尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

公選法改正、「ネット事前運動」や「戸別訪問」の解禁も議論を

2024年07月19日 21時47分03秒 |  〃  (選挙)
 都知事選関連の問題はもっと考えるべきことがある気がしてる。結局それは「東京一極集中」という問題になる。まあ、そのことは後に回して、先に公職選挙法(公選法)の改正問題を考えてみたい。自民、公明両党は改正に向けた議論を始めていて、秋の臨時国会の大きなテーマになるだろう。「つばさの党」事件や「ポスター掲示板販売」問題が起こった以上、それらの明らかに選挙をおかしくする行為を禁止するのは当然だ。ついでに「政党その他の政治団体は、各選挙の当選者定数を越える候補者を公認することはできない」というルールも作って欲しいところだ。

 しかし、そういう「禁止事項を加える」だけでなく、この際「選挙運動の自由」を大幅に拡大するべきだと思う。まず日本の選挙運動期間は非常に短い。アメリカの大統領選なんか、常にガンガン議論している。まだ民主、共和両党の候補を決める段階だけど、事実上「事前運動」をずっとやってる。それが良いかどうかはまた別だが、衆議院選が12日参議院選と知事選が17日は明らかに短すぎる。多くの人が休日の土曜、日曜が(告示の曜日にもよるが)1回か2回しかない。これで議論が活発になるはずがない。だから、普段から顔と名前を売っている現職が出る場合、新人が勝つのはとても難しいのである。

 だけど、実際の選挙運動が長すぎるのも困る。選挙カーが回ってくると騒音だし、燃料代も公費負担である。だから実際の選挙運動は今と同じ期間でもいいけど、ネット上の運動なら告示日なんか関係ない。「次の選挙に立候補します」とネット上で宣言することに何か問題があるだろうか。都知事選なんか「後出しジャンケン」なんて言われて、誰が出馬するのかなかなか判らない。そして選挙期間中もほとんど議論がない。逆に早く立候補を表明して、どんどんネット上で支持を広げる戦略もアリではないか。インターネットの使い方に関しても、上記画像にあるように「SNS」は可なのに、電子メールは不可など、不可解なルールが存在する。こんなバカげたルールは意味不明。何を使っても良いが、他候補への根拠無き非難などを刑事罰で禁止する規定の方が必要だろう。
(ネット選挙の現状)
 一方で、「マスコミの公平性」も緩和するべきだ。今回明らかに小池、石丸、蓮舫3候補が大量得票が見込まれた。(新聞やテレビ局は世論調査をしてるんだから、事前に承知している。)だから、3氏の討論会をやって欲しいわけだが、小池知事が「公務優先」を理由にして出ないということで、実現しなかった(と言われる)。でも、「蓮舫対石丸」の討論会でいいから、テレビや新聞、ネットメディアでやって欲しかった。終わってから石丸氏を各番組に呼ぶんじゃなく、選挙期間中にもやれば良い。他の候補が不公平だと言うだろうが、多少は知名度がある候補数人に5分程度のアピール時間を確保すれば十分だ。

 もう一つ「戸別訪問」の問題もある。もともとなんで禁止なのかというと、「買収が起こりやすい」からと言われる。また労働組合が支持する革新党が有利になることも保守陣営は心配したんだろう。でも今じゃ誰が録音録画しているか判らない。迷惑な戸別訪問をする陣営は、録音がネットに掲載されてあっという間にネットで叩かれるに決まってる。確かに今戸別訪問を解禁すれば、公明党(創価学会)や共産党の支持者がやって来て、支持者じゃない人には迷惑もあるだろう。でも嫌なら嫌で、ビラだけ受け取って帰って貰えば良い。支持しない政党のビラでも貰って読むべきだろう。
(戸別訪問と個々面接の違い)
 理解出来ないルールが残り続け、選挙運動期間も少ない。これでは盛り上がるわけがない。僕は街で選挙運動を見る機会が非常に少ない。ほとんど誰とも会わないのを覚悟している。いつもそうだからである。もっとも今回は都議補選の候補者の演説は二人とも聞いた。(立憲民主と自民から出た。)地元密着の選挙なら、運動にもぶつかるのである。しかし、住民が1400万もいて、離島もある東京都の知事選では、候補者を見る機会が少ない。業界団体や労働組合、宗教団体などに参加している人は今とても少ない。誰からも働きかけがないなら、選挙の投票率が下がるのも当然だろう。自分で調べて投票に行く人ばかりじゃないんだから。以前書いたことと重なる論点もあるが、あえてまた書くことにした。
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2024都議補選の結果を考えるー「反自民」だけど「野党」の勢いも弱い

2024年07月12日 20時25分31秒 |  〃  (選挙)
 2024年7月7日の都知事選に合わせて、9箇所で都議補選が実施された。2021年の都議選以後に死亡、辞職などで欠員が出た地区で、来年7月までの任期の補欠選挙が行われたのである。それぞれの地区で選挙になった事情が異なるので、全都的、全国的な影響度は一概には言えない。しかし、結果として(8地区で擁立した)自民党が2勝6敗だった自民党への逆風は間違いないが、では野党へ追い風が吹いているのだろうか。その問題を点検してみたいと思う。
(都議補選結果)
 まず「欠員」前の所属政党を見ると、自民党5人、都民ファーストの会2人、無所属2人だった。今回の補選の当選者は、都民ファースト3人、自民党2人、無所属2人、立憲民主党1人、諸派1人である。自民党が3人減ったのは間違いないけれど、明確に野党に所属している当選者は1人だけ。今回は都知事選と一緒に行われたが、もし都議補選だけだったら投票率は劇的に低かっただろう。知事選に行ったら、ついでに都議補選の投票用紙も渡されたから、誰かに投票するわけだ。(都議補選だけ棄権することも可能なんだけど、投票所では事実上投票を前提に紙を渡される。棄権または白紙投票も可と告知するべきじゃないか。)
(都議補選、議席の推移)
 今回「都民ファーストの会」が4人立候補して、そのうち3人が当選した。それは知事選で小池百合子氏が当選したのと連動している。知事選で「小池」と書いた人がどの地区でも最多なんだから、ついでに補選があると「都民ファースト」に入れる。そういうことじゃないか。北区補選は前回トップ当選の山田加奈子(自民党)が区長選に出て当選したために行われた。自民、都民ファースト、共産、維新が出て、都民(5万8千)が当選、自民(4万4千)、共産(3万)、維新(2万6千)の順。自民出身の区長がいても、自民は落選。しかし、「共産」「維新」は「非自民」の受け皿になれないことが判る。

 一方、隣の板橋区では唯一都民ファーストの会が4位で落選した。当選したのは自民(9万1千)で、共産(6万2千)、維新(5万2千)、都民(4万5千)の順番。共産も維新も前回都議選より大幅に得票を増やしているが、自民には及ばなかった。ここで都民ファーストの会が大敗したのは、恐らく前職の辞職理由にあると思う。3年前に3位で当選した議員が、選挙運動期間中に無免許状態で運転していたことが発覚したのである。この時の対応に有権者が今も納得していないのではないか。有効投票数を調べると、知事選は27万、都議補選は25万と2万票も違う。都民、自民、共産、維新いずれも入れたくないということだろう。では立憲民主党は出ないのか。3年前に当選した現職議員がいて、来年には改選だから出なかった。

 板橋区の当選者は自民党だが、3年前に6位(定数5)で落選した元議員だった。もともと知名度があり、同情票も期待出来た。それでも立憲民主党との一騎打ちなら当落は判らなかっただろう。しかし、野党代表が共産党だった場合は、反自民票は結集しないのが現実である。 江東区では4人中4位、中野区では4人中3位だった。板橋区で2位というのは健闘した方なのである。「維新」は国会で自民党と協力したり(反発したり)、「反自民票の受け皿」には向かない。関西はともかく、東京では共産党の方が地力があるということだろう。逆に「一騎打ち」になったところを見る。

 八王子市萩生田光一元政調会長の地元である。裏金問題で役職停止1年になったものの、それは党中央のことで地方組織は別だと言い張って自民党都連会長を続投している。補選では自民党は市議の馬場貴大氏を擁立したが、10万票弱で落選。当選したのは諸派の滝田泰彦氏(14万4千票)と4万票以上の差が付いた。滝田氏は2017年に都民ファーストの会から当選して1期都議を務めた。3年前に落選して、「新時代の八王子」から出馬したが実質無所属だという。立民、共産は現職がいるから候補を立てず、結果的に「非自民票」の受け皿となったわけである。この間市長選にも出たということで、知名度もあったのだろう。
(八王子の都議補選結果)
 もう一つ、自分の地元の足立区でも立憲民主党の銀川ゆい子(141,326票)が自民党の榎本ふみ子(140,564票)をわずか762票差で振り切って当選した。僕はもう少し差が付くかと思っていたのだが、やはり足立区は自民党、公明党の基礎票が強い。それでも立憲民主党が勝ったのは、区議選で知名度があった候補だったこともあるが、要するに「反自民票が立憲民主党に集まった」ということだろう。なお、多摩地区の府中市も自民党が当選したが、他に無所属候補が2人立っていて、合計すれば自民候補を上回る。国政野党が候補を立てなかった理由は不明。

 東京の政治風土が全国と同じとは言えないだろう。しかし、今回の選挙結果を見ると、有権者の「反自民党感情」は強いように思う。だから仮に「維新から共産まで」の候補者調整が行われた場合、自民党(と公明党)は政権を失うのではないか。しかし、そんな選挙協力は不可能である。もしあり得るとしても、「立憲民主党と国民民主党」、「立憲民主党と共産党」のブリッジ共闘とも言えない、「勝手に選挙区調整」ぐらいだろう。だけど、その場合候補が立憲民主党の場合のみしか機能しない。ということで、小選挙区で「乱立」するから、自民党は結構当選する。という衆院選結果を都議補選は予告しているのではないか。
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「石丸伸二ブーム」をどう考えるかー2024都知事選②

