギリギリ246票差の勝利である。今回の全都的傾向からは、平圧勝でもおかしくないわけだが、何で佐藤沙織里氏が当選したのか。区長選から半年も経ってなくて知名度があったのかもしれないが、ネット上で大騒ぎになっている。

(2025千代田区長選の結果)

 さて、この佐藤氏の主張が「日本人ファースト」なのである。チラシがネット上にあったので見てみると、この人は税理士でもあって「減税」の主張が一番大きい。「もしお金のプロ(公認会計士、税理士)が都議になったら」と(まあ無所属1人で都民税を変えられるのかとも思うけど)、なかなかキャッチーな主張だ。しかし下の方には「不法外国人」とあって「憲法違反の外国人生活保護1200億円、外国籍限定補助金の廃止」と非人道的で意味不明(外国籍限定補助金って何だ?)な主張をしている。他にも「入国時に国保の前払金徴収」「治安維持の財源確保のため外国人観光客の宿泊税を強化」など排外的主張が並んでいる。

 参政党や佐藤氏の主張は、「減税」が受けているのか、それとも「排外的主張」が受けているのか。僕にはよく判らないが、減税は他の政党も主張している。世田谷区など立憲民主党、共産党、国民民主党なども当選しているし、れいわ新選組(落選)も出ていた。それらの野党ではなく、参政党の方が上なんだから(国民民主党は2人出ていて合わせれば参政党とほぼ同じになるが)、やはり「排外的」主張が受けているか、少なくともそれがマイナスになっていないと想定できるのである。

 このように今や首都のど真ん中の千代田区で「日本人ファースト」=排外的主張を行う人物が都議に当選する時代になったのである。この事は今回の都議選の最大の問題じゃないだろうか。ところで「日本人ファースト」などという発想は実に危険なものだと思っている。その事を最後にちょっと書いておきたい。例えば参政党は先の国会で「選択的夫婦別姓」に反対の立場から質問を行った。しかし、選択的夫婦別姓や同性婚の制度がないことで、日本人の中に困っている人がいて裁判も起こしている。「日本人ファースト」なら率先して賛成するべきではないか。そうじゃないなら「多数派日本人ファースト」と称するべきだ。

 あるいは「生活保護費」が削減されて困っている人がいる。生活保護費を減らせという人は、「日本人ファースト」とは思わない。「外国人生活保護廃止」などと言う人もいるが、これは一見「日本人ファースト」のように見えて、実は税金を納める義務がある定住外国人を福祉の対象から外すなど「国際人権規約」に反する非人道的で国辱的な主張に他ならない。「日本人ファースト」というなら、僕は日本人が世界に発信するべき「核兵器廃絶」をまず最初に書くべきではないか。

 僕は「日本人」「外国人」などと枠を作って「分断」する思考は間違いだと思うが、では「人間ファースト」なら良いかというとそれも違う。それでは「動物の権利」や「地球環境」が思考の枠外になってしまう。そもそも各政党は日本国民に選ばれている以上、主張に差はあっても「日本人ファースト」になりやすく、現になっている。どの政策もプラスマイナスがあり、どれがファースト、セカンド、サードと決めていくのが「政治」なのであり、「アメリカファースト」も「都民ファースト」も変だ。

 今までは「排外主義」や「歴史修正主義」は自民党の右派として存在した。そのため最終的には「統治権者の配慮」でマイルドになるケースが多かった。しかし、今や自民党の右側に存在する政党が議席を得る時代である。今後どうなっていくかは判らないけれど、「ドイツのための選択肢」のような政党として伸びていく可能性も否定は出来ないと思う。

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2025都議選、「納得」と「驚き」ー自民惨敗、「都民ファースト」が第一党

2025年06月24日 21時49分42秒 |  〃  (選挙)

 2025年6月22日に東京都議会選挙が行われた。今までの都議選の記事を探してみると、何と前回2021年だけだった。それは『勝者なき都議選ー2021東京都議会選挙』で、4年前は7月4日だった。もう言われてみないと忘れているけど、それは「東京五輪」の直前で菅義偉内閣時代だった。コロナ禍真っ只中ということもあり、投票率は42%ほどだった。なんか忘れてるよねえ。

 今回は自民党が過去最低となり、公明党がなんと3人も落としてしまった。その分「都民ファーストの会」が堅調で第一党になった。しかし、そうは言っても全127議席中の31人で、4分の1ほどしかない。もはや世田谷(8人区)を除き複数当選はない。練馬区(7人区)では2人いた現職のうち1人は落ちている。小池百合子知事の支持率は今も高く、特に選挙前に打ち出した「夏季の水道基本料金無償化」(なんとなく水道料がタダになるかのように思っている人がいるかもしれないが、基本料金だけである。一般住宅では2~3千円程度。)それでも他党より支持が集まったということになる。

 今回の投票率47.59%だった。下のグラフを見れば判るように、投票率は一回ごとに増減を繰り返している。ダイエットのリバウンドのような状態になっているが、これまでは下がった次は5割になった。今度はそこまで行かなかったが、それでも体感的には結構増えた気がする。直後に参議院選挙もあるし、いろいろ話題の新党も参戦し、それなりに話題豊富だったということか。国政与党と国政野党の間で、地域政党である「都民ファーストの会」が票を集めたが、参院選ではその票はどこに向かうのか?

(都議選投票率の推移)

 自民党は今回都議会でも「裏金」(政治資金報告書不記載)問題があった。そのため現職議員でも非公認者が6人出ていた。「裏金」議員全員ではなく、都議会自民党幹事長経験者に絞って非公認とした。無所属で戦った6人のうち、3人が当選、3人が落選だった。しかし、告示当日に井上信治都連会長が非公認の大田区鈴木章浩、世田谷区三宅茂樹の応援に行っている。二人とも落選で、応援の効果がなかったというより、むしろ逆効果だったのかも。いきさつはともあれ、「非公認」とした以上「会長」が応援に行ってはいけない。石破政権の給付金が不人気と言うが、僕は井上会長のふるまいが「無反省」だったことも大きいと思う。

(自民党は歴史的大敗)

 都議選は「参院選の前哨戦」と言われたが、これに対し「再生の道」の石丸伸二氏がNHKで噛みついていた。どの党が言ってるんですかというけど、どの党もそう思ってやっている。それは時期が近いとか、「首都決戦」が全国に波及するなどの理由もあるが、一番大きいのは「1人区」から「8人区」まである都議選の仕組みが参院選に似ているからだろう。また東京だから都市部ばかりかというと、そんなことはない。地域のつながりが強い23区東部、リベラル系が強い23区西部から多摩地区東部、農山村地帯や離島まであって、全日本の縮図といっても良い。そういう事情で次の国政選挙を占うには最適の選挙になるわけである。

