万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ノーベル平和賞の逆効果-オバマ大統領と憲法第9条

2014年05月23日 10時59分21秒 | 国際政治
憲法9条にノーベル平和賞を=与野党有志が要請(時事通信) - goo ニュース
 今年のノーベル平和賞は、日本国の憲法第9条がノミネートされたことで関心が高まっており、国会でも、与野党の有志がノーベル賞委員会に要請書を提出したと報じられています。戦争の放棄や軍隊の不保持が明記されたことが、”平和への貢献”ということなのでしょうが、平和の実現に果たす武力の役割を過小評価しますと、逆効果となるのではないでしょうか。

 国内社会であれば、犯罪者の取り締まりを放棄し、警察組織を廃止すれば治安が良くなる、と主張する人がいれば、その人は、周囲の人々から正常な思考力を疑われます。それどころか、”犯罪天国を造るつもりか”、あるいは、”犯罪者の回し者か”といった囂囂たる非難の声が湧きあがり、自説を取り下げざるを得なくなることでしょう。ところが、国際社会では、この非常識な考え方が、平和の名の下に賞賛を受けているのです。核廃絶を訴えたアメリカのオバマ大統領も、武器の放棄が評価されてノーベル平和賞を受賞しました。しかしながら、その後、ノーベル賞受賞者として模範的に振る舞おうとした結果、弱腰外交が基本スタンスとなり、軍事力を背景としたロシアや中国の台頭を招いたとされています。平和の道を歩んでいるはずが、まわりまわって平和の破壊に至る逆転の経路がここでも見られます。この逆転が起きる理由は、”一方的な放棄”という行為にあります。物理的な力を放棄することは、即ち、侵害者に対する正当防衛や抵抗する力を失い、相手が行使する物理的な強制力に屈することを意味しているからです(軍事力を持つ側が、放棄した側の生殺与奪の権を握る…)。しかも、それを、平和という美名のもとで自発的にさせようというのですから、”一方的な放棄”に対する耳に心地よい賛辞は、悪魔的な囁きなのです。

 果たして、憲法第9条は、中国の軍拡を抑止する現実的な効果があったのでしょうか、そして、オバマ大統領のノーベル賞受賞は、国際社会に平和をもたらしたのでしょうか。ノーベル賞委員会には、同じ誤りを繰り返していただきたくはないと思うのです。

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2 コメント

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Unknown (ねむ太)
2014-05-24 00:19:45
こんばんは。国が国民を甘やかし厳しい事は言わず、民意と称して大衆に阿った結果が現実感を失わせ、現実から目を背けさせる国民を増やしたのです。
原発や雇用問題など社会には様々な問題が生じますが、国民の声を反映するべきものと、国家として大局的な判断を下す必要のあるものを厳密に区別するべきなのです。
憲法九条の前に日本国憲法が国際法に照らして正当なものであるかどうかが議論されなければなりません。
日本国憲法以外にも戦後処理に於いて国際法を無視したやり方はいくらでも見られます。
自衛権・集団的自衛権を論ずるならば、降伏に伴う日本軍の観世な武装解除、歴史的に見てもありえない事なのです。
講和条約が締結され独立国に戻れば自分の国は自国の軍隊が守るのは当然であり、その為には占領地からの完全撤退はなされても徹底した武装解除は行われず必要最小限の武力は温存させるのが常識なのです。
連合国がやったのは自衛権を放棄させる事でもあったのです。
憲法九条や自衛権・集団的自衛権を論ずるのならば、ここからはじめなければなりません。
東京裁判に拘るあまり自衛権を放棄させられるというトンデモない暴挙について触れないのは片手落ちであり憲法と国際法の整合性についても、この事を抜きにして論じる事は出来ないはずです。
朝鮮戦争の時に再軍備させたからいいじゃないかと言う声も聞こえてきそうですが、その時には日本国憲法下での出来事であり憲法九条との整合性が取れないのは当然なのです。
日本国憲法を正当化する為に左翼はしばしば嘘をつきます。
「日本国憲法は日本人が作った」
「日本国憲法は日本人の手で選んだ」
「憲法九条は時の内閣が作成しGHQに懇願して入れてもらった」等々、ここまで幼稚な嘘を堂々と言えるものだと半ば呆れるのですが。
日本国憲法の抱える最大の問題は内政干渉にあります
独立国同士であるなら、その国の憲法や法律についてとやかく言うのは内政干渉に当たります。
日本国憲法はGHQが草案を作成し抗弁権の無い占領下において成立したものであり、占領基本法でなければなりません。
占領基本法は時限立法であり講和条約締結時に無効にならなければならないのですが、抗弁権のない占領下において作成され施行されたものであることから考えても内政干渉を継続させる為に作成されたと考える事が出来ます。
内政干渉をやめさせたいのならば、自らの手で憲法を作成し成立させ施工する他にありません。
そうしなければ自衛権・集団的自衛権の問題も憲法九条の問題も解決に至らず、国際法や国連憲章とも整合性が取れないのです。
ここの問題を無視して宮沢俊義の八月革命説などを持ち出し憲法学者の学説に準拠して議論するからおかしくなり、憲法九条にノーベル賞をなどと巫山戯ているのか
国家を破壊し無政府状態にしたいのか分からない連中の寝言に耳を傾けるような愚かしい事になるのです。
オバマ氏にノーベル平和賞の授与に賛同してくれるよう書簡を出すような大馬鹿が国会議員である事こそ由々しき大問題です。
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ねむ太さま (kuranishi masako)
2014-05-24 08:26:35
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 平和主義とは、スターリンの言うように、共産主義の仮面なのでしょう。マッカーシー旋風が起きる前の第二次世界大戦前後までは、アメリカ国内でも、相当数のソ連邦のスパイや工作員が政権中枢部で活動していたとも指摘されております。連合国側が、平和主義の下における完全な武装解除を求めたとしますと、その背後には、ソ連邦の意向があったのではないかと予測しております。実のところ、日本国内にも、軍部を含めて、この動きに呼応する隠れ共産主義者が潜んでいたのですから…。憲法第9条の問題は、制定当時の状況に照らして判断すべきであり、逆効果についても十分に検討すべきです。平和主義者の多くが共産主義者ならば、スターリンの言葉を認め、自らが偽善者であることを白状すべきと思うのです。
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