2024年07月09日 22時08分59秒 |  〃  (選挙)
 2024年都知事選では、石丸伸二氏(前安芸高田市長)が166万票近くを獲得して2位となった。それは何故で、今後の日本政治にどのような意味を持つのだろうか。第1回目で「蓮舫大敗」が今回の最大問題だと書いたが、それは来たるべき衆院選への影響が大きいと考えるからだ。しかし、今後の歴史の推移によっては「石丸2位」こそが最大の問題だったとなるかもしれない。石丸伸二氏は「日本政治のゲームチェンジャー」なのだろうか、それとも「空疎なデマゴーグ(煽動政治家)」なのだろうか。いろいろと考えて、「結論的には今のところなんとも言えない」が結論になる。考える材料が少なすぎるのである。
(石丸伸二氏)
 今回「石丸伸二」とフルネームで書くようにしてきたが、それは都知事選には「石丸幸人(ゆきと)」氏も立候補していたからだ。何やら間違えて投票したという声もあるらしい。結果は9万6千票ほどを獲得して、第8位だった。「石丸幸人党」である。この人は弁護士兼医師というスゴイ人。(関東圏では)過払い金のCMで知られた「アディーレ法律事務所」の創設者である。お騒がせ問題も多い事務所らしいが、選挙公報には「伝説の弁護士」と大きく出ている。子どもが出来たのを機に保育士の資格も取ったというから、資格だけなら都知事に最適かもしれない。まあ単なる資格マニアかもしれないが。
(石丸幸人氏)
 教員として多くの生徒を教えたが、「石丸」姓は一人もいなかった。幸人氏は北海道出身で、石丸伸二氏(以下は単に「石丸氏」と書きたい)は広島県の安芸高田市出身である。「安芸」(あき)は旧国名で、「高田」は濁らずに「たかた」と読む。広島県北部にあって、戦国大名毛利氏の本拠地として知られる。毛利の居城、郡山城跡は、国史跡に指定され日本百名城に選ばれている。人口は2万4千ほど。2020年4月に当選したばかりの児玉市長が河井元法相事件に関わって同年7月に辞職した。後継市長が無投票になりそうだというので、三菱UFJ銀行に勤務していた石丸氏が立候補して当選したわけである。
(安芸高田市の場所)
 そこら辺の経過はかなり知られてきたと思うが、2020年8月の当選だから本来ならまだ1期目の途中である。しかし、石丸氏は任期満了を待たずに辞職し、都知事選に出た。後継の市長選は都知事選と同日に行われ、反石丸派の藤本悦史氏が当選した。つまり、安芸高田市長として多くの業績を挙げ、地方自治のスターとなって都知事選にチャレンジしたわけではない。はっきり言えば政治家としては「失敗した市長」と言うべきだろう。地元に何も残せなかったというのに近い。もっとも「知名度を高める」というのが目的とすれば、ネットを駆使して反対派議員を「さらし」、全国的に知られた。議員から訴えられ敗訴しているぐらいである。
(石丸氏が訴訟で敗訴)
 石丸氏の街頭演説は大変な盛り上がりだったようである。今回は誰の演説も聞いてないが、猛暑でとてもそんな気が起きない。それにホームページを見ても、載ってないことが多い。(「つばさの党」問題以後の特徴である。)「X」(旧ツイッター)を丹念に追ってれば判るのかもしれないが、そこまでする気もなかった。しかし、テレビで見たり画像を検索すると、驚くべき人だかりだ。今回の有力候補の中で一番知らないから、聞いてみたいのか。短く断言するような演説で、どんどん画像を撮って、知り合いに送ってくれと言う。一度評判になれば、立ち止まって聞きたくなるし、勢いが付くとブームになる。
(石丸氏の街頭演説)
 政策的には何も言ってないに等しい。選挙公報では「政治再建」「都市開発」「産業創出」と大きく3つを訴えているが、具体策は特にないように思う。まあ、それは他の候補も似たようなものだが。「政治屋一掃」というような主張も聞いたが、誰が「政治屋」なのか定義は言わないから、既成政党全部を否定しているように取る人もいる。だけど、都議会には何の足場もないんだから、まかり間違って当選したらどうするんだろう。政策論争も大事だが、本当に石丸氏が訴えるべきは「都議会対策」だったはず。1年間は都議会多数派と妥協するしかないが、来年の都議選では新党を作って多数派を目指すとか。

 完全無所属で出馬した石丸氏はもっとも徹底した反小池を訴えていた。都庁舎の「プロジェクション・マッピング」は何の効果も無い愚策で直ちに中止。関東大震災時の朝鮮人虐殺事件の追悼文は送ると明言していた。(だから少なくとも「極右」ではない。)小池都知事が街頭にもテレビにも(ほぼ)出ず、政策論が盛り上がらなかった中で、石丸氏のはっきりした物言いが受けた面はある。蓮舫陣営は「昔の名前で出ています」的な応援弁士が多い。「民主党政権」なんて十何年も前のことで、若い人には記憶自体がないだろう。石丸氏は「小池と蓮舫の間」で、共産党が付いている蓮舫が忌避されたとは決めつけられない。

 今回の「石丸ブーム」は関西の「維新」や、数年前の「れいわ新選組」に近いかも知れない。国政は議院内閣制だし、地方政治は首長と議会の「二元代表制」である。政治は一人ではできない。「同志」が必要である。一人ではすべての政策を作れないから、すぐれた「ブレーン」も大切。今後石丸氏が再び選挙に出るなら、「誰と組むか」が大きな問題。その時にこの人の立ち位置がはっきり判るだろう。かつて1993年に日本新党がブームとなり、細川護熙氏が首相となった。今の政治情勢では自公も、他野党も多数を取れず、「石丸新党」がキャスティングボートを握り、一気に石丸首相が誕生するなんて展開も全くの夢想じゃないだろう。
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「負ける戦い」をした蓮舫陣営ー2024都知事選①

2024年07月08日 22時19分25秒 |  〃  (選挙)
 2024年7月7日に、東京都知事選挙が行われた。結果は予想されたとおりに、現職の小池百合子が3回目の当選を果たした。小池氏の場合、問題は「出るか出ないか」であり、出るなら勝つことが確実視されていた。もし今春に総選挙があった場合、小池氏は国政復帰を模索するのではないかと僕は予想していた。だがチャンスがないまま、結局は都知事選に出ることになった。小池氏は2016年の初出馬時に「2,912,628票」で当選し、2020年には「3,661,371票」と圧勝した。2024年は「2,918,015票」で、ほぼ第1回目と同じである。つまり前回から70万票ほどが減少したわけである。
(都知事選結果)
 小池知事に最盛期の勢いは失われつつあった。そこに対立候補として、5月27日に立憲民主党参議院議員蓮舫氏が出馬を表明した。当初は「小池対蓮舫」の争いとみられていたが、終わってみれば広島県安芸高田市の前市長石丸伸二氏が2位となった。終盤戦に石丸猛追が伝えられたが、それにしても僕は「2位争い」を予想していた。まさか35万票以上も差が付く蓮舫大敗は予想していなかった。「蓮舫大敗」はなぜ起こったのか。これこそ今回の都知事選の最大問題だと思う。
(出馬表明時の蓮舫氏)
 蓮舫氏の出馬表明より前に、石丸伸二氏は5月16日に都知事選への出馬を表明していた。しかし、5月末時点では両者の知名度には大きな差があったと思う。その後、蓮舫氏はなかなか公約を公表しなかった。僕はそれはどうなんだろうなと思っていたが、実際に発表された公約を見ても大きな変革を予感させるものは無かった。蓮舫氏が負けると判ったのは、告示日の第一声の場所を知った時。それは中野だった。2012年の自民党政権復帰選挙でも、長妻昭氏が勝ったのが中野区を含む東京7区。(その時小選挙区で勝ったのは、長妻氏と現在自民党の長島昭久氏だけだった。)

 蓮舫氏や支援陣営の話では、街頭演説では多くの聴衆が集まり盛況だったという。盛り上がりが感じられ、なぜこれほど大差で敗れたのか判らないという。実際に画像を検索すると、なかなか盛り上がってる感じだ。(下記画像)しかし、それがくせ者。石原都知事時代以来、ここ20年間左派系は「義侠心に富む負け覚悟の候補者」しか担いでこれなかった。蓮舫氏は久方ぶりの一般的知名度が高い候補者で、内輪で盛り上がるのも想像できる。だけど、戦略的に考えた場合、立憲民主党が弱体な地域で第一声を上げないと行けない。例えば、東京東部の錦糸町(墨田区)や北千住(足立区)、あるいは多摩地区の八王子(萩生田氏の地元)などである。
(蓮舫氏の演説)
 東京東部の大量の小池支持層を引き剥がすためには、地道に街頭演説を繰り返すしかない。しかし、蓮舫氏ではなく、石丸伸二氏が何カ所も演説を繰り返していた。さらに蓮舫氏は「外苑再開発」問題が争点になると言い切り、住民投票を検討するとも言った。これも疑問が多い言動だ。僕はこの問題を一度も書いてない。それどころか、実は神宮外苑のイチョウ並木をちゃんと見に行ったことがない。有名な絵画館前で待ち合わせしたこともない。僕の家からは身近な場所ではないのである。一般論として「自然を大切に」は理解出来るが、東京人の心のふるさとみたいに語る人があると、やはり「あっち側に住んできた人」と思う。

