万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

怪しい武漢の新型肺炎患者数

2020年01月19日 13時51分14秒 | 国際政治

 武漢市の当局の発表によると、新型コロナウイルスに感染した患者は、19日現在で62人を数えるそうです。当局によれば、新型肺炎の発症は武漢市に限定されているそうですが、香港メディアは、上海と深圳にあっても3人が感染している疑いがあるとしています。

 

 新型肺炎の感染拡大については中国国内におけるパンデミックの発生の有無に関心が集まっていますが、つい先日、日本国内の神奈川県(横浜中華街?)でも同型の肺炎の感染者が確認されています。同感染者は、武漢に渡航した中国人男性であり、同肺炎に感染していた父親との接触が感染ルートとして報じられました。日本国内での感染確認は、既に新型コロナウイルスが中国国内に留まることなく、国外にも拡散している現状を示しているのです。

 

 仮に、武漢市の当局が説明したように患者数が僅か62人であったとすれば、日本国内で確認された感染者はその内の一人であったことになるのですが、このケース、感染確率が高すぎるようにも思えます。高熱といった特有の症状が現れる前の潜伏期間であった可能性もあるものの、罹患者である父親は外部と遮断された隔離病棟に移されることもなく、自宅、あるいは、一般病棟で自由に親族や知人と面会できたことになります。このことは、同型のウイルスの感染力は報じられているよりも遥かに高く、また、武漢市の衛生当局による感染拡大防止策が杜撰であることを示唆しているとも言えましょう。

 

 感染者確認の報に接した一般の日本国民の多くは、当然に武漢市が発表した62人の数字に疑いを抱くのですが、イギリスのロンドン大学の調査によれば、実際の感染者巣は1700人以上にも上るそうです。この数字は、患者数を一人一人数えたのではなく、中国国外の患者数、並びに、空港の利用者数に基づいて算出した推計です。つまり、日本国内で発見された感染者の他にも、他の諸国にあって同型の肺炎を発症した人が多数存在しているらしいのです。患者数が1700人以上であれば、日本国内での感染例も頷けます。死亡者数も同様に、当局の発表とは一桁も二桁も違うかもしれません。

 

 仮に、既に1700人を超える勢いで感染が拡大しているとすれば、既にパンデミックの初期段階に差し掛かっているとも言えるのですが、それでは、何故、武漢当局は、偽の情報を内外に向けて発信しているのでしょうか。この人為的な偽情報の拡散は、新型コロナウイルスよりも悪質であるかもしれません。何故ならば、感染者数の少なさやウイルスの感染力の弱さは他の諸国を油断させ、水際での防止体制を緩めてしまう危険があるからです。

 

新型コロナウイルスが国外拡散を阻止する意思が中国にあれば、意図的に低めに設定した数字を公表することなく、まずは、自国からの出国者に対する検査の強化、既に感染している患者の隔離、発症前に患者に接触した人々に対する外出や面会禁止等に努めるはずです。徹底したスマホによる国民監視体制を敷いている中国では、個人を特定した自由主義国よりも効果的な対応もできるはずなのです。それにも拘わらず、中国当局が、偽情報を流しつつ、WHOの加盟国としての拡散防止義務を怠っているとすれば、その無責任な態度は、未必の故意、あるいは、‘生物テロ’を疑われても致し方ないレベルなのではないでしょうか。

 

  年間1000万人に迫る勢いで伸びている訪日中国人観光客の数を考慮しますと、最も深刻な新型コロナウイルスの脅威にさらされている国は、日本国かもしれません。仮に中国でパンデミックが発生すれば、即、日本国内にも波及する可能性が高くなるからです。今日では、首都圏のみならず、全国津々浦々の地方空港でも中国人観光客の呼び込みに積極的です。折しも、中国では24日から国民の大移動を伴う春節が始まりますので、日本国内に居住する200万ともされる中国人の多くも中国に一時帰国するかもしれませんし、春節の休暇を楽しむために訪日する中国人観光客も増えることが予測されるのです。中国の当局が、偽情報を発信する理由の一つには、あるいは観光業への影響への配慮もあるのかもしれません(もっとも、中国人観光客の減少で経済的な損失が中国側にあるとすれば、この事業は、日本側よりも中国側のメリットのほうが大きいのでは…)。

 

  何れにしましても、少なくとも日本国政府は、新型コロナウイルスについては既に1700人以上が感染している感染力の強い肺炎であって、死亡率もかなり高いことを前提とし、中国人の入国規制も含めた対策を早急に実施すべきなのではないでしょうか(特に武漢等からの渡航者…)。中国の当局が放置しているとすれば、日本国内におけるパンデミックを防ぐことができるのは、日本国政府以外には存在しないのですから。

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