 その「1人区」は7つあるが、島部は自民党の裏金「非公認」議員(追加公認)が国民民主党候補にダブルスコアで圧勝した。これは何回やっても同じで、当選した三宅正彦氏は最大の伊豆大島出身で、次点の伊藤奨氏は島の学校を転々として八丈高校卒業という事情が絡むのである。その他の6つは「都民ファーストの会」が3(中央、青梅、昭島)、「無所属」が3(千代田、武蔵野、小金井)である。無所属の内2人は野党系推薦で、もはや自民党は1人区で勝てないのである。また野党系は上手に「共闘」すれば健闘できるのだ。千代田区の無所属当選者は実は今回最大のサプライズで、もう一回別に考えたいと思っている。

(小池知事と「都民ファースト」第一党に)

 今回の情勢を象徴するような選挙区が「北区」である。都民現、公明現、共産新が当選で、次が自民新、維新新だった。新人だからかもしれないが、今回議席を減らした公明や共産にさえ自民が及ばない。「豊島区」はもっと凄くて、都民現、共産現、公明新が当選で、次点が再生新、一番下が自民新である。「再生の道」にさえ及ばなかった。4人区、5人区で候補を一人に絞った地区は、さすがに当選しているけれど、少なくとも今回に限っては自民党は大敗北である。このように地方議員が減ることが、今度は国政選挙でもボディブローになってくる。手足になって働く議員、支持組織が細っていることを示している。

 公明党は前回23人当選のところ、22人を擁立して最初から守りの姿勢だった。長らく全員当選を続けてきたが、今回3人も落選したのは驚き。特に新宿区で現職が立憲民主党新人にわずか257票差で競り負けた。ここは公明党や創価学会の本部がある地区なので、まさかのまさかという感じである。上は自民、共産、国民民主で、自民、共産候補が固い個人票を持つ中、国民民主党が割り込んできた。大田区は現職2人が共倒れ。故池田大作氏の出身地で公明党が強い地区だったが、もはや複数当選は厳しいのか。僕の住む足立区は2人当選したが、5位と6位だった。それも25,806票と25,332票で差がない。浮動票が少なく身内票をまとめた感じ。

 立憲民主党は17人当選だが、推薦した無所属が複数当選しているので、統一会派を組むことが出来れば公明党を上回り、場合によっては自民党会派に並ぶ可能性もある。それを考えれば、一応「批判票」の受け皿になったのかと思う。共産党は品川、葛飾、江戸川、八王子、町田で現職が落選し、前回19人が今回14人当選にとどまった。選挙区事情が違うが、国民民主党が入っている地区が多い。共産党の不振は公明党の事情と似ていて、支持者の高齢化が進んで集票力が落ちてきているのかと思われる。

 最後に「再生の道」を書くつもりだったが、止めておく。政策を掲げないこともあるが、同じ地区に2人立てる(かなりあった)など当選させる気が初めからないとしか思えなかった。そういうムードが有権者にも伝わって広がらなかったのか。参院選にも立てると言うが、どうなることか。国民民主党はゼロから9人だから大躍進である。だけど当初は支持率がもっと高く、目標が11議席だったので何だか大勝利感がない。だけど今も一定の強い支持があるのである。しかし、都政では「小池与党」になるだろう。その意味では国民民主党票は「保守」「小池支持」であり、自民減少の理由の一つだったのではないか。

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各党の比例区票、「国民」「れいわ」の躍進、「公」「共」の停滞ー衆院選の結果③

2024年10月30日 21時59分40秒 |  〃  (選挙)

 2024年衆院選の各党の比例区票を検討したい。なお、比例区当選者数だけを見てみると、自民党=59議席、公明党=20議席で、与党計は79議席立憲民主党=44議席、国民民主党=17議席、日本維新の会=15議席、れいわ新選組=9議席、日本共産党=7議席、参政党=3議席、日本保守党=2議席になる。野党系議席は総計で97議席。比例だけなら、与野党の差はもっと大きくなる。(国民民主党は比例名簿登載者が足りず、自民、公明、立民に各1議席を譲ったので、本来なら与党=77、野党=99だった。)

(国民民主党の玉木代表)

★各党を順番に見てみる。まず自民党だが、今回比例区で1458万票、全体の26.7%になる。これは2021年の衆院選の得票率34.43%から激減した。前に紹介した朝日新聞(21日)掲載の情勢報道では、自民党の獲得予想議席は、小選挙区は135~144~154、比例区は49~56~63だった。合わせると、184~200~217となっている。この時は例の「2千万円問題」はまだ報道されてない。最終盤に小選挙区で落ち込んだことが想像できるが、比例区はむしろ予想の中心値より多かったのである。この10数年の政治史を思い出せば、自民党を離れて、より右の、または左の党を作るのは(大阪の「維新」を除き)成功しなかった。従って、自民党を離党して日本保守党に加わったりする政治家は、いても少数に止まり、数年後の党勢回復を待ち望む人の方が多いだろう。

以下に最近6回の国政選挙の得票数を示す。(参院選後のカッコは獲得議席。)
 (16年参院選)→17年衆院選→(19年参院選)→ 21年衆院選→ (22年参院選)24年衆院選
 (2011万=19)→1856万  →(1711万=19)→1991万  →(1826万=18)→1458万
公明党596万票ほどで、ついに600万票を割り込んだ
 (753万=7)→ 698万→ (654万=7)→711万→ (618万=6)→596万
 公明党は16年参院選から減り続けていたが、21年衆院選で久しぶりに700万票台に載せた。しかし、22年参院選で100万票減らし、今回はついに600万票以下に落ち込んだ。自民党の低調に影響されただけではないだろう。比例区票が減っているのは、構造的な原因があると思われる。選挙運動もかつてほどの勢い(というか、「熱心さ」「強引さ」)が見られなくなった。組織の弱体化が進んでいるのかと思う。今後、一時600万票を回復するかも知れないが、遠からず500万票台前半になるのでは。

(公明党の石井代表は落選)
★次は野党を見る。立憲民主党は2017年衆院選で登場したので、そこから見ることにする。立憲民主党は小選挙区では1,540万票を得ていて、非自民票の受け皿として一応の存在を示している。しかし、比例票は下の推移に明らかなように、おおむね過去の衆院選と大差ない。確かに今までで一番多いけれど、今回の「躍進」は自民票が減ったから浮上しただけなのである。