 「蓮舫氏自身の問題」「立憲民主党の問題」「共産党の支援問題」などいろんな側面があるが、結局は「内輪」の運動に終始した感がある。東京の政治風土は「保守」でも「革新」でもなく、「強いものに付く地域」だと思っている。地元意識が薄く、東京人は東京を愛していない。(そう考えないと、あんなに「ふるさと納税」をするのが理解出来ない。)東京に住んでるだけで、給料も高くなる。(公務員の場合、「地域手当」が大分違う。)東京で「子育て」をしているというのは、それだけで(好きな言葉じゃないが)「勝ち組」だ。小池知事はそこに焦点をあてて「バラマキ」を繰り返してきた。
(開票後の会見を行う蓮舫氏)
 最新の参院選である2022年東京選挙区で、蓮舫氏は4位で当選した(670,339票)。他に立憲民主党から松尾明弘氏が出たが8位で落選(372,064票)。共産党からは山添拓氏が3位で当選(685,224票)。さらに社会民主党から出た服部良一氏が59,365票を獲得している。4氏を合計すると、「1,786,992票」となる。それを政党レベルで見た場合の基礎票と考えると、何と50万票も流出している。無党派層がどうのと言う以前に、党の基礎票も固めきれなかったことが判る。

 非常に重大なのは、「小池バラマキ」が一端始まると、既得権化してしまって変えにくいことだ。子育て家庭に月5千円支給、私立高校授業料無償化など、一端やり始めると止めにくいが、果たしてそれが政策として最善のものか。一端立ち止まってゼロベースで検討するという公約を蓮舫氏は出せなかった。むしろ「小池都政の子ども政策」は「ある程度評価する」とアンケートで答えている。しかし、小池都政の進めて来たことは、「格差拡大政策」だろう。そしてその受益者は小池氏を支持し続ける。それに対する根本的批判は、自らも私立学校にしか通ってこなかった「山の手のお嬢様」の問題意識に入って来ないのかもしれない。

 しかし、それは最初から判っていることだ。そこをいかにして「化けさせる」のが選挙参謀の醍醐味だろう。それを考えると、全く戦略が立ってなかったと思う。自民党の問題により、衆院補選で立憲民主党が3戦3勝になった。勢いが立憲民主党にあると誤認してしまったのではないか。また政党支持の問題では、自民党が小池氏を「ステルス支援」する中で、蓮舫氏も同じように「政党隠し」になってしまった。僕はすべての国政野党(「維新」や「れいわ新選組」などにも)推薦依頼を出し、結果的に立民、共産、社民だけになってもいいから「推薦」とはっきりさせる方が良かったと思う。それでマイナス面があったとしても。

 結果的に立憲民主党の勢いを東京が止めてしまった。都議補選でも9箇所中、3箇所に候補を出して足立区しか勝てなかった。特に品川区など2位にもなれず、自民党を下回っている。次の国政選挙への影響も大きいだろう。
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都内で一番好きな場所は?ー都知事選候補者の回答を見る

2024年07月02日 22時15分19秒 |  〃  (選挙)
 都知事選は相変わらず、盛り上がってるんだかどうだか僕には不明。近所のポスター掲示板は、前に書いた時と変わらず9人のまま。ポスター掲示板が大変なことになってるって、どこの話だ? なんか破られたところもあるらしいが、破られたのは「選挙ポスター」ではない。従って「公職選挙法違反ではない」と主張できるが、それでも「器物破損」には間違いないから注意を。

 各マスコミは中盤戦の情勢を報じている。大体「小池一歩リード、蓮舫追う、石丸猛追」みたいな結果で共通する。この報道をどう見るかだが、僕は「小池リード広げる」じゃなかったことに注目している。現職が引き離してもおかしくないが、そうなっているわけじゃないようだ。そして、28日に都議補選が告示されて「ここからがホントの選挙」だと思っている。

 都議補選は9選挙区もあって、衆院補選があったばかりの江東区、萩生田、下村の地元、八王子板橋区などもある。公明党は欠員者がなく来年都議選なので、一人も立候補せず自民党候補への推薦もしてない。そして3選挙区では小池支持の自民と都民ファーストがともに候補を立てている。都知事選への影響も避けられないだろう。この補選結果は衆院選を占う意味でも要注目だ。

 僕が住んでる足立区も補選があって、自民、立民の一騎打ちとなっている。もう都知事選には見放されている東京辺境だが、都議補選が始まってようやく演説候補に会った。今日は駅前で自民党候補が演説してたので、「萩生田サンは役職停止になったのに、都連会長を続けてるっておかしくないですか」と言ってみたかったんだけど、小心者だからやはり言えなかったね。

 さて、7月1日東京新聞に「主な候補」6人のアンケートが載っていて、その日は政策ではなく個人的な質問になっていた。特に「都内で一番好きな場所はどこですか」が面白かったので、ここで紹介してみたい。まず小池百合子氏は「明治神宮内苑」。明治神宮外苑の再開発が問題化している中、「内苑」と答えたのは意識的なんだろう。明治神宮は明治天皇(と昭憲皇太后)が「祭神」なんだから、明治天皇没後の大正時代(1920年創建)に作られた「歴史の浅い神社」である。それでも100年経つと、内苑の森はうっそうたる自然になっている。貴重だけど一般人は森の中に入れないんですけど。
(明治神宮内苑)
 蓮舫氏は「夜の東京タワー」だそうである。さすが幼稚園からずっと「青山学院」という人の選択っぽい。まあ国の登録有形文化財だから、東京の文化財ではある。明治神宮と同じく、東京は歴史が浅いことを象徴する選択だ。
(夜の東京タワー)
 石丸伸二氏は「皇居外苑の桜並木」だそうである。普通東京の桜としては挙げない地区だ。千鳥ヶ淵のことを指しているのかもしれないが、「皇居外苑」というのは二重橋などから内濠通りを隔てた楠正成像なんかがある地区を指す。東京のど真ん中である。なお、石丸姓の人は二人立候補しているので、ただ「石丸」だと「石丸幸人」票と按分になる。多分間違う人がかなりいるだろうな。
(皇居外苑の桜並木)
 田母神俊雄氏は皇居とか靖国神社と答えるかと思うと、「東京ミッドタウン」である。そうか昔の防衛庁があった場所で、勤務した思い出があるんだろう。安野貴博氏は「神保町」で「書店が多いので」という理由。共感はするけど、一番好きかと言われると僕は選ばないかな。清水国明氏は「東京港野鳥公園」で、東京モノレールの流通センター駅から歩く。自然の干潟ではないけど、多くの野鳥が集まる場所。芥川賞作家加藤幸子さんなどの尽力で作られた。昔何度か行ってるけど、最近は忘れていたな。
(東京港野鳥公園)
 しかし、こうしてみると東京の都心部ばかりである。(東京港野鳥公園を除き。)多くの有権者にアピールする選択でもあるんだろうが、東京東部や多摩地区、島しょ部は無視されている。やはりそうなんだなと思ってしまうのである。じゃあ、僕が選ぶならどこだろうか。あまり個人的な場所(立教大学のクリスマスツリーなど)を選ぶのは良くないだろう。そうなると「上野公園」なのかな。博物館、美術館、動物園、音楽ホールなど東京の文化施設が集中している。史跡や自然もいっぱいある。デートでも何度も使った思い出の場所。昔は心が弱ったときには、東博や動物園でボケッとして回復させたものだ。
(上野公園と東京国立博物館)
 しかし、僕にとって通学・通勤を別にすれば、都心部に出るのは映画館や劇場などに行くことが多かった。都内で好きな場所と言われたら、昔の映画館なんかを挙げたい気もする。だけど、趣のある映画館や劇場もほとんど建て替えられるか、無くなってしまった。そうなると、寄席の古いムードを残した新宿末廣亭なんか挙げてみたいかも。
(新宿末廣亭)
 しかし、それでも23区内である。多摩地区から「小金井公園の江戸東京建物園」とか「立川の昭和記念公園
なんて答える人もいてもいい。でも、まあ僕もあまり行ってないし。そうなると人権的意味合いからも、多磨全生園国立ハンセン病資料館と答えるかもしれない。「好きな場所」と言うと語弊があるかもしれないけど。候補者各位も行ってるかどうか。
(多磨全生園とハンセン病資料館)
 島しょ部から選ぶのは、あまり行ってないから難しい。仕事で行くんじゃない限り(東京の公務員には異動で赴任するケースが多い)、そう何度もいくこともないだろう。特に小笠原諸島などは。一応、伊豆大島の大島温泉ホテルの源泉掛けなしの露天風呂から見た三原山を挙げる手はある。ここはとても良い場所だと思う。
(大島温泉ホテルと三原山)
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「常識」より大切な「良識」ー都知事選ポスター掲示板問題

2024年06月22日 22時01分22秒 |  〃  (選挙)
 2024年6月20日に都知事選が告示され、何と56人もの候補が立候補した。事前に用意したポスター掲示板は48人分しかなかった。あらたに掲示板を増設するんじゃなくて、何でもクリアーファイルに入れて自分で留める方式なんだとか。選管がまさかそんなことを考えているとは思わなかった。東京以外から見ると、さぞ東京では知事選で盛り上がっているように思うかもしれないが、自分の実感では今までになく盛り上がってない。主要政党が軒並み(建前上は)推薦、支持をしてないから、いつもならよくあった自民、公明、共産などのビラ配りがない。「つばさの党」問題があったからか、遊説日程も余り大きく出てない。
(自宅近くの掲示板)
 ところでマスコミでは「ポスター掲示板問題」、まあ「掲示板ジャック」というか、いわゆる「N国党」による「掲示板販売」が問題になっている。そうすると、東京ではどこもポスター掲示板が大変なことになっていると思うかもしれない。だけど、上記画像にあるように、僕の自宅近くの掲示板(午後5時頃)には、9枚のポスターしかない。朝方には8枚だったから、今日1枚増えた。東京辺境部の掲示板には今のところ全然貼ってない。いつもこんな感じで、東京23区でも外れの方は無視されているのだ。

