万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北朝鮮IMF加盟の行方

2008年10月12日 17時05分39秒 | 国際政治
オバマ氏は指定解除を評価 マケイン氏と見解分かれる(共同通信) - goo ニュース
 散々にブッシュ政権を非難してきたオバマ候補が、北朝鮮のテロ支援国家解除については支持。共和党と民主党とで”ねじれ現象”が起きてしまったわけですが、少なくとも、日本人拉致事件を憂慮し、北朝鮮の悪を見抜いているのは、マケイン候補のように思われます。

 ところで、この指定解除は、本当に、北朝鮮の外交的な勝利なのでしょうか。テロ国家の指定解除になったとしても、現在、北朝鮮は、IMFにも、世界銀行にも、アジア開発銀行のメンバーにもなってはいません。国際機関から融資を受けるためには、まずは、IMFの加盟国になる必要があり、偽札事件を起こしている北朝鮮が、加盟審査をすんなりと通過するかは不透明です。

 また、たとえ加盟できたとしても、IMF加盟国の義務を果たすに際し、透明性のある為替決済システムを構築する必要があり、それがハードルとなるとする指摘もあります。そもそも、麻薬の密輸出など、国家ぐるみの怪しげな密貿易を行ってきた歴史がありますので、情報開示の要求は、北朝鮮の悪事を暴く結果になるかもしれません。

 さらに、IMF加盟後に、北朝鮮が、通貨危機を起こすようなことになれば、北朝鮮経済は、IMFの管理下に置かれることになるかしれません。北朝鮮通貨には信頼性が欠如しており、国際通貨システムに参加した途端に、大暴落を起こすとも限らないのです。

 もちろん、政治的にも、IAEAの査察を拒否しようものなら、緊張は一気に高まることになるでしょう。その一方で、経済の側面においても、テロ支援国家解除の決定は、北朝鮮の金体制の”終りの始まり”を意味するかもしれないのです。

