万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

“パンダ外交”の危うさ-中国の強かな戦略か?

2017年12月19日 14時48分26秒 | 国際政治
シャンシャン「もっと見たい」=公開開始、遊び姿に歓声―ネットで映像配信も
本日、上野動物公園では、6月12日に誕生したジャイアントパンダの赤ちゃんシャンシャンが初公開となり、愛らしい姿をはじめて来園者の前に見せました。同動物公園では、パンダの赤ちゃん公開は29年ぶりともなるため、多くの報道陣も集まり、そのフィーバーぶりを全国に伝えております。

 パンダの赤ちゃんには罪はないのですが、中国を代表する希少動物であるパンダが、“パンダ外交”と称される中国の外交戦略の一環に位置付けられている事実を思い起こしますと、このパンダフィーバーには危うさも漂います。昨日のテレビ報道では、パンダの赤ちゃんの誕生を祝して、子供たちが歓迎の歌まで披露しておりました。「中国からやって来てくれてありがとう」という歌詞で…。また、上野動物公園では、パンダの赤ちゃんの一般公開に合わせて今月12日から全園を禁煙し、来園する子供たちの健康のためであれ、パンダに対する特別の配慮を見せております。こうしたパンダに対する特別待遇は、その貸与主である中国の存在を抜きにしては考えられません。NHKによる頻繁なパンダ報道も、中国に対する阿りとする指摘もあり、日本国内では、パンダについては、腫物にさわるような扱いとなっているのです。

 昨今、中国は、外国からの賓客の訪中に際して、接待の軽重によってその国に対する“格付け”や評価を表すとして注目を浴びています。超国賓待遇を受けたアメリカのトランプ大統領然り、冷遇を受けた韓国の文大統領然りです。中国的発想からすれば、日本国に対して、中国の象徴でもあるパンダに対して格別に丁重なる待遇を求め、圧力をかけてくることは当然に予測されます。つまり、“大人気のおパンダさま”の扱いを要求しているのかもしれないのです。上述したパンダ歓迎の歌は、習近平ソングとも似通っており、パンダフィーバーの‘煽り’には、共産主義のプロパガンダの手法まで用いられているようにも見えます。

 昨日は、中国の戦闘機が初めて対馬海峡を通過し、中国の軍事的脅威は日増しに高まっております。パンダ外交の裏に、日本国民が人民解放軍の進駐を熱烈歓迎して、“中国からやって来てくれてありがとう”という歌まで歌わせる思惑があるのかもしれず、油断は禁物です。かくもパンダの受け入れ国が神経をすり減らし、中国の外交戦略に組み込まれるぐらいならば、むしろ、パンダの受け入れは、最初から丁重にお断りした方がましであったかもしれないと思うのです。

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