 「掲示板ジャック」なんて、どこの話だろう。多分島しょ部や奥多摩などは、もっと少ないのではないか。それでも48人分もする掲示板を用意しなくちゃいけない。僕は昨日は新宿、今日は池袋に出掛けたけど、駅前に全然掲示板がなかった。昔は駅前にもあった気がするが、こんなに大きくなると、設置場所も限られる。公立学校や公園なんかの周り以外は難しいかもしれない。週末なのにどの陣営の駅前広場で選挙運動をやってなかった。立候補者ばかり多くても、選挙運動がないんじゃ盛り上がらない。
(「掲示板ジャック」)
 画像を探してみると、確かに掲示板周囲に同じポスターがズラッと並んでる写真があった。これは一見して「おかしい」し「あり得ない」だろう。選管に抗議が集中しているというが、選管ではなく「やってる政党」に抗議するべき問題じゃないか。選管は公職選挙法で明確に禁止されている事項しか注意出来ないだろう。だが、「明文で禁止されてなければ、やって良い」というもんじゃない。違法じゃなければ合法だというのは、「常識」の世界ではそうかもしれない。だけど、そんなことを実行したら「品位」が疑われる。「子どものヘリクツ」みたいなことを大人がやってる。

 ホントに公職選挙法で禁止されてないのか。ネットで検索して2度読んでみたが、確かに明文の禁止規定はないと思う。ただし、公選法の第一条「総則」では「この法律は、日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする。」となっている。

 まあ当たり前のことしか書いてないとも言える。だけど、選挙は「選挙が公明適正に行われることを確保」という大原則が書かれている。立候補する自由があっても、ポスター掲示板に選挙に関する政見以外ことを貼ることは、違法じゃないとしても適正ではない。「掲示板を売る」ことは、ポスターを見て立候補者の名前や政見を知るという目的を阻害している。本来そこは立候補者の政見を書いたポスターが貼られるはずのスペースである。その意味では、はっきり違法とは言えないとしても、選管が「注意」または「中止勧告」することは可能なんじゃないか。

 こういうことを見ていると、大切なのは「良識」なんだなと思う。「常識」では違法じゃなければ禁止できないとなる。だが「良識」では、法の規定に関わらず選挙の目的から外れているからやるべきじゃないと自ら判断出来るはず。この「良識」という感覚を多くの人が共有していないと社会は成り立たない。その意味で困った問題で、法改正によらず是正する道がないか日本国民にも問題が投げかけられている。方法がなければ法改正の必要があるだろう。
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「つばさの党」と「N党」ー「選挙の自由」濫用は許されない

2024年05月19日 21時45分37秒 |  〃  (選挙)
 政治や国際ニュースについてしばらく書いてない。他に書きたいことがあれば、書かなくて構わないんだけど、久しぶりに書きたくなってきた。4月28日に行われた東京15区の補欠選挙における「つばさの党」問題である。この補選は全国的に注目され、ホントは実際に見て書こうと思っていた。だけど、選挙前日に「大腸内視鏡検査」を控えていて、やってみたらポリープ切除で入院を申し渡された。だから選挙結果は病院のテレビで見た。家から遠くないけど、見に行く気が起こらなかった時期だった。
(つばさの党3人逮捕を報じるテレビ)
 選挙中から、ネットでは「つばさの党」問題が大きく取り上げられていた。新聞やテレビでは、「一部候補」みたいにしか書いてなかったと思うけど、ネットで「つばさの党」だと判った。僕は選挙終了後すぐにでも、警察の強制捜査が行われるだろうと予測していたが、しばらく動きがなかった。そのままになると都知事選で同じことが繰り返される恐れが強く、禍根を残すだろうと思っていた。結局5月13日になって家宅捜索に踏み切り、17日に黒川敦彦代表ら3人の逮捕となった。
(電話ボックスに乗って「妨害演説」)
 この逮捕は当然だ。都知事選で堂々と「再犯する」と予告しているのだから、身柄を確保するしかない。テレビニュースなどで見る限り、明らかに「選挙妨害」である。「公職選挙法違反」だろうが、それと同時に常識的に考えて「暴行」「脅迫」などに該当する思う。何党支持かという以前の問題で、これは認められない。選挙だから演説の自由はあるけれど、これは単なる妨害だし嫌がらせである。特に電話ボックスの上で大音声を出すのは常識外。これは「不法占拠」だろう。
(大音声で妨害)
 都知事選は6月20日告示、7月7日投票が予定されている。あまり近くなっての逮捕では、立候補への妨害と思われかねない。3週間過ぎて、証拠もそろえて逮捕ということだろう。19日に送検され、10日の取り調べ、さらに(恐らく)10日の延長が認められ6月上旬となるが、恐らく他候補への妨害容疑で再逮捕ではないか。逮捕中でも立候補は可能だが、事実上「都知事選での再現阻止」ということだろう。こういう党の出現を見ると、何だかナチの突撃隊を思い出してしまう。

 今回は用意もなく登場したので警察捜査を待つことになった。本当だったら、国民の中から「反撃隊」が現れるべきだったと思う。今の選挙のあり方が最善だとは思っていない。でも世の中には「タテマエ」というものが必要で、それはマジメに仕事した経験があれば理解出来るだろう。他候補に突っかかった様を録画してYouTubeに流すなどもっての外。

 ところで今さら「つばさの党」を批判しても意味ないけれど、もう一つ頭が痛いのが「N党」である。何度も何度も党名を変えて、どうなってるんだと思うと、内紛が相次ぎ今なんと言うかよく知らない。調べてみると、参議院では「NHKから国民を守る党」という会派を作っている。何だ、最初と同じじゃないか。変える意味があったのか。僕が困ったなと思うのは、この党が都知事選に30人を立てる予定ということである。すでに13人の候補を確保したとか。
(都知事選に大量立候補を発表するN党)
 供託金さえ払えば何人出ようが自由だろうと言われれば、理屈ではそうも言える。しかし、公費でポスター掲示板を設置するのである。言うまでもなく都知事に当選するのは一人しかいない。様々な考えを持ついろいろな候補が立つのは自由だし、必要でもある。だが当選者一人の選挙に同じ党から複数立候補するのは本来あり得ない。有権者をバカにした行為である。

 大きな掲示板を用意しなければならず、税金のムダ。終わったら片付けなくてはならず、それもムダ。環境問題への配慮ゼロ。(ちなみに、この掲示板は高校の文化祭でお化け屋敷なんかの壁に再利用されることがある。)たくさん立候補して、掲示板への掲示権を売るとかも言っている。これが許されるのか。今問題になっている自民党の派閥の「裏金問題」。こう言うのを見ると、マジメに選挙をやる意味があるのか。明文で禁止されてなければ、何やってもいいんだろう。政権党もそうやっているじゃないか…。

 そう言いたくなるかもしれないが、だから自分は何やっても良いとはならない。このままでは「公認候補は当選者と同数しか認めない」なんていうバカげた法改正が必要になってしまう。そんなことになる前に、「良識」と「品位」が大切だ。
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立川市の都議補選、驚きの自民落選を点検する

2023年10月18日 21時50分38秒 |  〃  (選挙)
 2023年10月15日に、東京都立川市都議会議員の補欠選挙が行われた。定数2のところに3人が立候補し、なんと自民党候補が3位で落選した。自民会派が分裂したわけではなく、定数2人なら2位には入るかと思われていたから、この結果は驚きを持って受けとめられている。ただ東京ローカルのニュースなので、全国では知らない人も多いかと思って紹介しておきたい。
(選挙結果)
 立川(たちかわ)市は東京都西部の多摩地区の中心として繁栄している都市である。人口は18万5千人ほど。今は立川市について書いているわけじゃないので、それ以上の情報は省略する。そもそも何でここで補欠選挙があったかというと、9月3日に行われた市長選に立川選出の都議会議員2人がそろって立候補したことによる。その都議は2021年にあった都議選で当選していたので、都議選、市長選の結果を示しておきたい。

都議会議員選挙(2021年7月) 定数2  投票率37.24%
当選 酒井大史(立憲民主党・現) 20,633 当選5回 
当選 清水孝治(自由民主党・現) 20,470 当選3回 
落選 石飛香織(都民ファーストの会・新) 14,619 

立川市長選挙(2023年9月)  投票率37.15%
当選 酒井大史(無所属・新) 21,731 
落選 清水孝治(無所属・新) 20,150 
落選 伊藤大輔(無所属・新) 11,463
 他2人(のぐちそのこ、金村まこと)は省略
(当選した酒井市長)
 この2回の選挙は投票率もほぼ同じで、対決の構図も同じである。市長選は無所属で出ているが、有権者は酒井氏は元立民、清水氏は元自民と知っている。伊藤大輔氏は都民ファーストの会所属の市議会議員だったので、それも判っている。2回やって、酒井氏、清水氏はほぼ互角ながら、若干酒井氏の得票が上回っている。都議選では自民公認の清水氏は公明党の推薦を受けていた。

 では、この2つの選挙の中間時点にあった参議院選挙の比例区票の出方を見てみたい。(当選者を出した党のみ)
参議院選挙・比例区(2022年7月)  投票率53.10% 得票順(小数点以下は切り捨て)
 自由民主党 (25,106)  立憲民主党 (10,242)  日本維新の会 (9,732)  公明党 (9,380)  日本共産党 (8,113)  れいわ新選組 (4,846)  国民民主党 (4,838)  参政党 (2,694)  社会民主党 (2,216)  NHK党 (2,029)

 これで見る限り、去年の参院選で自民党(候補)に投票した人が2万5千人もいるんだから、投票率が全然違うとは言え、市長選で清水候補が落選したのは意外だったということだ。立民+共産+社民は、2万ちょっと、「れいわ」を入れても2万5千ほどである。投票率が下がっていることを考えると、よほど歩留まりが良かったのである。自民党は今年の統一地方選以来、地方選挙で不振が続いていて、それが影響したのかもしれない。

 さて、今回の都議選補選を見てみたい。
都議会議員補欠選挙(2023年10月) 定数2  投票率28.90%
当選 伊藤大輔(都民ファーストの会・新) 17,499  
当選 鈴木烈(立憲民主党・新) 12,141  
落選 木原宏(自由民主党・新) 12,050 