 1108万 → (792万=8)→ 1149万 →(677万=7)→1156万
 
★続けて国民民主党を見ると、ここは確かに22年参院選から300万票増やして「倍増」に近い。「手取りを増やす」と若者向け政策を打ち出したのが一定の効果を上げたらしい。今まで時に自公政権に協力する時もあり、その「中間的立ち位置」は「維新」と共通し、競合する存在なのではないか。近畿を除き、今回は「維新」ではなく、国民民主党が選ばれたということか。
 19年参院選から、(348万=3)→ 259万 →(316万=3)→ 617万
★次に「日本維新の会」を見るが、16年参院選は「おおさか維新の会」で、その時は515万票・4議席だった。今回は前回衆院選から約300万票減らした。大阪万博や兵庫県の斎藤前知事問題などで、一度失った勢いが全国に波及したということか。大阪の小選挙区は全勝したが、それが比例に及ばない。(大阪府でさえ、小選挙区は164万票だが、比例は115万票なのである。)それでも福岡11区で武田良太を破ったのは、維新だった。ここは立民、国民、共産、れいわなど主要野党が立たず、維新と社民党が対抗馬だった。そういう時は維新が受け皿になるときがある。
 (515万=4)→ 339万 →(491万=5)→ 805万 →(785万=8)→ 510万 
共産党336万票ほどで、7議席。どんどん減らしていて、どこで落ち着くのか判らない。今回委員長が田村智子に交代したが、大きな効果はなかった。共産党と競合する立ち位置にあるのは、「れいわ新選組」かなと思う。物価高で困窮する国民への訴求力では、共産党ではなく「れいわ新選組」に分があった。「政治とカネ」問題、あるいは今回の自民非公認候補への2千万円問題などを報道したのは、確かに「しんぶん赤旗」だった。だから「新しいプロセスへ扉を開いたのは共産党」と言うけど、共産党への投票にはつながらないのは何故か。「科学的」に分析してみれば、党の抜本的改革が必要なことが理解出来るはずだが。
 (602万=5)→ 440万 →(448万=4)→ 417万 →(362万=3)→ 336万
(共産党の田村智子委員長)
れいわ新選組は、前回19年に228万票、21年衆院選は221万票、22年参院選は232万だった。今までは200万票台前半を越えられなかったが、24年衆院選で380万票(7.0%)を得た。特に沖縄県で12.1%の得票があり、自立公につぐ第4党になったのが注目される。沖縄4区で立候補した山川仁(元豊見城市長)が比例で当選して、今後沖縄政界にどんな影響を与えるか注目される。一時「沖縄1区」にも擁立の動きがあったし、山本太郎代表は「オール沖縄は歴史的役割を終えた」と発言した。ただ「れいわ新選組」はまだ地方議員が少なく、地域の基盤が共産党、公明党などに及ばない。しかし、徹底したポピュリズム路線でしばらくは拡大するのではないか。
社民党は、93万票で比例区票はゼロだった。まあ全国で集計する参院選比例区なら1議席に届くが、ブロックごとの衆院選比例区では、もう社民党が当選することはないだろう。
 (154万=1)→ 94万 →(105万=1)→ 101万 →(126万=1)→ 93万
★「参政党」は22年参院選で、177万票、3.3%で1議席を獲得した。24年衆院選は187万票を得て3議席を獲得。一時は日本保守党の方に勢いがあるのかと思ったが、実際は参政党の方が多かった。地方議員などもいて、基盤的には大きいのである。極右的、陰謀論的世界観はいずれきちんと論じる必要を感じている。

★今回初参加の「日本保守党」は、1,145,622票を獲得して、政党要件をクリアーした。僕は東京ブロックで1議席取るのかと思ったが、獲得議席ゼロの参政党に及ばなかった。(比例で獲得したのは、東海と近畿。)しかし、社民党より多いのである。この党がどうなるのかは、要注目。今のところ、参政党と日本保守党が競合する可能性もあり、どこまで本格政党になるのかは、2025年参院選を見る必要がある。

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案外低かった投票率、多かった接戦区ー2024衆院選②

2024年10月29日 22時40分52秒 |  〃  (選挙)

 2024年衆院選の話。2回目は、まず投票率を検討したい。今回の投票率は、小選挙区で53.85%比例区で53.84%だった。(少数だけど、比例区だけ投票しない人がいるのである。)前回はそれぞれ、55.93%、55.94%だったから、今回は3.1%ほど低かったのである。全国の比例区票は、54,549,720票だった。日本の人口は約1億2千万人。有権者は約1億人になる。今回の投票率が約54%ということで、全国でおおよそ5400万人が選挙に行ったわけである。

 前回の投票総数は57,465,978人だったから、大体300万人が減ったことになる。この間に亡くなった人、新たに選挙権を得た人などもいるので、何も前回行った人が今回は棄権したということではない。しかし、これほど減ったのには理由があるはずだ。一番先に思いつくのは、「自民党支持者がお休みした」という仮説だ。「裏金」問題で批判が強く、今回は自民党に入れる気がしなかった。しかし、立憲民主党や他の野党に入れちゃうほどの気もしない。そういう人が存在したんじゃないだろうかという予想である。

 前回の自民党比例区票を見ると、19,914,883票だった。今回の自民党比例区票は、14,582,690票である。約533万票も減らしている。300万人より多いが、今回から衆院選に参入した参政党が約187万票日本保守党が約115万票ほどを獲得している。「維新」も約300万票ほど減らしているし、他党の動向を細かく検討する必要があるが、大体の方向として「保守票が自民、新興政党、棄権」に分れ、前回自民票に入れた人たちが減った分、投票率が下がったと考えてよいのではないか。その傍証として、自民党大物議員の得票も減らしている人が多い。(区割り変更の影響があった人もいるだろうが。)

 例えば、岸田文雄(13万4千→10万)、麻生太郎(10万5千→9万2千)、菅義偉(14万6千→12万)、河野太郎(21万→13万)、小泉進次郎(14万7千→13万)、高市早苗(14万2千→13万)といった具合で、これら直接「裏金」に関与したわけではなく、少し減らしても悠々と当選出来る(一人も対立候比例で当選していない)人たちも、軒並み減らしているのである。(河野氏などは激減である。)なお、さすがに石破茂(10万5千→10万6千)首相だけは、少しだけど増やしている。これらの人の選挙区には、有力な対立候補もいないので、どうせ自分が行かなくてもという気になりやすいこともあるだろう。

 ところで、それより気に掛かるのは、広島県と沖縄県で投票率が5割を切っていることだ。広島は前回52.13%が、今回48.40%沖縄は前回54.89%が、今回49.96%である。沖縄の激減ぶりはよくよく考える必要がある。自公政権にも、野党と一部保守系が協力する「オール沖縄」にも、期待出来ない、本土の政権枠組がどうなろうと、沖縄が抱える問題は解決出来ないという「怒り」「抗議」「諦め」のような気分が投票率低下の背景にあるのではないか。

