万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

民族自決の危機に直面する先進国-移民政策の果て

2014年03月19日 15時54分32秒 | 国際政治
 グローバル化の掛け声とともに、”民族”の枠組みを過去のものとする風潮が強まり、マスコミも、あたかも民族が存在しないかのような扱いを続けてきました。しかしながら、クリミア半島での出来事は、民族自決が決して侮ることができない現実的な問題を含んでいることを如実に表しております。

 国際社会における民族自決の原則は、そもそもは、帝国の版図に組み込まれていたり、植民地支配を受けていた諸国の独立を支える原則として成立した歴史があります。それ故に、日本国を含む欧米諸国は、自らの国に照らしてこの原則を深く考える機会に乏しく、否、無頓着ですらありました。特にヨーロッパ諸国は、戦後、労働力不足を補うために家族を含めた大量の移民を受け入れてきましたし、アメリカを始めとする多民族国家では、移民に広く国を開くことこそ、国家の活力を維持するための当然の政策とみなしてきたのです。移民受け入れが少ないと批判されてきた日本国でも、韓国、北朝鮮、中国を中心に既に帰化した外国人は100万人に達していると指摘されています。イギリスの首都ロンドンでは、外国人の数が人口の半数を越したと報告されていますが、移民政策を長期的に継続して行けは、当然に、先祖代々居住してきた国民は少数派に転落します。多数派となった他民族出身者もまた、国内で”民族”集団を形成し、社会や文化面のみならず、独立や自治、あるいは、出身国との併合要求など、政治的な権利を主張し始めるとしますと(移民送り出し国は、長期的な戦略として自国民を他国に送り込んでいるかもしれない…)、クリミア問題と同様の問題が引き起こされることが予測されます。

 先進国を自認し、最先端の国家モデルとばかりに移民政策を推進した結果、真っ先に世界地図から自国が消えるようでは、それが賢明な判断であったとは思えません。今日、民族を敢えて無視しようとしてきた先進国こそ、民族自決の危機に直面しているのではないかと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 所得税最高上限2億円の怪-... | トップ | ロシアのクリミア併合問題が... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ねむ太)
2014-03-19 20:16:15
こんばんは。ウクライナとクリミアの問題こそ新自由主義・グローバル・スタンダードが引き起こした問題です。
クリミア自治共和国が独立宣言をし住民投票の結果ロシアに併合(帝政ロシア時代)に戻る選択をしたのは、ウクライナが経緯はどうであれ選挙で選ばれた大統領をクーデターにより追放し暫定政権を成立させてしまった事にあります。
民主主義という最低限のルールを踏みにじってしまってはウクライナに口を出す資格はありません。
クリミアは住民投票という民主主義のルールは踏まえているからです。
ウクライナ問題はヤヌコビッチ大統領選出の際の選挙で米国企業が欧州よりの候補に多額の資金提供をしており、米国も戦略の一環として欧州よりの勢力を支持していました。
その為、オバマ氏はクーデターによる政権奪取を批判せずロシアを非難したのです。
つまり米国は自ら民主主義を否定し、テロや買収による政権交代を認めたのです。
民族自決より資金力・武力のあるものが支配する、19世紀の侵略・植民地支配を結果的に容認する形になってしまったのです。
新自由主義の行き着く先は、ここにあります。
国境を超えて資金移動し都合の良い政権を打ちたて、安い賃金で労働者を働かせ巨額の富を得る。
巨大な多国籍業だけが利益を得て、労働者の賃金は上がらず、発展途上国は少し豊かになったように見えても消費する事で働いて得た賃金は多国籍企業に持っていかれる。
多国籍企業はそれぞれの国に税金を収めず、タックスヘイブンと呼ばれる地域に本社を構え、税金はほとんど払わない。
ウクライナの政変を支援したのが、このような連中です
ちなみに、ウクライナはチェルノブイリ原発事故の後も原発を稼働させています。
ウクライナは財政的には破綻した状態だったのですが、ウクライナを利用して一儲けを目論んだのでしょう。
民族が自決して自らの国を持ち、自立をする為には新自由主義経済ではなく国民の為の経済、経世済民を大切にしなければなりません。
エネルギーや安全保障についても他国に依存せず、自立できなければなりません。
欧州・ウクライナのエネルギーはロシアに依存していますので強い事は言えないのです。
ドイツは現在も原発9機が稼働しており、緑の党の自然エネルギー推進は、ほとんど報道されない状態だそうです。
ついさっきまで国会中継を見ていたのですが、民主党の徳永エリ議員は、まだNHKの籾井会長に辞任をしろと迫るばかりで、司法でさえ踏み込まない思想・信条の自由を踏みにじり、言論封殺がさも正義であるかのような質疑を繰り返していました。
対照的だったのが三原じゅん子議員で、多国籍企業が我が国のインフラを使って商売していながら税金を納めていない問題(真面目に納税している企業や国民に不公平になる)事を指摘し、税制の問題点の改善を求めJAL再生問題で国民の税金を投入して再生し多額の利益を上げながらも税金を免除されている問題についての質疑・・・
同じ歳費を支払われている国会議員でありながら、国会の場でイデオロギー闘争を繰り返す馬鹿と、国民の立場に立ったまともな質疑をする議員・・
民主党政権の時に国民が怒ってクーデターを起こさなかつたものだとウクライナ・クリミア問題を見ながら、しみじみ思いました。


返信する
ねむ太さま (kuranishi masako)
2014-03-19 22:38:12
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 確かに、独立や帰属問題については、住民の意思が最も尊重されることは言うまでもなく、チベットやウイグルもまた、住民投票で独立を手にすることができる日が、少しでも早くに訪れることを願っております。ただしかし、クリミアの場合、クリミア・タタールの人々がボイコットし、かつ、ロシアの軍事占領下での住民投票では、住民の自由な意思表示であるかどうか、疑問が残ります。国際法では、武力による現状の変更は認めておりませんので、ロシアは、この点は妥協し、合法的な手続きに則るべきであると思うのです。また、ウクライナとの戦闘状態に至りますと、クリミアどころか、ウクライナ東部の占領・併合にまで及ぶ可能性もあります。ロシアの軍事行動を全面的に容認することは、国際社会の法の支配にとって、極めて危険なことであると思うのです。
返信する

国際政治」カテゴリの最新記事