 トップ当選の伊藤氏は9月の市長選に出たばかりで、知名度が高かった。それに小池都知事が応援に3回応援に入ったことも大きいと言われる。自民党は今春からの公明党との関係悪化を引きずり、市長選と同様に公明党の推薦がなかった。木原氏は市議会議長も務めた人で知名度もあるから、2位には入れると踏んで推薦を求めなかったのだろう。一方、小池都知事は公明党の政策を持ち上げ、公明票の獲得を図ったらしい。立憲民主の鈴木氏は元葛飾区議で知名度が不足する中で、共産、れいわ・生活者ネット(東京の地域政党)の推薦を得て、辛うじて競り勝った。91票差だから、ほとんど差はないと言えるけど、勝ちは勝ちである。
(伊藤候補応援に訪れた小池都知事) 
 中央の岸田内閣の支持率低迷もあるけれど、マスコミでは埼玉県議会の「虐待禁止条例改正」問題の影響を指摘している。全国ニュースより前に、首都圏ニュースのような番組で大きく取り上げられていた。非常に大きな反発が巻き起こり、「自民党の体質」に批判が起こっていた。そういうことの複合なんだろうけど、補選ということで投票率が4人に1人ほどに落ち込んだので、各党の基礎票の出方が不明。伊藤氏が一月ほどで6千票も増やした真の原因は判らない。ただ「自民」「立民」よりも、「維新」に支持が集まるような風潮がここでも影響しているのかもしれない。
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大田区の東京都議補選結果を考える

2023年06月10日 22時17分20秒 |  〃  (選挙)
 6月4日に東京都議会の大田区選挙区補欠選挙が行われた。大田区では4月に区長選が行われ、都議2名が立候補して失職になった。大田区の都議の定数は7名だが、地方議会では欠員が2名以上出たときに補欠選挙を行う規定がある。ただ、区長選、区議選が終わったばかりだからか、投票率は25.35%と極端に低かった。普通なら都議補選など全国的な意味はないし、全都的意味も特にない。ただ、今回は衆院選近しの観測もある中、自民と公明の関係が東京で破綻した影響がどう出るかという問題があった。また「維新」「都民ファースト」も候補を立て、応援には各党幹部が訪れて選挙戦は過熱したという。
(結果)
 結果は上記画像のように、元職2人が当選した。区長選で落選した森愛(無所属=立民、共産支援)が4万8千票強でトップ。鈴木章浩が4万ほどで2位。続いて維新新人が3万票、都民ファースト新人が2万票ほどだった。有力候補4人の票はそんな感じだった。これは元職の知名度が高かったと考えられるが、「維新」も様々な問題が報道された影響があるのかもしれない。関西はともかく、低投票率の場合「維新」の名前だけでは当選出来ないということだろう。「都民ファースト」は小池知事が応援に入ったというが、もともと森愛が都民ファーストの都議だった影響もあっただろう。

 2021年に行われた前回都議選では、共産、維新、立民、自民、公明、都民、公明の順番で7人が当選していた。次点以下に、都民、自民、自民と並び、この落選した自民の上位が今回当選の鈴木章浩。当選した「都民」が森愛で、当選した自民の鈴木晶雅は現在の区長。落選した「都民」候補が今回も出た奥本有里で2万373票で次点だった。今回も2万710票で、ほとんど同じだった。立憲民主党で当選したのが、「筆談ホステス」として知られた斉藤里恵。前回の自民票を足すと、5万8千票強。共産+立民で6万票強。公明は2人合計で、4万8千票。維新は約3万票、森愛は2万5千票だった。前回投票率は43.6%。今回は4割以上減っ。
(当選した森、鈴木都議)
 公明党は前回衆院選(2021年)の比例区で、約4万2千票を獲得している。現職が2人いるので、今回はどこも支援しなかった。ところで、自公の関係は新たに増える選挙区の候補者擁立をめぐって悪化して、東京では関係断絶を宣言したばかり。公明は大阪4,兵庫2の6選挙区で、維新と協力してきた。ところが大阪で府議会、市議会ともに過半数を得た維新は「公明との関係は一度リセット」と言っている。もし維新が6選挙区に候補を立てたら、関西の公明は全滅しかねない。そこで水面下で東京で維新を支援する代わりに、関西6選挙区に維新は候補を立てないという裏取引があるのではないかと言われていた。

 そのため、自民内には大田区で公明が動いて自民が落選でもしたら、連立政権も解消だなどという声さえあった。公明が1万票でも維新に回していれば、トップ当選して自民落選である。この投票率を見れば、公明党はどこも支援せず公明支持層は棄権に回ったと考えるべきだろう。ただ、今回は2人当選だからいいけど、小選挙区の衆院選では公明の支援がないと自民候補は野党に競り負ける可能性がある。そのことを見せつける選挙結果になり、今回選挙の「見えない勝者」は公明党だったと言える。

 大田区では4月の区議選でも、自民候補が多数落選していた。次点以下には、自現、公新、自現、自現、共現、共現、政女新、国民新、共新、自新、自元、自新と並び、自民党が6人も落選したのである。特に現職候補を3人落としている。自民は13人が当選していいるものの、地盤沈下の傾向が見られる。公明、共産が落ちると注目されるが、足立区議選でも見られたように自民党の低落傾向もある。直近の衆参選挙の比例区を見ると、自民党は10万4千票ほどを取っている。今回の歩留まりは非常に悪いが、これは今回の候補が2014年の「都議会セクハラヤジ問題」を起こした人だということを有権者が覚えていて、浮動票が入らないのだろう。国政選挙はまた違ってくるが、自民党の足元も揺らいでいるということは、ちょっと気にしておいた方が良い。
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足立区議選の結果、「自民党激減」をどう考えるか

2023年05月26日 23時19分49秒 |  〃  (選挙)
 2023年5月21日に、足立区長選足立区議選が行われた。全国的には4月に行われた統一地方選だが、何で足立区では5月なのか。一応簡単に解説しておくと、1996年の区長選で保守陣営が分裂し、旧足立区庁舎跡地問題も揉めていたため、共産党推薦候補(吉田万三)が当選したことがあった。少数与党のため区政運営に苦労が続き、1999年(統一地方選の年)に区議会による区長不信任案可決、議会解散、選挙後の議会での再度の不信任案可決と続き、以後の選挙は4年ごとに5月に行われるようになったのである。

 僕は一応毎回選挙には行くが、足立区議会選には今までは全国的な意味合いはほとんどなかった。前回は旧「NHK党」候補が居住要件を満たさずに、得票ゼロになったという件を書いた。しかし、全体的な結果については書いたことがない。しかし、今回は書いてみたいと思う。「4月の傾向の持続性」という意味で、検討する意味がある。およそ4つの問題点が考えられる。「維新の好調は続くか」「共産の退潮は見られるか」「公明の全員当選はなるか」、そして「女性候補が何人当選するか」である。

 足立区というのは、東京23区の東北部にあって埼玉県、千葉県に接している。よく「下町」と言われたりするが、最大の繁華街である北千住は、日光街道の最初の宿場町である。つまり、本来は江戸ではなく「郊外」なのである。高度成長以前は農業地帯で、その後住宅地になっていった。組織労働者がいる大工場は昔は少しあったが、今は移転してしまった。だから、社会党、民主党系の勢力はずっと弱小である。旧農地の地主は地域の有力者になり、地域代表として保守系大勢力になった。開発された住宅地は都内では地価が安いので、低所得層(および外国人)が多い。そのため組織政党である公明党、共産党が昔から強い。

 大体そんな政治風土なのだが、今回は全45議席のところに64人も立った。結果は自民党が17人から12人へ5人減、代わりに公明党13人全員当選で第一党になった。共産党は前回7人から6人へ1議席減、立憲民主党3議席で変わらず。日本維新の会は前回ゼロ(候補1人)から一挙に3人当選。国民民主党は1議席で変わらず。れいわ新選組参政党がそれぞれ1議席獲得。都民ファーストの会は1議席で変わらず。無所属は4人が当選した。(1人は都民ファースト推薦。)
(和田愛子前議員)
 ところで、以上の数は開票時のものである。その後、立憲民主党から当選した新人、和田愛子が偽ブランドを転売していたとして罰金判決を受けていたことが発覚し、議員を辞職した。選挙から3ヶ月以内に欠員が生じた場合、地方議会では次点が繰り上がる決まりになっている。次点は自民現職だったので、結局自民党、公明党が13人で同数になる見込み。女性候補は15人が当選した(が1人辞任で結局14人)。前回は11人だったから、やはり増えているのである。特に当選者45人中上位20位を見てみると、半数の10人が女性だった。やはり女性候補の優勢という傾向ははっきりしている。

 ところで、自民党前議員17人はなんと全員男性である。今回自民党は現職16人と新人3人の計19人(全員男)が立候補して、現職12人(繰り上げを入れて)と新人1人が当選した。つまり、現職4人が落選したわけで、和田議員辞職がなければ現職5人の落選だった。ちなみに、「LGBT差別発言」として全国的に問題になった白石正輝氏も40位で再選されている。前回と投票率はほぼ変わらず、その中で自民党は1万票を減らした。なお、今回調べるまで足立区議会の自民議員が全員男だとは知らなかった。とんでもない地域だなあと改めて実感した。
 
 前回票との差は東京新聞に掲載された記事から引用するが、それによると公明党は前回より3656票を減らしたが、うまく票割りして全員が当選した。練馬区議選では4人が次点以下に並び、全国で12人が落選して衝撃を与えた。公明党は固い支持票を上手に票割りして、落ちる選挙はしない。自民、立民が12人落選するのとは、持っている意味が違うのである。もともと足立区は公明党の地盤が強いけれど、今回は非常に力を入れていることは傍目でも判った。公明新聞の記事が画像で見つかったので示しておく。その意味では成功したわけだが、やはり票は減らしているのである。当選ラインは約3千票なので、実は1議席分の票を減らしていた。
(全員当選を目指す公明党)
 共産党は8人立候補して、6人当選。1議席減、票数では5774票減である。票割りが上手く行き、50位に滑り込んだが、それでも2人の現職が落選した。自民、公明、共産、立民で、約2万票の減である。それに対し、維新(1万3156票増)、れいわ(4501票)、参政(3654票)で、その他国民民主、都民ファースト、無所属などいろいろあるが、大体の票の動きは辻褄が合う。