 広島の場合はよく判らないけど、地元の岸田首相を支える意気込みだった人が失望したのかもしれない。あるいは日本被団協のノーベル平和賞受賞にもかかわらず、核禁条約に後ろ向きな自民党への失望が他県より大きいのかも。(長崎県も56.89%から、52.48%へと全国平均以上に減っている。)さらに河井元法相の事件が後を引いていて、地元の保守系地方議員の動きが今も弱くなっているのかもしれない。(7区から6区へ減区され、なじみが少ない候補になった地区が多かったのも影響したかも。)

 続いて接戦区を見てみたい。今回は今まで以上に超接戦が多く、1,000票以内の決着が9選挙区もあった。投票率が低く、与党の勢いが弱いことの影響だろう。また野党乱立の結果、比例区で復活当選する人が2人いて、合計で3人当選者がいる選挙区も多かった。(5つもある。)

和歌山1区 124票差 山本大地(自民、当選=70,869)、林佑美(維新、比例当選=70,745)

愛知10区 162票差 藤原規真(立民、当選=59,691)、若山慎司(自民、比例当選=59,529)

栃木3区 178票差 梁和生(自民、当選=45,546)、渡辺真太朗(無所属、落選=45,368)

群馬3区 214票差 笹川博義(自民、当選=74,930)、長谷川嘉一(立民、比例当選=74,716)

東京28区 336票差 高松智之(立民、当選=50,626)、安藤高夫(自民、比例当選=50,290)

東京10区 591票差 鈴木隼人(自民、当選=93,490)、鈴木庸介(立民、比例当選=92,899)

富山1区 738票差 田端裕明(自民、当選=45,917)、山登志浩(立民、比例当選=45,179)

秋田1区 872票差 冨樫博之(自民、当選=60,387)、寺田学(立民、比例当選=59,515)

神奈川6区 926票差 青柳陽一郎(立民、当選=80,207)、古川直季(自民、比例当選=79,281)

 こんな僅差で決まることもあるんだから、「選挙なんて自分が行っても変わらない」というもんでもない。確かに一票差ではないけれど、名も顔も知らぬ何十万人かの中で、200人以内で決まることもあるのだから。それにしてもこういう選挙区は候補も支援者も大変だろう。痺れるような大接戦、両チームがノーヒットノーランのままで9回を迎えた野球の試合みたいな感じだ。ま「開票速報」を見るのが好きな「選挙観戦ファン」の感想だけど。それにしても以上で勝った9人のうち、6人は自民党。自民はもっと減らすところを数百人の投票行動により、何とか191議席になったわけである。

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しばらくは石破「少数与党内閣」で、2025衆参同日選挙か?ー2024衆院選①

2024年10月28日 20時37分03秒 |  〃  (選挙)

 2024年10月27日投開票の衆議院選挙が終わった。その結果を何回か書いておきたいが、まず今後の内閣がどうなるか。自民党・公明党の連立与党は大きく減らし、過半数を割り込んだ。自民党が大きく減らして191議席公明党が予想以上に減らして24議席。合計で215議席で、過半数の233議席を大きく割り込んだ。牧原秀樹法相、小里泰弘農水相と二人の現職閣僚が比例区当選もならず落選。それ以上に驚いたのが、公明党の石井啓一代表が埼玉14区で落選したことだ。当選した鈴木義弘は今まで比例で3回当選した前職議員だが、立憲ではなく国民民主党。維新や共産も出馬した野党乱立区だから、やはり石井当選かと思っていた。

(ニューヨークタイムスWeb版に掲載された石破首相の写真)

 過半数を下回っている以上、数字上は石破氏以外が内閣総理大臣に指名されることもあり得る。そういう情勢の責任を取って、石破氏が総裁を辞任する可能性も絶無ではない。だけど、今日の記者会見では続投を目指すということだった。党内には反発もあるだろうが、じゃあ誰が後継になるのか。過半数割れの状況から、次の自民党総裁になるだけでは総理への道につながらない。野党と連携すると言っても、どこも(すぐには)組むところはなさそうだ。総裁選で2位だった高市陣営は旧安倍派が大量に落選して支持基盤を大きく減らした。それに来年には参院選があり、今「石破辞めろ」と言うと、参院選で負けたら自分も辞めなければならない。

 一方の野党側だが、数字上は全部まとまれば政権を取れるわけだが、むしろ各党の違いは大きくなっている。労働組合「連合」の支持を受けるという意味で、一番可能性が高いはずの立憲民主党国民民主党の間でさえ政策や方向性が一致していない。ましてや「維新」、「れいわ新選組」、共産党などは立憲民主党との距離が開いている。お互いに組んだからといって過半数を超える組み合わせはない以上、自分の方が譲って首班指名で「野田佳彦」と書く党があるとは思えない。むしろ来年に参院選を控える事情から、各党ともに独自性を高めることが予想される。(下の画像は野田佳彦立憲民主党代表)

 そうなると、1回目の首班指名で1位石破、2位野田となって(他党はそれぞれ自党のトップに投票)、両者の決選投票となる可能性が高い。2回目は自公、立民以外が棄権して、結局衆議院で石破茂氏が指名される(参議院では問題なく石破指名)。そういう少数与党内閣発足の可能性が高いと思う。決選投票は、1979年の大平内閣、1994年の村山内閣の指名で起こって以来の事態となるが、まあそういう想定をしている。結局は来年に参議院選挙が控えている以上、野党も選挙で訴えた「反自公政権」の旗を降ろせないし、野党の選挙協力もなかったのに選挙後に突然組むことも不自然。参院選までそういう状況が続くのではないか。

(議席4倍増となった国民民主党の玉木代表)

 しかし、もしそういう少数与党内閣になると、非常に不安定な政治になる。かつて小渕政権で自民党幹事長だった野中広務氏は、「ひれ伏してでも」と言って、自由党(当時、小沢一郎氏が新進党解党後に結成した党)、さらに公明党との連立をまとめたことがあった。(当時は自民、公明それぞれに連立に否定的な声が強く、最初は「自自公連立」として発足した。)今回もやがては、新しい連立枠組成立(あるいは自民党分裂、政権交代など)が起きて来るもんじゃないだろうか。

 2025年の通常国会は、参院選が控えている関係で大幅延長が不可能だ。従って、予算成立後は政治資金規正法の再改正など以外はなかなか懸案に取り組むのは難しいだろう。そうなると、野党が不信任案を出すのは確実で、過半数を持ってない以上、不信任案が通ってしまう可能性がある。その場合石破首相は総辞職ではなく、衆議院を解散するだろう。ほぼ半年ちょっとしか経ってないけど、衆参同日選になるかもしれない。1980年の大平内閣、1986年の中曽根内閣以来となるし、あまり望ましくないと思うんだけど、止むを得ない場合は許されるだろう。