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8 コメント

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北の目標は、米との国交です (冬水)
2008-10-13 09:15:51
 北は、先軍政治の国で、安全保障が最重要。米中の間で、生き延びようとしているのです。
 テロ指定解除は、国交への道を開きますから、外交的には、大勝利でしょう。
 オバマは、内政に集中するでしょう。当然ですが。
オバマのもとで、米朝は国交を結ぶでしょう。もうマケインは、考えなくて良いでしょう。
 北朝鮮=悪と考えていては、拉致問題は解決しません。蓮池薫氏の意見を代弁する透氏の意見を考慮したほうが良いのです。
 麻生首相では、交渉に乗ってきません。朝鮮人強制徴用の歴史のある麻生財閥の御曹司では、何も、交渉しないと思います。
 政権が変り、国交回復とセットで拉致問題を解決するしかありません。
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冬水さん (kuranishi masako)
2008-10-13 09:40:51
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 現在においても、北朝鮮は、軍事独裁国家であり、他国の国民を拉致し、核開発で周辺国に脅威を与えるばかりか、自国民の自由や権利さえ守ろうとしていません。冬水さんは、このような体制が、存続すべきとお考えなのでしょうか。私は、金正日体制は、崩壊させるべきであると思います。独裁者一人のために、まわりの全ての人々が犠牲になるような体制は、消滅すべきなのです。この意味において、日本国は、北朝鮮に対して経済制裁を強化し、体制崩壊を狙う政策に転換すべきと考えるのです。
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Unknown (chengguang)
2008-10-13 10:49:05
IMFへの加盟条件が何なのかは知りませんが、IMFの援助条件を考えると、北朝鮮がIMFへの加盟を切望する理由は見当たりません。世銀やアジア開銀への加盟はそれほど難しい物ではないように見えます。既に中共は加盟しており、その恩恵を受けています。
また、北朝鮮は核を保有したことにより、交渉のタネを持ちましたので、中共が堪忍袋の緒を切らない限り、その時その時で、援助を引き出せば良いとの考えだと思います。IAEAの査察官も、この間、核施設の再建に伴い、退去を通告されたとの報道がありました。別にこのために緊張が高まった状況は生れていないと思います。
オバマ氏は、イラク、アフガンに関しても撤兵の意向のようですから、もし彼が大統領に選任されることになると、北朝鮮に対してどう対処して行くか、は今後日本自体の問題になると思います。現在のように、このような出来事が生じると直ぐ、日本は孤立したとしか表現できないマスコミを一方に持ちながら、現実には日本からの出入りに対してのみしか経済制裁を科せられない状況をどうするのか、打開する方策を採るのか、それとも現状の条件下で交渉を継続していくのか、どちらか一方の選択が先ず必要になるかと思います。
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chengguangさん (kuranishi masako)
2008-10-13 13:30:32
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 世銀は加盟条件として、IMFへの加盟を定めておりますので(世銀協定第2条1項)、次なる対北朝鮮政策の舞台となるのが、IMFと考えたのです。ただし、アジア開発銀行(ADB)の場合には、加盟条件が国連アジア太平洋経済委員会(ESCAP)の加盟国となっており、北朝鮮は、1992年7月31日に加盟を果たしております。ADBは、日米が最大出資国となっておりますので、融資を阻止することができるのですが、次期アメリカ政権がオバマ氏となりますと、日本国一国のみの反対とう心もとない状況とはなりそうです。
 日本国の単独経済制裁となりますと、効果のほどが疑問視されるとは思いますが、日本国には、多くの在日朝鮮人の人々が居住しており、本国に、3000億円以上にのぼる多額の送金をしております。この資金ルートを完全に断つことができれば、一国といえども、北朝鮮を揺さぶる相当の圧力になるのではないでしょうか。
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イデオロギー外交は不要・・ (冬水)
2008-10-13 15:02:00
 金体制は、私も嫌いです。ただし、イデオロギー外交は、戦争を誘発するだけです。金体制をどうするかは、朝鮮民族の仕事であって、我々には、関係がありません。
 拉致は、言ってみれば、江戸の仇(虐殺事件や徴用、差別など)を長崎で討たれたようなもの。拉致被害者には、気の毒ですが。
 だから、国交回復とセットでなければ、解決しません。
 北の目標は米朝国交です。
 経済的には、北には希少元素が多く、さらに、清津港、満州鉄道、シベリア鉄道と、地勢的に見て価値がありますから、米国との国交ができれば、投資は進みます。
 日本は米国の従属変数と見ているから、世銀、アジア開発銀行からの融資は可能と見るでしょう。
 米朝国交は、もう、目の前です。国交後、日本のみ単独制裁していたら、アメリカから、政権を吹っ飛ばす圧力がかかります。麻生首相のままなら、麻生財閥スキャンダル炸裂です。もう、流れ始めていますが。
 従軍慰安婦問題の安倍首相のように、すぐ、屈服するでしょう。
 リアル・ポリティックスなら、日朝国交回復です。
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冬水さん (kuranishi masako)
2008-10-13 20:08:39
 ご返事をいただきまして、ありがとうございました。
 もし、アメリカが、北朝鮮の核保有を認めた形で北朝鮮との国交を結ぶとなりますと、NPT体制そのものが崩壊するのではないでしょうか。その時には、日本国も、核武装という選択肢を真剣に考えなくてはならなくなります。NPTの崩壊は、イランやシリアをはじめ、事実上、すべての国への核拡散を招くことになりましょう。
 また、アメリカ国民は、自国の政府が、北朝鮮の独裁体制を容認することを支持するでしょうか。第二次世界大戦に際しては、自由と民主主義を否定する独裁体制は、それだけで攻撃の理由とされました。国是を捨てて経済利益のみを優先させたとしますと、アメリカの自己否定ともとれます。良識あるアメリカ国民が、マケイン氏を選ぶことに期待するしかないかもしれません。民主主義と人権を声高に叫ぶ民主党のオバマ氏が、人権弾圧国家を擁護するというのも、皮肉なお話なのですが・・・。
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マケインは投げている・・ (冬水)
2008-10-14 10:20:48
 マケインの年齢から、副大統領が、大統領になる可能性があるのに、あのように、未熟な女性を選んだことから、もう勝負を投げていると判断している。
 オバマは、黒人で不利な条件を背負っているが、冷静で、自分が暗殺される可能性すらも冷静に見込んで、熟練した政治家を副大統領に選んでいる。
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冬水さん (kuranishi masako)
2008-10-14 15:10:51
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 私は、マケイン氏がペイリン氏を選んだ理由は、1.女性であることと、2.マケイン氏よりも保守本流でこと、であり、一方、オバマ氏がバイデン氏を指名した理由は、1.白人であること、2.経験があること、と理解しておりました。つまり、双方とも、自分自身では得られない支持層を持ち、かつ、自らの弱点を補う人物を副大統領とすることで、広範な層から支持を集めようとしたのではないか、と思うのです。実際に、ペイリン氏効果もあったわけですから、マケイン氏が、勝負を投げているとは思えないのです。
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