 ここで判ることは、もともと「革新系浮動票」が少ない足立区で、維新や参政党が議席を獲得したのは「保守系浮動票」が流れているのである。先の国政補欠選で立憲民主党が不振だったことから、何か立民、共産の不調で維新が伸びたように思っている人も多いと思う。そういう地域もあるかもしれないけれど、保守票が強い地域では維新は自民票を浸蝕して勝つということだ。今回維新の女性候補は全体3位で当選した。れいわも女性。公明、共産も上位当選には女性候補が多い。候補に女性が一人もいないという自民党が減らすのも当然だ。この結果を見る限り、「野党は弱い」「維新が伸びても自民を助けてくれる存在」などと安易に思い込んで解散するのは、自民党にとっては危険かもしれない。次は大田区の都議補選に要注目である。
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「一票の格差」最高裁判決の問題点、「比例代表」に変更を

2023年01月26日 22時44分15秒 |  〃  (選挙)
 2021年の衆議院選挙における「一票の格差」訴訟で、1月25日に最高裁大法廷判決が出た。ある意味で予想されたとおりなのだが、判決は「合憲」という結論だった。最高裁裁判官15人中、14人が合憲で違憲としたのはたった一人(宇賀克也裁判官)だった。この裁判は2つの弁護士グループによって、全国16の高裁、高裁支部に申立てられた。(公職選挙法の規定により、選挙の効力を争う訴訟は高裁に提起する。)高裁判決では「合憲」が9件「違憲状態」が7件だったという。それが最高裁になると、圧倒的に政府寄りが多くなる。任命した歴代内閣は、安倍内閣が8人、菅内閣が5人、岸田内閣が2人である。

 この判断には大きな問題があると考える。それは「格差が2倍を超える」にも関わらず、「合憲」としたからだ。2009,2012,2014年の衆院選に関しては、最高裁は「違憲状態」としていた。2017年衆院選は、かろうじて最大格差が2倍以内だった。今回は最大と最小の格差が2倍を超えていたのだが、最高裁は「合憲」と判断した。明らかに基準を下げている。それは2022年の国会で「10増10減」が実現したなどと、選挙当時ではなく、選挙以後に生じた出来事を判断材料にしているのである。

 選挙の効力を争う裁判が進行中は、その選挙で選ばれた議員に欠員が出ても補欠選挙が行われない。補選は10月と4月に行われるので、本来なら7月に亡くなった安倍晋三議員の補欠選挙は昨年10月に行われたはずだが、それが延期になっている。今回4月に補選が現在のところ3件、それに加えて岸信夫前防衛相が辞任して補選になると言われているので、4つの補選が行われる予定。補選が行われるのは、山口県が2つ和歌山県が1つ(岸本周平議員が知事選に出るため辞任)、千葉県が1つである。でも山口県と和歌山県は「10減」の対象県である。つまり4月に補選をやっても、次の衆院選ではなくなってしまう選挙区なのである。
(最高裁の判断の流れ)
 まあ、最高裁判決をいくら考えても仕方ないので、今後の問題を。結局、日本は人口減少段階に入っていて、地方の高齢者が減っていき若年層はますます都市部に集中するようになる。それが良いわけではないが、そうなると予測出来る。従って、何回増減を繰り返しても「一票の格差」はまた大きくなる。選挙のたびごとに「違憲訴訟」が起きるのである。その裁判に費やす時間的、資源的なロスがもったいないではないか。小選挙制度比例代表制度には一長一短があり、完全な選挙制度はない。しかしながら、比例代表なら「一票の格差」は生じないから、結局のところ選挙制度を比例代表に変えるしか手はないのではないか。

 今まで100年以上、選挙民は「候補者の名前を書く」という選挙をやってきた。だから、今さら候補者を全部政党が決める選挙にすれば、何だか自由がなくなる感じがするだろう。だから、参議院の比例区でやっている「非拘束名簿式比例代表制」、つまり候補者名を書いても、政党名を書いてもよく、政党ごとに合計して比例で政党の当選者数を決める。具体的な当選者は、個人別得票の多い順に決める。これを衆院選でも実施する。衆参の比例区を同じ制度で行う。これしかないのではないか。それを都道府県レベルで行うか、いくつかの都道府県をまとめて「ブロック」レベルで行うかという問題は残る。(衆院議員が数が多いので、全国一律でやるのは難しい。)結局、そうするのが良いと思っている。(まあ、前にも書いてるんだけど。)
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音楽関係4団体の自民候補支持問題ー2022参院選④

2022年07月24日 22時14分43秒 |  〃  (選挙)
 参議院選挙中の6月30日に、音楽・芸能4団体が自民党から出馬した候補を激励する決起集会を自民党本部で開いた。これに対し、抗議する関係者も出てきたが、この問題をどう考えるべきだろうか。支援したのは、東京選挙区から出ていた新人の生稲晃子(元「おニャン子クラブ」)と比例代表区からでていた現職の今井絵理子(元「SPEED」)である。二人とも当選したが、生稲候補は6人中の5位、今井候補は自民の比例区当選者18人中の15位だった。当選はもともと有力視されてはいたが、決して盤石ではなかったので、この支援は有り難かったのではないか。この問題をどう考えるべきだろうか。
(今井絵理子、生稲晃子)
 その前に、今回の比例区での組織内候補の結果を見ておきたい。自民党では、医師会が推す候補の自見英子で21万3千票。3年前の羽生田俊の15万3千弱に比べて大幅に増えている。その理由はよく判らないが、コロナ禍で医師会が自民党に期待することが多くなっているのだろうか。そういう組織もある反面、郵便局長会は20万票、農政連は3万票、遺族会も3万票教減らしている。遺族会はもともと会員の高齢化が進んでいたわけだが、今回は現職の水落敏栄が落選した。郵政票は数々の不正問題が響いたのだと思う。

 野党系労組票を見ると、立憲民主党では自治労の推す新人鬼木誠が3年前の岸真紀子より1万3千票余り増やして当選した。しかし、日教組JP労組情報労連基幹労連いずれも、数千票から3万票ほど3年前から減っている。国民民主党でも、電力労連自動車総連UAゼンセンが、当選したものの、すべて3年前から減らした。UAゼンセンは5万票近く減らしたが、多くの小売業を傘下に持つだけに、コロナ禍で組織人員そのものが減っているのかもしれない。電機連合も3万票以上減らして4位で落選した。

 このように、一部の例外を除き、与野党ともに「組織内候補」は苦労していることが判る。組織が決めればメンバーが黙って投票してくれる時代ではない。しかし、それは以前からずっと同様で、組織人員の1割も得票出来ていない場合がほとんどだろう。それにしても、今回さらに苦労した組織内候補が多かったのは、やはり3年続く「コロナ禍」の影響なんだと思う。この間、大規模な集会などが難しく、全国大会などがオンライン開催になった年もあっただろう。職場でのきめ細かな集票活動もままならない。それは公明党共産党の得票が3年前より減った一因でもあるだろう。
(ネット上で発表された抗議文)
 そのような「組織票の先細り」の中で、自民党としては「新しい組織」が欲しい。一方で、コロナ禍でもっとも大きな困難を負ったのが、観光業飲食業とともに、音楽・芸能などの娯楽業界だった。生のコンサート、演劇公演などが次々と中止になったのは記憶に新しい。また映画館も休館になって、ミニシアターの支援運動が行われた。この間、マスクを外して「密」になって製作せざるを得ない芸能界ではコロナ感染も相次いだ。このようなコロナ禍での苦境を打開するために、音楽・芸能業界からも「与党への接近」が必要になっただろう。 

 今回生稲・今井候補支援を表明したのは、以下の4団体である。「日本音楽事業者協会」(音事協)はトラブル防止や著作権確立を目的として、1963年に設立された一般社団法人。業界大手のホリプロ、渡辺プロ、エイベックス、サンミュージック、吉本興業など有名プロダクションが加盟している。「日本音楽制作者連盟」(音制連)は、80年代に貸しレコード屋の出現に対応して、著作権に「貸与権」が新設された際、その分配のために1986年に作られた一般社団法人。大手以外の個人事務所等も加盟している。さらに「コンサートプロモーターズ協会」は1990年設立の一般社団法人。「日本音楽出版社協会」は1980年に認可された一般社団法人。

 今「一般社団法人」と書いたが、それは現制度が確立されて認定を受けた2010年頃のことである。それ以前はまた別の法人だったわけだが、細かくなるので省略。「一般社団法人」は政治活動をするためのものではない。だから、今回の支援運動はおかしいということになるだろう。ただ、関係者は「候補者を支援しただけで、自民党を支援したわけではない」と語っている。(朝日新聞、7.14日)さらに、「そこが魂を売らないギリギリの譲歩ラインだった」と語っている。しかし、音楽・芸能関係者だったら、維新から中条きよしも出ていた。そちらは支援せず、自民党本部で決起集会をしているんだから、「魂を売った」感がする。

 「組織内候補」というが、タテマエ上は組織そのものではないようにしている。今まで何回か政治資金規正法違反事件を起こした「日歯連」というのは、「日本歯科医師連盟」という組織である。「日本歯科医師会」とは別で、歯科医師会のための政治活動を行うために作られた。また日教組の組織内候補と書いているが、実際には「日本民主教育政治連盟」(日政連)という別組織である。もともとは日教組内の社会党支持派が作った政治運動組織で、今は立憲民主党の候補を支援している。労働組合や医師会などは政治活動を行う団体ではないので別の組織を作るわけである。日教組の場合も組合と日政連のチラシは別だった。

 だから、本来は音楽関係の「一般社団法人」が政治活動を行ってはならない。一党に偏した政治活動を行うなら、「一般社団法人」の資格が疑われる。ということになるわけで、「日本音楽政治連盟」みたいな組織を作って行うべきだっただろう。しかし、音楽など文化関係者が直接政治活動を行うのは問題も大きいだろう。個人個人はいろいろあって良いが、事実上組織的に政権与党を支持するのは、文化関係としてはあり得ない。だからこそ、抗議運動も起こったわけである。しかし、逆に考えれば、コロナ禍でそこまで追いつめられているとも言える。