 そういうこともあるかもという想定で、それまでに突然石破首相が辞めちゃうかもしれないし、どうなるかは読みきれない。取りあえず、国民民主党も維新も連立に加わりそうもなく、逆に立憲と組む可能性もないようだ。となると、こうなるのかなという話。

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「負ける戦い」をした蓮舫陣営ー2024都知事選①

2024年07月08日 22時19分25秒 |  〃  (選挙)
 2024年7月7日に、東京都知事選挙が行われた。結果は予想されたとおりに、現職の小池百合子が3回目の当選を果たした。小池氏の場合、問題は「出るか出ないか」であり、出るなら勝つことが確実視されていた。もし今春に総選挙があった場合、小池氏は国政復帰を模索するのではないかと僕は予想していた。だがチャンスがないまま、結局は都知事選に出ることになった。小池氏は2016年の初出馬時に「2,912,628票」で当選し、2020年には「3,661,371票」と圧勝した。2024年は「2,918,015票」で、ほぼ第1回目と同じである。つまり前回から70万票ほどが減少したわけである。
(都知事選結果)
 小池知事に最盛期の勢いは失われつつあった。そこに対立候補として、5月27日に立憲民主党参議院議員蓮舫氏が出馬を表明した。当初は「小池対蓮舫」の争いとみられていたが、終わってみれば広島県安芸高田市の前市長石丸伸二氏が2位となった。終盤戦に石丸猛追が伝えられたが、それにしても僕は「2位争い」を予想していた。まさか35万票以上も差が付く蓮舫大敗は予想していなかった。「蓮舫大敗」はなぜ起こったのか。これこそ今回の都知事選の最大問題だと思う。
(出馬表明時の蓮舫氏)
 蓮舫氏の出馬表明より前に、石丸伸二氏は5月16日に都知事選への出馬を表明していた。しかし、5月末時点では両者の知名度には大きな差があったと思う。その後、蓮舫氏はなかなか公約を公表しなかった。僕はそれはどうなんだろうなと思っていたが、実際に発表された公約を見ても大きな変革を予感させるものは無かった。蓮舫氏が負けると判ったのは、告示日の第一声の場所を知った時。それは中野だった。2012年の自民党政権復帰選挙でも、長妻昭氏が勝ったのが中野区を含む東京7区。(その時小選挙区で勝ったのは、長妻氏と現在自民党の長島昭久氏だけだった。)

 蓮舫氏や支援陣営の話では、街頭演説では多くの聴衆が集まり盛況だったという。盛り上がりが感じられ、なぜこれほど大差で敗れたのか判らないという。実際に画像を検索すると、なかなか盛り上がってる感じだ。(下記画像)しかし、それがくせ者。石原都知事時代以来、ここ20年間左派系は「義侠心に富む負け覚悟の候補者」しか担いでこれなかった。蓮舫氏は久方ぶりの一般的知名度が高い候補者で、内輪で盛り上がるのも想像できる。だけど、戦略的に考えた場合、立憲民主党が弱体な地域で第一声を上げないと行けない。例えば、東京東部の錦糸町(墨田区)や北千住(足立区)、あるいは多摩地区の八王子(萩生田氏の地元)などである。
(蓮舫氏の演説)
 東京東部の大量の小池支持層を引き剥がすためには、地道に街頭演説を繰り返すしかない。しかし、蓮舫氏ではなく、石丸伸二氏が何カ所も演説を繰り返していた。さらに蓮舫氏は「外苑再開発」問題が争点になると言い切り、住民投票を検討するとも言った。これも疑問が多い言動だ。僕はこの問題を一度も書いてない。それどころか、実は神宮外苑のイチョウ並木をちゃんと見に行ったことがない。有名な絵画館前で待ち合わせしたこともない。僕の家からは身近な場所ではないのである。一般論として「自然を大切に」は理解出来るが、東京人の心のふるさとみたいに語る人があると、やはり「あっち側に住んできた人」と思う。

 「蓮舫氏自身の問題」「立憲民主党の問題」「共産党の支援問題」などいろんな側面があるが、結局は「内輪」の運動に終始した感がある。東京の政治風土は「保守」でも「革新」でもなく、「強いものに付く地域」だと思っている。地元意識が薄く、東京人は東京を愛していない。(そう考えないと、あんなに「ふるさと納税」をするのが理解出来ない。)東京に住んでるだけで、給料も高くなる。(公務員の場合、「地域手当」が大分違う。)東京で「子育て」をしているというのは、それだけで(好きな言葉じゃないが)「勝ち組」だ。小池知事はそこに焦点をあてて「バラマキ」を繰り返してきた。
(開票後の会見を行う蓮舫氏)
 最新の参院選である2022年東京選挙区で、蓮舫氏は4位で当選した(670,339票)。他に立憲民主党から松尾明弘氏が出たが8位で落選(372,064票)。共産党からは山添拓氏が3位で当選(685,224票)。さらに社会民主党から出た服部良一氏が59,365票を獲得している。4氏を合計すると、「1,786,992票」となる。それを政党レベルで見た場合の基礎票と考えると、何と50万票も流出している。無党派層がどうのと言う以前に、党の基礎票も固めきれなかったことが判る。

 非常に重大なのは、「小池バラマキ」が一端始まると、既得権化してしまって変えにくいことだ。子育て家庭に月5千円支給、私立高校授業料無償化など、一端やり始めると止めにくいが、果たしてそれが政策として最善のものか。一端立ち止まってゼロベースで検討するという公約を蓮舫氏は出せなかった。むしろ「小池都政の子ども政策」は「ある程度評価する」とアンケートで答えている。しかし、小池都政の進めて来たことは、「格差拡大政策」だろう。そしてその受益者は小池氏を支持し続ける。それに対する根本的批判は、自らも私立学校にしか通ってこなかった「山の手のお嬢様」の問題意識に入って来ないのかもしれない。

 しかし、それは最初から判っていることだ。そこをいかにして「化けさせる」のが選挙参謀の醍醐味だろう。それを考えると、全く戦略が立ってなかったと思う。自民党の問題により、衆院補選で立憲民主党が3戦3勝になった。勢いが立憲民主党にあると誤認してしまったのではないか。また政党支持の問題では、自民党が小池氏を「ステルス支援」する中で、蓮舫氏も同じように「政党隠し」になってしまった。僕はすべての国政野党(「維新」や「れいわ新選組」などにも)推薦依頼を出し、結果的に立民、共産、社民だけになってもいいから「推薦」とはっきりさせる方が良かったと思う。それでマイナス面があったとしても。

 結果的に立憲民主党の勢いを東京が止めてしまった。都議補選でも9箇所中、3箇所に候補を出して足立区しか勝てなかった。特に品川区など2位にもなれず、自民党を下回っている。次の国政選挙への影響も大きいだろう。
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「常識」より大切な「良識」ー都知事選ポスター掲示板問題

