万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

相互依存論の非情

2008年03月20日 17時58分04秒 | 国際政治
チベットの騒乱、中国経済の影響力を前に西側諸国は沈黙か(ロイター) - goo ニュース

90年代の国際政治学において、ジョセフ・ナイ氏等を主導者とする相互依存論と言う説が一斉を風靡しました。この説によりますと、国家間の関係は、経済的な相互依存が高まるにつれて友好性を増し、安全保障上の対立もやがて緩和する、とするものです。

 現在、チベットで起きた虐殺と弾圧に対して、西側諸国は、中国との経済関係を理由に、非難の態度に出ることに二の足を踏んでいると言います。この様子を見るにつけ、相互依存論とは、経済利益の優先を意味するに過ぎなかったのではないか、と疑うのです。何故ならば、相互依存論は、相手国が、異質な政治論理で行動し、たとえ、侵略や弾圧を繰り返すような国であっても、経済優先を貫くことを正当化しかねないからです。相互依存論の前では、人道主義も人権の擁護も吹き飛んでしまうのです

 その結果、どの国も、中国との経済関係を重視して、チベットの人々を救おうとも、手を差し伸べようともしなくなりました。相互依存論は、国際社会に非情と不条理を生み出す論理なのではないか、と思うのです。

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