 今回野党が伸びたとしても、参院選なんだから政権交代にはならない。だったら、与党との関係を深くすることが業界のためだという発想もあっただろう。衆院選、参院選では自民党が好調だったのは、政策課題が支持されたとか、岸田政権が支持されたというよりも、コロナ禍において「与党に恩を売りたい」ということが大きかったのではないか。自民党の方も今後、さらなる給付金などを打ち出すわけだろう。「御恩」と「奉公」という関係である。
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選挙区の事情、沖縄、京都、東京の検討ー2022参院選③

2022年07月22日 22時49分42秒 |  〃  (選挙)
 参議院選挙の結果検討が2回で切れているので、続き。比例区票は見たので、次に選挙区の事情を検討したい。今回は28ある「1人区」で自民党が圧勝した。野党系が勝ったのは4つだけである。そのうち山形県は国民民主党舟山康江だから、予算案に賛成した「事実上の与党」みたいなものである。この結果は安倍氏の死去の同情票ではなく、事前の予測情報通りの結果である。また、野党の分立が理由でもなく、野党系が束になっても自民党に届かないところがほとんどである。

 立憲民主党が議席を持っていた岩手新潟山梨三重でも自民党候補が勝利した。このうち三重県は現職引退による新人候補に議席を引き継げなかったが、他の3区は現職が敗れたのだから深刻である。しかし、いずれも調査報道で自民有利がはっきりしていた。新潟県の場合は直前にあった県知事選の影響が大きいと当時から言われていた。

 立憲民主党が勝った青森では2期目の田名部匡代(たなぶ・まさよ)の知名度が強かった。自民の斉藤直飛人は、大相撲の元関脇追風海(はやてうみ)で、引退後故郷で町議、県議を務めていた。今まで選挙に追風海の名で立候補していたため、全県規模選挙の初挑戦で知名度に難があったのではないか。長野は自民の松山三四六が追い上げて、追いついたという予測もあったが、投票日直前の「週刊文春」にスキャンダルが報道された。その結果、立民の杉尾秀哉が43万3千対松山37万6千と思った以上の差が付いたわけである。松山は長野で長く活動するローカル・タレントで県民が皆知っていると言われていた。

 沖縄もむしろ自民が一歩抜けたかという報道もあった。結果は野党系の無所属伊波洋一(元宜野湾市長)が自民の古謝玄大を27万4235票対27万1347票という僅差で振り切った。僅か2888票差得票差0.49%である。6年前の2016年参院選では、伊波が35万6355票、自民の現職島尻安伊子が24万5999票と、10万票以上の差が付いていた。3年前の2019年参院選では、野党系の高良鉄美が29万8831票、自民の安里繁信が23万4928票だった。今回の票の出方を見ると、「オール沖縄」体制が崩れて野党系の票が相当減ったことが判る。それでも伊波が辛うじて勝ったのは、参政党が2万2585票、NHK党が1万1034票、さらに幸福実現党も出て、合わせて6.72%を得たからだと思われる。特に参政党が自民票を浸蝕したのではないかと言われている。
(沖縄選挙区のポスター掲示板)
 続いて、2人区の京都選挙区を見る。ここは立憲民主党の福山哲郎前幹事長が1998年に無所属で当選以来、4回連続で当選していた。その時は橋本内閣時の自民大敗選挙で、何と福山が1位、2位に共産党で、自民党が落選した。京都は昔から全国で最も共産党が強いところで、福山が出ていない3年前、9年前の選挙でも共産党が当選している。今回は国民民主党の前原誠司が「日本維新の会」候補を推薦し、長い協力関係が崩壊した。立憲民主党の泉健太代表は京都選出だから、過去の民主党幹部によるし烈な選挙戦が展開された。「維新」にとっては、大阪の「地域政党」性を脱却するためにも、京都を最重点に位置づけていた。
(議席を守った福山哲郎)
 結果的には、吉井章(自民党)が29万3071票、福山哲郎(立憲民主党)が27万5140票で当選。維新の楠井祐子は25万7852票、共産党の武山彩子は13万0260票だった。さらに参政党が4万票、維新政党・新風が2万千票、NHK党二人で1万6千票ほどを獲得している。過去の福山の得票をザッと見てみると、39万6千、48万4千、37万4千、39万、27万5千となっていて、今回およそ12万票近く減らしたのは立民の不振もあるだろうが、前原票の影響が大きいと思われる。

 6年前は今回出馬せず引退する二之湯国家公安委員長が42万2千、福山が39万、共産党候補が21万1千だった。3年前は自民の西田昌治が42万1千、共産の倉林明子が24万6千、立民候補が23万2千だった。これを見ると、最近2回は40万票を獲得していた自民党が今回30万にも達しなかったのは、明らかに維新に浸蝕されたと見られる。一方で過去21世紀の選挙で(民主党政権時代の2010年を除き)共産党が20万票を得ていたのが、今回は13万票に止まった。これは「弱い支持層」が反維新を優先して福山に流れたと考えられる。いずれにせよ、「京都のことを大阪に決めさせるな」「維新の東進を京都で食い止める」が一定の支持を得るところに維新の弱点がある。また、今後参政党の伸び方次第では自民も安泰とは言えない可能性がある。しばらく三つ巴か。
(東京で6人目に当選した山本太郎)
 続いて、東京選挙区。ここは34人も立候補して、事前に用意したポスター掲示板30人分では足りなくなって、後から継ぎ足した。しかし、貼らない候補もいるので矛盾も感じる。結果は公示直前に書いた「参院選、東京はもう決まってる?を検証」(6.16)通りだった。まあ蓮舫の4位は意外だったが、これは立民不振もあるだろうが、蓮舫安泰の調査結果を読んで当落線上と伝えられた山添拓山本太郎、あるいは立民のもう一人松尾明弘に多少流れたと考えるべきだろう。1位の朝日健太郎、2位の竹谷とし子は予想通りだが、朝日は前回より28万票近く伸ばしたのに対し、竹谷は80万、77万、74万と漸減している。4位の蓮舫は過去2回100万票を越えたが、今回は67万票。5位の生稲晃子は62万票弱、山本太郎が最後に56万5925票で当選。次点の維新・海老沢由紀は53万0361票で、3万5564票差だった。この6人の当選は常識で判る範囲だから、当たっても別に嬉しくもない。
(維新で落選した海老沢由紀候補)
 8人目以後は立民の松尾明弘=37万2千、無所属の乙武洋匡=32万3千、「ファーストの会」、国民民主推薦の荒木千陽=28万4千の以上10人が法定得票数に達した候補。11位が参政党の川西泉緒で13万8千票弱だった。ここでは特に「山本太郎」と「海老沢由紀」を見てみたい。7位の海老沢としては、取りあえず山本太郎票を上回らないと当選出来ない。そして地区によっては上回っているのである。それが千代田、中央、港、新宿、文京、江東、品川、目黒、大田、北の10区である。多磨地区では稲城市で200票ほど海老沢が上回っているだけである。東京の土地勘がある人なら判ると思うけど、この区名には意味がある。

 ほぼ山手線に沿った東京都心部に偏っているのである。そこから外れた北区は3年前に維新の参院議員に当選した元都議音喜多駿の地盤、大田区もやはり3年前に比例区で当選した元都議柳ヶ瀬裕文の地盤である。江東区だけが山手線外の東京東部に位置するが、ここは近年高層マンションが立ち並んで都心部に近い住民構成なのではないかと思う。東京では都心部に高所得層が住み、東部とは所得格差がある。西部の多磨地区も中央線沿いは高いだろうが、平均すれば都心部より低いだろう。つまり、東京では高所得者の住む地域で維新の支持が強い傾向がある。それは何を意味するのだろうか。
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比例区票の検討、実は自公とも前回より減らしたー2022年参院選②

2022年07月13日 22時33分27秒 |  〃  (選挙)
 毎回行っている比例区票の点検作業。今回の比例区の投票総数は5302万7248票だった。全国の有権者は約1億500万人なので、1%違うと100万人ほど違ってくる。19年参院選は約5007万票21年衆院選は約5747万票だった。前回参院選より投票率が高く、その分300万票近く増えた。しかし、参院選は大体衆院選より低くなるので、21年衆院選より440万票減っている。
(22年参院選の結果)
 では各党を順番に見てみる。まず自民党だが、今回比例区で1826万票で、全体の34.43%になる。これは昨年の衆院選の得票率34.66%とほぼ同じである。ここでも安倍元首相銃撃事件は影響を与えなかったことが判るだろう。以下に最近5回の国政選挙の得票数を示す。(参院選後のカッコは獲得議席。)
 16年参院選→(17年衆院選)→19年参院選→(21年衆院選)→22年参院選 
 2011万(19)→(1856万)→1711万(19)→(1991万)→1826万(18) 
 
 6年前は2000万票を越えていたのに、その後は21年衆院選の1991万が最高である。衆院選と参院選は違うと言っても、去年から160万票減らしている。19年参院選は投票率が低く、3年前よりは110万票増やしたが、実は1議席減らしている。なお、6年前まで比例区は48議席だったが、3年前から50議席に増えた。今までの自民党の最多獲得議席は86年衆参同日選の22議席、最少は2010年の12議席である。2013年からは18、19、19、18となっている。今回は自民党大勝利というイメージを持っている人が多いと思うが、実は前回より比例区で減らしているのが事実である。
(個人名1位の自民党赤松健候補)
 公明党618万票ほどで、獲得議席は6議席だった。公明党も前回より1議席減らしている
 753万(7)→(698万)→654万(7)→(711万)→618万(6)
 16年参院選から減り続けていた得票が、21年衆院選で久しぶりに700万票台に載せた。しかし、今回は去年より100万票減らしている。獲得議席も1889年、2010年以来の3回目の6議席となった。まあ重点候補は6人だったが、7人に届かなかったのは痛いだろう。創価学会員の高齢化、コロナ禍で集会が難しい、公明党議員(遠山元衆院議員など)のスキャンダルなどもあるが、最大の要因は選挙区で自民党が堅調だったことだと思う。野党統一候補とし烈な選挙をしている時は、公明支持者をつなぎ止めるため「選挙区は自民党、比例区は公明党」と自民党支持者に訴えると言われる。今回はそれがなかったのだろう。