2024年06月22日 22時01分22秒 |  〃  (選挙)
 2024年6月20日に都知事選が告示され、何と56人もの候補が立候補した。事前に用意したポスター掲示板は48人分しかなかった。あらたに掲示板を増設するんじゃなくて、何でもクリアーファイルに入れて自分で留める方式なんだとか。選管がまさかそんなことを考えているとは思わなかった。東京以外から見ると、さぞ東京では知事選で盛り上がっているように思うかもしれないが、自分の実感では今までになく盛り上がってない。主要政党が軒並み(建前上は)推薦、支持をしてないから、いつもならよくあった自民、公明、共産などのビラ配りがない。「つばさの党」問題があったからか、遊説日程も余り大きく出てない。
(自宅近くの掲示板)
 ところでマスコミでは「ポスター掲示板問題」、まあ「掲示板ジャック」というか、いわゆる「N国党」による「掲示板販売」が問題になっている。そうすると、東京ではどこもポスター掲示板が大変なことになっていると思うかもしれない。だけど、上記画像にあるように、僕の自宅近くの掲示板(午後5時頃)には、9枚のポスターしかない。朝方には8枚だったから、今日1枚増えた。東京辺境部の掲示板には今のところ全然貼ってない。いつもこんな感じで、東京23区でも外れの方は無視されているのだ。

 「掲示板ジャック」なんて、どこの話だろう。多分島しょ部や奥多摩などは、もっと少ないのではないか。それでも48人分もする掲示板を用意しなくちゃいけない。僕は昨日は新宿、今日は池袋に出掛けたけど、駅前に全然掲示板がなかった。昔は駅前にもあった気がするが、こんなに大きくなると、設置場所も限られる。公立学校や公園なんかの周り以外は難しいかもしれない。週末なのにどの陣営の駅前広場で選挙運動をやってなかった。立候補者ばかり多くても、選挙運動がないんじゃ盛り上がらない。
(「掲示板ジャック」)
 画像を探してみると、確かに掲示板周囲に同じポスターがズラッと並んでる写真があった。これは一見して「おかしい」し「あり得ない」だろう。選管に抗議が集中しているというが、選管ではなく「やってる政党」に抗議するべき問題じゃないか。選管は公職選挙法で明確に禁止されている事項しか注意出来ないだろう。だが、「明文で禁止されてなければ、やって良い」というもんじゃない。違法じゃなければ合法だというのは、「常識」の世界ではそうかもしれない。だけど、そんなことを実行したら「品位」が疑われる。「子どものヘリクツ」みたいなことを大人がやってる。

 ホントに公職選挙法で禁止されてないのか。ネットで検索して2度読んでみたが、確かに明文の禁止規定はないと思う。ただし、公選法の第一条「総則」では「この法律は、日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする。」となっている。

 まあ当たり前のことしか書いてないとも言える。だけど、選挙は「選挙が公明適正に行われることを確保」という大原則が書かれている。立候補する自由があっても、ポスター掲示板に選挙に関する政見以外ことを貼ることは、違法じゃないとしても適正ではない。「掲示板を売る」ことは、ポスターを見て立候補者の名前や政見を知るという目的を阻害している。本来そこは立候補者の政見を書いたポスターが貼られるはずのスペースである。その意味では、はっきり違法とは言えないとしても、選管が「注意」または「中止勧告」することは可能なんじゃないか。

 こういうことを見ていると、大切なのは「良識」なんだなと思う。「常識」では違法じゃなければ禁止できないとなる。だが「良識」では、法の規定に関わらず選挙の目的から外れているからやるべきじゃないと自ら判断出来るはず。この「良識」という感覚を多くの人が共有していないと社会は成り立たない。その意味で困った問題で、法改正によらず是正する道がないか日本国民にも問題が投げかけられている。方法がなければ法改正の必要があるだろう。
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足立区議選の結果、「自民党激減」をどう考えるか

2023年05月26日 23時19分49秒 |  〃  (選挙)
 2023年5月21日に、足立区長選足立区議選が行われた。全国的には4月に行われた統一地方選だが、何で足立区では5月なのか。一応簡単に解説しておくと、1996年の区長選で保守陣営が分裂し、旧足立区庁舎跡地問題も揉めていたため、共産党推薦候補(吉田万三)が当選したことがあった。少数与党のため区政運営に苦労が続き、1999年(統一地方選の年)に区議会による区長不信任案可決、議会解散、選挙後の議会での再度の不信任案可決と続き、以後の選挙は4年ごとに5月に行われるようになったのである。

 僕は一応毎回選挙には行くが、足立区議会選には今までは全国的な意味合いはほとんどなかった。前回は旧「NHK党」候補が居住要件を満たさずに、得票ゼロになったという件を書いた。しかし、全体的な結果については書いたことがない。しかし、今回は書いてみたいと思う。「4月の傾向の持続性」という意味で、検討する意味がある。およそ4つの問題点が考えられる。「維新の好調は続くか」「共産の退潮は見られるか」「公明の全員当選はなるか」、そして「女性候補が何人当選するか」である。

 足立区というのは、東京23区の東北部にあって埼玉県、千葉県に接している。よく「下町」と言われたりするが、最大の繁華街である北千住は、日光街道の最初の宿場町である。つまり、本来は江戸ではなく「郊外」なのである。高度成長以前は農業地帯で、その後住宅地になっていった。組織労働者がいる大工場は昔は少しあったが、今は移転してしまった。だから、社会党、民主党系の勢力はずっと弱小である。旧農地の地主は地域の有力者になり、地域代表として保守系大勢力になった。開発された住宅地は都内では地価が安いので、低所得層(および外国人)が多い。そのため組織政党である公明党、共産党が昔から強い。

 大体そんな政治風土なのだが、今回は全45議席のところに64人も立った。結果は自民党が17人から12人へ5人減、代わりに公明党13人全員当選で第一党になった。共産党は前回7人から6人へ1議席減、立憲民主党3議席で変わらず。日本維新の会は前回ゼロ(候補1人)から一挙に3人当選。国民民主党は1議席で変わらず。れいわ新選組参政党がそれぞれ1議席獲得。都民ファーストの会は1議席で変わらず。無所属は4人が当選した。(1人は都民ファースト推薦。)
(和田愛子前議員)
 ところで、以上の数は開票時のものである。その後、立憲民主党から当選した新人、和田愛子が偽ブランドを転売していたとして罰金判決を受けていたことが発覚し、議員を辞職した。選挙から3ヶ月以内に欠員が生じた場合、地方議会では次点が繰り上がる決まりになっている。次点は自民現職だったので、結局自民党、公明党が13人で同数になる見込み。女性候補は15人が当選した(が1人辞任で結局14人)。前回は11人だったから、やはり増えているのである。特に当選者45人中上位20位を見てみると、半数の10人が女性だった。やはり女性候補の優勢という傾向ははっきりしている。