 次は野党を見る。立憲民主党は6年前にはなかった。6年前は民進党で11議席を獲得していた。
 17年衆院選から見ると、(1108万)→792万(8)→(1149万)→677万(7)
 衆院選では、まだそれなりの力があったものの、投票率が低かった前回参院選より120万票も減らして、議席も1減だから、やはり立憲民主党は敗北と言うべきだろう。原因がどこにあるかは、別に考えたいと思う。労働組合出身の候補は軒並み10万票以上の個人名得票があって、5人全員当選した。前回国民から出て落選した基幹労連は今回立民から出て当選。他には自治労、日教組、JP労連、情報労連である。組合以外の当選者は辻元清美と青木愛だけだった。労組は大切だが、これでは党勢が伸びない。
(比例区で当選した辻元清美候補)
 続けて国民民主党を先に見ると、316万票ほどで3議席。いずれも労働組合出身者で、当選したのは電力総連、自動車総連、UAゼンセン。電機連合の矢田稚子副代表は落選してしまった。3年前から30万票減らしてる。全国組織が頑張る参院選の方が比例票が出る体質なんだろうと思う。取りあえず労組3人ぐらいは当選させられる。だから脱原発の立民にまとまるより、電力総連には国民民主党が居心地良いんだろう。
 19年参院選から見ると、348万(3)→(259万)→316万(3)

 次に「日本維新の会」を見るが、16年参院選は「おおさか維新の会」だった。その時は515万票で、4議席だった。
 515万(4)→(339万)→491万(5)→(805万)→785万(8)
 「維新」は自民党と同じく、著名人を比例区で擁立したが、8人目の青島健太は3万3553票で当選した。これは今回の個人名最少得票当選者である。「維新」は785万のうち、708万が政党名得票だった。実に90.3%にもなる。政党名投票を呼びかけている共産党の91.8%には及ばないが、異例に高い。(なお、どの党も政党名得票が圧倒的に多いのだが、自民党、立憲民主党とも75%ほどである。)つまり、著名人を立てたからではなく、有権者は「維新」そのものに投票しているのである。
(投開票日に辞任を発表した「維新」の松井代表)
 共産党362万票ほどで、3議席
 602万(5)→(440万)→448万(4)→(417万)→362万(3)
 16年参院選から見ると、半減とは言わないが240万票も減っている。4割減である。今回は野党協力が不調で、共産党も全部ではないけれど、33選挙区に候補を立てた。しかし、比例票上積みにはつながらなかった。この党勢低調をどう考えるか、どう打開するか。きちんと党内で自由闊達な議論が行われなければならないだろう。

 れいわ新選組は、前回19年に228万票、21年衆院選は221万票、今回22年参院選は232万だった。数だけで言えば今までで一番多いけれど、220~230万票程度が上限なのかとも考えられる。毎回衆参選挙ごとに、山本太郎が辞任して出馬するわけにもいかないだろう。

 社民党は、2.37%の得票で、一応政党要件をクリアーした。
 154万(1)→(94万)→105万(1)→(101万)→126万(1)
 「福島瑞穂を当選させる会」としては1議席を確保したわけだが、今では「希少生物」になっているのは間違いない。3年後は福島瑞穂に匹敵する著名人を擁立出来るのか。3年後は厳しいのではないか。

 「NHK党」は、19年に152万票で1議席。2022年は125万で1議席。前回は3.02%で、今回は2.36%。どう考えるべきかは判らない。
 そして問題の「参政党」。177万票、3.3%で1議席を獲得した。何と社民、N党より多い。2023年の統一地方選で、地方議会に大量に進出するのではないかと思う。その議員から国政に出る人も出て来る。だが、単なる「極右」というより、「陰謀論」「カルト政党」化する可能性もある。「コロナワクチン反対運動」などを行うかどうか。「維新」はトランプの米共和党に近く、「参政党」はフランスの「国民連合」(旧国民戦線)ではないか。しかし、反外国人労働者の姿勢が「れいわ新選組」とも近く、左右を越えたポピュリズム政党の基盤を作っていくのかもしれない。

 いずれにせよ、自民党、立憲民主党、公明党、共産党がすべて19年参院選より1議席減らしているのをどう考えるべきだろうか。僕にはまだまとまった考えがない。何にせよ、安倍事件の影響はあったとしても、政党選択には影響しなかったと見るべきだろう。 
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意外!事前予測通りの結果だった参院選ー2022参院選①

2022年07月12日 22時44分38秒 |  〃  (選挙)
 2022年7月10日に行われた第26回参議院通常選挙は、選挙戦最終盤に安倍晋三元首相狙撃事件という驚くべき事件が起こった。結果的に自民党が圧勝し、単独過半数を獲得する大勝利となった。そこで、こう思っている人が多いのではないか。「死せる安倍元首相への追悼票が自民党に集中し、安倍氏の悲願だった憲法改正を可能とする議席を改憲派政党が獲得した。」このような言説を外国メディアも報じているし、何となく信じている人もいるだろう。それは本当なのだろうか。
(自民党が勝利した結果)
 どういうことが起これば、その説を証明できるだろうか。僕が思うには、 ①棄権するはずだった有権者が投票に参加して、投票率が上がる。②その有権者が自民党に投票することによって、比例区での自民党当選者が事前の情勢報道より明らかに増える。という二つのことが起きるのではないかと思う。なお、各地の選挙区はもともと自民党候補の優勢が伝えられていたため、安倍氏の事件が選挙結果に影響したかどうかの判定は難しいと思われる。
(投票率の推移)
 そのうち①の投票率に関しては、確かに増えている。今回は52.05%で、前回2019年の48.80%より3.25ポイント増えている。しかし、前回が特に低かったので、上記のグラフを見れば判るように、ここしばらくの「漸減」に戻っただけのようにも見える。細かく調べてみると、やはり地方の自民党の強い地区、つまり「結果が見えている」選挙区では5割を割っているところが多い。一方で、与野党激戦が伝えられた1人区、岩手、山形、新潟、長野、山梨などは軒並み55%ほどを記録している。合区された島根県は高いが、今回自民党候補がいなかった鳥取県は低い。このように選挙区事情により投票率もバラバラである。

 事件が起こった奈良県を中心に、近畿地方の投票率はすべて5割を越えている。しかし、近畿各県では比例区の投票先は和歌山を除き、「維新」が2割を上回っている。大阪、兵庫では第1党である。近畿地方の投票率が高かったのは、安倍事件の影響というよりも、「維新」人気が高かったためなのか判定が難しい。今回は都市部の投票率が比較的高かった。東京(56.5%)、神奈川(54.5%)を始め、愛知を中心に東海から、近畿に掛けて高くなっている。僕は東京がここまで高くなるとは思っていなかった。だから、無党派層がやはり選挙は大切だと思って投票率が上がった可能性はあると思っている。
(自民党本部の岸田首相)
 しかし、それは自民党への「同情票」ばかりではなく、非自民層も投票に行き、特に参政党、NHK党などを押し上げたのかもしれない。実際、3年前に議席を獲得した「れいわ新選組」「NHK党」に加えて、今回初参戦の「参政党」の3党だけで、全比例票の10.06パーセントを占めている。その分、「老舗政党」の獲得議席が減ることになる。「維新」が14.80%なので、4党で4分の1ということになる。今回は全部で10党が比例区で議席を獲得した。今までは9党が最多だったので、今回は新記録になる。

 投票率は確かに上がったが、②で挙げた「自民党への同情票の爆発」は起こらなかったと考えられる。それは今回の結果が「事前予測調査」の通りだったことから判明する。2021年10月の衆院選で、朝日新聞の事前予測はほぼ当たっていた。電話、携帯電話、独自調査に加え、インターネットでの調査を加えたということだった。今回も同様に調査を行ったのではないかと思う。 

 その事前調査の2回目の結果は、7月6日に報道されている。以下の通りである。「下限~上限」で示されている。

自民党  合計(56~65) 当選者63   うち比例区(15~19) 当選者18 
公明党  合計(12~15) 当選者13   うち比例区(6~8) 当選者6 
立民党  合計(12~20) 当選者17   うち比例区(5~8) 当選者7 
維新  合計(10~16) 当選者12    うち比例区(6~9) 当選者8 
国民党  合計(2~7) 当選者5    うち比例区(2~4) 当選者3 
共産党  合計(3~8) 当選者4    うち比例区(3~5) 当選者3 
れいわ  合計(1~5) 当選者3    うち比例区(1~4) 当選者2 
社民党  合計(0~1) 当選者1    うち比例区(0~1) 当選者1 
NHK党  合計(0~1) 当選者1    うち比例区(0~1) 当選者1 
諸派  合計(0~3) 当選者1     うち比例区(0~3) 当選者1 

 このように、すべての党が事前予測通りである。比例区でも自民党が爆発的に得票したわけではなかった。事前に予測された調査通りだったということは、自民党勝利の理由は安倍氏の事件ではなかったことを示している。むしろこの間岸田内閣の支持率がずっと堅調だったことが重要ではないか。安倍、菅政権から岸田政権への「擬似的政権交代」が有効だったこと。ウクライナ戦争など「国難」に立ち向かう「戦時下内閣」として政権を支えるムードがあったこと。コロナ禍が3年目を迎えて業界支援のため与党への期待票があったこと。そのようなことの複合として、もともと今回は自民党が好調だった。それがそのまま出たという参院選の結果だったように思われる。各党の盛衰は次回に。
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