 ところで、自民党前議員17人はなんと全員男性である。今回自民党は現職16人と新人3人の計19人(全員男)が立候補して、現職12人(繰り上げを入れて)と新人1人が当選した。つまり、現職4人が落選したわけで、和田議員辞職がなければ現職5人の落選だった。ちなみに、「LGBT差別発言」として全国的に問題になった白石正輝氏も40位で再選されている。前回と投票率はほぼ変わらず、その中で自民党は1万票を減らした。なお、今回調べるまで足立区議会の自民議員が全員男だとは知らなかった。とんでもない地域だなあと改めて実感した。
 
 前回票との差は東京新聞に掲載された記事から引用するが、それによると公明党は前回より3656票を減らしたが、うまく票割りして全員が当選した。練馬区議選では4人が次点以下に並び、全国で12人が落選して衝撃を与えた。公明党は固い支持票を上手に票割りして、落ちる選挙はしない。自民、立民が12人落選するのとは、持っている意味が違うのである。もともと足立区は公明党の地盤が強いけれど、今回は非常に力を入れていることは傍目でも判った。公明新聞の記事が画像で見つかったので示しておく。その意味では成功したわけだが、やはり票は減らしているのである。当選ラインは約3千票なので、実は1議席分の票を減らしていた。
(全員当選を目指す公明党)
 共産党は8人立候補して、6人当選。1議席減、票数では5774票減である。票割りが上手く行き、50位に滑り込んだが、それでも2人の現職が落選した。自民、公明、共産、立民で、約2万票の減である。それに対し、維新(1万3156票増)、れいわ(4501票)、参政(3654票)で、その他国民民主、都民ファースト、無所属などいろいろあるが、大体の票の動きは辻褄が合う。

 ここで判ることは、もともと「革新系浮動票」が少ない足立区で、維新や参政党が議席を獲得したのは「保守系浮動票」が流れているのである。先の国政補欠選で立憲民主党が不振だったことから、何か立民、共産の不調で維新が伸びたように思っている人も多いと思う。そういう地域もあるかもしれないけれど、保守票が強い地域では維新は自民票を浸蝕して勝つということだ。今回維新の女性候補は全体3位で当選した。れいわも女性。公明、共産も上位当選には女性候補が多い。候補に女性が一人もいないという自民党が減らすのも当然だ。この結果を見る限り、「野党は弱い」「維新が伸びても自民を助けてくれる存在」などと安易に思い込んで解散するのは、自民党にとっては危険かもしれない。次は大田区の都議補選に要注目である。
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「一票の格差」最高裁判決の問題点、「比例代表」に変更を

2023年01月26日 22時44分15秒 |  〃  (選挙)
 2021年の衆議院選挙における「一票の格差」訴訟で、1月25日に最高裁大法廷判決が出た。ある意味で予想されたとおりなのだが、判決は「合憲」という結論だった。最高裁裁判官15人中、14人が合憲で違憲としたのはたった一人(宇賀克也裁判官)だった。この裁判は2つの弁護士グループによって、全国16の高裁、高裁支部に申立てられた。(公職選挙法の規定により、選挙の効力を争う訴訟は高裁に提起する。)高裁判決では「合憲」が9件「違憲状態」が7件だったという。それが最高裁になると、圧倒的に政府寄りが多くなる。任命した歴代内閣は、安倍内閣が8人、菅内閣が5人、岸田内閣が2人である。

 この判断には大きな問題があると考える。それは「格差が2倍を超える」にも関わらず、「合憲」としたからだ。2009,2012,2014年の衆院選に関しては、最高裁は「違憲状態」としていた。2017年衆院選は、かろうじて最大格差が2倍以内だった。今回は最大と最小の格差が2倍を超えていたのだが、最高裁は「合憲」と判断した。明らかに基準を下げている。それは2022年の国会で「10増10減」が実現したなどと、選挙当時ではなく、選挙以後に生じた出来事を判断材料にしているのである。

 選挙の効力を争う裁判が進行中は、その選挙で選ばれた議員に欠員が出ても補欠選挙が行われない。補選は10月と4月に行われるので、本来なら7月に亡くなった安倍晋三議員の補欠選挙は昨年10月に行われたはずだが、それが延期になっている。今回4月に補選が現在のところ3件、それに加えて岸信夫前防衛相が辞任して補選になると言われているので、4つの補選が行われる予定。補選が行われるのは、山口県が2つ和歌山県が1つ(岸本周平議員が知事選に出るため辞任)、千葉県が1つである。でも山口県と和歌山県は「10減」の対象県である。つまり4月に補選をやっても、次の衆院選ではなくなってしまう選挙区なのである。
(最高裁の判断の流れ)
 まあ、最高裁判決をいくら考えても仕方ないので、今後の問題を。結局、日本は人口減少段階に入っていて、地方の高齢者が減っていき若年層はますます都市部に集中するようになる。それが良いわけではないが、そうなると予測出来る。従って、何回増減を繰り返しても「一票の格差」はまた大きくなる。選挙のたびごとに「違憲訴訟」が起きるのである。その裁判に費やす時間的、資源的なロスがもったいないではないか。小選挙制度比例代表制度には一長一短があり、完全な選挙制度はない。しかしながら、比例代表なら「一票の格差」は生じないから、結局のところ選挙制度を比例代表に変えるしか手はないのではないか。

 今まで100年以上、選挙民は「候補者の名前を書く」という選挙をやってきた。だから、今さら候補者を全部政党が決める選挙にすれば、何だか自由がなくなる感じがするだろう。だから、参議院の比例区でやっている「非拘束名簿式比例代表制」、つまり候補者名を書いても、政党名を書いてもよく、政党ごとに合計して比例で政党の当選者数を決める。具体的な当選者は、個人別得票の多い順に決める。これを衆院選でも実施する。衆参の比例区を同じ制度で行う。これしかないのではないか。それを都道府県レベルで行うか、いくつかの都道府県をまとめて「ブロック」レベルで行うかという問題は残る。(衆院議員が数が多いので、全国一律でやるのは難しい。)結局、そうするのが良いと思っている。(まあ、前にも書いてるんだけど。)
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選挙区の事情、沖縄、京都、東京の検討ー2022参院選③

2022年07月22日 22時49分42秒 |  〃  (選挙)
 参議院選挙の結果検討が2回で切れているので、続き。比例区票は見たので、次に選挙区の事情を検討したい。今回は28ある「1人区」で自民党が圧勝した。野党系が勝ったのは4つだけである。そのうち山形県は国民民主党舟山康江だから、予算案に賛成した「事実上の与党」みたいなものである。この結果は安倍氏の死去の同情票ではなく、事前の予測情報通りの結果である。また、野党の分立が理由でもなく、野党系が束になっても自民党に届かないところがほとんどである。

 立憲民主党が議席を持っていた岩手新潟山梨三重でも自民党候補が勝利した。このうち三重県は現職引退による新人候補に議席を引き継げなかったが、他の3区は現職が敗れたのだから深刻である。しかし、いずれも調査報道で自民有利がはっきりしていた。新潟県の場合は直前にあった県知事選の影響が大きいと当時から言われていた。

 立憲民主党が勝った青森では2期目の田名部匡代(たなぶ・まさよ)の知名度が強かった。自民の斉藤直飛人は、大相撲の元関脇追風海(はやてうみ)で、引退後故郷で町議、県議を務めていた。今まで選挙に追風海の名で立候補していたため、全県規模選挙の初挑戦で知名度に難があったのではないか。長野は自民の松山三四六が追い上げて、追いついたという予測もあったが、投票日直前の「週刊文春」にスキャンダルが報道された。その結果、立民の杉尾秀哉が43万3千対松山37万6千と思った以上の差が付いたわけである。松山は長野で長く活動するローカル・タレントで県民が皆知っていると言われていた。

 沖縄もむしろ自民が一歩抜けたかという報道もあった。結果は野党系の無所属伊波洋一(元宜野湾市長)が自民の古謝玄大を27万4235票対27万1347票という僅差で振り切った。僅か2888票差得票差0.49%である。6年前の2016年参院選では、伊波が35万6355票、自民の現職島尻安伊子が24万5999票と、10万票以上の差が付いていた。3年前の2019年参院選では、野党系の高良鉄美が29万8831票、自民の安里繁信が23万4928票だった。今回の票の出方を見ると、「オール沖縄」体制が崩れて野党系の票が相当減ったことが判る。それでも伊波が辛うじて勝ったのは、参政党が2万2585票、NHK党が1万1034票、さらに幸福実現党も出て、合わせて6.72%を得たからだと思われる。特に参政党が自民票を浸蝕したのではないかと言われている。
(沖縄選挙区のポスター掲示板)
 続いて、2人区の京都選挙区を見る。ここは立憲民主党の福山哲郎前幹事長が1998年に無所属で当選以来、4回連続で当選していた。その時は橋本内閣時の自民大敗選挙で、何と福山が1位、2位に共産党で、自民党が落選した。京都は昔から全国で最も共産党が強いところで、福山が出ていない3年前、9年前の選挙でも共産党が当選している。今回は国民民主党の前原誠司が「日本維新の会」候補を推薦し、長い協力関係が崩壊した。立憲民主党の泉健太代表は京都選出だから、過去の民主党幹部によるし烈な選挙戦が展開された。「維新」にとっては、大阪の「地域政党」性を脱却するためにも、京都を最重点に位置づけていた。
(議席を守った福山哲郎)
 結果的には、吉井章(自民党)が29万3071票、福山哲郎(立憲民主党)が27万5140票で当選。維新の楠井祐子は25万7852票、共産党の武山彩子は13万0260票だった。さらに参政党が4万票、維新政党・新風が2万千票、NHK党二人で1万6千票ほどを獲得している。過去の福山の得票をザッと見てみると、39万6千、48万4千、37万4千、39万、27万5千となっていて、今回およそ12万票近く減らしたのは立民の不振もあるだろうが、前原票の影響が大きいと思われる。

 6年前は今回出馬せず引退する二之湯国家公安委員長が42万2千、福山が39万、共産党候補が21万1千だった。3年前は自民の西田昌治が42万1千、共産の倉林明子が24万6千、立民候補が23万2千だった。これを見ると、最近2回は40万票を獲得していた自民党が今回30万にも達しなかったのは、明らかに維新に浸蝕されたと見られる。一方で過去21世紀の選挙で(民主党政権時代の2010年を除き)共産党が20万票を得ていたのが、今回は13万票に止まった。これは「弱い支持層」が反維新を優先して福山に流れたと考えられる。いずれにせよ、「京都のことを大阪に決めさせるな」「維新の東進を京都で食い止める」が一定の支持を得るところに維新の弱点がある。また、今後参政党の伸び方次第では自民も安泰とは言えない可能性がある。しばらく三つ巴か。
(東京で6人目に当選した山本太郎)
 続いて、東京選挙区。ここは34人も立候補して、事前に用意したポスター掲示板30人分では足りなくなって、後から継ぎ足した。しかし、貼らない候補もいるので矛盾も感じる。結果は公示直前に書いた「参院選、東京はもう決まってる?を検証」(6.16)通りだった。まあ蓮舫の4位は意外だったが、これは立民不振もあるだろうが、蓮舫安泰の調査結果を読んで当落線上と伝えられた山添拓山本太郎、あるいは立民のもう一人松尾明弘に多少流れたと考えるべきだろう。1位の朝日健太郎、2位の竹谷とし子は予想通りだが、朝日は前回より28万票近く伸ばしたのに対し、竹谷は80万、77万、74万と漸減している。4位の蓮舫は過去2回100万票を越えたが、今回は67万票。5位の生稲晃子は62万票弱、山本太郎が最後に56万5925票で当選。次点の維新・海老沢由紀は53万0361票で、3万5564票差だった。この6人の当選は常識で判る範囲だから、当たっても別に嬉しくもない。
(維新で落選した海老沢由紀候補)
 8人目以後は立民の松尾明弘=37万2千、無所属の乙武洋匡=32万3千、「ファーストの会」、国民民主推薦の荒木千陽=28万4千の以上10人が法定得票数に達した候補。11位が参政党の川西泉緒で13万8千票弱だった。ここでは特に「山本太郎」と「海老沢由紀」を見てみたい。7位の海老沢としては、取りあえず山本太郎票を上回らないと当選出来ない。そして地区によっては上回っているのである。それが千代田、中央、港、新宿、文京、江東、品川、目黒、大田、北の10区である。多磨地区では稲城市で200票ほど海老沢が上回っているだけである。東京の土地勘がある人なら判ると思うけど、この区名には意味がある。

 ほぼ山手線に沿った東京都心部に偏っているのである。そこから外れた北区は3年前に維新の参院議員に当選した元都議音喜多駿の地盤、大田区もやはり3年前に比例区で当選した元都議柳ヶ瀬裕文の地盤である。江東区だけが山手線外の東京東部に位置するが、ここは近年高層マンションが立ち並んで都心部に近い住民構成なのではないかと思う。東京では都心部に高所得層が住み、東部とは所得格差がある。西部の多磨地区も中央線沿いは高いだろうが、平均すれば都心部より低いだろう。つまり、東京では高所得者の住む地域で維新の支持が強い傾向がある。それは何を意味するのだろうか。
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